問1 ウイルス対策
ウイルス対策に関する次の記述を読んで,設問 1〜6 に答えよ。
N 社は,従業員数 500 名のシステム開発会社である。東京の本社には,管理本部と東日本ソリューション本部(以下,東ソリ本部という)がある。管理本部には,業務部,総務部,営業部及び情報システム部(以下,情シス部という)がある。大阪の関西支社には,西日本ソリューション本部(以下,西ソリ本部という)があり,100 名が在籍している。
N 社では,本社にインターネット接続システムを導入し,電子メール(以下,メールという),Web サイトの閲覧などに利用している。ドメイン名として n-sha.co.jp を使用しており,メールアドレスには,表 1 に示すものがある。
〔情報システムの構成〕
N 社の情報システムの運用は,情シス部の D 部長の下で,運用グループのメンバが担当している。N 社の情報システムのネットワーク構成を図 1 に,主な機器の概要を表 2 に示す。
FW,L2SW,L3SW 及び各サーバは,保守時を除き 24 時間 365 日稼働している。
FW では,通信の許可及び拒否のログを取得している。各サーバでは,サーバへのアクセス及びサーバ上でのプログラムの動作をログに記録している。FW 及び各サーバのログの保存期間は,6 か月である。
PC の IP アドレスは,L3SW の DHCP リレーエージェント機能によって動的に割り当てている。
〔ウイルス対策〕
N 社では,HTTP ウイルススキャン及び SMTP ウイルススキャンには V 社のウイルス対策ソフトを導入し,ファイルサーバ 1,ファイルサーバ 2,業務サーバ及び PC には W 社のウイルス対策ソフトを導入している。2 社のウイルス対策ソフトを導入することによって,1 社の場合よりも早くウイルスを検出できるようになると期待されている。
サーバ及び PC に関する N 社のウイルス対策の概要を表 3 に示す。
長期の休み明けの始業時には,N 社の全 PC が一斉にウイルス定義ファイル全体をダウンロードするので,インターネット回線及び IP-VPN が一時的に輻輳する。その解決が課題になっている。
HTTP ウイルススキャンの結果と通知方法を図 2 に,SMTP ウイルススキャンの結果と通知方法を図 3 に示す。
〔PC の管理方法〕
従業員には,PC を会社から貸与している。従業員は,出勤後に個人ロッカーから PC を取り出して使用し,退勤前に,PC を個人ロッカーにしまう。個人ロッカーは,施錠を必須としている。
PC の初期設定は,情シス部が担当し,OS,ウイルス対策ソフトなど N 社で定めたソフトウェアのインストール,脆弱性修正プログラムの適用,ウイルス定義ファイルの更新,Web ブラウザの設定及びメールソフトの設定を行う。その際には,脆弱性修正プログラム及びウイルス定義ファイルを保存した DVD-R(以下,初期設定用 DVD-R という)を使用している。初期設定用 DVD-R は月 1 回,新しいものを作成する。
脆弱性修正プログラムの適用順序を確認したり,ウイルス定義ファイルをダウンロードしたりするのに時間が掛かるので,初期設定用 DVD-R 作成の作業負荷は大きく,効率向上が課題となっている。
そこで,運用グループの E 主任と F さんが,PC の初期設定方法の改善を検討することになった。
〔PC の初期設定方法の改善〕
PC の初期設定方法を改善するために F さんが作成した初期設定用ネットワークの設置案を図 4 に示す。
初期設定用 FW のフィルタリングルールを表 4 に示す。
E 主任は,PC の初期設定方法を考慮すると,プロキシサーバの URL フィルタリング機能に,①初期設定用ネットワークからの接続サイトを制限する設定を追加した方がよいと指摘した。F さんは,その設定案を作成して E 主任に提出した。
初期設定方法の改善案は,D 部長の承認を得られた。F さんは,プロキシサーバの URL フィルタリング機能に設定を追加した後,初期設定用 FW を介して本社の L3SW と初期設定用ネットワークを接続した。
