‹ ぱすてく

情報処理安全確保支援士試験

平成30年度 秋期 午後Ⅱ(旧試験)

平成30年度 秋期に実施された情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱの全2問(記述式)の全設問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。事例本文のどこが根拠になるかを示し,IPA の解答例・採点講評と並べています。

この試験について:情報処理安全確保支援士試験について

この年度を解いてみる

問1 クラウド環境におけるセキュリティ対策

クラウド環境におけるセキュリティ対策に関する次の記述を読んで,設問 1~5 に答えよ。

X 社は,日本,米国,欧州に事業を展開している従業員数 80,000 名の製造会社であり,重要インフラ設備を製造している。日本国内の従業員数は 40,000 名である。

X 社のシステムは,サーバ,ネットワーク機器及び PC で構成されている。X 社の日本国内のネットワークの論理構成を,図 1 に示す。

X 社の日本国内のネットワークの論理構成図。東日本データセンタには人事サーバ(Windows),業務サーバ(Windows),業務サーバ(Linux),業務サーバ(商用 UNIX),生産関連サーバ,認証サーバ A1,認証サーバ B1,IPS,FW がある。FW はインターネットに接続し,これらの機器は X 社 社内 WAN に接続されている。X 社 社内 WAN には,X 社工場(生産関連サーバ),X 社拠点(プロジェクトルーム内にプロジェクト専用サーバ(R&D 情報)とプロジェクト専用 PC,プロジェクトルーム外に社内 PC),西日本データセンタが接続されている。西日本データセンタはインターネットにも接続されている。凡例:FW はファイアウォール。人事サーバは X 社の人事管理を行うサーバ。業務サーバは X 社の様々な業務のためのサーバで,部門ごとの業務システムや,国又は地域ごとのメールシステムなどが稼働。認証サーバ A1 は Windows 用の認証サーバ。認証サーバ B1 は Linux 及び商用 UNIX 上で稼働する Web アプリケーションにアクセスする際の利用者認証に用いるリバースプロキシ型の認証サーバ。R&D 情報は基礎研究,並びに開発中の重要インフラ設備の設計及び生産技術に関する情報。プロジェクト専用サーバは R&D 情報を取り扱うプロジェクトで利用するサーバ。プロジェクト専用 PC はプロジェクト専用サーバを利用するための Windows PC。社内 PC はプロジェクト専用サーバ以外の一般業務のための Windows PC。生産関連サーバは重要インフラ設備を製造する工場の設備管理,生産管理,製造に必要な物品の物流管理を行うシステムのサーバ。
図1 X 社の日本国内のネットワークの論理構成

従業員が社内 PC,並びに Windows の業務サーバ及び人事サーバにログオンする際は,認証サーバ A1 による利用者認証が行われる。従業員が Web ブラウザを用いて Linux 及び商用 UNIX の業務サーバにログオンする際は,認証サーバ B1 による利用者認証が行われる。認証サーバ A1 は,人事サーバと連携しており,人事サーバの従業員の情報を日次で反映している。認証サーバ B1 は,認証サーバ A1 の LDAP サービスを利用している。

X 社のシステムには,X 社の情報セキュリティ標準,X 社が事業を展開している各国及び各地域において特定の製品とそれら製品の技術情報を他国又は他地域に持ち出すことを制限した輸出管理規制,並びに①各国及び各地域の個人情報保護に関する法規制の三つに準拠すること(以下,三つに準拠することを基本要件という)が求められる。基本要件の具体的内容は次のとおりである。

X 社は,米国におけるビジネスの強化,IT を活用した新しいビジネスの開発,並びにシステム部門の役割をシステム運用からビジネス企画及びシステム企画へシフトするために,各国及び各地域のシステムをクラウド環境に移行することにした。X 社の経営層は,クラウド環境への移行に関して次の方針を示し,X 社システム部門に具体的な検討を指示した。

IaaS C の主なサービス仕様の内容は次のとおりである。

〔クラウド環境への移行に関する検討〕

X 社システム部門は,次の条件のいずれかに該当するシステム及びサーバは,IaaS C に移行できない又は移行すると基本要件を満たせなくなるとして,現状のまま X 社の工場,データセンタ又は拠点に配置し,X 社システム部門がシステム運用業務を担当することにした。

また,X 社システム部門は,IaaS C と X 社社内ネットワークとの接続においては,X 社が管理する FW 及び IPS を介して接続することにし,さらに IaaS C のサービス仕様上の制約から起こる問題を回避するために,FW の NAT 機能を用いて一部のアドレスを変換することにした。

〔ID 管理及び利用者認証の検討〕

X 社システム部門は,X 社のデータセンタ,工場及び拠点のシステム環境(以下,オンプレミス環境という)に IaaS C,SaaS Q 及び SaaS S を加えた環境(以下,ハイブリッドクラウド環境という)における ID 管理及び利用者認証を次のように設計した。

X 社システム部門は,認証サーバ B1 の配置について,次の二つの案を比較検討した。

X 社システム部門は,それぞれの案において,利用者認証後の通信経路を比較した。その結果,移行の初期段階においては案 1 とし,社内 PC と,オンプレミス環境及び IaaS C 環境それぞれの業務サーバとの間の通信データ量を定期的に測定し,案 2 に変更する時期を見極めることにした。案 1 における日本国内のハイブリッドクラウド環境の論理構成を図 2 に示す。

なお,X 社の各国及び各地域のデータセンタは,VPN を介して IaaS C のデータセンタにアクセスする。

案 1 における日本国内のハイブリッドクラウド環境の論理構成図。東日本データセンタに人事サーバ(Windows),業務サーバ(Windows)㋐,業務サーバ(Linux)㋑,業務サーバ(商用 UNIX)㋒,生産関連サーバ,認証サーバ A1 ㋕,認証サーバ B1 ㋖,IPS ㋗,FW1 ㋘がある。㋐~㋒は各業務サーバを指す矢印の記号,㋕㋖は各認証サーバを指す矢印の記号,㋗は IPS,㋘は FW1 を指す矢印の記号である。FW1 の先のインターネット側の線上に㋙がある。インターネットの右に IaaS C があり,業務サーバ(Windows)㋓,業務サーバ(Linux)㋔,FW2 ㋚,認証サーバ A2 ㋛がある。㋓㋔は各業務サーバ,㋚は FW2,㋛は認証サーバ A2 を指す矢印の記号である。インターネットには SaaS Q と SaaS S も接続されている。X 社 社内 WAN には東日本データセンタの各機器,X 社工場(生産関連サーバ),X 社拠点(プロジェクトルーム内のプロジェクト専用サーバ(R&D 情報)とプロジェクト専用 PC,社内 PC),西日本データセンタが接続され,西日本データセンタはインターネットにも接続されている。
図2 案1における日本国内のハイブリッドクラウド環境の論理構成

〔エンドポイント管理の検討〕

X 社は,独自の情報セキュリティ標準を定めているが,NIST サイバーセキュリティフレームワークとして知られている“重要インフラのサイバーセキュリティを向上させるためのフレームワーク”(以下,NIST CSF という)を基に改定することにした。NIST CSF においては,組織のサイバーセキュリティリスク管理策が NIST CSF で定義されている特性をどの程度達成できているかを示す段階として,②フレームワークインプリメンテーションティア(以下,ティアという)1 からティア 4 までの段階を定義しており,ティア 4 が最も高い段階である。

現状の情報セキュリティ標準と NIST CSF を比較した結果,X 社システム部門は,情報セキュリティ標準を,次のように改定することにした。

改定 1 構成管理システムへの登録

X 社内の各サーバ及び各ネットワーク機器について,管理責任者,機種名及びシリアル番号,OS 及びファームウェアを含むソフトウェアの製品名及びバージョンなどを登録する構成管理システムを整備する。X 社が使用するクラウドサービスについては,システム名,システム管理責任者,クラウドサービスの名称,X 社側で管理する必要があるソフトウェアの製品名及びバージョンなどを構成管理システムに登録する。PC についても,使用者,管理責任者,機種名,シリアル番号,OS を含むソフトウェアの製品名及びバージョンなどを構成管理システムに登録する。

改定 2 サーバ及び PC のセキュリティチェックの実施

脆弱性修正プログラム(以下,パッチという)の適用状況及びセキュリティ設定パラメタの設定値を定期的にチェックする。必要なパッチが未適用であったり,セキュリティ設定パラメタの設定値が X 社の標準値ではない場合,サーバ,ネットワーク機器及びシステムの管理責任者,又は PC の管理責任者,並びにその所属長に通知し,1 週間以内の是正を求める。X 社の標準値は,NIST が公開している National Checklist Program Repository にあるチェックリストを参考にして決定する。

改定 3 脆弱性管理の実施

サーバ,ネットワーク機器及び PC において,使用している OS 及びファームウェアを含むソフトウェアの脆弱性情報,及びクラウドサービスにおいて X 社側で管理する必要があるソフトウェアの脆弱性情報が新たに公開された場合は,その重要度を評価し,重要度に応じた期限内にパッチを適用するよう,サーバ,ネットワーク機器及びシステムの管理責任者,又は PC の管理責任者,並びにその所属長に通知する。

なお,上記の改定は,クラウド環境への移行に関する検討結果には影響しない。

X 社システム部門は,三つの改定に伴って必要になる運用について,J 社に運用サービスの提案を求めた。J 社からは,サーバ及び PC で使用するソフトウェア(以下,標準ソフトウェアという)の一覧を運用サービス契約時に取り決めた上で,次の運用サービスを提供できるという回答があった。

製品 D の仕様は次のとおりである。

〔モバイル環境の検討〕

X 社システム部門は,従業員が出張先や自宅からでも社内にいるのと同様に業務ができるよう,モバイル PC とスマートフォン(以下,二つを併せてモバイル端末という)を従業員に貸与し,インターネット経由で社内システムやクラウド環境に Web のインタフェースを介してアクセスできるモバイル環境を検討した。モバイル環境においては,モバイル端末からの情報漏えい,モバイル端末のマルウェア感染などのリスクが懸念されることから,次の対策を実施することにした。

