A 社は,従業員数 700 名の外食サービス会社であり,地方都市で事業を展開している。A 社グループ傘下には,レストラン,ピザ店及びハンバーガー店がある。A 社では,これまで,様々な業務のシステム化を行ってきたが,今年末の宅配すし事業の立上げを契機に,販売促進システムの一部であるインターネット Web サイトにおけるサービス向上を検討することになった。
〔A 社のインターネット Web サイトの概要〕
A 社のインターネット Web サイトには,一般公開用のもの(以下,一般サイトという。ドメインは a-sha.co.jp)と,事前に登録した会員向けのもの(以下,会員サイトという。ドメインは a-sha-kaiin.com)がある。
一般サイトでは,会社情報及び商品情報を提供しており,誰でも閲覧できる。一般サイトは,コンテンツの更新も含めて B 社に運用管理を委託している。会員サイトは,一般サイトにあるリンクで示された Web ページでログインでき,登録した届け先住所を用いた手軽な注文が可能で,注文履歴に基づいてお勧め商品に関する情報を表示するといったサービスを提供している。会員の誕生日には割引券も発行しており,評判が良い。
会員サイトは個人情報を扱うことから,①サーバ認証による HTTPS を採用し,その上でのフォームを用いた利用者認証を行っている。例えば,ある会員がブラウザで会員サイトにアクセスしようとすると,利用者 ID とパスワードによる利用者認証が求められ,認証に成功すると,会員サイトにアクセスできるようになる。クッキーの有効期限が切れるか,利用者がログアウトした後は,当該ブラウザから会員サイトにアクセスできなくなり,再び利用者認証を求められる。
Ajax を用いると,Web ページ全体を再描画することなく,現在表示されている Web ページの表示の一部だけを更新することができる。例えば, a を利用する HTML ファイル群をブラウザがダウンロードして実行すると,非同期的又は同期的に Web サーバにアクセスし,そのレスポンスデータを用いて Web ページを更新することができる。
しかし,通常,ブラウザではセキュリティ確保のための b ポリシが採用されているので, a を利用する HTML ファイル群をダウンロードして実行する際,FQDN,プロトコル又はポート番号のいずれかが,ダウンロードしたものと異なる URI にはアクセスできず,A 社が想定するターゲット型広告サービスを実現できない。そこで,次に,JSONP(JavaScript Object Notation with Padding)という技術を用いて,マッシュアップサービスを実現することを検討した。JSONP を用いて上記の 3 要素のいずれかが異なる URI からでもデータを取得することが可能な JavaScript(以下,JSONP 呼出しスクリプトという)を記述できる。
A 社では JSONP を用いてターゲット型広告サービスを実現する仕組みを検討した。図 1 はその案である。この案では,会員のポイントの獲得状況を表示するサービス(以下,ポイント表示サービスという)用の JSONP 呼出しスクリプト(図 2)を呼び出すページを,一般サイトのトップページに用意しておく。例えば,利用者 ID を user1 としてログインした会員が,一般サイトのトップページを閲覧した際,会員サイトから送られてくる図 3 に例示したような JSONP 型データを用いて,その月の獲得ポイントとトータルの獲得ポイントを表示する。
A 社ではポイント表示サービスのほかにも,会員の誕生月にポイントを 2 倍付与するサービスと,会員が住む地域のグループ店からのお得情報を提供するサービスを検討している。
A 社では,マッシュアップサービスを初めて導入することもあり,ターゲット型広告サービスの仕組みについて,セキュリティ専門家の Z 氏にレビューを受けた。すると,ポイント表示サービスの仕組みには,次に示すように JSONP 呼出しスクリプトを悪用する攻撃で会員の個人情報が漏えいする可能性があるとの指摘を受けた。
A 社のポイント表示サービスの仕組みの場合, c から送られる d が,会員の個人情報を含む。しかし,②ある条件が成立しているとき,悪意ある Web サイトにアクセスし,図 4 のように動作する JSONP 呼出しスクリプトを e が実行すると, d に含まれる会員の個人情報を奪われる可能性がある。
図 4 悪意ある JSONP 呼出しスクリプトの動作概要
Z 氏からは,このような攻撃に対する一般的な対策として図 5 が示され,対応を A 社関係者で検討した。
図 5 JSONP 呼出しスクリプトを悪用しようとする攻撃への一般的な対策
