A 社は,ビューティケア用品やヘルスケア製品の製造・販売を行う化学品メーカである。5 年前に,海外の子会社・関連会社を含めた A 社グループ全体の業務の効率化及び品質の向上を目的として,シェアードサービスセンタをアジアの新興国に設立した。A 社は,グループ各社の業務の異なる手順を標準化して,シェアードサービスセンタへの業務の移管を進めてきた。今般,A 社輸出入業務が,シェアードサービスセンタへ移管された。
〔A 社輸出入業務の現状と課題〕
A 社は,最近,アジア市場で売上げを伸ばしていることから,A 社輸出入業務における作業量は大きく増えている。さらに,新興国の離職率は日本に比べて高く,業務ノウハウが定着しないことによって,入力ミスや書類の入力待ちの滞留など,A 社輸出入業務の品質の低下が懸念されている。そこで A 社は,入力ミスのない正確性と書類が滞留しない即時性を向上させるために,IT を活用して,A 社輸出入業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することとした。
(1) A 社輸出入業務の現状
A 社は,IT の活用によって A 社輸出入業務の品質を向上させるに当たり,現状を把握することとした。A 社輸出入業務のシステム関連図を,図 1 に示す。
A 社輸出入業務では,主に貿易システムが利用されている。関連するシステムである受注・購買システム及びインターネットバンキングを連携先として,日次でのデータ交換が行われている。受注・購買システムとのデータ交換は,前日に更新された契約情報を,貿易システムに夜間バッチ処理で取り込む方法で行われている。A 社輸出入業務では,信用状による取引を行っている。インターネットバンキングとのデータ交換によって,信用状通知データのダウンロード作業と信用状発行依頼データのアップロード作業を,担当者が 1 日 1 回実施している。輸出業務においては,輸出先の信用状通知を確認した後に船積書類を発行することとしており,輸入業務においては,輸入先が A 社の信用状通知を確認した後でないと船積書類を受け取ることができない。
図1 A 社輸出入業務のシステム関連図
(2) A 社輸出入業務の課題
A 社は,負荷が大きい作業に,A 社輸出入業務の品質低下のリスクがあると考え,それぞれの作業に掛かる時間や人数を定量的に調査した。
A 社では,DX の推進計画として,人が PC 上で行う操作を記憶できるソフトウェア型の仮想ロボット(以下,ソフトウェアロボットという)と OCR とを組み合わせて作業を自動化することで,作業の正確性と即時性を高めることを目的とした実証実験を行った。実証実験は,A 社のシェアードサービスセンタと IT 部門とが協力して行われた。A 社は,テスト環境でソフトウェアロボットの動作を確認しながら修正開発とテスト検証を繰り返すアジャイル型開発で実施した。ソフトウェアロボットは,人が行う作業と同じように,複数の作業を,複数のソフトウェアロボットで分担する作り方ができる。A 社のシェアードサービスセンタの作業の担当者は,IT 部門から開発手順のアドバイスを受けながら,ソフトウェアロボットを作成して,活用の検討を進めた。また,契約書を OCR で識別する識字率が低い場合は,修正作業が必要となり,かえって作業負荷が高まるので,識別ができなかった場合に担当者が行っている作業を,ソフトウェアロボットが行うことができるかどうかも検証した。
実証実験を行う中で,作業の担当者は,ソフトウェアロボット作成の習熟度が上がるにつれて,自ら思い思いに多くの種類のソフトウェアロボットを作成していった。A 社の IT 部門は,作業の自動化が進むことで,どこでどのようなソフトウェアロボットが稼働しているかを把握するのが難しくなった。このような管理が不十分な状況で,複数のソフトウェアロボット間で連携して作業を行っている場合,一つのソフトウェアロボットの修正が,他のソフトウェアロボットの誤作動や異常停止の原因になり,A 社輸出入業務の継続性が脅かされるおそれもあった。
〔本格導入の計画策定〕