認証サーバ B1 による利用者認証においては,認証サーバ B1 が提供するリスクベース認証の機能が利用され,パッチ適用状況やセキュリティ設定に問題のあるモバイル端末からのアクセスを拒否する。

X 社システム部門は,モバイル環境の導入に伴い,負荷の観点から再度認証サーバ B1 の配置を見直すことにし,次の三つの案を比較検討した。

X 社システム部門は,三つの案を,社内 PC 及びモバイル端末から業務サーバへの利用者認証後のアクセスにおける通信経路上の構成要素ごとの負荷の観点から比較し,案 C を選択した。

X 社が設計した,モバイル環境を含む日本国内のハイブリッドクラウド環境の論理構成を図 3 に示す。

モバイル環境を含む日本国内のハイブリッドクラウド環境の論理構成図。東日本データセンタに人事サーバ(Windows),業務サーバ(Windows)Ⓐ,業務サーバ(Linux)Ⓑ,業務サーバ(商用 UNIX),生産関連サーバ,認証サーバ A1,認証サーバ B1,VPN サーバ,IPS,FW1 がある。Ⓐ,Ⓑは各業務サーバを指す矢印の記号である。FW1 はインターネットに接続されている。インターネットの右の IaaS C に,業務サーバ(Windows)Ⓒ,業務サーバ(Linux)Ⓓ,FW2,認証サーバ A2,認証サーバ B2 がある。Ⓒ,Ⓓは各業務サーバを指す矢印の記号である。インターネットには SaaS Q(Ⓔ),SaaS S(Ⓕ),スマートフォン(Ⓗ),モバイル PC(Ⓘ)も接続されている。Ⓔ~Ⓘは各装置を指す矢印の記号である。社内 PC(X 社拠点内)を指す矢印の記号はⒼである。X 社 社内 WAN には東日本データセンタの各機器,X 社工場(生産関連サーバ),X 社拠点(プロジェクトルーム内のプロジェクト専用サーバ(R&D 情報)とプロジェクト専用 PC,社内 PC),西日本データセンタが接続され,西日本データセンタはインターネットにも接続されている。
図3 モバイル環境を含む日本国内のハイブリッドクラウド環境の論理構成

図 3 において,従業員がスマートフォンから SaaS Q にアクセスする際の通信シーケンスを図 4 に示す。

従業員がスマートフォンから SaaS Q にアクセスする際の通信シーケンス図。登場するのは左から,スマートフォン,VPN サーバ,認証サーバ B1,認証サーバ A1,SaaS Q。上から順に,スマートフォンから SaaS Q へのアクセス要求(トークンなし),空欄 a,スマートフォン内の処理「認証サーバ B1 へのアクセスに必要な VPN クライアントの起動」,空欄 b,空欄 c,空欄 d,VPN サーバ内の処理「クライアント証明書の検証」,VPN サーバからスマートフォンへの接続 OK(IP アドレス割当て),空欄 e,空欄 f,空欄 g,認証サーバ B1 から認証サーバ A1 への利用者 ID,パスワードの検証要求,認証サーバ A1 から認証サーバ B1 への検証 OK,認証サーバ B1 からスマートフォンへのパッチ適用状況及びセキュリティ設定の確認要求,スマートフォンから認証サーバ B1 への確認結果,認証サーバ B1 内の処理「確認結果の検証」,空欄 h,スマートフォンから SaaS Q へのアクセス要求(認証サーバ B1 が発行したトークン)。空欄 a~h はそれぞれ横長の枠で,通信メッセージが入る。
図4 従業員がスマートフォンから SaaS Q にアクセスする際の通信シーケンス

X 社システム部門は,モバイル端末からの利用を想定したハイブリッドクラウド環境の設計,及び SaaS S に移行する二つの業務システムについて経営層の承認を得て,システムのクラウド環境への移行とモバイル環境の導入を開始した。

設問 5(2)の解答群。登場するのは左から,スマートフォン,VPN サーバ,認証サーバ B1,認証サーバ A1,SaaS Q。ア:スマートフォンから VPN サーバへ「クライアント証明書」。イ:VPN サーバからスマートフォンへ「クライアント証明書の要求」。ウ:スマートフォンから VPN サーバへ「接続要求」。エ:認証サーバ B1 からスマートフォンへ「トークンの発行」。オ:スマートフォンから認証サーバ B1 へ「トークン発行要求」。カ:SaaS Q からスマートフォンへ「認証サーバ B1 が発行したトークン要求」。キ:スマートフォンから認証サーバ B1 へ「利用者 ID,パスワード」。ク:認証サーバ B1 からスマートフォンへ「利用者 ID 及びパスワードの入力要求」。

出題趣旨(IPA)

クラウドサービスが普及している一方,企業・組織にはクラウド環境に移行できないシステムも存在している。このような背景から,当面,企業・組織は,オンプレミス環境とクラウド環境が併存するハイブリッドクラウド環境においてシステムを運用する必要性に迫られている。ハイブリッドクラウド環境においても,セキュリティの確保は重要な考慮点であるが,ハイブリッドクラウド環境のセキュリティ設計においては,クラウド環境に移行すべきシステムの選定,ハイブリッドクラウド環境における利用者ID管理及びアクセス管理,クラウド環境におけるエンドポイント管理,モバイル環境の考慮といった点がしばしば議論になる。本問では,ハイブリッドクラウド環境におけるセキュリティ設計に関する知識と能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問1では,クラウド環境におけるセキュリティ対策について出題した。全体として,正答率は高かった。実務的な設問が多かったため,実務経験者にとっては解きやすい問題だったと思われる。

設問と解答例

設問1 4字以内

本文中の下線①について,2018 年 5 月 25 日に適用が開始された欧州連合の規則の略称を英字 4 字で答えよ。

解答例

  • GDPR
解説

本文の根拠

本文 冒頭

日本,米国,欧州に事業を展開している従業員数 80,000 名の製造会社

本文 下線①

各国及び各地域の個人情報保護に関する法規制

2018 年 5 月 25 日に適用が開始された欧州連合の規則は,GDPR(General Data Protection Regulation,一般データ保護規則)である。EU 域内の個人データの取扱いと域外への移転を定める規則で,正式には Regulation (EU) 2016/679 という。

X 社は欧州にも事業を展開しており,基本要件の一つに“各国及び各地域の個人情報保護に関する法規制”への準拠が挙がっている。欧州に事業所や従業員がある以上,この法規制には EU の個人情報保護の規則が含まれる。

英字 4 字の指定なので,略称の GDPR だけを書く。日本の個人情報保護法のような国内法の名前や,正式名称の和訳を書かないこと。解答例は 4 字である。

採点講評(IPA)

設問1は,正答率が低かった。欧州だけでなく,日本における個人情報保護にも影響を与える規則であるので,知識として知っておいてほしい。

設問2(1) 60字以内

条件 2 について,プロジェクト専用サーバをクラウド環境に移行した場合に満たせなくなる基本要件の具体的内容を,60 字以内で述べよ。

解答例

  • R&D情報は,物理的な入退室管理が行われているプロジェクトルーム内に配置されたプロジェクト専用サーバに保管する。
解説

本文の根拠

本文 基本要件の具体的内容

R&D 情報は,物理的な入退室管理が行われているプロジェクトルーム内に配置されたプロジェクト専用サーバに保管する。

〔クラウド環境への移行に関する検討〕 条件 2

条件 2 プロジェクト専用サーバ

基本要件のうちプロジェクト専用サーバに直接関わるのは,“R&D 情報を,入退室管理が行われているプロジェクトルーム内のプロジェクト専用サーバに保管する”という保管場所の要件である。IaaS C に移行すると,サーバは H 社のデータセンタ内の仮想マシンになり,X 社のプロジェクトルームの外に置かれる。そのため,プロジェクトルームの物理的な入退室管理の下に置く,という要件が満たせなくなる。

本文の基本要件には“プロジェクト専用サーバには,プロジェクトルーム内のプロジェクト専用 PC からだけアクセスさせる”という要件もあるが,これは通信経路の制限で,クラウドに移しても FW などで実現しうる。移行によって満たせなくなる点として問われているのは,サーバを置く場所に関する要件の方である。

解答例は基本要件の文をほぼそのまま用いて 56 字で,60 字以内に収まる。要件の文を自分の言葉で言い換えると,“物理的な入退室管理”や“プロジェクトルーム内”の語が抜けやすいので,原文の語を残す。

設問2(2) 解答欄4つ

条件 4 について,生産関連サーバをクラウド環境に移行し,かつ IaaS C の本文中に示したサービスを全て利用した場合に満たせなくなる基本要件の具体的内容を三つ挙げ,それぞれ 50 字以内で述べよ。また,挙げた三つのうちの一つの理由となる IaaS C のサービス仕様の内容を,50 字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • 生産関連サーバは,X社の工場及びデータセンタに配置する。
  • 生産関連サーバのバックアップを他の工場又はデータセンタに配置する。
  • 同じ重要インフラ設備を製造する工場及び生産関連サーバは同一の国又は地域内の2か所以上に配置する。

〔②〕解答例

  • 生産関連サーバは,X社の工場及びデータセンタに配置する。
  • 生産関連サーバのバックアップを他の工場又はデータセンタに配置する。
  • 同じ重要インフラ設備を製造する工場及び生産関連サーバは同一の国又は地域内の2か所以上に配置する。

〔③〕解答例

  • 生産関連サーバは,X社の工場及びデータセンタに配置する。
  • 生産関連サーバのバックアップを他の工場又はデータセンタに配置する。
  • 同じ重要インフラ設備を製造する工場及び生産関連サーバは同一の国又は地域内の2か所以上に配置する。