〔休み明けの PC のウイルス感染〕
N 社では 4 月 29 日から 5 月 6 日まで連休であった。連休明けの最初の営業日となった 5 月 7 日,D 部長に,“広報グループの G さんの PC がウイルスに感染した可能性があり,ネットワークから切り離した”との連絡があった。D 部長は,E 主任と F さんに調査と対処を指示した。F さんの調査結果と感染への対処を図 5 に示す。
次は,E 主任と F さんが,中継サーバを経由するアクセスを防止する対策について検討した際の会話である。
- E 主任:まず,当社のプロキシサーバと,マルウェア X の URL 中の中継サーバを経由するアクセスについて検討しましょう。
- F さん:この中継サーバは,プロキシサーバの URL フィルタリング回避の手段として使われています。
- E 主任:そのとおりですね。他のマルウェアが利用する可能性も排除するために,この中継サーバを経由する全てのアクセスを遮断することはできますか。
- F さん:はい,③プロキシサーバのサーバ管理者登録ブラックリストに設定を追加することによって,遮断できます。
- E 主任:今後,別の中継サーバを経由することも考えられます。プロキシサーバに設定を追加する業務手順を作成する必要がありますね。
- F さん:はい,分かりました。
F さんは,プロキシサーバに設定を追加した。
E 主任は,図 5 の(4)では,G さん宛てのメールだけが対象であったので,追加の調査と対処が必要であると指摘した。指摘を受けた F さんは④メールについて追加の調査と対処を行った。
さらに,E 主任は,パスワードを用いて暗号化されたファイルを添付したメールがインターネットから届いた場合に,メールの受信者に注意を喚起する必要があると指摘した。指摘を受け,F さんは,⑤図 3 中の結果の通知条件を変更した。
F さんは,HTTP ウイルススキャンでも,図 2 中の結果の通知条件の変更が必要であることに気付き,E 主任に報告の上,変更した。
E 主任と F さんは,ウイルス感染に関する調査結果と対処について D 部長に報告した。D 部長は,PC のウイルス定義ファイル更新遅延についての対策,及び管理用メールアドレス宛てに届くメールのウイルス対策についても検討するように指示した。
〔PC のウイルス定義ファイル更新遅延についての対策〕
E 主任と F さんが検討した結果,本社及び関西支社それぞれに,W 社のウイルス対策集中管理ソフトを導入したサーバ(以下,管理サーバという)を設置するとともに,PC のウイルス対策ソフトをウイルス対策集中管理ソフトに対応するものに入れ替えることにした。さらに,F さんがウイルス定義ファイルのダウンロード元の見直し案を作成することになった。ウイルス対策集中管理ソフトの機能概要を図 6 に,F さんが作成したウイルス定義ファイルのダウンロード元の見直し案を図 7 に示す。
E 主任と F さんは,ウイルス定義ファイル更新遅延についての対策案を,D 部長に提出した。D 部長は,対策案を承認した上で,ウイルス感染防止のためのウイルス対策集中管理ソフトの活用方法も考えるよう指示した。E 主任と F さんは,⑥D 部長の指示に従って活用方法を検討し,D 部長に報告した。D 部長は,活用方法も承認した。
〔管理用メールアドレス宛てに届くメールへのウイルス対策の強化〕
E 主任と F さんは,管理用メールアドレス宛てに届くメールへのウイルス対策の強化について検討した。
運用グループ用メールアドレス宛てに届く配送不能通知メールは,メールヘッダを確認すれば十分であり,添付ファイルを開く必要がない。一方,採用問合せ用メールアドレス宛て及び広報問合せ用メールアドレス宛てに届いたメールに添付ファイルがあった場合,その添付ファイルを開かざるを得ない。しかし,開くと,ウイルスに感染するおそれがある。
