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情報処理安全確保支援士試験

令和3年度 秋期 午後Ⅱ(旧試験)

令和3年度 秋期に実施された情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱの全2問(記述式)の全設問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。事例本文のどこが根拠になるかを示し,IPA の解答例・採点講評と並べています。

この試験について:情報処理安全確保支援士試験について

この年度を解いてみる

問1 協力会社とのファイルの受渡し

協力会社とのファイルの受渡しに関する次の記述を読んで,設問 1〜5 に答えよ。

U 社は,従業員 10,000 名の半導体製造業であり,国内に工場を置いている。U 社では,幾つかの工程を国内の 40 社の協力会社に委託しており,生産計画や設計書類のファイルを協力会社との間で受け渡す必要がある。ファイルの受渡し件数は,協力会社によって異なるが,1 日当たり 1 件から 10 件である。U 社では,生産管理課が協力会社とのファイルの受渡しを担当している。ファイルの受渡しには,Web ベースのファイル交換システム(以下,D システムという)を使用している。D システムは,HTTP サーバ及び U 社が開発した Web アプリケーションプログラム(以下,U アプリという)から成る。D システムでは受発注に関するファイルは取り扱っていない。

図 1 は,D システムに関係する機器の全体構成である。

U 社ネットワークの中に D システムとファイル受渡し用 PC があり,どちらも FW(ファイアウォール)に接続されている。FW はインターネットに接続され,インターネットの先に複数の協力会社の社内ネットワークがある。各協力会社の社内ネットワークの中にはファイル受渡し用 PC がある。
図 1 D システムに関係する機器の全体構成

U 社の生産管理課及び協力会社に設置したファイル受渡し用 PC から D システムまでのアクセスは,HTTPS で行われている。U 社ネットワーク内から D システムにアクセスできる端末は,FW の設定によって,生産管理課に設置したファイル受渡し用 PC だけに制限している。

D システムのアカウントは,協力会社の拠点ごとに一つ,U 社が発行している。D システムの利用者認証は,利用者 ID とパスワードによって行われている。

〔セキュリティインシデントの発生〕

ある日,D システムのトップページが改ざんされるというセキュリティインシデントが発生した。調査したところ,HTTP サーバの既知の脆弱性を悪用した攻撃によって改ざんされたと分かり,脆弱性修正プログラムの適用などをしてから復旧した。

セキュリティインシデントの調査の過程で,HTTP サーバのアクセスログから,協力会社 P 社に発行したアカウントを用いて海外の IP アドレスからアクセスした履歴が見つかった。このアクセスは,D システムの利用規約や法令に違反しているおそれがあるので,P 社に問い合わせたところ,P 社の従業員の 1 人が海外出張先からアクセスしていたことが分かった。

D システムの利用規約では,ファイル受渡し用 PC には,各協力会社の社内への設置,並びに盗難対策,マルウェア対策及びファイルの不正持出し対策を求めている。また,D システムには,ファイル受渡し用 PC からだけアクセスすることを求めている。しかし,U 社ではいずれの遵守状況も確認していなかった。

こういった利用規約違反への対策として,海外からのアクセスを FW で禁止した。さらに,協力会社以外からのアクセスを検知するために,SIEM(Security Information and Event Management)を導入した。

〔D システムの脆弱性診断〕

U 社は,ほかにも D システムに対策が必要な脆弱性がないかどうかを確認するために,脆弱性診断をセキュリティ専門会社である N 社に依頼した。

診断の結果,クロスサイトスクリプティング(以下,XSS という)脆弱性などが発見された。XSS 脆弱性が発見された箇所を,図 2 に示す。

画面 A(備考などの入力画面)から画面 B(入力後に遷移する確認画面)への遷移を示す図。画面 A の URL は https://dsys.u-sha.co.jp/description で,“ファイル備考の入力”画面。フォルダ:協力会社 A > 生産計画,ファイル:部品10293.pdf。備考の入力欄に“部品10293の生産計画です。完成した部品の納品場所は参考URLのとおりです。”,“参考URLあり”のチェックボックスにチェックが入り,参考 URL の入力欄に http://www.u-sha.co.jp/map001.html。ボタンは“キャンセル”と“内容を確認する”。“内容を確認する”から画面 B へ矢印が引かれている。画面 B の URL は https://dsys.u-sha.co.jp/submitdescription で,同じ“ファイル備考の入力”画面。フォルダ,ファイル,備考は画面 A の入力内容と同じ文章で,参考 URL は http://www.u-sha.co.jp/map001.html が下線付き(リンク)で表示される。“上記の内容でアップロードしますか。”の下に“戻る”と“アップロードする”のボタンがある。注記 1:矢印は画面 A の入力欄に適切な値を入力してボタンがクリックされたときの遷移を示す。注記 2:画面 B の下線は,リンクであることを示している。
図 2 XSS 脆弱性が発見された箇所

N 社の,XSS 脆弱性についての報告を図 3 に示す。

N 社の報告(抜粋)。(1) XSS 脆弱性の診断は,URL を Web ブラウザのアドレスバーに入力し,HTTP レスポンス及び表示される画面の内容を確認することによって行った。(2) まず,図 2 の画面 A と画面 B の診断のために,診断用 URL1 と診断用 URL2 の二つを入力した。診断用 URL1 を図 4,診断用 URL1 を入力した時に得られたサーバからの HTTP レスポンスのボディ部を図 5,診断用 URL2 を図 6,診断用 URL2 を入力した時に得られたサーバからの HTTP レスポンスのボディ部を図 7 に示す。(3) 図 5 から,description パラメタの値を画面 B の備考に出力する際には,エスケープ処理が正しく行われており,XSS 脆弱性は認められない。(4) 診断用 URL2 を入力した時に表示された画面 B 上で,参考 URL のリンクをクリックすると,“XSS!”という内容のダイアログボックスが表示された。(5) 上記(4)と,図 7 から,refURL パラメタの値を画面 B の参考 URL のリンクとして出力する際の処理に問題があり,XSS 脆弱性が存在すると認められる。(6) 上記(5)で示した脆弱性の原因は,refURL パラメタの出力部において,プログラミングに関する次の二つの誤りのうちのどちらかによるものと想定される。− XSS を防ぐための処理を一切していない。− XSS を防ぐための基本的な処理はしているが,HTML タグの属性値の出力時に必要な処理が行われていない。(7) 次に,いずれの誤りなのかを調べるために,図 8 に示す診断用 URL3 を入力した。その時に得られたサーバからの HTTP レスポンスのボディ部が図 9 である。
図 3 XSS 脆弱性の報告(抜粋)
https://dsys.u-sha.co.jp/submitdescription?fileID=001023&description=<script>alert('XSS!')</script>&checkbox=on&refURL=http%3A%2F%2Fwww.u-sha.co.jp/
図 4 診断用 URL1
(省略)の次の行に,“備考:[ a ]script[ b ]alert('XSS!')[ a ]/script[ b ]<br>”。[ a ]と[ b ]は枠で囲まれた空欄で,それぞれ 2 か所に同じものが入る。(省略)の次の行に,“参考 URL:<a href="http://www.u-sha.co.jp/">http://www.u-sha.co.jp/</a>”。その後に(省略)。
図 5 診断用 URL1 を入力した時の HTTP レスポンスのボディ部
https://dsys.u-sha.co.jp/submitdescription?fileID=001023&description=test2&checkbox=on&refURL=[ c ]([ c ]は枠で囲まれた空欄)
図 6 診断用 URL2
(省略)の次の行に,“備考:test2<br>”。(省略)の次の行に,“参考 URL:<a href="[ c ]">[ c ]</a>”([ c ]は枠で囲まれた空欄で,2 か所に同じものが入る)。その後に(省略)。
図 7 診断用 URL2 を入力した時の HTTP レスポンスのボディ部
https://dsys.u-sha.co.jp/submitdescription?fileID=001023&description=test3&checkbox=on&refURL="%20onmouseover=alert('XSS!')%20foo="
図 8 診断用 URL3
(省略)の次の行に,“備考:test3<br>”。(省略)の次の行に,“参考 URL:<a href="&quot; onmouseover=alert('XSS!') foo=&quot;">&quot; onmouseover=alert('XSS!') foo=&quot;</a>”。その後に(省略)。
図 9 診断用 URL3 を入力した時の HTTP レスポンスのボディ部

〔D システムの脆弱性対策〕

XSS 脆弱性の報告を受けた U 社は,N 社の支援を受けて,D システムの XSS 脆弱性対策を進めることにした。支援を担当した情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)である R 氏は,二つの対策を提案した。

一つ目の対策は,①図 3 で特定された XSS 脆弱性を解消するための U アプリの改修である。

二つ目の対策は,“Content-Security-Policy: script-src 'self';”というヘッダフィールドを,HTTP レスポンスのヘッダに追加することによって,Web ブラウザに対して②指定したスクリプトファイルの実行だけを許可するというものである。この対策は,一つ目の対策に比べて短期間で実施可能であるが,D システムが用いている正規のスクリプトが意図したとおりに動作するように,③実行が制限されてしまうスクリプトの有無を確認し,もしあれば,当該箇所の呼出し方法を変更する必要がある。

一部の古い Web ブラウザは Content-Security-Policy に対応していないので,万全の対策のためには,二つの対策を両方実施することが必要である。

U 社は,R 氏の提案どおり,Content-Security-Policy を速やかに追加するとともに,U アプリの改修計画の策定を開始した。

〔D システムの SaaS への移行の検討〕

U 社の情報システム部の Y さんが U アプリの改修を計画していたところ,将来にわたり U 社で U アプリのメンテナンスを続けるよりも SaaS に移行する方が機能面でもセキュリティ対策の面でもよいのではないかという意見が出た。