〔IaaSCのサービス仕様の内容〕解答例

  • 日本国内のデータセンタが被災した場合はシンガポールのデータセンタでサービスが継続される。

〔備考〕①~③は,このうち異なる三つを答える(順不同)

解説

本文の根拠

本文 基本要件の具体的内容

生産関連サーバは,X 社の工場及びデータセンタに配置する。

本文 基本要件の具体的内容

生産関連サーバは,重要インフラ設備の製造の事業継続のために,バックアップを他の工場又はデータセンタに配置する。

本文 基本要件の具体的内容

同じ重要インフラ設備を製造する工場及び生産関連サーバは同一の国又は地域内の 2 か所以上に配置する。

本文 IaaS C のサービス仕様

日本国内のデータセンタが被災した場合はシンガポールのデータセンタでサービスが継続される。

基本要件のうち生産関連サーバを取り上げた箇条は三つある。(a) X 社の工場及びデータセンタに配置する,(b) バックアップを他の工場又はデータセンタに配置する,(c) 同じ重要インフラ設備を製造する工場及び生産関連サーバは同一の国又は地域内の 2 か所以上に配置する。生産関連サーバを IaaS C に移行すると,(a) の配置先は X 社の工場やデータセンタではなく H 社のデータセンタになり,(b) のバックアップの置き場所も X 社の工場・データセンタでなくなる。解答例は三つとも,この三つの箇条をほぼそのまま挙げており。三つの異なる箇条を答える設問なので,書く順序は問わない。

サービス仕様の側で理由になるのは,“日本国内のデータセンタが被災した場合はシンガポールのデータセンタでサービスが継続される”という内容である。IaaS C の日本国内のデータセンタは 1 か所だけで,その被災時に生産関連サーバが動くのは国外のシンガポールである。このため (c)“同一の国又は地域内の 2 か所以上”の要件が満たせなくなる(国内の拠点が 1 か所,もう一つが国外)。

要件ごとの字数は 50 字以内で,解答例は 28 字,33 字,48 字である。サービス仕様の内容は 44 字(50 字以内)で,“被災したらシンガポールで継続”という条件と結果の両方を書く。講評でも,要件や仕様を言葉で正確に表現できていない解答が多かったと指摘されている。

採点講評(IPA)

設問2(2)は,正答率は高かったが,要件や仕様を言葉で正確に表現できていない解答が多く見受けられた。文書において,要件や仕様を言葉で正確に表現する能力を身につけてほしい。

設問2(3) 70字以内

X 社社内ネットワークと IaaS C との接続において,FW の NAT 機能を用いることにしたのはどのような問題を回避するためだと考えられるか。IaaS C のサービス仕様の制約から起こる問題を 70 字以内で述べよ。

解答例

  • X社のシステムの機器に割り当てているIPアドレスが,IaaSCで予約されているプライベートアドレスと重複する可能性があるという問題
解説

本文の根拠

本文 基本要件の具体的内容

X 社のシステムの機器には,プライベート IP アドレスを割り当てる。

本文 IaaS C のサービス仕様

あらかじめ予約されているプライベート IP アドレスがあり,利用者はそれらを使うことができない。

〔クラウド環境への移行に関する検討〕

FW の NAT 機能を用いて一部のアドレスを変換することにした。

X 社のシステムの機器にはプライベート IP アドレスを割り当てる,と基本要件で決まっている。一方,IaaS C にはあらかじめ予約されているプライベート IP アドレスがあり,利用者はそれらを使えない。X 社の機器が,その予約されたアドレスと同じアドレスを既に使っていると,IaaS C 側に同じアドレスの機器が現れたり,X 社の機器と IaaS C の予約アドレスが区別できなくなったりして,通信できない。

この衝突を避けるために,FW の NAT 機能で一部のアドレスを別のアドレスに変換する。問われているのは“IaaS C のサービス仕様の制約から起こる問題”なので,X 社社内のアドレスの付け方の問題ではなく,IaaS C の予約アドレスとの重複を書く。

解答例は 65 字(70 字以内)で,“割り当てているアドレス”“IaaS C で予約されているプライベートアドレス”“重複する可能性”の三点を含む。“アドレス不足”のような別の理由を書かないこと。

設問3(1) 30字以内

各認証サーバ及び各 SaaS を SAML 2.0 プロトコルや SPNEGO プロトコルで通信させることによって,X 社の従業員にはどのような利便性が提供されるか。30 字以内で述べよ。

解答例

  • 一度のログインで全システムにアクセスできるという利便性
解説

本文の根拠

〔ID 管理及び利用者認証の検討〕

認証サーバ B1 をバージョンアップし,新バージョンで提供された SPNEGO プロトコルによって,認証サーバ B1 が認証サーバ A1 と通信し,認証サーバ A1 が発行するトークンを用いて利用者認証を行うようにする。

〔ID 管理及び利用者認証の検討〕

SaaS Q 及び SaaS S は,認証サーバ B1 と SAML 2.0 プロトコルで通信し,認証サーバ B1 が発行するトークンを用いて利用者認証を行う。

SPNEGO(RFC 4178,GSS-API の認証方式を交渉するための仕組み)と SAML 2.0(認証結果などを XML で受け渡す OASIS の仕様)で認証サーバどうしや SaaS が連携すると,ある認証サーバが利用者を認証して発行したトークンを,ほかのシステムが受け取って認証済みとして扱える。したがって従業員は,各システムで別々にログオンしなくても,一度のログインで全システムを利用できる。いわゆるシングルサインオン(SSO)の利便性である。

本文では,認証サーバ A1 が発行するトークンを B1 が用い,B1 が発行するトークンを SaaS Q,SaaS S が用いる,という連鎖になっており,オンプレミスの Windows 用,Linux 及び商用 UNIX 用,クラウドの SaaS がつながる。

30 字以内なので,“一度のログインで”“全システムにアクセスできる”の二点を書く。解答例は 27 字である。“パスワードを覚えなくてよい”のような別の利点の書き方にそれてしまうと,認証連携の効果が答えになっていない。

設問3(2) 解答欄2つ

案 2 を選択した場合,案 1 と比べて,利用者認証後の通信経路上の構成要素の負荷が高くなるのは,社内 PC からどの業務サーバへの通信か。全て選び,図 2 中の記号㋐~㋛で答えよ。また,負荷が高くなる構成要素を全て選び,同じく図 2 中の記号㋐~㋛で答えよ。

〔業務サーバ〕解答例

  • ㋑,㋒

〔構成要素〕解答例

  • ㋗,㋘,㋙,㋚
解説

本文の根拠

図1 凡例

Linux 及び商用 UNIX 上で稼働する Web アプリケーションにアクセスする際の利用者認証に用いるリバースプロキシ型の認証サーバ

〔ID 管理及び利用者認証の検討〕 案 2

案 2 認証サーバ B1 を IaaS C に移行する。

図2 記号の説明

㋗は IPS,㋘は FW1 を指す矢印の記号である

認証サーバ B1 は,Linux 及び商用 UNIX の業務サーバにアクセスするときの利用者認証に使う,リバースプロキシ型の認証サーバである。リバースプロキシ型なので,認証後の通信も B1 を経由する。案 1 では B1 がオンプレミスの東日本データセンタにあり,社内 PC から同じデータセンタの Linux(㋑)・商用 UNIX(㋒)の業務サーバへの通信は,B1 を含めて内部で完結する。案 2 で B1 を IaaS C に移すと,この通信は,IPS(㋗),FW1(㋘),インターネット(㋙),FW2(㋚)を通って IaaS C の B1 に行き,再び戻ってくる。業務サーバは㋑,㋒,負荷が高くなる構成要素は㋗,㋘,㋙,㋚である。

Windows の業務サーバ(㋐)は認証サーバ A1 を使うので,B1 の移行の影響を受けない。IaaS C の Linux 業務サーバ(㋔)は,B1 が IaaS C 内に移る案 2 の方が認証の経路が短くなり,Windows の㋓は A2 を使うので,どちらも負荷が高くなる側ではない。

間違えやすい点:負荷が上がるのは社内 PC から“B1 を使う業務サーバ”への通信に限る。㋐(Windows)は A1 を使うので含めない。

設問4(1) 解答欄3つ

本文中の下線②について,ティア 1 からティア 3 に該当するものを,解答群の中から選び,それぞれ記号で答えよ。 解答群 ア 繰返し適用可能である(Repeatable) イ 部分的である(Partial) ウ リスク情報を活用している(Risk Informed)

〔ティア1〕解答例

  • イ

〔ティア2〕解答例

  • ウ

〔ティア3〕解答例

  • ア
解説

本文の根拠

〔エンドポイント管理の検討〕 下線②

フレームワークインプリメンテーションティア(以下,ティアという)1 からティア 4 までの段階を定義しており,ティア 4 が最も高い段階である。

NIST Cybersecurity Framework(バージョン 1.1)のフレームワークインプリメンテーションティアは,次の 4 段階である。ティア 1 は Partial(部分的である:リスク管理が定型化されておらず,場当たり的),ティア 2 は Risk Informed(リスク情報を活用している:リスク管理策が経営層に承認されているが組織全体の方針にはなっていない),ティア 3 は Repeatable(繰返し適用可能である:正式な方針として定められ,定期的に見直される),ティア 4 は Adaptive(適応的である)。したがってティア 1=イ,ティア 2=ウ,ティア 3=ア。

本文は“ティア 4 が最も高い段階である”と書いているので,解答群に無い Adaptive(適応的)がティア 4 に当たることも分かる。

間違えやすい点:Repeatable(繰返し)が最上位に見えるが,繰返し適用できるのはティア 3 であり,ティア 2 の Risk Informed(リスク情報を活用)の方が下位。名前の字面で順番を決めず,Partial → Risk Informed → Repeatable → Adaptive の順で覚える。