そこで,Java サーブレットを利用した問合せ用の Web フォームを公開 Web サーバに導入することにした。Web フォームには,ファイルのアップロード機能をもたせない。問合せ内容及び問合せ者の連絡用メールアドレスを入力してもらうと,受付通知メールを連絡用メールアドレス宛てに送信する。さらに,採用問合せ用メールアドレス宛て又は広報問合せ用メールアドレス宛てにも送信する。
Web フォームの導入後は,採用問合せ用メールアドレス及び広報問合せ用メールアドレスを社外からは利用できないようにする。
〔Web フォームについての検討〕
Web フォームの設計は F さんが行い,レビューは,Web アプリケーションソフトウェアの設計に詳しい東ソリ本部の H さんに依頼することになった。
F さんは,採用問合せ用 Web フォームの動作概要を作成し,H さんとレビューを行った。F さんが作成した動作概要のうち,入力中の Web フォーム及び連絡用メールアドレス宛ての受付通知メールを,図 8 に示す。
H さんは,⑦採用問合せ用 Web フォームを悪用されるおそれがあるので,少なくとも図 8 の受付通知メールを,1〜17 行目だけにすべきと指摘した。さらに,細工した連絡用メールアドレスを入力された場合の対策も必要であることを指摘した。
F さんと H さんは,レビューを続けた。次は,採用グループのメンバのメールアドレス宛てメールについての会話である。
- H さん:まず,メールの本文について検討しましょう。アクセス者が,お問合せ内容として図 9 のとおりに入力したら,どうなりますか。
- F さん:入力したとおりに,メールの本文が作成されます。
- H さん:当社で使用しているメールソフトでは,“http://”と“https://”で始まる文字列だけは,行頭であっても,行中であっても,クリック可能な URL として表示されます。もし,ウイルスをダウンロードさせる URL だったら,ワンクリックで,ウイルスをダウンロードさせられてしまいます。文字列の加工処理が必要となりますね。
- F さん:メール送信プログラム中に,図 10 の処理を追加する案で対処します。
- H さん:図 10 は,対処として不完全です。例えば,図 10 の処理では,図 11 に示す文字列を入力すると,クリック可能な URL として表示されてしまいます。
- F さん:なるほど,そのとおりですね。別の方法で対処します。
H さんの指摘を受け,F さんは,図 8 を含めて動作概要を修正した。
F さんと H さんは,さらに,広報問合せ用 Web フォームについてのレビューも行い,採用問合せ用 Web フォームと併せて,Web フォーム移行案としてまとめた。E 主任の確認後,F さんは,Web フォーム導入案を D 部長に提出した。
D 部長は,Web フォーム導入案を承認した。D 部長は,管理サーバ導入に伴う情報システム予算の見直しを情報システム担当役員に説明し,承認を得た。
E 主任と F さんは,管理サーバの導入案と Web フォーム導入案の実装を開始した。
出題趣旨(IPA)
標的型攻撃の事例として,就職活動者を装い,採用担当として公開されている問合せ用メールアドレス宛てにウイルスを含むファイルを送り付ける手口が報告されている。そういった手口に対抗するためには,ウイルス対策について有効性を常に確認し継続的に見直していくことが重要である。本問では,休暇明けのウイルス感染を題材に,システム管理者が実施するウイルス対策能力,及びメールによる問合せ受付の代替としてのWebフォームによる問合せ受付機能の設計能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問1では,連休明けの標的型攻撃によるウイルス感染を題材にして,ウイルス対策について出題した。
設問と解答例
表 2 中の a に入れる適切な字句を,英字 8 字以内で答えよ。
〔a〕解答例
- DNSSEC
解説
本文の根拠
表2 DNSサーバ
DNS 機能では,DNS の拡張仕様である a を用いた,公開鍵暗号方式によるディジタル署名の DNS レコードへの付加と,DNS 応答のディジタル署名の検証が可能である。