そこで,Y さんは,U アプリのメンテナンス継続と SaaS への移行のメリットとデメリットを比較した。比較の結果,表 1 に概要を示す G 社提供の SaaS(以下,G サービスという)に移行する方が,U アプリのメンテナンスを継続するよりもメリットが多そうなので,更に詳細に検討することにした。

項目と内容の 2 列の表。基本機能:利用者は,Web ブラウザでアクセスする。G サービス上のストレージにファイルをアップロードしたり,ローカルのストレージにダウンロードしたりできる。アップロードしたファイルは,複数階層にわたるフォルダで管理される。利用者は,アクセス権に従ってフォルダを作成することができる。アクセス権:ファイル及びフォルダに対して,利用者ごとにアクセス権を設定できる。契約に伴う制限:契約で定められた容量が割り当てられる。ほかの契約者に割り当てられた領域には,アクセスできない。契約では発行できるアカウント数の上限が定められている。
表 1 G サービスの概要

Y さんは,G サービスへの移行について,D システムの利用規約の継続を前提として,次の項目を検討することにした。

〔項目 1 の検討〕

Y さんは,項目 1 について検討した。表 2 は,その検討結果である。

必要なセキュリティ対策と G サービスでの実現可否の 2 列の表。協力会社以外からのアクセス禁止:G サービスで,送信元 IP アドレスの制限を行うことができないので否。Web アプリケーションプログラムの脆弱性への対応:G 社が実施するので可。サーバ OS 及び HTTP サーバへの脆弱性修正プログラムの適用:G 社が実施するので可。ファイルを G サービス上のストレージに保存するときの暗号化:G サービスの機能として,自動的に暗号化され,暗号鍵は G 社が管理するので可。ファイルの完全削除:ファイルを削除しても,G サービス上のストレージに情報が残る可能性があるので否。災害時の業務継続:ファイルや管理情報が,日本国内と F 国の両方のデータセンタに保存されており,片方が災害に遭ってもデータの消失とサービスの停止を防ぐことができるので可。
表 2 項目 1 の検討結果

次は,検討結果に関する Y さんと U 社の CSIRT リーダである T さんの会話である。

〔項目 2 の検討〕

現行の D システムでは,協力会社以外からのアクセスを検知するために SIEM を利用しているが,G サービスでは SIEM の機能は提供していない。Y さんが調査した結果,G サービスに移行した場合でも,G サービスの API を利用すれば,表 3 に示すログを U 社の SIEM へ取り込めることが分かった。

対象と実行された操作の 2 列の表。アカウント:ログイン,ログアウト,作成,削除,権限変更。フォルダ:作成,削除,名称変更,アクセス権変更。ファイル:ダウンロード,アップロード,削除,名称変更,アクセス権変更。
表 3 提供しているログ

ログには,操作対象,実行された操作とともに,日付,時刻,実行した利用者 ID,アクセス元 IP アドレス,及び結果(成功又は失敗)が記録される。

続いて,Y さんは,G サービスが提供している,利用者 ID とパスワードによる認証を利用した場合に,SIEM を利用してログから不正アクセスが検知できるかどうかを検討した。表 4 は,Y さんが考えた,ログから不正アクセスを検知する方法である。

項番,不正アクセスの方法,検知の方法の 3 列の表。項番 1:不正アクセスの方法は“利用者 ID を固定して,パスワードを総当たりする。”,検知の方法は“一定時間当たりの[ f ]の回数がしきい値を超えたら,不正アクセスとして検知する。”。項番 2:不正アクセスの方法は“少数のパスワードについて,利用者 ID を総当たりする。”,検知の方法は“一定時間当たりの同一 IP アドレスからの異なる利用者 ID によるログイン失敗の回数がしきい値を超えたら,不正アクセスとして検知する。”。
表 4 ログから不正アクセスを検知する方法(抜粋)

表 4 を確認した T さんは,いずれの不正アクセスもゆっくりと実行された場合には見逃すことがあることと,項番 2 については,⑤ほかの場合にも見逃すことがあることを指摘した。さらに,不正アクセスを防ぐには,多要素認証を採用する方がよいことと,多要素認証は,G サービス単独では実現できないが,IDaaS との連携で実現できることを説明した。

〔IDaaS との連携による多要素認証の実現方式の検討〕

Y さんは,IDaaS との連携による多要素認証の実現方式の検討を開始した。幾つかの IDaaS を検討した結果,国内の互いに地理的に離れた複数のデータセンタで運用されている K サービスとの連携による実現が最適であると考えた。K サービスでは,様々な認証方式を選択できるが,Y さんは,G サービスを利用した新たなファイル交換システム(以下,E システムという)には,FIDO 認証が最もふさわしいと考え,FIDO 認証器として何を選択するべきか,検討を開始した。まず,K サービスで利用できる FIDO 認証器の仕組みについて調査し,表 5 にまとめた。

認証器,Web ブラウザとの通信方法,認証器使用時の利用者確認(User Verification),複数利用者による認証器の共用,組合せ(注 1)の 5 列の表。スマートフォン:Bluetooth 経由,スマートフォンに組み込まれた生体認証装置による生体認証,できない,限定されない。USB 接続外部認証器:USB ポート経由,なし,できない,限定されない。OS 内蔵の生体認証機能:OS 内部処理,OS に内蔵された生体認証機能による生体認証,OS の利用者 ID 間で可能,限定される。注 1:K サービスにアクセスする PC と,認証器の組合せ。
表 5 FIDO 認証器の仕組み

認証器としてスマートフォンを利用した場合の利用者認証の流れは図 10 のとおりであった。

認証器(スマートフォン),Web ブラウザ(K サービスに未ログイン),K サービスの認証サーバの 3 者のシーケンス図。認証器と Web ブラウザの間は Bluetooth 接続,Web ブラウザと認証サーバの間は TCP/IP 接続。(1) Web ブラウザから認証サーバへ“利用者 ID”を送る。認証サーバは“IDc の選択”と“乱数 c' の生成”を行う。(2) 認証サーバから Web ブラウザへ“IDc,ドメイン,乱数 c'”を送る。(3) Web ブラウザから認証器へ“利用者 ID,IDc,ドメイン,H(オリジン b || 乱数 c')”を送る。認証器は“生体認証による利用者確認”を行う。(4) 認証器から Web ブラウザへ“IDc,H(ドメイン),署名 M”を送る。(5) Web ブラウザから認証サーバへ“IDc,H(ドメイン),オリジン b,署名 M”を送る。認証サーバは“オリジン b が K サービスのものであることの確認”と“(5)の正当性確認,署名 M の検証”を行う。凡例:IDc は認証器の登録時に,利用者 ID とドメインの組みに対して,認証器ごとに発行する ID。H(A)は A のハッシュ値。A || B は A と B を連結。オリジン b は Web ブラウザがアクセスしている Web サイトのオリジン。署名 M は H(ドメイン),H(オリジン b || 乱数 c')に対するディジタル署名。
図 10 利用者認証の流れ

Y さんは,図 10 中の(3)〜(5)のメッセージの生成にオリジン b が使われていることについて T さんにその目的を尋ねた。T さんは,攻撃者が,g するための特別なサーバをインターネット上に用意し,何らかの方法で被害者をそのサーバに誘導し,認証情報を不正に入手して悪用するという攻撃を防御するためだと答えた。

続いて Y さんは,E システムにおいて,それぞれの認証器を使用した場合を想定し,認証器の取扱いを表 6 に,運用上のリスクと対策を表 7 にまとめた。

認証器,K サービスにおける取扱い,E システムにおける認証器の所有者,E システムにおける認証器の配布方法の 4 列の表。スマートフォン:供給せず,要件を提示している。/各協力会社又は利用者個人/協力会社によって異なる。USB 接続外部認証器:専用機器を契約者だけに販売している。/U 社の一括購入となるので,U 社/U 社から必要個数を各協力会社に配布する。OS 内蔵の生体認証機能:供給せず,要件を提示している。/各協力会社/ファイル受渡し用 PC が認証器を兼ねるので,認証器の別途配布は不要である。
表 6 認証器の取扱い
認証器,認証器の紛失・盗難時のリスクと対策,退職時のリスクと対策(注 1)の 3 列の表。スマートフォン:紛失・盗難時は“認証器の使用時に[ h ]が必要なので,不正利用される可能性は低い。”,退職時は“退職者による不正なアクセスを防ぐために,個人所有のスマートフォンを利用していた場合も想定して,退職時又は退職後直ちに,[ i ]では,[ j ]する必要がある。”。USB 接続外部認証器:紛失・盗難時は“第三者による不正利用を防ぐために,直ちに[ k ]する必要がある。”,退職時は(省略)。OS 内蔵の生体認証機能:紛失・盗難時は“認証器の使用時に[ h ]が必要なので,不正利用される可能性は低い。”,退職時は“休眠アカウントを悪用した不正アクセスを防ぐために,ファイル受渡し用 PC にログインするためのアカウントを忘れずに削除する必要がある。”。注 1:E システムの利用者だった従業員が退職した場合のリスクと対策。
表 7 運用上のリスクと対策(抜粋)

Y さんは,各認証器を比較し,次のようにまとめた。

上記から Y さんは認証器として OS 内蔵の生体認証機能を採用することにした。

その後,Y さんは検討を続け,D システムを E システムに移行する案をまとめた。U 社では,その案を承認し,E システムへの移行を開始した。

出題趣旨(IPA)