設問4(2) 40字以内

運用サービス 1 及び 2 が提供される場合,標準ソフトウェア以外のソフトウェアがサーバ又は PC に導入されていたとすると,セキュリティ管理上どのような不都合が生じるか。40 字以内で述べよ。

解答例

  • 標準ソフトウェア以外のソフトウェアは,脆弱性管理がされないという不都合
解説

本文の根拠

〔エンドポイント管理の検討〕

サーバ及び PC で使用するソフトウェア(以下,標準ソフトウェアという)の一覧を運用サービス契約時に取り決めた上で,次の運用サービスを提供できるという回答があった。

〔エンドポイント管理の検討〕 運用サービス 1

運用サービス 1 標準ソフトウェアに関する脆弱性情報を日次で収集する。

J 社の運用サービスは,契約時に取り決めた標準ソフトウェアの一覧を対象にしている。運用サービス 1 は“標準ソフトウェアに関する”脆弱性情報を収集し,運用サービス 2 の製品 D は,その情報を用いて“標準ソフトウェア”のパッチ適用状況とセキュリティ設定を監視する。標準ソフトウェア以外のソフトウェアが導入されていると,その脆弱性情報は集められず,パッチ適用状況も監視されない。つまり,そのソフトウェアは脆弱性管理の対象外になる。

改定 3“脆弱性管理の実施”が求めるのは,使用しているソフトウェアの脆弱性情報が公開されたら重要度を評価して期限内にパッチを適用することだが,標準外のものはその仕組みに乗らず,X 社の標準に沿った管理にならない。

40 字以内なので,“標準ソフトウェア以外のソフトウェア”と“脆弱性管理がされない”をそろえる。解答例は 35 字である。講評でも,不都合の内容を言葉で正確に表現できていない解答が多かった(正答率は低かった)とされているので,“管理しきれない”などの曖昧な書き方にせず,何の管理が行われないのかを書く。

採点講評(IPA)

設問4(2)は,正答率が低かった。この設問においても,不都合の内容を言葉で正確に表現できていない解答が多く見受けられた。文書において,言葉で正確に表現する能力を身につけてほしい。

設問4(3) 解答欄2つ

情報セキュリティ標準を基に手作業及び目視でセキュリティ設定パラメタの設定値をチェックする方法と比べて,製品 D による方法は,どのような利点があるか。二つ挙げ,それぞれ 15 字以内で答えよ。

〔①〕解答例

  • 正確である。

〔②〕解答例

  • 作業が速くできる。
解説

本文の根拠

製品 D の仕様

同様に,セキュリティ設定パラメタの設定値が指定した値と異なるサーバ及び PC の一覧を表示することができる。

製品 D の仕様

1 回の操作で,選択したサーバ又は PC のセキュリティ設定パラメタの設定値を指定した値に変更することができる。

製品 D のエージェントがサーバ・PC の設定値を自動で収集し,管理画面が指定値と異なるものを一覧表示する。手作業と目視によるチェックと比べると,(1) 機械が収集・比較するので,見落としや読み違いが少なく,結果が正確になる,(2) 1 回の操作で一覧から選んだ台数分の設定値を指定値に変更できるので,多数の機器でも作業が速く終わる,の二つの利点がある。解答例は“正確である。”(6 字)と“作業が速くできる。”(9 字)である。

製品 D の仕様には“日次で監視する”こともあるが,この設問は“チェックする方法”の比較なので,確認と変更を 1 回の操作で行える点と,機械による一覧表示の点を,それぞれ 15 字以内で書く。

コスト削減や“セキュリティ設定が強制できる”などは,本文の製品 D の仕様からは読み取れない(強制は製品 F の対策 1 の説明にある語である)。15 字以内なので,名詞か短い文で言い切る。

採点講評(IPA)

設問4(3)は,正答率が低かった。運用管理ツールの効果を正しく理解し,ツールを有効に活用する能力を身につけてほしい。

設問5(1) 解答欄5つ

案 A 及び B における利用者認証後の通信経路のうち,案 C に比べて通信経路上の構成要素の負荷が高くなるのは,どのクライアントからどの業務サーバへの通信か。案 A については 2 組み,案 B については 3 組み挙げ,それぞれ図 3 中の記号Ⓐ~Ⓘで答えよ。

〔案A①〕解答例

  • Ⓗ,Ⓓ

〔案A②〕解答例

  • Ⓘ,Ⓓ

〔案B①〕解答例

  • Ⓖ,Ⓑ

〔案B②〕解答例

  • Ⓗ,Ⓑ

〔案B③〕解答例

  • Ⓘ,Ⓑ

〔備考〕各組は(クライアント,業務サーバ)の順

解説

本文の根拠

〔モバイル環境の検討〕 案 C

新たに IaaS C に認証サーバ B1 と同じ製品を用いた認証サーバ B2 を配置し,従業員が IaaS C に配置された Linux の業務サーバ上で稼働する Web アプリケーションにアクセスする際の利用者認証に用いる。

〔モバイル環境の検討〕 対策 2

モバイル端末が,X 社のデータセンタに接続した後,認証サーバ B1 による利用者認証が行われ,トークンが発行される。

図3 記号の説明

インターネットには SaaS Q(Ⓔ),SaaS S(Ⓕ),スマートフォン(Ⓗ),モバイル PC(Ⓘ)も接続されている。

案 C は,IaaS C の Linux 業務サーバ(Ⓓ)の利用者認証を IaaS C 内の B2 で行い,オンプレミスの Linux 業務サーバ(Ⓑ)の認証は従来どおり B1(オンプレミス)で行う構成で,どちらも認証を行う場所と業務サーバが同じ側にある。

案 A は B1 だけがオンプレミスにあるので,IaaS C の Linux 業務サーバ(Ⓓ)にアクセスするとき,利用者認証もその後の通信(B1 はリバースプロキシ型)もオンプレミスの B1 を経由する。社内 PC(Ⓖ)からのアクセスは,案 C でもオンプレミス→ IaaS C の経路を通るので増えず,増えるのは,案 C ならインターネットから IaaS C に直接入れるスマートフォン(Ⓗ)とモバイル PC(Ⓘ)からの通信で,対策 2 によりいったん X 社のデータセンタで認証を受けてから IaaS C に行くことになる。したがって案 A は(Ⓗ,Ⓓ),(Ⓘ,Ⓓ)の 2 組。

案 B は B1 が IaaS C にあるので,オンプレミスの Linux 業務サーバ(Ⓑ)への通信は,Ⓖ,Ⓗ,Ⓘのどれからも IaaS C の B1 を経由することになり,案 C より経路が長くなる。(Ⓖ,Ⓑ),(Ⓗ,Ⓑ),(Ⓘ,Ⓑ)の 3 組。

間違えやすい点:Windows の業務サーバ(Ⓐ,Ⓒ)は認証サーバ A1・A2 を使うので B1 の配置に影響されない。クライアントと業務サーバの順(クライアント,業務サーバ)を入れ替えない。

設問5(2) 解答欄8つ

図 4 中の a~h に入れる適切な通信メッセージを,解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群は,図に示す。

〔a〕解答例

  • カ

〔b〕解答例

  • ウ

〔c〕解答例

  • イ

〔d〕解答例

  • ア

〔e〕解答例

  • オ

〔f〕解答例

  • ク

〔g〕解答例

  • キ

〔h〕解答例

  • エ
解説

本文の根拠

図4 シーケンス

スマートフォンから SaaS Q へのアクセス要求(トークンなし),空欄 a,スマートフォン内の処理「認証サーバ B1 へのアクセスに必要な VPN クライアントの起動」,空欄 b,空欄 c,空欄 d,VPN サーバ内の処理「クライアント証明書の検証」

〔モバイル環境の検討〕 対策 2

VPN サーバでクライアント証明書を用いた端末認証が行われる。

図4 シーケンス

認証サーバ B1 から認証サーバ A1 への利用者 ID,パスワードの検証要求

a:トークンなしでアクセスしたスマートフォンに,SaaS Q が“認証サーバ B1 が発行したトークン要求”(カ)を返す。これを受けて,B1 に届くための VPN クライアントが起動する。b〜d:VPN サーバへの接続要求(ウ,b),VPN サーバからのクライアント証明書の要求(イ,c),スマートフォンからのクライアント証明書の送付(ア,d)の順で端末認証が進み,VPN サーバが証明書を検証して接続 OK(IP アドレスを割り当て)を返す。e〜g:VPN の接続後に,スマートフォンが B1 にトークン発行要求(オ,e)を出し,B1 が利用者 ID 及びパスワードの入力要求(ク,f)を返し,利用者が入力した利用者 ID,パスワード(キ,g)を B1 に送る。B1 はそれを認証サーバ A1 に検証させ,パッチ適用状況の確認を行った後,h:B1 がトークンを発行(エ,h)し,スマートフォンはそのトークンを付けて SaaS Q にアクセスする。

本文は VPN サーバで端末認証,B1 で利用者認証と書いているので,端末認証(b〜d)が先で,利用者認証(e〜g)が後になる。

間違えやすい点:イ(要求)とア(送付)は矢印の向きが逆,ク(入力要求)とキ(入力)も向きが逆である。エ(トークンの発行)は最後にスマートフォンへ返すもので,オ(要求)が先。

出典:平成30年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 セキュリティインシデントへの対応

セキュリティインシデントへの対応に関する次の記述を読んで,設問 1~5 に答えよ。

A 社は,玩具を製造販売する従業員数 1,500 名の企業である。A 社の組織図を図 1 に示す。

A 社の組織図。社長の下に内部監査室が置かれ(社長と内部監査室は線で結ばれている),社長の直下に営業部,開発部,システム部,総務部,人事部,財務経理部が並ぶ。
図1 A 社の組織図