DNS の拡張仕様で,公開鍵暗号方式のディジタル署名を DNS レコードに付け,応答の署名を検証できるようにするものは DNSSEC(DNS Security Extensions)である。解答例は“DNSSEC”である。
表2 の記述は,署名を付ける側(権威サーバ)と,応答の署名を検証する側(リゾルバ)の両方の機能を述べている。DNSSEC は RFC 4033〜4035 で定義されており,応答の出どころと改ざんの有無を確かめられるようにするのが目的である。
英字 8 字以内の指定に対し,DNSSEC は 6 字で収まる。共通鍵を使って DNS メッセージを認証する TSIG(RFC 8945)と取り違えないこと。本文は“公開鍵暗号方式によるディジタル署名”と明記しているので,共通鍵方式の仕組みは当てはまらない。
表 2 中の b,c に入れる適切な字句を,それぞれ 10 字以内で答えよ。
〔b〕解答例
- オープン
〔c〕解答例
- エンベロープ
解説
本文の根拠
表2 DNSサーバ
インターネットからの再帰的な名前解決問合せを拒否することによって,この DNS サーバが,b リゾルバとして踏み台にされないようにしている。
表2 外部メールサーバ
SMTP の c 中の宛先情報を用いた不正中継防止設定が可能である。
b:任意の送信元からの再帰的な問合せに答えてしまう DNS サーバを,オープンリゾルバという。これが踏み台にされると,送信元アドレスを偽った問合せで第三者に大量の応答を送り付けるような攻撃に使われる。RFC 5358 は,再帰的な問合せを受け付ける相手を限定することを求めている。本文の“インターネットからの再帰的な名前解決問合せを拒否する”は,その対策に当たる。解答例は“オープン”である。
c:メールの配送先は,SMTP のコマンド(RCPT TO)で指定する宛先情報で決まり,これを封筒(エンベロープ)に見立てる(RFC 5321)。メッセージのヘッダ(To: など)は配送先の決定には使われない。不正中継の防止は,この配送先を見て行うので,解答例は“エンベロープ”である。
字数は b が 4 字,c が 6 字で,どちらも 10 字以内に収まる。b は“オープン”とだけ書く。“オープンリゾルバ”と書くと後ろの“リゾルバ”が重複し,空欄の前後とつながらない。ヘッダとの違いを問う設問なので,“ヘッダ”と答えない。
採点講評(IPA)
設問1(2)のbは,正答率が低かった。オープリゾルバを踏み台にする攻撃事例もあるので,DNSの仕組みと設定をよく理解しておいてほしい。
設問1(2)のcは,正答率が低かった。不正中継防止を確実に行うために,SMTPの仕組みをよく理解しておいてほしい。
表 2 中の d に入れる適切なドメイン名を答えよ。
〔d〕解答例
- n-sha.co.jp
解説
本文の根拠
冒頭
ドメイン名として n-sha.co.jp を使用しており
表2 外部メールサーバ
外部メールサーバは宛先メールアドレスのドメイン名が d であるメールは内部メールサーバに転送し,それ以外のメールは拒否する。
外部メールサーバは,宛先メールアドレスのドメイン名が自社のものであるメールだけを内部メールサーバに転送し,それ以外を拒否する。これが不正中継の防止設定である。N 社のドメイン名は冒頭に示された n-sha.co.jp なので,これが答えである。
表1 のメールアドレスは,従業員用も管理用もすべて@n-sha.co.jp である。したがって,宛先がこのドメインのメールだけを通せば,社外のメールアドレス宛てのメールを外部メールサーバが中継することはない。
問われているのは“ドメイン名”なので,“user@n-sha.co.jp”のようなメールアドレスや,“@n-sha.co.jp”と書かない。字数制限は無いが,本文に出ているとおりに n-sha.co.jp と書く。
図 3 中の e に入れる内容を 15 字以内で答えよ。
〔e〕解答例
- 送信者メールアドレス
解説
本文の根拠
図3 (2)
PC から送信されたメールの場合,送信者メールアドレス
図3 (2)