最近のクロスサイトスクリプティング(XSS)対策は,XSSフィルタからContent-Security-Policy(CSP)に移行しているが,Webサイトを作成する技術者にはその状況があまり知られていないのが現状である。また,Webアプリケーションプログラムの脆弱性対策の負荷を避けるためSaaSの利用が進んでいるが,利用に当たっては事前のリスク分析が重要である。本問では,Webアプリケーションプログラムを題材に,CSPを利用した脆弱性対策の能力を問う。また,SaaSへの移行に当たってのリスク分析の能力とリスク対策の立案能力について問う。

採点講評(問全体・IPA)

問1では,Webアプリケーションプログラムを題材に,Content-Security-Policy(CSP)を利用した脆弱性対策と,SaaSに移行するときのリスク分析について出題した。全体として,正答率は平均的であった。

設問と解答例

設問1(1) 解答欄2つ

図 5 中の a,b に入れる適切な文字列を,それぞれ 4 字で答えよ。

〔a〕解答例

  • &lt;

〔b〕解答例

  • &gt;
解説

本文の根拠

図4 診断用 URL1

description=<script>alert('XSS!')</script>

図3 (3)

図 5 から,description パラメタの値を画面 B の備考に出力する際には,エスケープ処理が正しく行われており,XSS 脆弱性は認められない。

図 4 の診断用 URL1 は,description に <script>alert('XSS!')</script> を入れて送るものである。出力時のエスケープ処理が正しければ,このスクリプトは文字として画面に表示されるだけで,実行されない。HTML では,タグの開始・終了を表す < と > を,文字参照の &lt;(less than)と &gt;(greater than)に置き換える処理がエスケープ処理に当たる。

図 5 では,備考の欄に“ascriptbalert('XSS!')a/scriptb”と出ている。<script> が ascriptb になっているので,a は < の文字参照 &lt;,b は > の文字参照 &gt; である。図 3 の(3)も,この箇所は“エスケープ処理が正しく行われており,XSS 脆弱性は認められない”としている。

字数は 4 字ずつなので,“&lt;”と“&gt;”をそのまま書く。< と > の対応(lt が小さい側の <)を取り違えて a と b を逆にしない点が間違えやすい。

設問1(2) 解答欄1つ

図 6 中及び図 7 中の c に入れる適切な文字列を,解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア onmouseover=alert('XSS!') イ "><script>alert('XSS!')</script> ウ http:<script>alert('XSS!')</script> エ javascript:alert('XSS!')

〔c〕解答例

  • エ
解説

本文の根拠

図3 (4)

診断用 URL2 を入力した時に表示された画面 B 上で,参考 URL のリンクをクリックすると,“XSS!”という内容のダイアログボックスが表示された。

図7 診断用 URL2 の HTTP レスポンス

参考 URL:<a href="c">c</a>

図 7 では,c が <a> タグの href 属性の値とリンクの文字列の両方に,そのまま出力されている。図 3 の(4)では,このリンクをクリックするとダイアログボックスが表示されたので,c は“リンクをクリックしたときにスクリプトが実行される URL”である。

それに当たるのは,javascript スキームの URL である javascript:alert('XSS!')(エ)である。ブラウザは javascript: で始まる URL をたどると,その後ろのスクリプトを実行する。しかも,図 9 の結果から,二重引用符(")は &quot; にエスケープされている。つまり,属性値から抜け出す方法ではなく,URL の中身そのものを使う方法が必要で,エがそれに合う。

アは,イベントハンドラ属性の書き方で,href の値に入れても URL として扱われるだけであり,しかもマウスを重ねる操作(mouseover)がなければ動かない。イは,二重引用符で属性を閉じて <script> を差し込む方法だが,二重引用符がエスケープされるので属性の外に出られない。ウは,http: で始まる文字列なので URL として扱われ,クリックしてもスクリプトとしては実行されない。クリックだけで動き,しかも引用符のエスケープを受けないものを選ぶ点が間違えやすい。

設問2(1) 45字以内

本文中の下線①について,改修方法を 45 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • http://又はhttps://で始まるURLだけを出力するようにする。
解説

本文の根拠

図3 (6)

XSS を防ぐための基本的な処理はしているが,HTML タグの属性値の出力時に必要な処理が行われていない。

図9 診断用 URL3 の HTTP レスポンス

参考 URL:<a href="&quot; onmouseover=alert('XSS!') foo=&quot;">

図 3 の(6)は,原因を“XSS を防ぐための処理を一切していない”か“基本的な処理はしているが,HTML タグの属性値の出力時に必要な処理が行われていない”かのどちらかとしている。図 9 では,診断用 URL3 に含めた二重引用符が &quot; に変わっている。つまり,基本的なエスケープ処理はされており,原因は後者である。

それでも図 7 のように javascript: で始まる値がリンクとして出力され,クリックでスクリプトが実行された。href 属性に入れる URL は,文字をエスケープしただけでは防げず,URL としての正しさを確かめる必要がある。そこで,参考 URL は http:// 又は https:// で始まるものだけをリンクとして出力するようにし,javascript: などそれ以外のスキームは出力しない。

45 字以内なので,“http://又は https://で始まる URL だけを出力する”という中身を残し,文末を“ようにする”で整える。

設問2(2) 40字以内

本文中の下線②について,実行が許可されるのはどのようなスクリプトファイルか。40 字以内で述べよ。

解答例

  • URLと同じオリジンであるスクリプトファイル
解説

本文の根拠

〔D システムの脆弱性対策〕

Content-Security-Policy: script-src 'self';

〔D システムの脆弱性対策〕

指定したスクリプトファイルの実行だけを許可する

Content-Security-Policy は,Web ブラウザに,実行してよいスクリプトの読込み元を伝えるヘッダである。script-src の 'self' は,W3C の Content Security Policy Level 3 で“現在の URL のオリジンに一致する”と定められている。ここでの現在の URL は,D システムのページの URL である。

したがって,実行が許可されるのは,ページの URL と同じオリジン(スキーム,ホスト,ポートが同じ)から読み込むスクリプトファイルだけである。ほかのオリジンのスクリプトファイルは許可されない。

40 字以内なので,“URL と同じオリジンである”という条件と“スクリプトファイル”を残す。“どのような”と問われているので,読込み元の条件を書く。

採点講評(IPA)

設問2(2)及び(3)では,CSPがクロスサイトスクリプティング(XSS)脆弱性を防ぐ仕組みを理解できていないと思われる解答が一部に見られた。従来型のコンテンツにCSPを適用するためにはコンテンツの修正が必要ではあるが,XSSによって被害が発生する可能性は著しく低くなる。CSPの適用は,有効な手段であるので,この仕組みを理解しておいてほしい。

設問2(3) 解答欄2つ

本文中の下線③について,実行が制限されてしまうのはどのようなスクリプトか。30 字以内で述べよ。また,変更後の呼出し方法を 50 字以内で具体的に述べよ。

〔スクリプト〕解答例

  • HTMLファイル中に記載されたスクリプト

〔呼出し方法〕解答例

  • スクリプトを別ファイルとして同一オリジンに保存して,HTMLファイルから呼び出す。
解説

本文の根拠

〔D システムの脆弱性対策〕

実行が制限されてしまうスクリプトの有無を確認し,もしあれば,当該箇所の呼出し方法を変更する

〔D システムの脆弱性対策〕

Content-Security-Policy: script-src 'self';

script-src 'self' だけを指定すると,'unsafe-inline' やナンス,ハッシュを指定していない限り,HTML ファイルの中に直接書かれたスクリプト(インラインのスクリプト)は実行されない(W3C の Content Security Policy Level 3 のインライン動作の判定による)。そのため,D システムの正規の画面で,HTML ファイル中にスクリプトを書いている箇所が動かなくなる。

変更後の呼出し方法は,そのスクリプトを別のファイルとして D システムと同じオリジンに保存し,HTML ファイルから <script src="…"> のように呼び出す形にする。同一オリジンのファイルなので,設問 2(2) のとおり実行が許可される。

“スクリプト”は 30 字以内,“呼出し方法”は 50 字以内なので,前者は“HTMLファイル中に記載されたスクリプト”,後者は“別ファイルとして同一オリジンに保存し,HTML ファイルから呼び出す”の 2 点(別ファイル化と同一オリジン)を残す。

採点講評(IPA)

設問2(2)及び(3)では,CSPがクロスサイトスクリプティング(XSS)脆弱性を防ぐ仕組みを理解できていないと思われる解答が一部に見られた。従来型のコンテンツにCSPを適用するためにはコンテンツの修正が必要ではあるが,XSSによって被害が発生する可能性は著しく低くなる。CSPの適用は,有効な手段であるので,この仕組みを理解しておいてほしい。

設問3(1) 解答欄2つ

本文中の d,e に入れる適切な字句を,解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア 個人情報保護 イ システム監査 ウ 情報セキュリティ管理策 エ 審査及び認証

〔d〕解答例

  • ウ

〔e〕解答例

  • ア
解説

本文の根拠

〔項目 1 の検討〕 T さんの発言

クラウドサービスのための d の実践の規範である ISO/IEC 27017 に基づく認証

〔項目 1 の検討〕 T さんの発言

パブリッククラウドにおける e の実践の規範である ISO/IEC 27018 に基づく認証

ISO/IEC 27017 は,クラウドサービスのための情報セキュリティ管理策の実践の規範である。したがって d は“情報セキュリティ管理策”(ウ)。ISO/IEC 27018 は,パブリッククラウドにおける個人情報保護(PII の保護)の実践の規範である。したがって e は“個人情報保護”(ア)。本文でも,27018 は“D システムとは直接関係がない”とされており,D システムが個人情報を扱わないことと合う。