A 社は,情報セキュリティ基本方針を定めており,これに従い,情報セキュリティ委員会を設けている。情報セキュリティ委員会は,A 社の情報セキュリティについて意思決定する。情報セキュリティ委員会の委員長は社長,委員は各部の部長であり,事務局は総務部が担当する。情報セキュリティ委員会は,下部組織として,セキュリティインシデント(以下,インシデントという)に対応する非常時対応チームをもつ。非常時対応チームには,各部の代表者が参加する。ただし,非常時対応チームが取り扱うべきインシデントの範囲や,具体的な活動内容は明文化されていない。これまでのところ,非常時対応チームの活動実績は極めて少ない。

〔ネットワーク構成〕

A 社は,国内に本社を置き,海外に工場をもつ。A 社のネットワーク構成を図 2 に示す。

A 社のネットワーク構成図。インターネットに A 社工場(海外)と A 社本社の FW が接続されている。A 社本社には DMZ,サーバ LAN,開発 LAN,業務 PC-LAN がある。DMZ には外部 DNS サーバ,外部メールサーバ,プロキシサーバがあり,これらは DMZ 内の L2SW に接続され,その L2SW が FW に接続されている。FW は L3SW に接続されている。L3SW には,業務 PC-LAN(省略記号で示される),サーバ LAN 内の L2SW,開発 LAN 内の L2SW が接続されている。サーバ LAN の L2SW には認証サーバと複数の部門サーバが接続されている。開発 LAN の L2SW には複数の開発用サーバが接続されている。凡例:FW はファイアウォール,L2SW はレイヤ 2 スイッチ,L3SW はレイヤ 3 スイッチ,部門サーバは各部専用のサーバ,開発用サーバは開発に用いる専用のサーバ。注記 1:個別の PC の記載は省略している。注記 2:開発業務に用いる PC は開発 LAN に接続し,ほかの PC は業務 PC-LAN に接続している。
図2 A 社のネットワーク構成(概要)

A 社本社のネットワークに接続する機器には,サーバ,ネットワーク機器及び PC がある。各部は,必要に応じて部門サーバをサーバ LAN に設置し,業務に利用している。各部の部門サーバは,各部が管理している。開発部は,開発部の部門サーバに加えて,開発用サーバを設置し,管理している。部門サーバと開発用サーバ以外のサーバ,全てのネットワーク機器及び全ての PC は,システム部が管理している。各部でシステム管理者を任命し,そのシステム管理者が適切に機器を管理するというのが A 社の機器管理方針である。

DMZ に設置されたサーバにはグローバル IP アドレスが付与され,インターネットとの間で通信できる。DMZ 以外に設置された機器には固定のプライベート IP アドレスが付与され,インターネットとの間の直接の通信は FW によって禁止されている。ただし,業務 PC-LAN に接続された PC は,プロキシサーバを介してインターネットにアクセスできる。プロキシサーバは直近 60 日分のログを保存している。開発 LAN から DMZ への通信は,FW によって禁止されている。

〔情報漏えいの発生〕

2018 年 9 月 11 日,A 社において,インシデント(以下,本インシデントをインシデント P という)が発覚した。この日,A 社の商品問合せ窓口に,A 社の発売前の新製品 α の操作説明書(以下,漏えい文書 X という)がインターネットの掲示板 U に投稿されている旨の通報が寄せられた。開発部の担当者が確認したところ,投稿されていたのは間違いなく A 社のもので,開発過程で作成された文書であることが分かった。

情報セキュリティ委員会は,インシデント P への対応方法を議論した。同委員会は,次の理由から,非常時対応チームではなく,当該文書を所管する開発部がインシデント P に対応することを決定した。

開発部は,急きょ,インシデント P に対応するためのチーム(以下,開発部対応チームという)を立ち上げ,対応を開始した。同チームの調査結果と措置状況を図 3 に示す。

開発部対応チームの調査結果と措置状況(概要)を示す枠囲みの文章。(1) 開発部対応チームの調査活動の目的:インシデント P の原因を調べて,必要な措置を講じること。(2) 調査の範囲:検討の結果,開発用サーバ及び開発部の部門サーバを主な調査対象とした。(3) 調査によって判明したこと:漏えい文書 X は,開発部の部門サーバに保管されていた文書 Y と内容が同じだった。文書 Y は,8 月 29 日前後に作成された。文書 Y が保管されていた部門サーバは,開発部のメンバなら誰でもアクセスでき,文書を閲覧及び複製できる状態だった。文書 Y へのアクセスのログは取得されていなかった。開発部の商品企画第 2 チームは,委託先事業者である V 社と共同で新製品 α の操作説明書を執筆しており,V 社とのデータ交換に利用した USB メモリ(以下,USB メモリ R という)を紛失していた。USB メモリ R に文書 Y が格納されていた可能性があることから,USB メモリ R が情報漏えいの経路と考えられる。(4) 調査で分からなかったこと:文書 Y を流出させた者。文書 Y 以外のデータの漏えいの有無,及びそのほかの被害の範囲。(5) 措置:掲示板事業者に対する漏えい文書 X の公開中止の要請(状況:要請済み)。USB メモリの管理方法の見直し(状況:システム部が近々見直す予定)。本件の通報者へのお礼と対処した旨の報告(状況:担当部署を調整中)。(6) 開発部対応チームの活動時に認識された課題:次のように,会社としてのインシデント対応能力が不足している。a. インシデント対応についての各部の責任や役割が曖昧で協力を得にくい場面があった。b. インシデント対応についての作業手順が明確になっておらず,手探りの作業となった。このため,掲示板事業者への要請といった措置の着手が遅れた。c. インシデント対応の経験をもつ者又はスキルをもつ者がおらず,非効率な作業になった。d. ログが少なく調査が難航した。開発部はログ取得を定めた規程をもたず,開発部が管理する機器のうちログを取得していたものは少数だった。また,取得していたログの種類や保存期間にはばらつきがあった。
図3 開発部対応チームの調査結果と措置状況(概要)

開発部対応チームの調査結果と措置状況は情報セキュリティ委員会に報告された。報告を受けて,委員会では,図 3 中の(5)に挙げられた一連の措置の完了をもってインシデント P への対応を終了することが了承された。また,インシデント対応能力の向上を目指すことを決め,システム部の G 部長に対応を指示した。

〔早期に取り組むべき事項のとりまとめ〕

G 部長は,情報セキュリティ委員会の承認の下,情報セキュリティに関わるコンサルティングサービスを提供する E 社に支援を依頼した。

E 社のコンサルタントである F 氏は,A 社がインシデント対応能力の向上のために早期に取り組むべき事項を図 4 のとおりまとめ,G 部長に報告した。

A 社が早期に取り組むべき事項(概要)を示す枠囲みの文章。1. インシデント対応ポリシの策定:インシデント対応のための基本的な方針として,インシデント対応ポリシを定める。インシデント対応ポリシに記載する項目の例として,NIST の文書 SP 800-61 Rev. 2 に挙げられているものを図 5 に示す。2. インシデント対応のための体制整備:インシデントに迅速に対応することを目的に,インシデント対応チームを整備する。インシデント対応チームは,次の役割を担う。・インシデントが発生した時点での対応活動。・インシデント対応に関係する他のサービスの提供。インシデント対応チームが提供するサービスの例として,NIST SP 800-61 Rev. 2 は,[ a ],脆弱性や脅威についてのアドバイザリの配信,[ b ],及び社内外での情報共有の推進を挙げている。インシデント対応チームの母体として,非常時対応チームを活用することもできる。3. 取得するログの見直し(省略)。
図4 A 社が早期に取り組むべき事項(概要)
インシデント対応ポリシに記載する項目の例を示す枠囲みの箇条書き。・[ c ]の責任表明。・本ポリシの目的と目標。・本ポリシの適用範囲。・[ d ]と関連用語の定義。・組織構造,並びに役割,責任及び権限レベルの定義。・[ d ]についての[ e ]又は深刻度評価。・パフォーマンス測定。・報告と連絡の様式。([ d ]は 2 か所とも同じ字句が入る)
図5 インシデント対応ポリシに記載する項目の例

〔インシデント対応能力の向上への取組み〕

G 部長は,図 4 の事項の具体化を,F 氏の支援を受けながら進めることにした。

インシデント対応ポリシの適用範囲は全社とした。非常時対応チームは,A 社におけるインシデント対応のための組織横断チーム(以下,A-CSIRT という)として,再編成することにした。インシデント対応ポリシでは,A-CSIRT 及び各部の役割,責任及び権限レベルを規定した。A-CSIRT は,従来の非常時対応チーム同様,各部の代表者で構成することにした。ただし,インシデントへの迅速な対応を可能にするため,各部で人選を見直し,更にシステム部所属のメンバを増やした。A-CSIRT のリーダは G 部長が務めることにした。メンバのスキルを高めるため,定期的に勉強会を開催し,外部の研修などにも積極的に参加してもらう方針を立てた。

ログについては,ログの管理に関する規程(以下,ログ管理ポリシという)を作成することにした。ログ管理ポリシの適用対象は,社内の全ての機器であり,システム部が管理する機器,部門サーバ及び開発用サーバも含まれる。ログ管理ポリシでは図 3 中の(6) d に挙げられたログに関わる課題を解決できるように,次の要件を定める。

情報セキュリティ委員会は,各部に対して,それぞれが管理する機器について,早急に,ログ管理ポリシに従った運用を開始するよう指示した。また,システム管理者に対して,①管理する機器について,通常時のネットワークトラフィック量や日,週,月,年の中でのその推移などの情報(以下,通常時プロファイルという)の把握に努めるよう指示した。

〔マルウェアについての通知〕

マルウェアを配布していたサイト(以下,サイト M という)に A 社の機器のうち 1 台がアクセスし,遠隔操作の機能をもつ,“new3.exe” というファイル名のマルウェア K をダウンロードした可能性がある旨の通知が,10 月 10 日に,ある民間組織から A 社に対してあった。伝えられたサイト M の IP アドレスは A 社管理外のものであり,サイト M のログに残っていたアクセス元の IP アドレスは A 社のプロキシサーバのものだった。この通知は A-CSIRT に伝えられ,インシデント対応ポリシに照らして判断した結果,A-CSIRT が,インシデント(以下,本インシデントをインシデント Q という)として直ちに対応を開始することになった。