A 社の IT 部門は,本格導入を進めることで,A 社輸出入業務の改善を図れると考える一方で,実証実験を通じて分かった A 社輸出入業務の統制上の課題を解決するために,ソフトウェアロボットの利用ガイドラインを作成することとした。利用ガイドラインでは,ソフトウェアロボットの作成ルールだけでなく,テスト環境の利用ルール,誤作動や異常停止時のリカバリ手順作成要領,本番稼働前の IT 部門によるレビュー実施などを定めることとした。IT 部門によるレビューでは,ソフトウェアロボットの動作確認だけでなく,誤作動や異常停止した際の影響範囲の特定や対応方法などの A 社輸出入業務の継続性の観点も確認することとした。A 社は,IT 部門によるレビューなしには,ソフトウェアロボットを本番稼働させない方針とした。
本格導入の計画では,A 社の IT 部門とシェアードサービスセンタで協力しながら,利用ガイドラインに沿って,実証実験で自動化しやすいと評価された作業から段階的に導入し,A 社輸出入業務の DX を推進することとした。
そこで A 社は,入力ミスのない正確性と書類が滞留しない即時性を向上させるために,IT を活用して,A 社輸出入業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することとした。
A 社輸出入業務は,アジア市場での売上げ増加で作業量が大きく増え,さらに新興国の離職率の高さから業務ノウハウが定着せず,「入力ミスや書類の入力待ちの滞留など」の品質低下が懸念されている。これに対して A 社は,「入力ミスのない正確性と書類が滞留しない即時性を向上させるために」IT を活用して DX を推進することにした。向上させたい品質はこの二つである。
A 社は,負荷が大きい作業に品質低下のリスクがあると考えて作業量を定量的に調査し,その結果「引渡条件や保険に関する情報を貿易システムに手入力する作業の負荷が,最も大きい」ことが分かった。手入力の際には契約情報と目視で照合し,文字がかすれていればマスタ検索や問合せもする。到着遅れや入力ミスがあると貨物が滞留することもある。
このうちソフトウェアロボットに向くのは,人が PC 上で行う操作であるマスタの検索と過去の契約情報との照合である。海外の子会社・関連会社への連絡は相手とのやり取りを伴うので,PC 上の操作を記憶して繰り返すソフトウェアロボットの対象にはしにくい。〔実証実験の評価〕でも,OCR の識字率はソフトウェアロボットとの連携によって上がったと評価されている。
IT 部門はこの課題を解決するために利用ガイドラインを作り,作成ルール,テスト環境の利用ルール,リカバリ手順作成要領,本番稼働前のレビューなどを定めた。いずれも稼働しているソフトウェアロボットを IT 部門が管理できるようにする取決めである。講評によると,“ソフトウェアロボットの把握が難しい”という事実だけを述べた答えが多かった。把握できないという事実から,稼働に関する管理が十分でないという統制の問題まで書く。
IT 部門のレビューは,動作確認だけでなく「誤作動や異常停止した際の影響範囲の特定や対応方法など」の継続性の観点も確認する。修正したソフトウェアロボットが他のソフトウェアロボットにどう影響するかを,本番稼働の前に IT 部門が確かめるための関門である。講評によると,業務の継続性が脅かされるリスクだけを述べた答えが散見された。何がきっかけで(一つのソフトウェアロボットの修正),どう広がるか(他のソフトウェアロボットの誤作動の連鎖)まで書く。
B 社は,中堅の損害保険会社である。業績が伸び悩んでおり,新たな保険商品による収益増加を,新しい中期計画の重点施策にした。保険業界では,近年,IT を業務効率化や生産性向上だけではなく,革新的な商品に活用する場面が増えてきている。B 社でも,自動車保険でドライブレコーダを装着した契約者向けに特約を提供することで,契約件数を伸ばすことができ成功した。これに倣って,IT を活用した新たな医療保険の導入を企画した。
そこで B 社では,契約者にセンサデバイスを装着してもらい,得られるデータに応じて月額保険料を割引する医療保険(以下,新商品という)を開発し,新たに販売することにした。健康に気を配っている潜在的な契約者のニーズに応え,見込み客を取り込み,販売を拡大したいと考えている。B 社としては,契約者が健康であり続けることで,保険料を割引しても長期にわたり安定的に収入を得られ,かつ,保険金の支払を軽減することが期待できる。
B 社は,これまでは,年齢,性別,り患率,治療費などを統計処理した結果に基づき,月額保険料を算定してきた。そのため,センサデバイスから得られるデータに応じた月額保険料の割引率体系の確定のためには,データを収集し,さらに統計処理して,新商品の採算性を見極める必要があると考えている。