イの“システム監査”と,エの“審査及び認証”は,どちらも規範の対象を表す語ではない。“審査及び認証”は,本文の“認証”という手続そのものを指す語であり,規範が実践を求める内容にはならない。

番号と内容(27017=クラウドサービスの情報セキュリティ管理策,27018=パブリッククラウドの個人情報保護)を対にして覚えておく点が間違えやすい。

設問3(2) 40字以内

本文中の下線④について,取り得る措置を 40 字以内で述べよ。

解答例

  • ファイルをU社が管理する鍵で暗号化してからアップロードする。
解説

本文の根拠

表2 項目 1 の検討結果

ファイルを G サービス上のストレージに保存するときの暗号化:G サービスの機能として,自動的に暗号化され,暗号鍵は G 社が管理するので可。

〔項目 1 の検討〕 T さんの発言

F 国内に保存されているデータを,F 国政府に強制的に提出させる国内法が存在する

G サービスは,ファイルを自動的に暗号化するが,暗号鍵は G 社が管理している。F 国政府がデータの提出を強制したとき,G 社は鍵をもっているので,復号した内容を渡せてしまう。F 国の法律に従った提出から,ファイルの内容を守るには,G 社が鍵をもたない状態にしなければならない。

そこで,U 社と協力会社が,ファイルを G サービスにアップロードする前に,U 社が管理する鍵で暗号化しておく。G 社には暗号化されたファイルしか渡らず,鍵は U 社側にあるので,提出されても内容は読まれない。

40 字以内なので,“U 社が管理する鍵で”“暗号化してから”“アップロードする”の 3 点を,G サービス上の保存とは別に,U 社の側で行うと分かるように書く。

設問4(1) 解答欄1つ

表 4 中の f に入れる適切な内容を 20 字以内で答えよ。

〔f〕解答例

  • 同一利用者IDでのログイン失敗
解説

本文の根拠

表4 項番 1

利用者 ID を固定して,パスワードを総当たりする。

表3 提供しているログ

ログには,操作対象,実行された操作とともに,日付,時刻,実行した利用者 ID,アクセス元 IP アドレス,及び結果(成功又は失敗)が記録される。

項番 1 の不正アクセスは,利用者 ID を固定して,パスワードを総当たりするものである。このとき,ログには,同じ利用者 ID に対するログインの失敗が短い時間に多数記録される。ログには利用者 ID,アクセス元 IP アドレス,成功又は失敗の結果が記録されるので,利用者 ID ごとのログインの失敗回数を数えれば検知できる。

したがって f は“同一利用者IDでのログイン失敗”。項番 2 の検知方法(同一 IP アドレスからの異なる利用者 ID でのログイン失敗の回数)と対にして,数える対象が利用者 ID と IP アドレスのどちらなのかを読み分ける。

20 字以内なので,“同一利用者 ID での”と“ログイン失敗”を残す。“回数”は空欄の後ろにすでに書かれている。

設問4(2) 40字以内

本文中の下線⑤について,ほかの場合とはどのような場合か。40 字以内で述べよ。

解答例

  • アクセス元IPアドレスを変えながら,不正アクセスを続けた場合
解説

本文の根拠

表4 項番 2

一定時間当たりの同一 IP アドレスからの異なる利用者 ID によるログイン失敗の回数がしきい値を超えたら,不正アクセスとして検知する。

〔項目 2 の検討〕

いずれの不正アクセスもゆっくりと実行された場合には見逃すことがある

項番 2 の検知方法は,同一の IP アドレスからの,異なる利用者 ID によるログイン失敗の回数がしきい値を超えたかどうかで判断する。つまり,ログインを試す側の IP アドレスが同じであることを前提にしている。

ゆっくり実行する場合(時間当たりの回数が減る)のほかに,攻撃者がアクセス元の IP アドレスを次々に変えながら試すと,1 つの IP アドレスあたりの失敗回数がしきい値に届かず,見逃してしまう。

40 字以内なので,“アクセス元 IP アドレスを変えながら”と“不正アクセスを続けた場合”の 2 点を残す。“ゆっくり”とは別の場合なので,時間の長短には触れない。

設問5(1) 解答欄1つ

本文中の g に入れる適切な内容を,20 字以内で具体的に答えよ。

〔g〕解答例

  • メッセージをKサービスとの間で中継
解説

本文の根拠

図10 注記

オリジン b は Web ブラウザがアクセスしている Web サイトのオリジン

図10 (5)

認証サーバは“オリジン b が K サービスのものであることの確認”と“(5)の正当性確認,署名 M の検証”を行う。

〔IDaaS との連携による多要素認証の実現方式の検討〕

何らかの方法で被害者をそのサーバに誘導し,認証情報を不正に入手して悪用するという攻撃

オリジン b は,Web ブラウザが実際にアクセスしている Web サイトのオリジンである。図 10 の(3)で H(オリジン b || 乱数 c')がスマートフォンに渡され,署名 M はこれに対するディジタル署名として,(5)で認証サーバに届く。認証サーバは,オリジン b が K サービスのものかを確認し,署名 M を検証する。

攻撃者が用意した特別なサーバに被害者を誘導して認証させようとしても,被害者のブラウザがアクセスしているのは攻撃者のサーバなので,オリジン b は K サービスのものにならない。攻撃者が K サービスとの間でメッセージを中継し,被害者の認証をそのまま K サービスに通そうとしても,認証サーバが“オリジン b が K サービスのものであること”の確認で拒否できる。したがって g は“メッセージをKサービスとの間で中継”,すなわち,被害者と K サービスの間に入って認証メッセージを中継する偽サーバである。

20 字以内なので,“メッセージを”“K サービスとの間で”“中継”の 3 点を残す。“盗む”ではなく,“中継して認証を通す”という目的を書く。

設問5(2) 解答欄4つ

表 7 中の h〜k に入れる,適切な内容を,それぞれ 10 字以内で答えよ。

〔h〕解答例

  • 生体認証

〔i〕解答例

  • Kサービス

〔j〕解答例

  • アカウントを削除

〔k〕解答例

  • アカウントを無効に
解説

本文の根拠

表5 FIDO 認証器の仕組み

USB 接続外部認証器:USB ポート経由,なし,できない,限定されない。

表5 FIDO 認証器の仕組み

スマートフォン:Bluetooth 経由,スマートフォンに組み込まれた生体認証装置による生体認証,できない,限定されない。

表7 運用上のリスクと対策

退職者による不正なアクセスを防ぐために,個人所有のスマートフォンを利用していた場合も想定して,退職時又は退職後直ちに,iでは,jする必要がある。

h は,スマートフォンと OS 内蔵の生体認証機能に共通する,認証器の使用時の利用者確認である。表 5 では,どちらも“生体認証”が利用者確認(User Verification)になっているので,紛失・盗難に遭っても,生体認証が必要で,第三者による不正利用の可能性は低い。

i・j は,個人所有のスマートフォンが認証器になっている場合の退職時の対策である。退職者の手元にスマートフォンが残るので,K サービス(i)では,その従業員のアカウントを削除(j)する。そうすれば,スマートフォンに登録された認証器では認証できなくなる。k は,USB 接続外部認証器の紛失・盗難時の対策である。表 5 の利用者確認が“なし”なので,拾った人がそのまま使えてしまう。第三者の不正利用を防ぐために,直ちに該当のアカウントを無効にする。

各 10 字以内なので,“生体認証”“Kサービス”“アカウントを削除”“アカウントを無効に”のように,語句だけを書く。j(削除)と k(無効に)は,退職と紛失という場面の違いに合わせて使い分けられている点に注意する。

採点講評(IPA)

設問5(2)は,全体的に正答率が高かったが,FIDO認証器の利用状況を想定できていないと思われる解答が一部に見られた。リスク分析は,対象となる情報システムの利用状況に基づいて行うものであり,あらかじめよく整理しておくことを心掛けてほしい。

設問5(3) 50字以内

本文中の下線⑥のように考えた理由は何か。50 字以内で述べよ。

解答例

  • Gサービスへのアクセスを,ファイル受渡し用PCからのアクセスだけに限定できるから
解説

本文の根拠

〔セキュリティインシデントの発生〕

また,D システムには,ファイル受渡し用 PC からだけアクセスすることを求めている。

表2 項目 1 の検討結果

協力会社以外からのアクセス禁止:G サービスで,送信元 IP アドレスの制限を行うことができないので否。

表5 FIDO 認証器の仕組み

OS 内蔵の生体認証機能:OS 内部処理,OS に内蔵された生体認証機能による生体認証,OS の利用者 ID 間で可能,限定される。

D システムの利用規約は,D システムへのアクセスをファイル受渡し用 PC からだけにすることを求めている。G サービスは送信元 IP アドレスの制限ができない(表 2)ので,アクセス元の PC を絞るには,別の方法が要る。

表 5 の“組合せ”は,K サービスにアクセスする PC と認証器の組合せのことで,スマートフォンは“限定されない”が,OS 内蔵の生体認証機能は“限定される”。OS 内蔵の生体認証機能では,ファイル受渡し用 PC が認証器を兼ねるので,認証に使えるのはその PC だけになる。この技術的な仕組みで,G サービスへのアクセスをファイル受渡し用 PC からのアクセスだけに限定できる。

50 字以内なので,“G サービスへのアクセスを”“ファイル受渡し用 PC からのアクセスだけに”“限定できる”の 3 点を残し,PC と認証器が一体になる点は,“限定される”の理由として解説の側で補う。