ここで,e に送信するのではなく,宛先のメールアドレスに送信するのは,e に通知メールを送信すると迷惑メールになる可能性があるからである。
外部メールサーバから転送されたメール,すなわちインターネットから届いたメールでウイルスが検出されたときは,通知を宛先のメールアドレス(社内の受信者)に送る。ここで送り先にしないのは,そのメールの“送信者メールアドレス”である。ウイルスを含むメールの送信者アドレスは偽られていることがあり,そこへ通知を送ると無関係の第三者に迷惑メールを送ることになるからである。解答例は“送信者メールアドレス”である。
図3 は,PC から送信されたメールの場合には送信者メールアドレス(社内の送信者)に通知するとしている。同じ“送信者メールアドレス”でも,社内の PC から出たメールなら本人に知らせる意味があるが,外部から来たメールでは意味が逆になることが,空欄の前後の文でわかる。
字数は 10 字で,15 字以内に収まる。“送信元アドレス”と書いても意味は通じるが,図3 は“送信者メールアドレス”という語を使っているので,それに合わせる。
本文中の下線①について,設定内容を 45 字以内で具体的に述べよ。
解答例
- 脆弱性修正プログラム及びウイルス定義ファイルを提供するサイトに制限する。
解説
本文の根拠
〔PC の管理方法〕
脆弱性修正プログラム及びウイルス定義ファイルを保存した DVD-R(以下,初期設定用 DVD-R という)を使用している。
表4 項番1
項番 1:送信元は初期設定用ネットワーク,宛先はプロキシサーバ,サービスは代替 HTTP,動作は許可,ログは取得する。
表2 プロキシサーバ
URL フィルタリング機能では,ネットワークを送信元として指定したフィルタリングルールを作成することができる。
初期設定用ネットワークは,PC の初期設定(脆弱性修正プログラムの適用とウイルス定義ファイルの更新)に使う。そこで必要な通信先は,脆弱性修正プログラムとウイルス定義ファイルを提供するサイトだけである。表4 の FW は,初期設定用ネットワークからプロキシサーバへの通信を許可しているだけで,サイトの制限はプロキシサーバの URL フィルタリング機能に任されている。この機能は送信元のネットワークを指定できるので,初期設定用ネットワークからは,これらのサイトだけに制限する。解答例は“脆弱性修正プログラム及びウイルス定義ファイルを提供するサイトに制限する。”である。
初期設定用ネットワークに接続した PC は,まだ初期設定が済んでおらず,ウイルス対策も十分でない。そのため,Web サイトの閲覧などの一般の通信を許さず,必要な接続先だけに絞る。
字数は 36 字で,45 字以内に収まる。“接続サイトを制限する”だけでは具体的でないので,何に制限するか(脆弱性修正プログラムとウイルス定義ファイルの提供サイト)を必ず書く。
図 5 中の下線②について,改善された N 社の環境を活用して実施した内容を 45 字以内で具体的に述べよ。
解答例
- 初期設定用ネットワークに接続し,W社の駆除ツールをダウンロードして適用した。
解説
本文の根拠
図5 (4)
G さんの PC を預かり,他の PC やサーバへのネットワークを経由した感染を防ぐために,②先頃,改善された N 社の環境を活用し,マルウェア X を駆除した。
図4
初期設定用ネットワークを,初期設定用 FW を介して本社の L3SW と接続する。
図5 (2)
駆除ツールは,W 社の Web サーバからダウンロードできる。
下線②の“改善された N 社の環境”は,図4 の初期設定用ネットワークである。これは初期設定用 FW を介して本社の L3SW とつながっており,表4 のとおりプロキシサーバへの代替 HTTP 以外は通さない。したがって,感染した PC をここにつないでも,他の PC やサーバへ感染は広がらない。この環境から W 社の Web サーバに接続して駆除ツールをダウンロードし,PC に適用して駆除した。解答例は“初期設定用ネットワークに接続し,W社の駆除ツールをダウンロードして適用した。”である。