ポイント表示サービスの実現においては,会員が一般サイトのトップページにアクセスした際,JSONP 呼出しスクリプトが会員サイトにアクセスする。そのため,図 5 の(1)の対策をとるには,一般サイトで“トップページへのアクセスのリクエストが f からのアクセス”という情報が必要になる。しかし,一般サイトと会員サイトの運用管理会社が違うこともあり実現方法の検討に期間を要してしまうので,この対策方法は見送ることにした。
図 5 の(2)の対策については,A 社の Web サイトは様々な環境の利用者を想定していることから,Referer ヘッダの情報がサーバに g というケースもあり得るので,Referer ヘッダの情報の利用を前提としてポイント表示サービスを実現すると,正規のリクエストか否かを区別できないケースがある。そのため,この対策方法も見送ることにした。
Z 氏との検討の結果,ポイント表示サービスを含むターゲット型広告サービスは,将来普及が見込まれる a の新規格を用いることも含めて検討課題とし,最終的には,ターゲット型広告サービスを除いて A 社の Web サイトを刷新することとした。
を利用する HTML ファイル群をブラウザがダウンロードして実行すると,非同期的又は同期的に Web サーバにアクセスし,そのレスポンスデータを用いて Web ページを更新することができる。
〔インターネット Web サイトのサービス向上策の検討〕
FQDN,プロトコル又はポート番号のいずれかが,ダウンロードしたものと異なる URI にはアクセスできず
a は,Ajax で“非同期的又は同期的に Web サーバにアクセスし,そのレスポンスデータを用いて Web ページを更新する”ために HTML ファイル群が利用するものである。解答群の中でこの働きをもつのは XMLHttpRequest(エ)で,ブラウザのスクリプトから HTTP リクエストを発行するための API である。b は,“FQDN,プロトコル又はポート番号のいずれかが,ダウンロードしたものと異なる URI にはアクセスできず”という制限をかけるポリシである。RFC 6454 は,オリジンを(スキーム,ホスト,ポート)の三つ組と定め,三つ組が全て同じときだけ同一オリジンとしている。本文の“3 要素”はこの三つ組に当たり,ポリシの名は Same-Origin(ウ)である。
本文は a の制限を受けるために,JSONP を使って“上記の 3 要素のいずれかが異なる URI からでもデータを取得する”方法を検討している。つまり b は,a によるアクセスの範囲を制限するポリシでなければならない。
この設問は記号で答える。誤りの選択肢は,APT(ア)が標的型攻撃の呼び名,ATM(イ)が現金自動預払機あるいは通信方式の名,アノニマス(オ)が匿名を指す語,プライバシ(カ)は個人情報の取扱いの考え方で,いずれも,ブラウザがアクセス先の URI の 3 要素を制限する話ではない。講評は,a の正答率は高く,b の正答率が低かったと述べている。a の語は知っていても,b のブラウザ側の制限まで知らない受験者が多かった。
H 社は,200 名が勤務する高級化粧品の訪問販売会社である。H 社では,顧客の連絡先,訪問記録,購買履歴などの個人情報を管理する顧客管理システム(以下,B システムという)を利用している。B システムを利用しているのは,営業部の 1 課~5 課に所属する 140 名である。そのうち,営業を行っている 120 名は個人情報にアクセスする権限をもち(以下,有権限者という),担当顧客の情報を記録,参照している。残りの 20 名は,売上状況などを集計するためだけに B システムを利用しているので,個人情報にアクセスする権限をもたない(以下,無権限者という)。各営業部員は貸与された端末を社内で利用している。
最近,H 社の同業他社である C 社において,顧客の個人情報がシステムから漏えいするという事件があった。そこで H 社では,情報システム部の D 部長が中心となって個人情報漏えい対策を強化することになった。D 部長は,対策の検討に当たって部下の E 課長に対し,H 社のシステムの中で最も多くの個人情報を保有している B システムのアクセス管理の状況を確認するように指示した。
E 課長は,B システムの利用者 ID の管理状況を調査した。その結果,次の点を確認することができた。
利用者 ID の登録,変更及び削除は,申請に基づいて実施している。
3 か月ごとに利用者 ID と利用者名の一覧を営業部の各課長に提示の上,業務上の必要性について確認している。なお,利用者 ID と利用者は 1 対 1 に対応している。