出典:令和3年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 マルウェア感染への対処

マルウェア感染への対処に関する次の記述を読んで,設問 1〜4 に答えよ。

A 社は,従業員 8,000 名の化学素材会社であり,首都圏に本社,地方には六つの支社がある。素材の研究開発に関して古くから産学官連携をリードしてきた。A 社は,VPN サーバ及び基幹システムを,ハウジング契約を結んでいるデータセンタ(以下,DC という)内に設置している。A 社の電子メール(以下,メールという)は以前,基幹システム内に設置していたメールサーバを利用していたが,現在はクラウド上の Web メールサービス(以下,B サービスという)を利用している。B サービスへの移行に伴う通信量の増加によって,DC にある統合脅威管理(以下,UTM という)の処理能力は,ひっ迫している。従業員は,会社から貸与された PC(以下,業務 PC という)を業務に必要な Web アクセスやメール送受信などに利用する。

本社では,働き方の多様性を確保するためにテレワークを推進してきた。テレワークでは,従業員が業務 PC を自宅に持ち帰り,自宅のネットワークから VPN サーバを介して,基幹システムや利用者 LAN にあるリソースにアクセスできる。テレワークでは,B サービスなどのインターネットへの接続においても,同様に VPN サーバを介する。

図 1 に A 社のネットワーク構成を,表 1 にその構成要素の説明を示す。

インターネットは DC 内の UTM に接続される。DC 内では UTM がルータと接続され,UTM には DMZ(破線)内の VPN サーバも接続される。ルータには基幹システムが接続される。DC 内のルータは A 社内の本社のルータと接続され,本社のルータは利用者 LAN(破線)に接続される。DC 内のルータは各支社(本社と同様の構成)にも接続される。インターネットには B サービスと業務 PC(複数)も接続されている。
図 1 A 社のネットワーク構成(概要)
構成要素と説明の 2 列の表。基幹システム:共有ファイルサーバ,人事システム,経理システムなどから構成されている。VPN サーバ:従業員がテレワークに利用する。業務 PC の VPN クライアントソフトウェアを起動すると,VPN サーバとの間に IPsec による通信路が確立する。VPN サーバへの接続の際に 2 要素認証を行う。UTM:インターネットとの接続境界に設置され,グローバル IP アドレスをもつ。次の機能を備えており,そのうちファイアウォール(以下,FW という)機能と IDS 機能を有効にしている。FW 機能:ステートフルパケットインスペクション型であり,送信元 IP アドレス,送信元ポート,宛先 IP アドレス,宛先ポートを指定して通信をフィルタリングできる。通信のログを取得する。IDS 機能:全てのインバウンド通信をチェックし,不審な通信を検知した場合は,システム管理者に通知する。DNS シンクホール機能:DNS クエリをチェックし,危険リストに登録されている FQDN の場合は,正規の名前解決を行わずに A 社があらかじめ用意した IP アドレスを応答する。危険リストは,日次で自動更新される。利用者 LAN:従業員の業務 PC やネットワークプリンタといった OA 機器が設置されている。部ごとにセグメントを分けているが,本社と支社間も含めてセグメント間でアクセス制限はしていない。B サービス:従業員ごとに払い出されたメールアドレス及びパスワードを入力すると利用できる。アクセス制限機能によって,アクセス元 IP アドレスが UTM のグローバル IP アドレスの場合だけアクセスが許可される。
表 1 構成要素の説明(概要)

〔社外との情報共有〕

A 社の研究部は,素材研究とその実用化に関する情報を共有する“化学研究開発コンソーシアム”という団体(以下,化学コンという)を運営している。化学コンには,研究機関や大学,企業など 40 組織が会員として加盟している。化学コンでは,月に 1 回,対面形式の連絡会議が開催され,会員の上位役職者が参加している。連絡会議では,研究開発における機密性の高い議事も扱われる。開催案内などの機密性のあまり高くない情報の共有はメールで行われるが,重要な情報は情報連携システムと呼ばれる SSH を用いたシステムで共有されている。

会員は,情報連携システム用の連携端末を設置する必要がある。化学コンは,会員に図 2 に示す連携端末設置ガイドライン(以下,ガイドラインという)を提示し,遵守を求めている。

1. 連携端末を設置し,別途定める要件を満たす機器,ソフトウェアを導入し,別途定める運用を行うこと。2. 連携端末からインターネットにアクセスするときのグローバル IP アドレスを化学コンに伝えること。3. 共有した秘密情報は,別途定める秘密情報管理規程に従って管理すること。4. 連携端末に関して,セキュリティインシデント(以下,インシデントという)が発生した場合は,化学コンと協力して解決すること。
図 2 ガイドライン(抜粋)

情報連携システムの構成を図 3 に,情報連携の手順と会員間で共有するファイルを格納する連携サーバの運用を図 4 に示す。

左に会員(複数),右に A 社,中央にインターネットと DC がある構成図。会員の内部ネットワーク(破線)は会員 FW を介してインターネットに接続され,会員の内部ネットワークには連携端末も接続されている。会員の連携端末は情報連携システムの一部。インターネットは DC に接続され,DC は A 社の本社のルータに接続される。本社のルータは L3SW に接続され,L3SW には利用者 LAN(破線)内の研究部セグメント(破線)の業務 PC(複数)が接続される。L3SW は連携 FW に接続され,連携 FW は連携サーバに接続される。連携 FW はインターネットとも直接接続される。連携 FW と連携サーバと,会員側の連携端末が情報連携システム(網掛け)を構成する。凡例:会員 FW は会員の基幹 FW,L3SW はレイヤ 3 スイッチ,連携 FW は連携サーバ用の FW。
図 3 情報連携システムの構成
[情報連携の手順] ・A 社の担当者は,共有したいファイルを連携サーバの共有フォルダに置く。連携サーバの共有フォルダは研究部セグメントの業務 PC から認証なしでアクセス可能になっている。・連携サーバ及び連携端末には,SSH アプリケーションプログラムが導入されている。3 時間に一度,自動的に連携端末から連携サーバに SSH 通信を行い,認証に成功すると連携サーバの共有フォルダにあるファイルを,連携端末の所定フォルダにコピーする。・会員の担当者は,随時,所定フォルダにあるファイルを連携端末上で閲覧する。[連携サーバの運用] ・連携サーバは SSH による連携端末へのファイルのコピーが行われるとログファイルにログを出力する。ログファイルは日付を示す 8 桁の数字のファイル名で毎日生成され,60 日間保存される。61 日以前に生成されたログファイルは,毎日 0 時に起動する連携サーバの日次バッチ処理で自動削除される。・ログファイルに出力されるログ項目は,SSH 接続ごとに,“接続日時,会員名,コピーファイル数,コピー成功/失敗ステータス”である。
図 4 情報連携の手順と連携サーバの運用

連携サーバは,研究部が管理する連携 FW を経由してインターネットに接続されている。連携 FW では,会員から伝えられたグローバル IP アドレス及び研究部セグメントから連携サーバへのアクセスだけを許可している。

〔テレワークの検討〕

2 月 2 日,首都圏を中心とする感染症の急激な流行に伴い,A 社は本社に勤務する従業員に対して,2 月 16 日から原則,テレワークとする方針を決定した。また,より多くの従業員がテレワークに移行できるよう,テレワーク WG を立ち上げた。テレワーク WG には,情報システム部など関係する部の担当者が参加し,インフラ増強やルール整備を検討する。A 社では,公的機関が発行したテレワークセキュリティガイドラインを参考に,図 5 に示すテレワークセキュリティ規程を作成し,本社に適用した。

役割を次のとおり定める。複数の役割を兼務する場合もある。経営者:組織のあるべき姿を検討し,テレワークセキュリティ全般を考え,必要なリソースを確保する。システム管理者:情報システムへの不正アクセス,マルウェア感染などのインシデント発生時の対処のルールを定める。テレワーク勤務者:定められたルールを遵守し,データを安全に扱う。[詳細] 1. [ a ]は,テレワークの推進に必要な人材・資源を確保するために,必要な予算を割り当てる。2. [ b ]は,情報セキュリティポリシに従い,セキュリティ維持に必要な技術的対策を講じるとともに,定期的に実施状況を点検する。3. [ c ]は,社内システムに,強度の低いパスワードが用いられないように制限を掛ける。4. [ d ]は,パスワードの使い回しを避け,12 桁以上の長さで他人に推測されにくいものを設定する。5. システム管理者は,暗号化された通信路をテレワーク勤務者に提供する。その際,電子政府における調達の際にも参照される[ e ]暗号リストを参照し,暗号化には危殆化していない暗号アルゴリズムを採用するものとする。([ a ]〜[ e ]は枠で囲まれた空欄。“危殆”の上に“たい”のふりがなが付いている。)
図 5 テレワークセキュリティ規程(抜粋)

〔ネットワーク構成の見直しの検討〕

テレワーク WG では,支社でもテレワークの準備が必要であるという意見が出た。しかし,支社でのテレワークに本社と同様の方式を採用すると,UTM の処理能力を超過することが予想された。そこで,テレワーク WG は,新たなネットワーク(以下,新 NW という)の導入を検討することにした。図 6 に新 NW の内容,図 7 に新 NW の構成を示す。