通常の管理本部 LAN に PC をつないで駆除ツールをダウンロードすれば,マルウェア X が LAN 内の他の機器に感染するおそれがある。図5 (4) が“ネットワークを経由した感染を防ぐために”と目的を書いているのは,この点を押さえさせるためである。
字数は 38 字で,45 字以内に収まる。“初期設定用ネットワークに接続した”(どこで)と“駆除ツールをダウンロードして適用した”(何をしたか)の二つを落とさない。
本文中の下線③について,追加する設定の内容を 30 字以内で具体的に述べよ。
解答例
- 中継サーバのサーバ名を部分一致でマッチさせる。
解説
本文の根拠
図5 (2)
マルウェア X 中の URL の例を次に示す。http://www.example.com.server.example.net/cmd/command.html
図5 (2)
上記 URL 中の中継サーバ名を次に示す。server.example.net
表2 プロキシサーバ
パターンマッチングの方式には,完全一致,部分一致,前方一致又は後方一致のいずれかを指定する。
マルウェア X の URL は,ホスト名の前半(www.example.com)が攻撃者の C&C サーバの名前で,後半の server.example.net が中継サーバ名である。URL の前に http:// が付き,後ろに /cmd/command.html が付くので,中継サーバ名はその途中に現れる。中継サーバを経由する全てのアクセスを遮断するには,サーバ管理者登録ブラックリストに中継サーバ名 server.example.net を登録し,パターンマッチングの方式は“部分一致”にする。解答例は“中継サーバのサーバ名を部分一致でマッチさせる。”である。
完全一致では URL 全体が一致しない限り遮断できず,前方一致や後方一致では URL の前後に別の文字列が付くので一致しない。中継サーバが同じなら,C&C サーバ名や後ろのパスが変わっても遮断できる点が部分一致の利点である。
字数は 23 字で,30 字以内に収まる。“中継サーバのサーバ名を登録する”だけでは方式が分からないので,“部分一致”の語を必ず入れる。講評が述べているように,方式の取り違えが多かった設問である。
採点講評(IPA)
設問4(2)は,正答率が低かった。パターンマッチングの方式を誤った解答が目立った。パターンマッチングは,URLフィルタリングだけでなく,ログ分析でも使用される。パターンマッチングについて学習しておいてほしい。
本文中の下線④について,調査した内容と対処した内容を併せて 55 字以内で述べよ。
解答例
- Gさん以外の広報グループのメンバに届いたメールを調査し,マルウェアXを含むメールを削除した。
解説
本文の根拠
表1
このメールアドレス宛てに届いたメールは,営業部広報グループのメンバのメールアドレス宛てに同報される。
冒頭
E 主任は,図 5 の(4)では,G さん宛てのメールだけが対象であったので,追加の調査と対処が必要であると指摘した。
図5 (5)
G さん宛てのメールを調査した。マルウェア X の感染の原因と考えられるメールは,5 月 2 日 20 時に届き,SMTP ウイルススキャンが行われたが,スキャン不能であった。
感染の原因は,広報問合せ用メールアドレス宛てに届き,広報グループのメンバに同報されたメールである。同じメールは,G さん以外の広報グループのメンバにも届いている。そこで,G さん以外のメンバに届いたメールを調査し,マルウェア X を含むメールがあれば削除する。解答例は“Gさん以外の広報グループのメンバに届いたメールを調査し,マルウェアXを含むメールを削除した。”である。
図5 (5) では,このメールは SMTP ウイルススキャンでスキャン不能と判定されて素通りしており,G さん以外のメンバが添付ファイルを開けば,同じ感染が起きる。調査は“調査した内容”(G さん以外のメンバ宛てのメール)と,“対処した内容”(マルウェア X を含むメールの削除)の二つを書く。