B システムのログを取得し,3 年間保存している。
E 課長がこれらの調査結果を D 部長に報告したところ,D 部長から,“利用者 ID の管理状況は分かったが,それだけでは B システムの利用が適切に行われているという保証にはならない。個人情報漏えいにつながるような不審な利用がないか,その予兆も含めて,ログを分析して確認するプロセス(以下,そのプロセスをモニタリングという)が必要である”と指摘された。
提案を受けた D 部長は,⑤条件 2 の利用成功回数のしきい値を引き上げると,適切なモニタリングができなくなるので,再度検討するように E 課長に指示した。E 課長は再検討の結果,改善案として,表 3 に示すモニタリング条件 2 を,表 4 に示す新たなモニタリング条件 2′で置き換えることを提案した。
表 4 新たなモニタリング条件 2′
D 部長は,当分はこの改良を加えたモニタリングを実施することを了承した。さらに,D 部長は,“営業部の業務は今後も変化していくと考えられる。今回は,ヒアリングの実施件数が急増したことでモニタリング条件を見直すことになったが,モニタリング条件の見直しをせずにいると,モニタリングが有効に機能しなくなったり,非効率になったりすることがある”として,E 課長に対し,⑥モニタリングの有効性と効率性を維持するための施策を検討するように指示した。
利用者 ID が B システムに登録されていないのは,推測した利用者 ID でログインを試みた場合(表 2 のア)である。表 1 で,利用者 ID が登録されているとは限らないのは“ログイン失敗”のログだけで,取得する情報が“ログインしようとした利用者 ID”になっている。他のイベントの利用者 ID は,ログインに成功した利用者のものなので登録されている。
登録されていない利用者 ID のログには,端末 ID が記録されているので,その端末を貸与されている従業員を調査の対象にできる。
表 1 のイベントから選ぶ設問で字数制限は無い。解答例は“ログイン失敗”。“ログイン成功”と書くと,ログイン成功で記録される利用者 ID は有権限者・無権限者のどちらでも登録済みであることを見落としている。
Z 社は,従業員数 300 名の家具卸売会社であり,メーカ 10 社から商品を仕入れ,小売店 20 社に販売している。Z 社のインターネット接続環境は図 1 及び図 2 に示すとおりであり,その環境を使って従業員はインターネット上の Web サイトにアクセスしたり,電子メール(以下,メールという)を送受信したりしている。メールの送受信のために,インターネットドメイン名 z-sha.co.jp を取得している。z-sha.co.jp のゾーン情報は,外部業者の保有する DNS サーバに登録し,管理を委託している。
図 1 Z 社のインターネット接続環境の構成図 2 Z 社のインターネット接続環境の概略
〔不審なメールへの対応〕
Z 社では,セキュリティ強化のために,従業員教育に力を入れており,次の点について繰返し研修を行っている。
不審な添付ファイルは開かないなどのメールの閲覧に関する注意事項
不審なメールが届いた場合の,社内のセキュリティデスクへの通報手段
PC 環境の適切なアップデート方法
ある日,営業部の A 君からセキュリティデスクに対して,次のような通報があった。“メーカ Y 社の B 氏のメールアドレス(b-shi@y-sha.co.jp)からメールが届いたが,直前まで Y 社内で B 氏と打合せをしており,疑問を抱いた。そのメールは,記載されている社名,部署名,氏名及びメールアドレスが全て正しかったが,念のため B 氏に確認したところ,やはり送信していないとのことだったので,不審なメールであると判断した。”
セキュリティデスクで図 3 のヘッダを調べ,不審な点として, a と b から,偽メールと判断した。ただし,ヘッダは,途中で書き換えられた可能性を否定できないことと, b については,経由するサーバの設定が必ずしも正しいとは限らないことの 2 点から,悪意のある攻撃メールの疑いはあったが,そうだとは断定できなかった。
しばらくたったある日,今度は Y 社情報システム部から A 君に対して,“あなたが差出人の不審なメールが届いた。そのメールを添付したので,確認してほしい”という問合せメールが届いた。添付されていたメールは,A 君が開いて確認すると,確かに A 君が差出人になっていたが,心当たりのないものだった。そのメールには添付ファイルはなかったが,本文に社外サイトへのリンクが記入されていた。A 君がリンクをたどったところ,やはり心当たりのない社外サイトであった。A 君はこの事態をセキュリティデスクに通報した。