新商品を提供するには,センサ技術と AI 技術の活用が必要になるので,取引先であるデバイスメーカ C 社とスタートアップ企業 D 社と協議して,図 1 に示す事業スキームを構築することにした。その概要は次のとおりである。
(1) C 社は,センサが内蔵されたリストバンド型デバイス(以下,リストデバイスという)を B 社へ販売する。B 社は,リストデバイスを新商品の契約者に提供する。
(2) 契約者は,リストデバイスを着用し,Bluetooth で自身のスマートフォンと連携させる。リストデバイスで収集される心拍や血圧のバイタルデータ,歩数,移動のデータ(以下,まとめて,健康データという)は,クラウドサービス上のシステム(以下,新商品システムという)に,スマートフォン用アプリケーションプログラムを通じてアップロードされる。新商品システムのためのクラウドサービスや,スマートフォン用アプリケーションプログラムは,C 社が提供する。新商品システムは B 社が管理する。
(3) B 社は,D 社の AI エンジン技術を利用して,収集した健康データ,及び病気にかかったり入院したりして保険金が請求された履歴情報(以下,保険金請求情報という)から学習し,それらを AI エンジン学習済モデル(以下,学習済モデルという)として蓄積する。その結果から,契約者別にポイントを計算し,算出されたポイントに応じて,当該契約者の月額保険料の割引率を算定する。その結果を受けて,各人の月額保険料の請求額は四半期ごとに改定する。
図1 事業スキーム
B 社は,新商品の正式販売には割引率体系の確定が必要であり,一部の顧客や特定地域をターゲットにして割引率をいろいろ変えながら,試行販売を行うことにした。その結果から,学習済モデルの精度を向上させていく予定である。
C 社,D 社とも,自社技術・サービスの適用事例は少なく,売上げの拡大が期待できることから,今回の B 社の新商品の取組には積極的に協力する意向である。特に,D 社は,今後実用化領域の広がりが予想される AI エンジンの適用拡大に向けた良い機会と捉えている。B 社では,今回の新商品が他社に真似をされないよう,新商品システムの管理を徹底する。
〔新たな事業への取組〕
B 社では,試行販売と並行し,新商品の事業スキームを活用して,新たな事業に取り組むことを計画した。新たな事業の主要な顧客は,多くの被保険者を有していて,大量のデータの入手が期待できることから,健康保険組合にした。健康保険組合は,近年,医療費負担の高額化などによって保険給付金や拠出金が増加していて,その削減のために,健康指導などの健康増進活動・予防活動に力を入れている。これらの活動の成否は,健康保険組合の被保険者に,自ら健康増進に取り組んでもらえるかどうかに懸かっている。そのためには,被保険者自らが自身の健康状態を把握できて,健康の維持や改善を実感できることが重要になっている。
B 社が計画する新たな事業は,被保険者が自身で健康状態を把握できる仕組みを健康保険組合に提供するもので,その概要は次のとおりである。
(1) B 社は健康保険組合と契約し,健康保険組合を通してリストデバイスを被保険者に提供する。健康保険組合では,被保険者の匿名化を行い,リストデバイスの ID で対象の健康データをひも付けできるようにする。B 社は,被保険者のリストデバイスから健康データを取得し,管理する。
(2) B 社は,定期的にリストデバイスごとの健康データと健康データの統計分析結果を健康保険組合に提供する。
(3) 健康保険組合は,被保険者の同意を得て,匿名化した被保険者の保険給付に関する疾病情報にリストデバイス ID を付与して B 社へ提供する。
(4) B 社は,取得した健康データや疾病情報を,新商品の学習済モデルに追加して学習させる。
〔健康保険組合からの要望への対応〕
新たな事業に取り組む中で,健康保険組合からは,被保険者の健康診断の結果などの追加のデータの登録機能,及び Web による健康指導を支援する機能の追加に関する要望が出てきた。B 社はこれを受けて,3 社でこの要望への対応を検討した。その結果,追加機能については新商品の割引率体系の確定には関与しないことから,C 社と D 社が中心になって取り組むことにし,B 社は健康保険組合に両社を紹介することにした。C 社と D 社の取組内容は次のとおりである。