A-CSIRT のメンバであるシステム部の C さんが,外部のインシデント対応研修に参加して得た知識を基に手順を手探りしながらも調査したところ,次のことが分かった。

プロキシサーバのログのうち,送信元が PC-A であるもの(行番号付き,全 18 行)。各行は[日時 +0900] "メソッド URL プロトコル" ステータスコード サイズ "Referer" "User-Agent" の順。1: [04/Sep/2018:14:23:34 +0900] "GET http://xxxx/ HTTP/1.1" 200 57028 "-" "▲▲"。2: [04/Sep/2018:14:28:42 +0900] "GET http://zzzz/2018/ne/bunrei.html HTTP/1.1" 200 14252 "http://zzzz/2018/ne/topics.html" "▲▲"。3: [04/Sep/2018:14:29:22 +0900] "GET http://xxxx/news/2018_3325.html HTTP/1.1" 200 22177 "http://xxxx/" "▲▲"。4: [04/Sep/2018:14:31:15 +0900] "GET http://yyyy/dl/samplebun.zip HTTP/1.1" 200 89331 "http://zzzz/2018/ne/bunrei.html" "▲▲"。5: [04/Sep/2018:14:31:23 +0900] "GET http://xxxx/news/2018_3353.html HTTP/1.1" 200 24555 "http://xxxx/" "▲▲"。6: [04/Sep/2018:14:34:20 +0900] "GET http://IPm/ HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。7: [04/Sep/2018:14:35:31 +0900] "GET http://IPm/dl/new3.exe HTTP/1.1" 200 143623 "-" "▽▽"。8: [04/Sep/2018:14:37:06 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 5429 "-" "▽▽"。9: [04/Sep/2018:14:37:32 +0900] "POST http://IPn/login/pro.php HTTP/1.1" 200 646 "-" "▽▽"。10: [04/Sep/2018:14:37:32 +0900] "POST http://IPn/login/pro.php HTTP/1.1" 200 35621 "-" "▽▽"。11: [04/Sep/2018:14:37:37 +0900] "GET http://IPn/admin/g.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。12: [04/Sep/2018:14:37:47 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。13: [04/Sep/2018:14:37:52 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。14: [04/Sep/2018:14:37:58 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。15: [04/Sep/2018:14:38:04 +0900] "GET http://IPn/login/pro.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。16: [04/Sep/2018:14:38:09 +0900] "GET http://IPn/admin/g.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。17: [04/Sep/2018:14:38:14 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。18: [04/Sep/2018:14:38:19 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。
図6 プロキシサーバのログのうち,送信元が PC-A であるもの
図 6 の続き。各行の形式は前半と同じ。(省略)の後,19: [05/Sep/2018:16:43:51 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。20: [05/Sep/2018:16:43:56 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。21: [05/Sep/2018:16:44:01 +0900] "POST http://IPn/login/pro.php HTTP/1.1" 200 35614 "-" "▽▽"。22: [05/Sep/2018:16:44:05 +0900] "GET http://IPn/admin/g.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。(省略)の後,23: [06/Sep/2018:20:12:33 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。24: [06/Sep/2018:20:12:39 +0900] "GET http://IPn/admin/g.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。25: [06/Sep/2018:20:12:44 +0900] "GET http://IPn/admin/g.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。26: [06/Sep/2018:20:12:48 +0900] "POST http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 451 "-" "▽▽"。(省略)の後,27: [08/Sep/2018:03:39:04 +0900] "GET http://IPn/login/pro.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。28: [08/Sep/2018:03:39:04 +0900] "POST http://IPn/admin/g.php HTTP/1.1" 200 35618 "-" "▽▽"。29: [08/Sep/2018:03:39:08 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。30: [08/Sep/2018:03:39:12 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 563 "-" "▽▽"。注記 1:インシデント Q との関係が疑われるエントリを示す。注記 2:プロキシサーバが取得したログのうち,日時,リクエストのメソッド,リクエストの URL,リクエストのプロトコルとバージョン,要求元 PC に送信したレスポンスの HTTP ステータスコード,要求元 PC に送信したレスポンスメッセージのサイズ,リクエストの Referer ヘッダの値,及びリクエストの User-Agent ヘッダの値を示す。注記 3:図中の xxxx,yyyy,zzzz は,それぞれ,A 社以外の特定の FQDN を示す。注記 4:図中の IPm はサイト M の IP アドレス,IPn は IPm とは異なる特定の IP アドレスを示す。注記 5:図中の▲▲及び▽▽は,それぞれ,特定のユーザエージェントを表す文字列を示す。
図6 プロキシサーバのログのうち,送信元が PC-A であるもの(続き)

C さんは,直ちに④PC-A をネットワークから切断して回収した。また,ここまでに分かったことを基に,k を調査して,マルウェア K がほかの機器にも感染している可能性を簡易的に確認した。

その後,C さんは,試行錯誤しながら更に詳しく調査を進め,図 7 に示す調査結果を得た。

調査結果(抜粋)を示す枠囲みの文章。D さんは業務で複数の機器を利用している。そのうち,PC-A 及び開発用の PC-B がインシデント Q に関係していることが強く疑われる。(1) PC-A について:・PC-A は,Windows PC であり,業務 PC-LAN に接続されている。IP アドレスは 192.168.70.131 である。・D さんのユーザフォルダ内で “new3.exe” が見つかった。当該ファイルのプロパティ情報における作成日時は 9 月 4 日 14 時 35 分であった。・D さんのユーザフォルダ内で,アイコンを文書ファイルのアイコンに偽装した実行形式のファイル W が見つかった。ファイル W の情報:ファイル名 “samplebun.docx(空白文字 22 個).exe”(ファイル名の空白文字は “␣” で示されている)。プロパティ情報における作成日時 8 月 20 日 16 時 31 分。・“new3.exe” 及びファイル W をマルウェア対策ソフトベンダである Y 社に提供してファイル解析を依頼し,表 1 の情報を得た。(2) PC-B について:・PC-B は,Linux PC であり,開発 LAN に接続されている。IP アドレスは 192.168.75.245 である。D さんは,PC-B を主に PC-A からリモートログインして利用している。・9 月 5 日 10 時 35 分から 45 分までに,PC-A から,⑤D さんの利用者 ID でのログイン試行が複数あり,一部は失敗し,一部は成功していた(この部分に下線⑤が付いている)。PC-B 上での last 及び lastb コマンドの実行結果を,図 8 と図 9 にそれぞれ示す。last はログイン履歴を,lastb はログイン失敗の履歴を出力するコマンドである。図中の “d0325” は,D さんの利用者 ID である。・PC-B のディレクトリ “/tmp/20xx/” に次のファイルが置かれていた。・新製品 α の設計資料。・文書 Y を含む新製品 α の操作説明書の草稿。・そのほかのファイル。・上記のファイルを格納したアーカイブファイル(以下,ファイル A という)。ファイル A の所有者は D さんであり,作成日時は 9 月 7 日 4 時 15 分であった。規則では,設計資料及び操作説明書のファイルはそのアーカイブファイルも含めてサーバ上にだけ保管することになっている。(3) D さんへのヒアリングによって得た情報:・D さんは,サイト M にアクセスした記憶はない。・D さんは,9 月 4 日午後に PC-A の Web ブラウザを用いてインターネットで挨拶文例を検索し,見つけた ZIP 形式のファイル “samplebun.zip” をダウンロードした。D さんは,このファイルを展開した上で,中にあったファイル W をダブルクリックし参考にした。・D さんは,出張のため 9 月 5 日から 7 日までオフィスに来ておらず,PC-A を利用していない。この間,PC-A と PC-B の電源は入ったままで,PC-B はリモートログインできる状態だった。・D さんは,利用している機器について,それぞれの利用者 ID とパスワードをファイルに記録し,PC-A に保管していた。・D さんは,PC-B の “/tmp/20xx/” ディレクトリ及びその下に置かれていたファイルについて,心当たりがない。注記:ファイル名の “␣” は空白文字を示す。
図7 調査結果(抜粋)
ファイルについての情報の表。列はファイルと説明。new3.exe:遠隔操作の機能をもつマルウェア K である。実行されると,IPn のサイトにアクセスして,そのレスポンスに従って動作する。また,指定されたファイルを,HTTP の POST メソッドを用いて IPn のサイトに送信する機能をもつ。ファイル W:ダウンローダの機能をもつマルウェア L である。サイト M からプログラムをダウンロードし,実行する。また,これらの処理と並行して文書作成ソフトを起動し,特定の文書を表示する。
表1 ファイルについての情報
last コマンドの実行結果(5 行)。d0325 pts/0 192.168.70.131 Fri Sep 7 01:33 - 09:40 (08:06)。d0325 pts/0 192.168.70.131 Wed Sep 5 10:45 - 22:13 (11:27)。d0325 pts/0 192.168.70.131 Wed Sep 5 10:41 - 10:43 (00:01)。d0325 pts/0 192.168.70.131 Tue Sep 4 11:20 - 13:45 (02:24)。d0325 pts/0 192.168.70.131 Mon Sep 3 09:35 - 20:23 (10:47)。注記:last コマンドの実行結果のうち,9 月 1 日から 7 日までの期間における利用者 ID “d0325” に関わる全ての行を抽出した。
図8 last コマンドの実行結果
lastb コマンドの実行結果(11 行)。d0325 ssh:notty 192.168.70.131 Wed Sep 5 10:44 - 10:44 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:44 - 10:44 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:43 - 10:43 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:40 - 10:40 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:37 - 10:37 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:37 - 10:37 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:37 - 10:37 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:36 - 10:36 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:36 - 10:36 (00:00)。同 Wed Sep 5 10:35 - 10:35 (00:00)。同 Mon Sep 3 09:34 - 09:34 (00:00)。(各行とも利用者 ID は d0325,端末は ssh:notty,接続元は 192.168.70.131)注記:lastb コマンドの実行結果のうち,9 月 1 日から 7 日までの期間における利用者 ID “d0325” に関わる全ての行を抽出した。
図9 lastb コマンドの実行結果