セキュリティデスクで調査した結果,何者かが A 君を装った偽メールを Y 社に送信し,不審サイトに誘導しようとしたと判断した。Y 社に調査結果を連絡するとともに,セキュリティ専門会社などにも連絡した。
Z 社では,相次ぐ偽メールに危機感が高まり,情報システム部が中心になって,メールアドレスの偽装について対策を強化することになった。情報システム部の P 部長は,まず,送信ドメイン認証技術についての検討を S 主任に指示した。
S 主任は検討した結果を P 部長に報告した。次は,そのときの P 部長と S 主任の会話である。
P 部長:メールアドレスの偽装はどのように阻止すればよいのだろうか。
S 主任:当社のメールアドレスを偽装したメールの発信を,技術的対策で阻止することは難しいと思います。しかし,送信ドメイン認証技術を使えば,当社から正規に送信されたメールかどうかを,受信側で検証できます。ただし,当社が採用した送信ドメイン認証技術に,受信側のメールサーバが対応している必要があります。送信ドメイン認証技術の候補としては,普及率を考慮して,SPF(Sender Policy Framework)がよいと思います。Y 社をはじめとする主要取引先と,導入について協議してみてはどうでしょうか。
P 部長:なるほど。SPF の導入に際して,どんな作業が必要になるのかね。
S 主任:z-sha.co.jp のゾーン情報を管理している DNS サーバに,図 4 に示す TXT レコードを登録します。当社のメールサーバの設定変更は不要です。
P 部長:偽装したメールかどうかはどのように判定するのかね。
S 主任:受信側のメールサーバが, c 中の SMTP の d コマンドの引数で指定されたアイデンティティのうちドメイン名の部分を基に,DNS サーバに問合せを行い,SMTP 接続元の IP アドレスと比較します。
P 部長:分かった。メールを頻繁に送受信する取引先と協議を始めることにしよう。
図 4 登録する TXT レコード
〔標的型攻撃への対策〕
P 部長と S 主任は,送信ドメイン認証技術の導入を進める一方,標的型攻撃への対策についても検討を行った。
P 部長:今回の A 君の対応はどうだったかな。
S 主任:A 君は研修を熱心に受け,この前の不審なメールへの対応は万全でした。しかし,今回の Y 社情報システム部からの問合せメールについては,①A 君の対応は不適切でした。今回は幸運でしたが,被害が出る可能性がありました。Y 社からの問合せなので油断したのかもしれません。
P 部長:標的型攻撃の恐ろしいところだな。しかも,攻撃が巧妙化していけば,阻止しようとする対策だけでは限界がある。もし攻撃が成功したとしても被害を最小限にとどめるための対策も必要になる。
S 主任:典型的な標的型攻撃では,(A)ウイルスが,様々な方法で社内に侵入し,(B)社内で感染を拡大させ,(C)感染した PC 及びサーバのアクセス権を入手して情報収集を行います。このとき,ウイルスの活動によって異常なトラフィックが発生したり,PC 又はサーバが異常な振る舞いをしたりすることもあります。その後,(D)収集した情報をネットワーク経由で攻撃者に報告します。
P 部長:そうだな。このような被害の拡大をどこかで断ち切れるように対策を強化していこう。
S 主任:はい。(A)については,MX1 及び PRX にウイルス対策ソフトを導入しており,(B)については PC 及びサーバにウイルス対策ソフトを導入しています。(C)については②PC 又はサーバの監視強化を検討します。(D)は,バックドア通信と呼ばれるものですが,対策は簡単ではありません。
P 部長:つまりどういうことかね。
S 主任:バックドア通信については,③当社のネットワーク設定で既に遮断できる通信もあります。しかし,例えば,ウイルスが Web アクセスの通信パターンを模倣して行う通信については,現在のところ防げません。これに関しては,④更なる対策を検討していきます。
〔不審なメールへの対応〕について,本文中の a,b に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。解答群 ア Y 社が国内で運用しているはずのメールサーバのタイムゾーンが,日本ではなく,海外になっている点 イ Y 社と Z 社間で中継サーバを経由した記録がなく,中間経路を隠蔽する改ざんが行われている点 ウ Y 社のメールサーバのアドレスが,Y 社のアドレスではなく,かつ,DNS 参照が“unknown”になっている点 エ Z 社のメールサーバのローカルアドレスではなく,Z 社のグローバルアドレスが参照されており,NAT 変換が無視されている点