字数は 46 字で,55 字以内に収まる。調査の対象(広報グループの他のメンバ)と対処(削除)のどちらが欠けても得点にならない。メールの削除だけでなく,マルウェア X を含むと判明したメールを対象にする点を書く。
採点講評(IPA)
設問4(3)は,ウイルス感染が同報メールによるものであることを理解していない解答が散見された。同報メールによってウイルス感染が発生した場合の,調査及び対処の範囲を理解しておいてほしい。
本文中の下線⑤について,変更した内容を 25 字以内で述べよ。
解答例
- スキャン不能の場合も通知するようにした。
解説
本文の根拠
図3 (2)
不検出及びスキャン不能の場合は,結果を通知しない設定としている。
冒頭
パスワードを用いて暗号化されたファイルを添付したメールがインターネットから届いた場合に,メールの受信者に注意を喚起する必要があると指摘した。
図3 (1)
例えば,暗号化されたファイルは,スキャン不能と判定される。
パスワード付きで暗号化されたファイルは SMTP ウイルススキャンで“スキャン不能”と判定され,図3 の通知条件では何も通知されない。注意を喚起するには,スキャン不能の場合も通知するように条件を変更する。解答例は“スキャン不能の場合も通知するようにした。”である。
今回の感染は,スキャン不能と判定されたメールを G さんが開いたことで起きた(図5 (5))。スキャン不能のメールの受信者に注意を促せば,添付ファイルを開く前に,最新のウイルス定義ファイルへの更新などの確認ができる。
字数は 20 字で,25 字以内に収まる。“不検出の場合も通知する”と書くと,問題のないメールすべてに通知が出てしまうので,“スキャン不能”を限定して書く。
本文中の下線⑥について,E 主任と F さんが検討した活用方法を二つ挙げ,それぞれ 50 字以内で述べよ。
〔①〕解答例
- 1週間を超えてフルスキャンが実行されないPCを指定して,フルスキャンを実行させる。
- ウイルス定義ファイルが更新されないPCを指定して,ウイルス定義ファイルを更新させる。
- アップロードされるウイルス感染情報を基に感染したPCを特定し,ウイルスを駆除する。
〔②〕解答例
- 1週間を超えてフルスキャンが実行されないPCを指定して,フルスキャンを実行させる。
- ウイルス定義ファイルが更新されないPCを指定して,ウイルス定義ファイルを更新させる。
- アップロードされるウイルス感染情報を基に感染したPCを特定し,ウイルスを駆除する。
〔備考〕このうち異なる二つを答える(順不同)
解説
本文の根拠
図6 (2)
ウイルス定義ファイルをダウンロードして更新するように,PC に対して動作指示を送信する。
図6 (2)
フルスキャンを実行するように,PC に対して動作指示を送信する。
図6 (2)
PC からアップロードされるウイルス感染情報を保管する。
図6 (3)
管理者は,PC を指定して,ウイルス定義ファイルのダウンロード及び更新,並びにフルスキャン実行の動作指示ができる。
下線⑥は,ウイルス感染を防ぐためのウイルス対策集中管理ソフトの活用方法である。図6 の機能から,三つの活用方法が考えられる。①フルスキャンの実行結果の情報を見て,1 週間を超えてフルスキャンが実行されていない PC を指定し,フルスキャンを実行させる。②ウイルス定義ファイルの更新時刻・バージョン情報を見て,更新されていない PC を指定し,更新させる。③アップロードされるウイルス感染情報から感染した PC を特定し,ウイルスを駆除する。解答例は,この三つの中から異なる二つを答えるものである。
図6 (2) は PC から上がってくる情報(更新時刻とバージョン,フルスキャン実行結果,ウイルス感染情報)を保管し,PC に動作指示を送るとあり,(3) は管理者が PC を指定してその指示を出せるとある。情報の“参照”と指示の“送信”の組合せで,一つの活用方法になる。
字数は 41〜42 字で,50 字以内に収まる。“フルスキャン”や“更新”だけでなく,対象の PC を絞る条件(1 週間を超えて実行されていない,更新されていない)まで書くと,具体的な活用方法になる。