次は,これまでの調査結果についての,C さんと G 部長との会話である。

C さんは,D さんが利用している機器について,フォレンジックツールを用いて,ファイル A のファイルサイズと l をキーにしてファイルを検索した。その結果,PC-A において,9 月 8 日 3 時 35 分に,ファイル名は異なっていたものの,ファイル A と同じ内容のファイルが作成されていたことが分かった。また,プロキシサーバのログから,⑥当該ファイルが社外に送信された可能性があることが分かった。

加えて,C さんがインターネット検索をしたところ,ファイル A に格納されていた複数のファイルが,掲示板 U に,インシデント P のときと同じ投稿者によって投稿されていたことが分かった。これらのファイルのうち幾つかは,USB メモリ R に格納されたことはないと考えられるものだった。

〔インシデント Q のタイムラインと措置〕

G 部長は,調査結果の確認及び対応措置の検討について F 氏の支援を受けるよう C さんに指示した。F 氏の支援を受けて C さんが作成したインシデント Q のタイムラインを表 2 に示す。

インシデント Q のタイムラインの表。列は No.,日時,事象。No.1:日時は空欄[ ア ],事象は D さんは,PC-A の Web ブラウザで社外のサイトにアクセスし,ファイル W を格納した ZIP 形式のファイルをダウンロード。No.2:9/4 14:XX,D さんは,No.1 でダウンロードしたファイルを PC-A 上で展開してファイル W を取り出した上で,これをダブルクリックし,[ m ]を実行。No.3:9/4 14:35,[ m ]は,[ n ]にアクセスし,“new3.exe” をダウンロード。No.4:9/4 14:XX,[ m ]は,[ o ]を実行。No.5:日時は空欄[ イ ],[ o ]は,IPn のサイトとの頻繁な通信を開始。攻撃者による[ p ]が始まったと推測。No.6:9/5 10:35,攻撃者は PC-B へのログインの試行を開始。No.7:日時は空欄[ ウ ],攻撃者は PC-B へのログインに初成功。No.8:〜9/7 4:15,攻撃者は,漏えいが疑われるファイルのコピーと[ q ]を,[ r ]のローカルディスクに作成。No.9:9/8 3:35,攻撃者は,[ q ]と同じ内容のファイルを[ s ]のローカルディスクに作成。No.10:不明,No.9 で作成されたファイルが IPn のサイトに送信された可能性。注記:XX は,正確な時刻が不明であることを示す。
表2 インシデント Q のタイムライン

また,F 氏による追加調査の結果,社内の文書 Z が,9 月 22 日までの間に,攻撃者によって社外に送信されていたことが確認された。文書 Z は,それまでに漏えいしたものとは別の新製品 β の設計書である。

C さんは,F 氏の支援を受け,インシデントの封じ込め,根絶及び復旧のための措置を検討した。マルウェア L とマルウェア K については,Y 社から,これらを検知するためのマルウェア定義ファイルの提供を受け,全てのサーバ及び PC に適用することにした。C さんは,そのほか必要と思われる措置をまとめて,G 部長に提案した。G 部長は,C さんの提案を承認し,承認された措置が実施された。

〔インシデント対応のレビュー〕

インシデント Q の対応が一段落した後,インシデント対応ポリシに従い,インシデント Q の対応についてレビューが開催された。レビューにおいて,最初に G 部長から,インシデント P とインシデント Q は一連の攻撃だと推定されるという報告があった。次にインシデント Q の対応が報告された。インシデント Q の対応は,インシデント P の対応に比べて大幅に改善されたとの評価を受け,インシデント対応能力が向上してきていると判断された。最後に,⑦インシデント対応能力について未対応の課題を解決するための措置がまとめられ,順次実施されていくことになった。

出題趣旨(IPA)

サイバー攻撃の技術は高度化し,攻撃者の侵入を完全に防ぐことはますます困難になってきた。これに伴い,セキュリティインシデント(以下,インシデントという)となり得る事象を素早く検知し,調査し,対処する能力の重要性が高まっている。本問では,マルウェアの侵入に端を発した情報漏えいインシデントを題材として,インシデント対応をスムーズに行うための仕組みを検討して構築する能力と,ログやそのほかの情報を組み合わせて,インシデントの全容を整理し,理解する能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問2では,セキュリティインシデント(以下,インシデントという)対応の準備とインシデントの調査活動について出題した。

設問と解答例

設問1(1) 解答欄2つ

図 4 中の a,b に入れる適切な字句を,解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア ISO/IEC 15408 の PP の作成 イ 教育と意識向上 ウ 情報セキュリティポリシの管理 エ 侵入検知 オ 内部統制基準の作成 カ ネットワーク機器の保守

〔a〕解答例

  • エ

〔b〕解答例

  • イ

〔備考〕順不同

解説

本文の根拠

図4 2

インシデント対応チームが提供するサービスの例として,NIST SP 800-61 Rev. 2 は,a,脆弱性や脅威についてのアドバイザリの配信,b,及び社内外での情報共有の推進を挙げている。

NIST SP 800-61 Rev. 2 の 2.5 節(Incident Response Team Services)は,インシデント対応チームが提供しうるサービスの例として,Intrusion Detection(侵入検知),Advisory Distribution(脆弱性や脅威についてのアドバイザリの配信),Education and Awareness(教育と意識向上),Information Sharing(情報共有)の四つを挙げている。図 4 は,このうち 2 番目と 4 番目を文章で書いているので,a と b には残りの“侵入検知”(エ)と“教育と意識向上”(イ)が入る。

解答群のほかの語は,この節に挙がっていない。ISO/IEC 15408 の PP の作成(ア),情報セキュリティポリシの管理(ウ),内部統制基準の作成(オ),ネットワーク機器の保守(カ)は,インシデント対応チームが提供するサービスの例として挙げられているものではない。

間違えやすい点:解答例の備考は a,b を順不同としているが,a にイ,b にエと入れ替えて答えてもよいという意味で,エとイを両方答える必要がある。

設問1(2) 解答欄3つ

図 5 中の c~e に入れる適切な字句を,解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア CVSS v3 基本値 イ SIEM ウ インシデント エ 受付窓口 オ 個人情報 カ 情報公開 キ 情報システム部門 ク ポリシ ケ マネジメント層 コ 優先順位付け サ ログと証跡

〔c〕解答例

  • ケ

〔d〕解答例

  • ウ

〔e〕解答例

  • コ
解説

本文の根拠

図5

・cの責任表明。

図5

・dと関連用語の定義。

図5

・dについてのe又は深刻度評価。

NIST SP 800-61 Rev. 2 の 2.3.1 節(Policy Elements)は,インシデント対応ポリシに含める主な要素として,Statement of management commitment(マネジメント層の責任表明),Purpose and objectives of the policy(目的と目標),Scope of the policy(適用範囲),Definition of computer security incidents and related terms(インシデントと関連用語の定義),組織構造と役割・責任・権限レベルの定義,Prioritization or severity ratings of incidents(インシデントの優先順位付け又は深刻度評価),Performance measures(パフォーマンス測定),Reporting and contact forms(報告と連絡の様式)を挙げている。図 5 の項目と順に対応するので,c=ケ(マネジメント層),d=ウ(インシデント),e=コ(優先順位付け)となる。

図 5 の d は 2 か所とも同じ語が入るので,“インシデントと関連用語の定義”と“インシデントについての優先順位付け又は深刻度評価”のどちらの文も通る語を選ぶ。

誤りの選択肢:ア CVSS v3 基本値(脆弱性の評価指標),イ SIEM(ログの集約・相関分析の仕組み),オ 個人情報,カ 情報公開,キ 情報システム部門,ク ポリシ,サ ログと証跡は,図 5 のこれらの位置にある語としては,いずれも項目の意味が通らない。

設問2(1) 解答欄3つ

本文中の f~h に入れる適切な字句を,それぞれ 12 字以内で答えよ。

〔f〕解答例

  • ログを取得する機器

〔g〕解答例

  • 取得するログの種類

〔h〕解答例

  • 保存期間

〔備考〕順不同

解説

本文の根拠

〔インシデント対応能力の向上への取組み〕

ログ管理ポリシでは図 3 中の(6) d に挙げられたログに関わる課題を解決できるように,次の要件を定める。

図3 (6) d

d. ログが少なく調査が難航した。開発部はログ取得を定めた規程をもたず,開発部が管理する機器のうちログを取得していたものは少数だった。また,取得していたログの種類や保存期間にはばらつきがあった。

ログ管理ポリシの要件は,図 3 (6) d の課題を解決するためのものである。課題 d は三つに分けられる。ログを取得していた機器が少数だった(要件 1 の f=ログを取得する機器),取得していたログの種類にばらつきがあった(要件 1 の g=取得するログの種類),保存期間にばらつきがあった(要件 2 の h=保存期間)。要件 1 が“取得するログ”,要件 2 が“取得したログ”についてなので,種類は取得する側(g),期間は取得したログの扱い(h)になる。

要件 2 には,h のほかに“バックアップの作成”“アクセス制御”が並んでおり,保存したログを守る要件が並ぶ中に“保存期間”が入るのは自然である。

解答例の備考は f,g,h を順不同とする。12 字以内なので,9 字,9 字,4 字の解答例のように,名詞で簡潔に書く。“ログの保管場所”のような,課題 d に無い語を書かない。