・各支社に,新たにインターネット接続回線を敷設し,拠点 FW 及び拠点 DMZ を新設する。拠点 DMZ 内に拠点 VPN サーバを新設する。・テレワーク時,支社のテレワーク勤務者には,所属する支社の拠点 VPN サーバに接続させ,基幹システムや利用者 LAN にあるリソースにアクセスさせる。拠点 VPN サーバ接続時には,本社と同様に 2 要素認証を行う。・テレワーク時のインターネットアクセスは,一度,拠点 VPN サーバにアクセスさせ,DC を経由させる。ただし,(下線①)B サービスへのアクセスだけ,拠点 VPN サーバから,DC を経由させずに支社に敷設したインターネット接続回線を経由させる。(下線①は“B サービスへのアクセスだけ,拠点 VPN サーバから,DC を経由させずに支社に敷設したインターネット接続回線を経由させる。”の部分)
図 6 新 NW の内容
DC と A 社(本社,支社)とインターネットの構成図。DC はインターネットと接続され,A 社の本社及び各支社とも接続される。支社の中には,ルータ,利用者 LAN(破線),拠点 FW,拠点 DMZ(破線)内の拠点 VPN サーバがある。ルータは利用者 LAN と拠点 FW に接続され,拠点 FW は拠点 DMZ 内の拠点 VPN サーバと接続され,インターネットにも接続されている。インターネットには B サービスと業務 PC(複数)も接続されている。
図 7 新 NW の構成

テレワーク WG は,新 NW の導入に先立ち,ある支社で新 NW をテストした。②その支社のテレワーク勤務者が,インターネットへはアクセスできたが,B サービスに接続できないというトラブルが発生した。B サービスの設定を変更することによってトラブルは解消でき,無事,テストが完了した。A 社は新 NW の導入を正式に決定し,6 月 15 日,各支社でもテレワークを開始した。

〔インシデントの発生〕

9 月 11 日,情報システム部のシステム管理者である C さんは,差出人が総務部の D さんと表記されたメールを受信した。メールの文面に違和感を覚えた C さんが,念のため D さんに電話で確認したところ,“そのようなメールは送信していない”という回答だった。C さんは,すぐさま A 社の CSIRT に報告した。報告を受けた CSIRT 所属の E さんは,調査を行い,D さんの証言や B サービスの利用履歴などから D さんの B サービスのアカウントが第三者に不正利用されている可能性が高いと判断した。E さんは,情報システム部の C さんに,D さんのアカウントの無効化措置を依頼した。その後,契約中のセキュリティベンダ X 社に所属する情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の P 氏の支援を受け,9 月 16 日に図 8 に示す初期調査結果をまとめた。

[タイムライン] ・4 月 1 日:情報システム部が新 NW のテストでのトラブル解消のために,B サービスの設定を変更した。・7 月 9 日:攻撃者が,何らかの方法で入手した D さんのアカウントを使って,インターネットから B サービスに不正ログインした。・7 月 14 日:攻撃者は,D さんのアカウントを使って研究部の F さん宛にマルウェア α を添付したメールを送信した。F さんがそのメールの添付ファイルを開いた結果,F さんの業務 PC がマルウェア α に感染した。同日中に,攻撃者の遠隔操作によって同業務 PC がマルウェア β にも感染した。・7 月 28 日から 9 月 11 日:攻撃者は D さんのアカウントを使って,C さんなど数名の従業員宛にマルウェア β を添付したメールを断続的に送信した。・9 月 11 日:C さんから報告を受け調査を開始した。[攻撃者の活動の特徴] ・攻撃者は,メールの送信間隔を空けたり,マルウェアの拡散速度を遅くしたりしていた。感染した業務 PC から A 社内の情報を不正に取得していた。・攻撃者は,メールの送信を D さんに知られないよう,マルウェアを添付したメールを送信済みボックスから全て削除していた。・一部の業務 PC では,全てのイベントログが消去された痕跡があった。全てのイベントログが消去された後,イベントログにイベントログの消去を示すログが記録されていた。・攻撃者が D さんのアカウントを使って送信したメールは,タイムラインに示した A 社内宛のメールだけであり,社外宛のメールはなかった。
図 8 初期調査結果(概要)

同日,X 社からマルウェアの解析結果が報告された。マルウェア α 及びマルウェア β のどちらにも A 社を標的にしたと思われる識別文字列,A 社固有のファイルパス,並びに C&C サーバの IP アドレス及び FQDN のリストが埋め込まれていた。また,どちらも A 社が導入しているマルウェア対策ソフトでは検出されなかった。報告されたマルウェアの特徴を表 2 に示す。

名称と特徴の 2 列の表。マルウェア α:PC 又はサーバが感染すると,C&C サーバと通信を確立し,攻撃者が遠隔操作できる状態になる。このとき,イベントログにマルウェア α の実行を示すログ(以下,α ログという)が記録される。マルウェア β:次の(1)〜(3)の機能をもつマルウェアである。PC 又はサーバが感染すると,いずれかの機能を,あらかじめ定められた確率でランダムに実行する。この実行は,1 週間の間隔を置いて繰り返され,遠隔操作機能の実行に成功すると,繰り返しの実行を停止する。(1) 待機機能:何もしない。(2) 横展開機能:感染した PC 又はサーバから到達可能なネットワーク内の機器をスキャンし,OS の脆弱性がある機器を発見すると,自身に感染させる。また,アクセス可能な共有フォルダを発見すると,細工された文書ファイルを生成し,その共有フォルダに置く。細工された文書ファイルを開いた機器はマルウェア β に感染する。(3) 遠隔操作機能:当該 PC 又はサーバ内に保存されているクレデンシャル情報を収集する。C&C サーバと通信を確立し,収集した情報を C&C サーバに送信する。このとき,イベントログにマルウェア β の実行を示すログ(以下,β ログという)が記録される。以後,当該 PC 又はサーバの起動中は C&C サーバから攻撃者が遠隔操作できる状態を維持する。
表 2 マルウェアの特徴

A 社は重大なインシデントが発生したと判断し,社内規程に従い緊急対策本部(以下,対策本部という)を設置した。

〔インシデントへの対策の検討〕

このインシデントでは,D さんが B サービスに脆弱なパスワードを設定していたことに加えて,新 NW の導入に際しての B サービスの設定変更も攻撃が成功してしまった要因であることが分かった。

対策本部長(以下,本部長という)は,初期調査結果及びマルウェアの特徴をメンバと共有し,優先すべき対策を表 3 のように整理した。

対策名,対策項目,暫定対策,恒久対策の 4 列の表。対策 1:C&C サーバへの通信の遮断,暫定対策(省略),恒久対策(省略)。対策 2:マルウェア α 及びマルウェア β の駆除,暫定対策(省略),恒久対策(省略)。
表 3 優先すべき対策(抜粋)

次は,対策本部会議での,本部長,対策本部メンバの G さん及び P 氏の質疑である。

本部長は,確認ツールとは別に,より高い精度でマルウェア α 及びマルウェア β を検出し,駆除できるツール(以下,駆除ツールという)の開発を X 社に委託することにした。P 氏は,開発する駆除ツールは,ディジタルフォレンジックスの経験を有する技術者だけが扱うことができるツールになることを説明した。

P 氏は,対策本部会議の恒久対策に関する質疑の際に,将来的には連携サーバを DC の DMZ に移設し,連携 FW を廃止する検討をした方がよいとの意見を述べた。その理由として,⑥インターネットから連携サーバが攻撃を受けたときに,より迅速な対応が可能であることを挙げた。

その後の対策本部会議の質疑の中で,連携サーバ自体が感染していなくても連携サーバ経由で,会員にもマルウェア β の感染を拡大させている可能性が指摘された。本部長は,E さんに,早急に連携サーバ経由の感染状況を確認し,感染拡大を防止するよう指示した。

〔連携サーバ経由の感染状況の確認と感染拡大防止〕

E さんは,まず,連携サーバをネットワークから切り離し,ディスクイメージを保全した。また,化学コンの運営責任者を通して,化学コンの全会員に連携端末を一時的にネットワークから切り離してもらうように連絡し,全ての会員で対応が完了したことを即日確認した。9 月 17 日,E さんは連携サーバの担当者にヒアリングを実施した。ヒアリングの際に,連携サーバに存在するログファイルを担当者に確認してもらったところ,最も古いものは 7 月 19 日に生成されたものであることが分かった。E さんは,マルウェア β の感染を拡大させている可能性があることから,会員でも何らかの対処が必要であり,会員によっては PC やサーバで,駆除ツールを実行しなければいけないと考えた。また,駆除ツールが扱える技術者を多数確保することは難しいので,全ての会員に対して一斉に対処をすることはできないと判断し,次の対処方針を定めた。

〔感染調査手順書のレビュー〕

E さんは感染調査手順書案を作成し,P 氏にレビューを依頼した。表 4 は感染調査手順書案に記載した感染調査項目,図 9 は P 氏からのレビュー回答である。

調査名,調査内容,調査結果,判定の 4 列の表。調査 1:調査内容は“連携端末の対象期間(注 1)中のイベントログに,α ログ,β ログ又は[ f ]が存在するかどうか。”。調査結果が“存在する”なら判定はグループ A,“存在しない”ならグループ B。注 1:対象期間:7 月 19 日〜調査日当日。
表 4 感染調査項目
感染調査項目に関して次の見直しを行う必要がある。指摘 1:対象期間の開始日は,本来は,保存されている最も古いイベントログの日付にすべきだが,せめて連携サーバに細工されたファイルが置かれていた可能性のある最も早い日付である[ g ]にする必要がある。指摘 2:マルウェア β の特徴を踏まえると,会員内での感染の広がりも考慮する必要がある。本来は,会員の全ての PC を確認してもらうべきだが,せめて会員 FW のログの確認は追加で依頼する必要がある。
図 9 P 氏からのレビュー回答

E さんは P 氏の指摘 2 に対する改善案として,表 5 に示す感染調査項目を追加し,調査 2 の調査結果が“記録あり”である場合もグループ A と判定することにした。