(1) 被保険者は,健康診断の結果を C 社が新たに構築するクラウドサービス上のシステムにアップロードできるようにする。また,自身で取得した,BMI,体脂肪率,睡眠時間,摂取カロリなどのデータも,C 社クラウドサービス上のシステムに自発的にアップロードできるようにする。
(2) D 社は,(1)でアップロードされたデータを学習させ,学習済モデルを D 社自身で新たに構築して,アップロードしたデータに応じた傾向分析を行う。
(3) 健康保険組合及び被保険者は,C 社クラウドサービス上のシステムの Web ページで,健康データ,アップロードされたデータ及び傾向分析結果をモニタリングできる。
B 社の医療保険は競争優位性の確保が難しく販売実績が低迷している。一方で,健康に気を配っている層が増えており,その中には,健康に気を配っていることが保険料に反映されないことに不公平感をもち,契約をためらっている潜在的な契約者も少なくない。
新商品は,センサデバイスから得られるデータに応じて月額保険料を割引する。健康に気を配っていることが保険料に反映されるので,この不公平感が解消される。本文も「健康に気を配っている潜在的な契約者のニーズに応え,見込み客を取り込み,販売を拡大したい」と狙いをそのまま書いている。長期の安定収入や保険金支払の軽減は,契約者が健康であり続けた結果として B 社が期待できることで,新商品を開発する狙いの中心ではない。
健康保険組合の被保険者は B 社の保険の契約者ではないので,保険金請求情報は無い。その代わりになるのが,健康保険組合が提供する保険給付に関する疾病情報である。これをリストデバイス ID で健康データとひも付けて学習させれば,保険金請求情報と同じ役割を果たし,正式販売に必要な割引率体系の確定に使える。講評によると“保険給付金の把握のため”という答えが見られた。それは健康保険組合への協力の見返りの側で,B 社がデータを入手したい理由は割引率体系の確定である。
追加機能では,被保険者が健康診断の結果や自分で取得した BMI,体脂肪率などを「自発的に」アップロードでき,傾向分析結果を Web ページでモニタリングできる。被保険者が自分の健康状態を把握し,自発的に取り組むための仕組みである。講評によると“健康改善した被保険者に特典を提供するため”という答えが散見された。特典の提供はこのデータを使って健康保険組合が予定している業務ではあるが,健康保険組合主導の施策であり,要望の背景は被保険者の自発的な取組を引き出すことにある。
C 社,D 社とも,自社技術・サービスの適用事例は少なく,売上げの拡大が期待できることから,今回の B 社の新商品の取組には積極的に協力する意向である。特に,D 社は,今後実用化領域の広がりが予想される AI エンジンの適用拡大に向けた良い機会と捉えている。
〔健康保険組合からの要望への対応〕(1)
被保険者は,健康診断の結果を C 社が新たに構築するクラウドサービス上のシステムにアップロードできるようにする。
〔健康保険組合からの要望への対応〕(2)
D 社は,(1)でアップロードされたデータを学習させ,学習済モデルを D 社自身で新たに構築して,アップロードしたデータに応じた傾向分析を行う。
C 社と D 社は「自社技術・サービスの適用事例は少なく」,適用が広がれば売上げの拡大が期待できるので,B 社の取組に積極的に協力している。特に D 社は,この機会を「AI エンジンの適用拡大に向けた良い機会」と捉えている。
追加機能では,C 社が新たにクラウドサービス上のシステムを構築し,D 社が新たに学習済モデルを自ら構築して傾向分析を行う。どちらも B 社の新商品システムとは別に,健康保険組合向けに自社の技術・サービスを適用する場面が増える。したがって C 社の狙いはクラウドサービスの適用拡大,D 社の狙いは AI エンジン技術の適用拡大である。講評によると C 社について“リストデバイスの拡販”という答えが散見された。健康保険組合の要望は追加のデータの登録機能と健康指導の支援機能で,リストデバイスの数量が増えるわけではない。
20字ずつに対し,解答例は C 社「クラウドサービスの適用拡大」13字,D 社「AIエンジン技術の適用拡大」13字。追加機能で各社が受け持つもの(C 社はクラウドサービス上のシステム,D 社は学習済モデルと傾向分析)を,本文の「適用拡大」と組み合わせる。