〔a〕解答例
ウ
〔b〕解答例
ア
解説
本文の根拠
図 3
Received: from smtp.y-sha.co.jp (unknown [80.◎◎.◇◇.☆☆])
図 3
for <a-kun@z-sha.co.jp>; Fri, 27 Jan 2012 9:37:58 +0100 (CET)
〔不審なメールへの対応〕
なお,Y 社は,メールサーバを含む情報システムを国内で運用している。
図 3 の Received ヘッダは,メールを受けたサーバが自分の側から見た相手を書き足していくものである。Z 社の MX1 が付けた行は,送信元を“smtp.y-sha.co.jp (unknown [80.◎◎.◇◇.☆☆])”としており,DNS で IP アドレスから名前を引けず(unknown),しかもその IP アドレスは 80 で始まっている。Y 社の情報システムは国内で運用されているはずなのに,メールサーバのアドレスが Y 社のものではなく,DNS 参照も unknown になっている点が不審で,a はウである。
この設問は記号で答える。イは Y 社と Z 社の間に中継サーバを経由した記録が無いと言うが,ヘッダには Y 社内の mail と smtp,Z 社の mx1 と mx2 の行がある。エは Z 社側の NAT 変換を言うが,ヘッダにはそのような記録は無い。講評は,選択問題にもかかわらず正答率が低かったと述べている。
本文中の c,d に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。解答群 ア EXPN イ MAIL FROM ウ RCPT TO エ VRFY オ メールエンベロープ カ メールボディ
〔c〕解答例
オ
〔d〕解答例
イ
解説
本文の根拠
〔メールアドレスの偽装と対策〕の会話
受信側のメールサーバが, c 中の SMTP の d コマンドの引数で指定されたアイデンティティのうちドメイン名の部分を基に,DNS サーバに問合せを行い,SMTP 接続元の IP アドレスと比較します。
図 3
Return-Path: <b-shi@y-sha.co.jp>
SMTP では,メールは“エンベロープ”と“内容(ヘッダとボディ)”に分かれる(RFC 5321 2.3.1)。エンベロープは SMTP のコマンドで送られる送信者・受信者のアドレスで,内容は DATA で送られる。送信ドメイン認証の SPF は,エンベロープの送信者アドレスが指す MAIL FROM のドメインを基に DNS の SPF レコードを引き,接続元の IP アドレスが許可されたものかを検証する(RFC 7208)。したがって c はメールエンベロープ(オ),d は MAIL FROM(イ)。
図 3 の From のように,メールの内容(ヘッダ・ボディ)に書かれた送信者アドレスは,エンベロープの MAIL FROM とは別に書かれているので,SPF の検証の対象は MAIL FROM の側になる。
A 君は,Y 社情報システム部からの問合せメールに添付されていたメールを開いたところ,本文に書かれた社外サイトへのリンクをたどってしまっている。本文は,その社外サイトを“心当たりのない”ものと書いており,不審なメールの中のリンクをたどることは,ウイルスに感染させるサイトなどに誘導される危険がある。S 主任は“Y 社からの問合せなので油断したのかもしれません”と述べている。
本文中の下線②に示した PC 又はサーバの監視強化には幾つかの方法が考えられる。監視強化のためのシステムを導入する場合,導入するシステムの名称及び設置場所を 10 字以内で答えよ。また,そのシステムで監視すべき事象を 15 字以内で答えよ。
〔システムの名称〕解答例
ネットワークモニタ
〔設置場所〕解答例
社内LAN上
〔監視すべき事象〕解答例
トラフィックの急激な増加
解説
本文の根拠
〔標的型攻撃への対策〕
(C)感染した PC 及びサーバのアクセス権を入手して情報収集を行います。このとき,ウイルスの活動によって異常なトラフィックが発生したり,PC 又はサーバが異常な振る舞いをしたりすることもあります。
図 1
L3SW は内部 LAN と社内 LAN に接続される。
下線②の(C)は,感染した PC やサーバが情報収集を行う段階である。S 主任は“ウイルスの活動によって異常なトラフィックが発生したり,PC 又はサーバが異常な振る舞いをしたりすることもあります”と述べており,この異常を検知する仕組みが監視強化になる。PC が接続されるのは社内 LAN なので,社内 LAN 上にネットワークのトラフィックを監視するシステム(ネットワークモニタ)を置き,トラフィックの急激な増加を監視する。