調査名,調査内容,調査結果,判定の 4 列の表。調査 2:調査内容は“対象期間中の会員 FW のログに,次に該当する送信元から宛先への通信記録が存在するかどうか。送信元:任意の IP アドレス,宛先:[ h ]”。調査結果が“記録あり”なら判定はグループ A,“記録なし(注 1)”ならグループ B。注 1:会員 FW でログが取得されていない場合や,一部ログが欠けている期間があっても,ログが存在する範囲で通信記録がない場合は記録なしとする。
表 5 追加した感染調査項目

E さんは,再び P 氏のレビューを受けた。次は,再レビュー時の P 氏と E さんの会話である。

E さんは P 氏の指摘や助言に従い感染調査手順書を修正し,会員に送付した。七つの会員がグループ A と判定されたものの,どの会員にも深刻な被害は確認されなかった。A 社はその後もインシデント対応を進め,社内の詳しい調査を経て,攻撃者の活動は初期調査結果どおりだったことも確認した。対策 1 と対策 2 の暫定対策と恒久対策を完了した A 社は,対策本部を解散し,再発防止に向けた新たな取組の検討に着手した。

出題趣旨(IPA)

企業のネットワーク構成の在り方は,クラウドへの移行やテレワーク勤務といった事象を背景に,急激な変化が生じている。企業は,このような変化によって,新たなセキュリティ上の問題を考慮しなければならなくなっている。本問では,テレワークにともなって発生したセキュリティインシデントを題材に,自社だけでなく,ガバナンスをきかせにくい他社を含む対応が求められる状況下での,セキュリティ対処能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問2では,テレワークに伴って発生したセキュリティインシデントを題材に,自社だけでなく,ガバナンスを効かせにくい他社を含む対応が求められる状況下におけるセキュリティ対処能力について出題した。全体として,正答率は平均的であった。

設問と解答例

設問1(1) 解答欄4つ

図 5 中の a〜d に入れる適切な役割を解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア 経営者 イ システム管理者 ウ テレワーク勤務者

〔a〕解答例

  • ア

〔b〕解答例

  • イ

〔c〕解答例

  • イ

〔d〕解答例

  • ウ
解説

本文の根拠

図5 テレワークセキュリティ規程

経営者:組織のあるべき姿を検討し,テレワークセキュリティ全般を考え,必要なリソースを確保する。

図5 テレワークセキュリティ規程

システム管理者:情報システムへの不正アクセス,マルウェア感染などのインシデント発生時の対処のルールを定める。

図5 テレワークセキュリティ規程

テレワーク勤務者:定められたルールを遵守し,データを安全に扱う。

図 5 は,冒頭で経営者,システム管理者,テレワーク勤務者の 3 つの役割を定め,[詳細] の 1〜4 で,各項目をどの役割が行うかを空欄にしている。役割の説明に照らして割り当てる。

1 は,人材・資源を確保するための予算の割当てなので,必要なリソースを確保する経営者(a=ア)。2 は,情報セキュリティポリシに従った技術的対策と実施状況の点検なので,システム管理者(b=イ)。3 は,社内システムに強度の低いパスワードが用いられないよう,システム側に制限を掛けるので,システム管理者(c=イ)。4 は,パスワードの使い回しを避け,12 桁以上の推測されにくいパスワードを設定するので,定められたルールを守り,データを安全に扱うテレワーク勤務者(d=ウ)。

3 と 4 は,どちらもパスワードの話だが,“制限を掛ける”のはシステムを管理する側,“設定する”のは利用する側であるという違いで分ける点が間違えやすい。同じ役割(イ)が b と c の 2 か所に入ってもよい。

設問1(2) 解答欄1つ

図 5 中の e に入れる適切な字句を英字 8 字で答えよ。

〔e〕解答例

  • CRYPTREC
解説

本文の根拠

図5 [詳細] 5

その際,電子政府における調達の際にも参照されるe暗号リストを参照し,暗号化には危殆化していない暗号アルゴリズムを採用するものとする。

“電子政府における調達の際にも参照される暗号リスト”は,“CRYPTREC 暗号リスト”(電子政府推奨暗号リストなどを含む)である。政府機関などが暗号を選ぶときに参照され,危殆化していない(安全性が損なわれていない)暗号アルゴリズムを選ぶ根拠になる。

英字 8 字という指定なので,“CRYPTREC”を大文字で書く。“暗号リスト”は空欄の後ろに既に書かれているので含めない。

設問2(1)

図 6 中の下線①のネットワーク構成を示す用語を,解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア OpenFlow イ Software-Defined Networking ウ ゼロトラストネットワーク エ ローカルブレイクアウト

解答例

  • エ
解説

本文の根拠

図6 新 NW の内容

ただし,(下線①)B サービスへのアクセスだけ,拠点 VPN サーバから,DC を経由させずに支社に敷設したインターネット接続回線を経由させる。

下線①は,B サービスへのアクセスだけ,DC(UTM)を通さず,支社に敷設したインターネット接続回線から直接インターネットに出す構成である。本社が UTM の処理能力を超過するのを避けるための構成で,インターネット向けの通信を,中央の拠点を通さず,各拠点から直接インターネットへ出す方式を,ローカルブレイクアウト(エ)という。

アの OpenFlow は,ネットワーク機器の転送を外部から制御するためのプロトコルである。イの Software-Defined Networking は,ネットワークの構成や制御をソフトウェアで行う考え方で,ここで示された“通信を拠点から直接出す”という構成そのものを指す語ではない。ウのゼロトラストネットワークは,ネットワークの内外を問わず信頼せず,通信のたびに検証する考え方である。

“通信の経路をどこから出すか”を指す語を選ぶ点が間違えやすい。

設問2(2) 35字以内

本文中の下線②について,トラブルを引き起こした原因を,35 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • Bサービスのアクセス制限機能によって通信が拒否されたから
解説

本文の根拠

表1 構成要素の説明

アクセス制限機能によって,アクセス元 IP アドレスが UTM のグローバル IP アドレスの場合だけアクセスが許可される。

図8 タイムライン

4 月 1 日:情報システム部が新 NW のテストでのトラブル解消のために,B サービスの設定を変更した。

B サービスは,アクセス制限機能によって,アクセス元 IP アドレスが UTM のグローバル IP アドレスの場合だけアクセスを許可している。従来は,テレワークの通信も VPN サーバを経由して UTM から B サービスに出ていたので,アクセス元は UTM のグローバル IP アドレスだった。

新 NW のテストでは,B サービスへのアクセスだけを,DC を経由せず支社に敷設したインターネット接続回線から出した。アクセス元 IP アドレスが支社の回線のものになり,B サービスのアクセス制限機能に許可されず,通信が拒否された。インターネットにはアクセスできたのに B サービスだけ接続できなかったことと合う。図 8 の 4 月 1 日に,この拒否を解消するため B サービスの設定を変更したと読める。

35 字以内なので,“B サービスのアクセス制限機能によって”“通信が拒否された”の 2 点を残す。

設問3(1) 40字以内

本文中の下線③について,どのような設定変更か。40 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • マルウェア内にFQDNで指定したC&CサーバのIPアドレスの変更
解説

本文の根拠

〔インシデントへの対策の検討〕 G さんの発言

その IP アドレス,及びその FQDN の DNS の正引き結果の IP アドレスの二つを併せた IP アドレスのリスト(以下,IP リストという)を手作業で作成しておき,IP リストに登録された IP アドレスへの通信を UTM で拒否します。

IP リストは,マルウェアに埋め込まれていた C&C サーバの IP アドレスと,FQDN の DNS の正引き結果の IP アドレスを,作成した時点でまとめたものである。FQDN の正引き結果は DNS の設定で決まり,攻撃者が管理するものなので,いつでも変えられる。

したがって,攻撃者が行う設定変更とは,マルウェア内に FQDN で指定した C&C サーバの IP アドレスを,DNS の設定を変えて別の IP アドレスに変更することである。変更後の IP アドレスは IP リストに載っていないので,UTM での拒否の対象にならず,マルウェアは C&C サーバと通信できてしまう。

40 字以内なので,“FQDN で指定した C&C サーバの IP アドレスの変更”と,“マルウェア内”の指定を残す。IP リストが作成時点のもので,あとから変わる点を押さえる。

設問3(2) 40字以内

本文中の下線④について,DNS シンクホール機能を有効化した場合でも,UTM での通信拒否が必要な理由を,マルウェアの解析結果を踏まえて 40 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • C&Cサーバとの通信時にDNSへの問合せを実行しない場合があるから
解説

本文の根拠

〔インシデントの発生〕

マルウェア α 及びマルウェア β のどちらにも A 社を標的にしたと思われる識別文字列,A 社固有のファイルパス,並びに C&C サーバの IP アドレス及び FQDN のリストが埋め込まれていた。

表1 DNS シンクホール機能

DNS クエリをチェックし,危険リストに登録されている FQDN の場合は,正規の名前解決を行わずに A 社があらかじめ用意した IP アドレスを応答する。

DNS シンクホール機能は,DNS クエリをチェックして,危険リストに登録された FQDN の名前解決に対し,A 社が用意した IP アドレスを応答する。つまり,マルウェアが DNS に問い合わせた場合にだけ効く。

ところが,マルウェアには C&C サーバの IP アドレスも FQDN とともに埋め込まれていた。IP アドレスを直接指定して C&C サーバと通信する場合には,DNS への問合せが発生しないので,シンクホール機能では止められない。そこで UTM での通信拒否(IP リストの IP アドレス宛の拒否)も必要になる。

40 字以内なので,“DNS への問合せを実行しない場合があるから”に“C&C サーバとの通信時に”を添える。“マルウェアの解析結果を踏まえて”とあるので,IP アドレスが埋め込まれていた点が根拠になる。