G 社は,首都圏近郊に展開している学習塾である。講師 1 名に対し学生 1 名〜数名を指導する個別指導型講座を展開しており,講座においては独自に構築した IT を活用して学生の苦手分野の克服に特化した学習サービスを積極的に取り入れている。G 社の講師は,講義時間外を利用して,学生と面談し,学力向上のために小論文や面接対策の指導を行っている。学生とのコミュニケーションを重視していることが口コミで広がり,学生の獲得につながっている。
〔F 社の IT 活用状況と課題〕
F 社の強みは,大学合格実績が多いことである。F 社には多くの大学の過去 10 年間にわたる全教科の入学試験の傾向が蓄積された大学データベースがあり,大学別の学力判定模擬試験(以下,F 社模試という)の合格判定の精度も高い。F 社に通う学生のほとんどが,自身が志望する大学の F 社模試を受験する。F 社模試で出題した問題と解答,分野,過去の受験者の成績情報及び合否結果はビッグデータとして学生データベースに蓄積されている。F 社模試の合格判定には,蓄積されたビッグデータを活用している。
F 社の講師は,講座の質を高めるために,毎年各大学の入学試験の傾向を分析し教材の改訂に当たっている。多くの学生が苦手とする分野を題材として取り上げることができれば講座の質が高まると考えているが,実現できていない。
F 社の講座には,教室で行うライブ講座とオンライン講座がある。オンライン講座には,ライブ講座を他校舎の教室で放映するリアルタイム形式と,スタジオで録画した講座を専用ブースで視聴するオンデマンド形式があり,遠隔講座システムを用いている。また遠隔講座システムは,スタジオでの講座を専用ブースへ生中継し,講師と学生が遠隔でコミュニケーションをとりながら行う Web 会議形式の講座も開講可能であるが,現在は希望する学生が少なく,利用されていない。
F 社は,学生が会員登録して利用する Web サイト(以下,学習支援システムという)上で,学生への学習支援サービスを提供している。学生は,学習支援サービスを通して,自身が受講する講座のスケジュールや時間,教室の変更情報,F 社模試の結果履歴などを確認することができる。
F 社では,今後 IT を活用して,F 社に通う学生の次のようなニーズに対応することが必要であると感じている。
〔F 社に通う学生のニーズ〕
F 社に通う学生は,難関大学への入学を望む傾向にある。F 社に対しては,志望校合格に向けて実践的に学習できる講座が提供されることを望んでいる。また,最近では学習しているその場で苦手分野を克服するための個別指導へのニーズも高い。
F 社の学生は,志望校に合格するためには F 社の講座とは別に自宅学習が重要であることを理解しているが,一人で自宅学習する意思を持続することは難しいと感じている。自身が行った学習時間を把握して他の学生の学習時間と比較することができると競争意識が働き,自宅学習のモチベーション向上に役立つと考えている学生も多い。
〔G 社の IT 活用状況とニーズ〕
G 社の講座は,対面指導のほかに,独自に構築したアダプティブラーニングシステム(以下,ALS という)を活用した自立型学習サービスの提供に特色がある。ALS は,学生が ALS を利用して行った教科ごとの分野や演習問題とその学習にかかった時間などを学習記録として蓄積するものであり,学生が学習の進度や理解度を確認できるようにするものである。G 社の ALS には,ALS を利用した学習記録に限らず,ALS 以外で行った試験の結果なども記録することができる。さらに ALS は,独自に開発した AI 機能を活用し,蓄積されたデータから多くの学生が苦手とする分野の傾向を分析することができる。また,傾向分析した情報を活用し,学生ごとの学力向上につながる最適な演習問題を繰返し出題する仕組みを実現している。蓄積されるデータが多いほど傾向分析の精度や演習問題の適応度が高まるので G 社は今後蓄積データを増やしたいと考えている。
G 社の強みは,個別指導型講座による対面指導で,学生の弱点をその場で解決できることである。
G 社の講座は,教科別の講座であり,特定の大学向けの講座はない。学生からは,志望する大学に特化した講座の開講を期待する声もあるが,学生のニーズには応えられていない。