ある月曜日の朝,LB のイベント通知が発生した。運用チームの G 主任が,原因を調査することになった。G 主任が,運用チームの Web サーバ管理担当者 H さんに確認したところ,Web サーバプログラムで制限している最大同時セッション数が不足してイベント通知が発生したとの報告を受けた。人材情報サイトは,リリース後にアクセス数が増加しているので,最大同時セッション数の設定の見直しを運用チーム内で検討していた。特に月曜日は,求人情報の定期更新があり,16 時まではアクセスが集中する。そこで,たとえイベント通知が発生しても,次のサービス稼働チェックで復旧した場合は無視することにした。ところが,16 時を過ぎてもイベント通知が発生したので,G 主任は改めてイベント通知の原因の調査を開始した。
G 主任は,①各機器の当日のログを調査した結果,人材情報サイトが攻撃を受けていた可能性が高いと判断した。LB のサービス稼働チェックログを表 2 に,IDS がシグネチャ A に該当するとして検知した事象のログを表 3 に,表 3 の各事象に関する FW1 のログを表 4 に,同じく表 3 の各事象に関する Web サーバ 1,2 のアクセスログを表 5,表 6 に,Web サーバ群のリソースグラフを図 3 に示す。
なお,各ログは,調査で確認した当日の各機器の大量のログから抜粋したものである。
表 2 LB のサービス稼働チェックログ(抜粋)表 3 IDS の検知ログ(シグネチャ A 検知に関連するログの抜粋)表 4 FW1 のログ(シグネチャ A 検知に関連するログの抜粋)図 3 Web サーバ群のリソースグラフ表 5 Web サーバ 1 のアクセスログ(シグネチャ A 検知に関連するログの抜粋)表 6 Web サーバ 2 のアクセスログ(シグネチャ A 検知に関連するログの抜粋)
〔暫定対策の実施〕
IDS が通知したアラートと,その際に IDS が内部に保存したパケットデータを IDS 販売元のセキュリティベンダ X 社に提供して問い合わせた結果,数日前に情報が公開されたばかりの脆弱性を狙った攻撃であることが判明した。その脆弱性は,特定のデータを受信すると Web サーバの CPU リソースが一時的に枯渇するというものであった。X 社からは,ミドルウェアをバージョンアップすることによって,脆弱性を除去できるという回答があった。しかし,H さんが帰宅してしまっていたので,すぐにはバージョンアップができなかった。そこで,攻撃元だと特定した IP アドレス a からの通信を FW1 で遮断することにした。
また,IDS では,シグネチャ A の検知基準が,標準設定の“HTTP POST リクエストが 300,000 バイト以上”だった。したがって,②誤検知が発生する可能性が高く,それを考慮して,アラートレベルは Low にしていた。しかし,アラートレベルが Low ではメール通知がされないので,High に変更すべきか X 社に相談したところ,もしアラートレベルを High にするのであれば,誤検知を減らすために検知基準を変更した方がよいという助言を受けた。そこで,今回の脆弱性を狙った攻撃を検知可能で,かつ,誤検知が減るように検知基準を変更した上で,アラートレベルを High に変更した。
〔恒久対策の検討と運用強化〕
その後 W 社では,シグネチャ A のアラートは通知されなかった。H さんはミドルウェアのバージョンアップの影響を調査した後,バージョンアップを実施し,今回の脆弱性への対策を完了した。さらに,セキュリティ運用について情報システム部内で課題を洗い出し,次のような対策案を作成した。
Web サーバのサービス稼働チェックでは,対処する必要がない場合でもイベント通知している。対処が必要な場合にだけイベント通知するように,③Web サーバの設定を変更の上,イベント通知すべき条件を変更する。
(C) 相関分析を目的としたログ調査環境・手順の整備
今回は同時に大量のアクセスが発生したので,大量のログから攻撃元を特定するまでに時間が掛かった。今後は,④攻撃元を特定しやすくするために,FW1 と Web サーバ群のログを関連付けられるようにログの出力内容と分析手順を見直す。また,IDS については,L2SW2 のトラフィックの代わりに L2SW1 のトラフィックを監視対象にすることによって,ネットワークアドレス変換前の b を確認できるので,攻撃元の特定が容易になる。ただし,LB への c 通信については監視できないので,IDS は LB が保有している d を利用して c 通信についても監視できるものにする。