本文中の下線⑦について,連絡用メールアドレスとお問合せ内容に何を入力すれば悪用することができるか。それぞれ 20 字以内で答えよ。
〔連絡用メールアドレス〕解答例
- 攻撃対象のメールアドレス
〔お問合せ内容〕解答例
- 誘導するWebサイトのURL
解説
本文の根拠
冒頭
問合せ内容及び問合せ者の連絡用メールアドレスを入力してもらうと,受付通知メールを連絡用メールアドレス宛てに送信する。
図8
From: saiyou@n-sha.co.jp
図8
To: user-zz@example.ne.jp
図8 の受付通知メールは,N 社の採用問合せ用メールアドレス(saiyou@n-sha.co.jp)から,入力された連絡用メールアドレス宛てに送られ,20〜21 行目にお問合せ内容がそのまま入る。連絡用メールアドレスに攻撃対象のメールアドレスを,お問合せ内容に誘導する Web サイトの URL を入力すれば,N 社の正規のアドレスから攻撃対象に,攻撃者の用意した URL を含むメールを送らせることができる。解答例は,連絡用メールアドレスが“攻撃対象のメールアドレス”,お問合せ内容が“誘導するWebサイトのURL”である。
H さんが受付通知メールを 1〜17 行目だけにするよう指摘したのは,18 行目以降(お名前・連絡用メールアドレスの再掲,お問合せ内容)を外せば,入力した内容が通知に入らず,この悪用ができなくなるからである。
字数は 12 字と 14 字で,どちらも 20 字以内に収まる。“攻撃者のメールアドレス”と書かないこと。受付通知メールの宛先は,攻撃者ではなく攻撃の対象になる第三者である。
図 11 中の f に入れる適切な文字列を一つ挙げ,英字及び記号 15 字以内で答えよ。
〔f〕解答例
- hhttp://ttp
- hhttp://ttps
- hhttps://ttp
- hhttps://ttps
解説
本文の根拠
会話
当社で使用しているメールソフトでは,“http://”と“https://”で始まる文字列だけは,行頭であっても,行中であっても,クリック可能な URL として表示されます。
図10
String resultMailBody = mailBody.replaceAll("(?i)https?://","");
図10 注記
replaceAll は,第 1 引数に指定された正規表現にマッチする全ての文字列を,第 2 引数に指定された文字列に置換するメソッドである。
図10 の処理は,入力文字列から“http://”と“https://”を一度だけ取り除く。取り除いた結果,新しく“http://”ができる文字列を入力すれば,削除後にもクリック可能な URL が残る。例えば f を“hhttp://ttp”にすると,入力は“hhttp://ttp://www.example.ne.jp/~kojin/rirekisho.pdf”になる。先頭から見て最初に一致する“http://”(2 文字目から)を取り除くと“h”と“ttp://www.example.ne.jp/~kojin/rirekisho.pdf”が連なり,“http://www.example.ne.jp/~kojin/rirekisho.pdf”になる。解答例は“hhttp://ttp”など,“hhttp://ttps”“hhttps://ttp”“hhttps://ttps”の 4 通りで,どれか一つを答える。
置換は 1 回だけ行われ,置換後の文字列にもう一度一致するかどうかは調べないので,削除によって前後の文字がつながってしまう入力が有効になる。この対処は不完全なので,F さんは“別の方法”で対処することにした。
字数は 11〜13 字で,英字及び記号 15 字以内に収まる。“http://”の前に何かを足しただけの“xhttp://”では,削除後に“x”が残って URL でなくなる。“h”+“http://”+“ttp”の形に組み立てる。
出典:平成27年度 春期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)