G 社は,今後 IT を活用して,ニーズや課題に対応する必要があると感じている。
〔合併に向けた講座の新設と見直し〕
F 社の合併提案に対して G 社も合併によって G 社のニーズや課題に対応できると判断したので,両社は合意した。両社は合併に向けて両社がもつ IT を連携統合し,活用するための具体的な協議を開始した。
講座形態については,F 社に通う学生のニーズに応えるために F 社の遠隔講座システムを利用して Web 会議形式による個別指導型オンライン講座を新設することにした。
F 社は 1 名の講師が多数の学生を指導する集団型講座で,個別指導はできていない。一方,G 社の強みは「個別指導型講座による対面指導で,学生の弱点をその場で解決できること」である。F 社の遠隔講座システムは講師と学生が遠隔でコミュニケーションをとる Web 会議形式の講座を開講でき,これで G 社の個別指導を F 社の学生にも届けられる。
G 社に通う学生のニーズは,志望する大学に特化した講座である(設問1(2))。大学に特化した講座を作るには,大学ごとの出題の特徴が要る。
F 社には「多くの大学の過去 10 年間にわたる全教科の入学試験の傾向が蓄積された大学データベース」があり,F 社の講師は毎年各大学の入学試験の傾向を分析して教材を改訂している。G 社にはこの情報が無い。講評によると“ALS が保持する情報”という答えも一部に見られた。ALS は G 社自身のシステムで,苦手分野の傾向は分かっても大学ごとの傾向は分からない。特定の大学向けの講座の開講が G 社に通う学生のニーズであることから考える。
F 社の講師は,講座の質を高めるために,毎年各大学の入学試験の傾向を分析し教材の改訂に当たっている。多くの学生が苦手とする分野を題材として取り上げることができれば講座の質が高まると考えているが,実現できていない。
〔G 社の IT 活用状況とニーズ〕
さらに ALS は,独自に開発した AI 機能を活用し,蓄積されたデータから多くの学生が苦手とする分野の傾向を分析することができる。
F 社の課題として本文にあるのは,講師が「多くの学生が苦手とする分野を題材として取り上げることができれば講座の質が高まると考えているが,実現できていない」ことである。
ALS は,蓄積されたデータから「多くの学生が苦手とする分野の傾向を分析することができる」。この分析結果を使えば,F 社の講師は多くの学生が苦手とする分野を題材として取り上げられる。ALS の情報で改善できるのはこの状況である。講評によると“Web 会議形式の講座が利用されていない状況”という答えが散見された。Web 会議形式の講座は F 社の遠隔講座システムの話で,ALS の情報とは関係しない。
F 社模試で出題した問題と解答,分野,過去の受験者の成績情報及び合否結果はビッグデータとして学生データベースに蓄積されている。
〔G 社の IT 活用状況とニーズ〕
G 社の ALS には,ALS を利用した学習記録に限らず,ALS 以外で行った試験の結果なども記録することができる。
〔G 社の IT 活用状況とニーズ〕
蓄積されるデータが多いほど傾向分析の精度や演習問題の適応度が高まるので G 社は今後蓄積データを増やしたいと考えている。
〔ALS の活用促進策〕
ALS が出題する演習問題の適応度を高め,学生の一層の学力向上を図るために,F 社のある情報の活用を検討することにした。
ALS は蓄積されるデータが多いほど傾向分析の精度や演習問題の適応度が高まるので,G 社は蓄積データを増やしたいと考えている。しかも ALS には,ALS を利用した学習記録に限らず「ALS 以外で行った試験の結果なども記録することができる」。
F 社の学生データベースには,F 社模試で出題した問題と解答,分野,過去の受験者の成績情報及び合否結果がビッグデータとして蓄積されている。これは ALS 以外で行った試験の結果そのものであり,分野ごとの成績も分かる。F 社のもう一つのデータベースである大学データベースは入学試験の傾向で,学生ごとの苦手分野に合わせた演習問題の出題には,学生の成績の情報のほうが合う。
F 社の学生は,志望校に合格するためには F 社の講座とは別に自宅学習が重要であることを理解しているが,一人で自宅学習する意思を持続することは難しいと感じている。自身が行った学習時間を把握して他の学生の学習時間と比較することができると競争意識が働き,自宅学習のモチベーション向上に役立つと考えている学生も多い。