設問3(3) 解答欄1つ

本文及び表 4 中の f に入れる適切な字句を,20 字以内で答えよ。

〔f〕解答例

  • イベントログの消去を示すログ
解説

本文の根拠

図8 攻撃者の活動の特徴

一部の業務 PC では,全てのイベントログが消去された痕跡があった。全てのイベントログが消去された後,イベントログにイベントログの消去を示すログが記録されていた。

表4 項番 1

中のイベントログに,α ログ,β ログ又はfが存在するかどうか。

確認ツールは,イベントログに α ログ又は β ログがあるかどうかを調べる。しかし図 8 のとおり,攻撃者は一部の業務 PC で全てのイベントログを消去していた。消去すると,α ログや β ログも一緒に消えるので,確認ツールは感染を見逃す。

ただし,全てのイベントログが消去されると,その後のイベントログに“イベントログの消去を示すログ”が記録される。このログがあれば,攻撃者が痕跡を消した可能性があるので,感染の疑いが強い。したがって f は“イベントログの消去を示すログ”。表 4 の調査 1 は,この f が存在した場合もグループ A(感染の疑いが強い)とする項目である。

20 字以内なので,“イベントログの消去を示すログ”の 14 字でよい。

設問3(4) 25字以内

本文中の下線⑤について,問題がないと判定されるのは,PC やサーバがマルウェア β に感染後,マルウェア β がどのような挙動をしていた場合か。25 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 横展開機能と待機機能だけを実行していた場合
解説

本文の根拠

表2 マルウェア β

いずれかの機能を,あらかじめ定められた確率でランダムに実行する。この実行は,1 週間の間隔を置いて繰り返され,遠隔操作機能の実行に成功すると,繰り返しの実行を停止する。

表2 マルウェア β (3)

このとき,イベントログにマルウェア β の実行を示すログ(以下,β ログという)が記録される。

表2 マルウェア β (2)

感染した PC 又はサーバから到達可能なネットワーク内の機器をスキャンし,OS の脆弱性がある機器を発見すると,自身に感染させる。

β ログが記録されるのは,遠隔操作機能(3)を実行したときだけである。待機機能(1)は何もせず,横展開機能(2)はスキャンや感染を行うが,β ログは記録されない。1 週間ごとにランダムに機能を選ぶので,遠隔操作機能を一度も実行していない期間は,β ログが無く,確認ツールで“問題がない”と判定される。

その間に横展開機能を実行していれば,到達可能な機器に自身を感染させ,共有フォルダに細工したファイルも置くので,別の PC やサーバに感染を拡大させている。したがって,問題がないと判定されるのは,“横展開機能と待機機能だけを実行していた場合”である。

25 字以内なので,“横展開機能と待機機能だけを実行していた場合”の 21 字でよい。遠隔操作機能を実行していないという条件を,α ログではなく β の機能の名前で書く。

採点講評(IPA)

設問3(4)は,正答率が高かった。本文中に示された確認ツールの仕様及びマルウェアの特徴を正しく理解し,遠隔操作機能が実行されていない挙動を適切に解答できていた。

設問3(5) 45字以内

本文中の下線⑥について,可能である理由を 45 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • UTMのIDS機能によって攻撃が検知でき,システム管理者に連絡がされるから
解説

本文の根拠

表1 UTM

IDS 機能:全てのインバウンド通信をチェックし,不審な通信を検知した場合は,システム管理者に通知する。

図3 の後

連携サーバは,研究部が管理する連携 FW を経由してインターネットに接続されている。

連携サーバは,現在,研究部が管理する連携 FW を経由してインターネットに接続されている。連携 FW には,IDS 機能が書かれていない(FW として,会員から伝えられたグローバル IP アドレス及び研究部セグメントからの通信だけを許可している)。

DC の DMZ に移設すると,インターネットからの通信は,DC の UTM を通る。UTM は IDS 機能を有効にしていて,全てのインバウンド通信をチェックし,不審な通信を検知するとシステム管理者に通知する。連携サーバへの攻撃も UTM で検知でき,システム管理者に連絡がされるので,迅速な対応が可能になる。

45 字以内なので,“UTM の IDS 機能によって攻撃が検知でき”と“システム管理者に連絡がされる”の 2 点を残す。連携 FW に IDS 機能がない点が対比になる。

設問4(1) 解答欄1つ

図 9 中の g に入れる適切な日付を答えよ。

〔g〕解答例

  • 7月14日
解説

本文の根拠

図8 タイムライン

7 月 14 日:攻撃者は,D さんのアカウントを使って研究部の F さん宛にマルウェア α を添付したメールを送信した。

図8 タイムライン

同日中に,攻撃者の遠隔操作によって同業務 PC がマルウェア β にも感染した。

図4 [情報連携の手順]

連携サーバの共有フォルダは研究部セグメントの業務 PC から認証なしでアクセス可能になっている。

連携サーバの共有フォルダには,研究部セグメントの業務 PC から認証なしでアクセスできる。マルウェア β の横展開機能は,アクセス可能な共有フォルダに細工された文書ファイルを置く。したがって,細工されたファイルが連携サーバに置かれていた可能性のある最も早い日付は,研究部の F さんの業務 PC がマルウェア β に感染した日である。

図 8 のタイムラインでは,その日は 7 月 14 日(α に感染し,同日中に β にも感染した日)である。7 月 9 日は,攻撃者が D さんのアカウントで B サービスに不正ログインした日で,業務 PC への感染はまだ起きていない。連携サーバのログファイルの最古は 7 月 19 日で,60 日保存のため,それ以前の記録は残っていない。表 4 の対象期間の開始日(7 月 19 日)は,7 月 14 日にさかのぼる必要がある。

日付だけを答えるので,“7月14日”と書く。

設問4(2) 解答欄1つ

表 5 中の h に入れる適切な字句を 25 字以内で答えよ。

〔h〕解答例

  • IPリストに登録されたIPアドレス
解説

本文の根拠

〔インシデントへの対策の検討〕 G さんの発言

IP リストに登録された IP アドレスへの通信を UTM で拒否します。

表5 調査 2

対象期間中の会員 FW のログに,次に該当する送信元から宛先への通信記録が存在するかどうか。

調査 2 は,会員 FW のログに,ある送信元から宛先への通信記録があるかどうかを調べる。マルウェア β が会員の中で感染を広げていれば,会員内の PC やサーバが C&C サーバと通信する記録が,会員 FW に残る。C&C サーバの IP アドレスは,G さんの作成した IP リストに載っている。

したがって,宛先は“IPリストに登録されたIPアドレス”になる。送信元は任意の IP アドレスなので,連携端末以外が C&C サーバと通信した記録も拾える。

25 字以内なので,“IPリストに登録されたIPアドレス”の 17 字でよい。

設問4(3) 30字以内

本文中の下線⑦について,どのような通信記録があった会員が該当するか。通信記録の内容を 30 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 連携端末以外のIPアドレスを送信元とする通信記録
解説

本文の根拠

表5 調査 2

送信元:任意の IP アドレス

再レビュー時の会話

連携端末からほかの PC やサーバへの感染拡大が明らかな会員に絞るのであれば,調査 2 に使う通信記録から絞ることができる

調査 2 の送信元は“任意の IP アドレス”であり,連携端末も含む。連携端末が C&C サーバと通信した記録だけなら,連携端末が感染したことしか分からない。連携端末からほかの PC やサーバへの感染拡大が明らかな会員とは,連携端末以外の機器が C&C サーバと通信している会員である。

したがって,絞込みの条件は,調査 2 に使う通信記録のうち,連携端末以外の IP アドレスを送信元とするものがあるかどうかである。講評でも,この絞込みの条件が書けていない解答が目立った点が指摘されている。

30 字以内なので,“連携端末以外の”“IP アドレスを送信元とする”“通信記録”の 3 点を残す。“連携端末の通信記録を除く”とだけ書くのではなく,送信元を条件にする。

採点講評(IPA)

設問4(3)は,正答率が低かった。対処の優先度を上げるべき会員は,連携端末以外の機器へ感染が広がっている会員であるが,それを絞り込むための条件を明示できていない解答が散見された。マルウェア感染においては,最終的には被害対象について漏れなく対処すべきであるが,被害拡大を防ぐためにも優先度をつけて対処することが重要であることを理解してほしい。

設問4(4) 30字以内

本文中の下線⑧について,どのような対応か。30 字以内で述べよ。

解答例

  • 連携端末を一時的にネットワークから切り離した対応
解説

本文の根拠

〔連携サーバ経由の感染状況の確認と感染拡大防止〕

化学コンの全会員に連携端末を一時的にネットワークから切り離してもらうように連絡し,全ての会員で対応が完了したことを即日確認した。

再レビュー時の会話

グループ A と判定された会員企業であっても,この通信記録がなかった会員は,⑧既に行っている対応から考えて,感染を拡大させるリスクは相対的に低いと考えることができます。

E さんは,連携サーバの感染状況の確認の初めに,化学コンの全会員に,連携端末を一時的にネットワークから切り離してもらい,全ての会員で完了したことを即日確認した。感染の可能性のある連携端末が,ほかの機器と通信できない状態に既にしてある。

この対応により,連携端末から別の PC やサーバへの感染拡大は止まっている。グループ A でも,連携端末以外が C&C サーバと通信した記録(設問 4(3))がなければ,ほかの機器への感染拡大は起きていないと考えられるので,リスクは相対的に低い。

30 字以内なので,“連携端末を”“一時的にネットワークから切り離した”の 2 点を残す。全会員に依頼し,完了を確認した点まで書き込む必要はない。

出典:令和3年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)