〔学習支援システムの強化策〕
② 学生が自宅で行った ALS 以外での学習の開始時刻・終了時刻の入力を可能とし,学習時間として管理する。
〔学習支援システムの強化策〕
③ 同じ講座を受講する学生の学習時間の統計情報を確認でき,学生全体の中での自身のポジショニング情報を知ることを可能とする。
F 社の学生は自宅学習が重要だと理解しているが,「一人で自宅学習する意思を持続することは難しい」と感じている。そして,自身の学習時間を他の学生と比較できれば競争意識が働き,自宅学習のモチベーション向上に役立つと考えている学生も多い。
強化策の①②で ALS の学習時間と自宅での学習時間を記録し,③で同じ講座の学生の学習時間の統計情報と自分の位置を確認できるようにする。学習時間を記録するのは,この比較を可能にして,自宅学習する意思を持続させるためである。
基本的に人間が介在しない自動車の自動運転技術については,高速道路などの限定された区間において実用段階に近づいている。さらに,高速道路以外の,道路,他車,歩行者などの外部環境が複雑で,かつ,外部環境の変化が予測しにくい区間で自動運転するためには,外部環境の認識と,それに応じた走行方法の判断が重要な要素技術となる。今後は,外部環境の認識・走行方法の判断を行う機能を AI で実現し,自動車の自動運転の適用範囲が拡大することによって,交通事故の減少と運転者の負担軽減が期待されている。
Y 社の自動車の販売台数は,ここ数年順調であったが,自動車業界は激しい価格競争状態にある。この結果,X 社の売上げは伸びているものの利益は大きくなく,X 社の技術開発費は不足しているのが現状である。
一方で,X 社は,自動車の運転支援システムを高度化して,自動運転技術の実用化を 3 年以内に実現することを Y 社から強く求められている。
〔X 社への開発検討依頼〕
X 社は,Y 社の親会社である重工業メーカの Z 社から,高効率な海底探査技術の開発検討依頼を受けた。
Z 社は,海底資源を採掘するための大型採掘機械を含めたシステムの開発を,世界に先駆けて成功させていた。海底資源を採掘する技術は特殊なので,参入している企業は Z 社を含めた数社に限定される状況にある。
Z 社が目指す採算性が高い海底資源を採掘する事業を軌道に乗せるには,その前段となる海底資源の探査に要する期間の短縮と低コスト化が課題となっている。また,Z 社は,海底探査をするための有人潜水調査船を開発し,水中での通信に有効な技術の一つである水中音響通信技術など,多くの関連要素技術の特許を保有している。
L 氏は M 氏の報告を受け,ある契約が Z 社との間で成立することを条件に,無人海底探査機の開発は技術的に可能であると判断した。さらに,無人海底探査機は有人潜水調査船と比較し,大幅に安価な製品として開発することが可能であると考えた。しかし,将来にわたる事業性については,海底資源を採掘する市場は拡大するが,海底探査をする市場は収益面で X 社にとってリスクがあると判断し,Z 社に交渉する必要があると考えた。
そこで L 氏は,X 社の幹部会議で事業の方針案を説明して意思決定を図ることにした。
〔海底探査システムの事業計画〕
L 氏は,海底探査の事業を成功させるためには,単に海底探査機を無人化するだけでなく,複数の無人海底探査機を協調制御して同時に運航する海底探査システムを開発することが効果的であると考え,次の目標を掲げた。
しかし,将来にわたる事業性については,海底資源を採掘する市場は拡大するが,海底探査をする市場は収益面で X 社にとってリスクがあると判断し,Z 社に交渉する必要があると考えた。
海底資源を採掘する市場は技術が特殊で,参入企業は Z 社を含めた数社に限られる。一方,海底探査は,無人で行う方法が何通りもあって現在の技術の組合せでも実現でき,無人が主流になれば高い安全性が不要になって「多くの企業が参入すると考えられる」。
参入企業が増えれば価格競争になり,X 社が無人海底探査機で得られる収益は下がる。L 氏が採掘の市場は拡大するとしながら探査の市場には収益面のリスクがあると判断したのはこのためで,だから Z 社との交渉が必要だと考えた。講評によると,収益面でのリスクではない理由を述べた答えが散見された。技術的な難しさなどではなく,無人の方法が主流になることによる参入の増加に着目する。