設問2(2) 解答欄2つ

本文中の i,j に入れる適切な字句を,それぞれ 8 字以内で答えよ。

〔i〕解答例

  • タイムゾーン

〔j〕解答例

  • 統一
解説

本文の根拠

〔インシデント対応能力の向上への取組み〕 要件 3

要件 3 各機器の時計を同期するとともに,各機器が出力するログに記録する時刻情報の i を j するという要件

図6 ログの行

[04/Sep/2018:14:23:34 +0900]

各機器の時計を同期するだけでは,ログの時刻が同じ基準で読めるとは限らない。機器ごとにログに記録される時刻のタイムゾーン(協定世界時からの差)が異なると,同じ時刻のように見える記録が実際には別の時刻になる。そこで,ログに記録する時刻情報のタイムゾーンを統一する(i=タイムゾーン,j=統一)。図 6 のプロキシサーバのログの時刻は“+0900”が付いた日本時間で,ほかの機器のログも同じ表記・基準にそろえていれば,後でログを突き合わせて経緯をたどれる。

講評でも,この設問の i は正答率が低かったと述べられている。ログ間でタイムゾーンが異なると,認識違いによって調査が難航する場合があり,各ログに記録された時刻が正しいこと,及び時刻のタイムゾーンが同じであることが重要だとされている。

8 字以内なので,i は 6 字の“タイムゾーン”,j は 2 字の“統一”。i に“形式”“時刻”のような語を書くと,ログに残る時刻情報そのものと区別できず,何を統一するのかが不正確になる。

採点講評(IPA)

設問2(2)iは,正答率が低かった。インシデント発覚時には,様々な機器が出力したログを見比べて,経緯などを調査する必要が生じる。各ログに記録された時刻が正しいこと,及び,時刻のタイムゾーンが同じであることが重要である。ログ間でタイムゾーンが異なると,認識違いによって,調査が難航する場合がある。

設問2(3) 35字以内

本文中の下線①について,取得した通常時プロファイルの利用方法を 35 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • ネットワークトラフィック量と比較して異常を検知する。
解説

本文の根拠

〔インシデント対応能力の向上への取組み〕 下線①

管理する機器について,通常時のネットワークトラフィック量や日,週,月,年の中でのその推移などの情報(以下,通常時プロファイルという)の把握に努める

通常時プロファイルは,平常時のネットワークトラフィック量と,日・週・月・年の中での推移を記録した情報である。これを持っておけば,現在のトラフィック量と比較して,普段と違う急な増加や通常より外れた時間帯の通信を異常として検知できる。マルウェアが外部のサイトと頻繁に通信する(図 6 のような繰返しのアクセス)場合や,大量のデータを送り出す場合は,通常時との差としてあらわれる。

問われているのは“利用方法”なので,取得して終わりではなく,“通常時のトラフィック量と比較して異常を検知する”まで書く。

35 字以内で,解答例は 26 字である。“ログを保存する”“監視する”だけでは,通常時プロファイルをどう使うかが書けていない。

設問3(1) 60字以内

本文中の下線②について,サイト M にアクセスした PC を特定した方法を,60 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • プロキシサーバのログからアクセス先がサイトMのエントリを抽出し,このエントリからPC-AのIPアドレスを得た。
解説

本文の根拠

〔マルウェアについての通知〕

サイト M のログに残っていたアクセス元の IP アドレスは A 社のプロキシサーバのものだった。

〔ネットワーク構成〕

業務 PC-LAN に接続された PC は,プロキシサーバを介してインターネットにアクセスできる。プロキシサーバは直近 60 日分のログを保存している。

サイト M のログに残っているアクセス元は A 社のプロキシサーバの IP アドレスで,どの PC かは分からない。業務 PC-LAN の PC のインターネット通信はプロキシサーバを経由し,そのログは直近 60 日分が残っている。9 月 4 日のアクセスは,通知のあった 10 月 10 日の約 36 日前なので,60 日分のログに含まれる。そこで,プロキシサーバのログから,アクセス先がサイト M の IP アドレスのエントリを抽出し,そのエントリに記録されている送信元の IP アドレスから,サイト M にアクセスした PC(PC-A)を特定した。

図 6 は,このように送信元 PC-A で絞り込んだログである(行 6 と 7 がサイト M の IPm へのアクセス)。

60 字以内で,解答例は 55 字。“プロキシサーバのログ”“サイト M へのアクセス先で抽出”“送信元の IP アドレス”の三点を書く。サイト M 側のログは使えない(アクセス元がプロキシサーバの IP アドレスになっている)ので,A 社側のログを用いる点が要である。

設問3(2) 解答欄2つ

本文中の下線③について,このアクセスによってマルウェアが何を行っていたと考えられるか。HTTP リクエストと HTTP レスポンスによってマルウェアが行っていた活動を,HTTP リクエストによる活動は 30 字以内で,HTTP レスポンスによる活動は 20 字以内でそれぞれ具体的に述べよ。

〔HTTPリクエストによる活動〕解答例

  • C&Cサーバへのコマンド要求又は応答

〔HTTPレスポンスによる活動〕解答例

  • C&Cサーバからのコマンド受信
解説

本文の根拠

〔マルウェアについての通知〕 下線③

PC-A が特定のサイトにアクセスし,その後頻繁に同じサイトにアクセスを繰り返す

表1 new3.exe

遠隔操作の機能をもつマルウェア K である。実行されると,IPn のサイトにアクセスして,そのレスポンスに従って動作する。

new3.exe(マルウェア K)は,遠隔操作の機能をもち,IPn のサイトにアクセスして,そのレスポンスに従って動作する。IPn のサイトは攻撃者が用意した C&C(コマンド & コントロール)サーバである。HTTP リクエストでは,マルウェアが C&C サーバへコマンドを要求し,又は,実行結果などを応答する。HTTP レスポンスでは,マルウェアが C&C サーバから攻撃者の指示(コマンド)を受信する。社内の PC からインターネットへの通信は,プロキシサーバを介した HTTP の形でしか出られないので,マルウェアは HTTP の要求を繰り返して指示を待つ形になる。

図 6 の 8 行目以降が,この繰返しのアクセスに当たる。

リクエストは 30 字以内,レスポンスは 20 字以内。解答例は 18 字と 15 字で,“要求又は応答”と“受信”の向きの違いを書き分ける。講評でも,この設問は正答率が低く,マルウェアが C&C サーバと通信して攻撃者の指示を受け取り,それに従って動作する,という動作を正しく理解しておくことが重要だとされている。

採点講評(IPA)

設問3(2)及び(3)は,正答率が低かった。社内に侵入した遠隔操作機能をもつマルウェアは,攻撃者が準備したC&Cサーバと通信して攻撃者の指示を受け取り,これに従って動作する場合が多い。この動作を正しく理解しておくことは,侵入の検知や被害の未然防止のために重要である。マルウェアが検知されたPCをネットワークから即座に切り離すことには長所と短所がある。これを正しく理解した上で,マルウェア検知時の初動活動を設計してほしい。

設問3(3) 解答欄2つ

本文中の下線④について,調査の観点から見たときの問題は何か。40 字以内で具体的に述べよ。また,この問題を軽減するために本文中の下線④を実行する前に行うべき措置を,30 字以内で具体的に述べよ。

〔問題〕解答例

  • PCのネットワークインタフェースや通信の状態についての情報が失われること

〔措置〕解答例

  • メモリダンプを取得する。
解説

本文の根拠

〔マルウェアについての通知〕 下線④

PC-A をネットワークから切断して回収した

表1 new3.exe

実行されると,IPn のサイトにアクセスして,そのレスポンスに従って動作する。

PC-A をネットワークから切断すると,マルウェアと攻撃者との通信が止まり,被害の拡大を防げる。しかし調査の観点では,切断した時点で,PC のネットワークインタフェースや通信の状態(確立している接続など)についての情報が変化し,失われる。どのサイトとどの接続をしていたかを後から確かめにくくなる,という問題がある。

この問題を軽減するには,切断する前に,メモリダンプを取得する(解答例)。メモリには実行中のプロセスや通信状態に関する情報が残っているので,切断前に取得しておけば,後で解析できる。

40 字以内の問題は“通信の状態などの情報が失われる”こと。解答例は 36 字で,30 字以内の措置は 12 字の“メモリダンプを取得する。”。“感染が拡大する”のような,切断しない場合の問題を書くと,調査の観点という条件に合わない。

採点講評(IPA)

設問3(2)及び(3)は,正答率が低かった。社内に侵入した遠隔操作機能をもつマルウェアは,攻撃者が準備したC&Cサーバと通信して攻撃者の指示を受け取り,これに従って動作する場合が多い。この動作を正しく理解しておくことは,侵入の検知や被害の未然防止のために重要である。マルウェアが検知されたPCをネットワークから即座に切り離すことには長所と短所がある。これを正しく理解した上で,マルウェア検知時の初動活動を設計してほしい。

設問3(4) 解答欄1つ

本文中の k に入れる適切な調査内容を,40 字以内で具体的に述べよ。

〔k〕解答例

  • プロキシサーバのログから,IPnのサイトにアクセスした機器がほかにないか
解説

本文の根拠

〔マルウェアについての通知〕

マルウェア K がほかの機器にも感染している可能性を簡易的に確認した

表1 new3.exe

実行されると,IPn のサイトにアクセスして,そのレスポンスに従って動作する。

マルウェア K は,実行されると IPn のサイトにアクセスする。PC-A のほかにも同じマルウェアに感染した機器があれば,その機器も IPn のサイトにアクセスしているはずである。業務 PC-LAN の PC はプロキシサーバを経由してインターネットに出るので,プロキシサーバのログから,IPn のサイトにアクセスした機器がほかにないかを調べれば,ほかの感染機器の有無を簡易的に確認できる。

全機器のディスクを調べるより,プロキシサーバのログ 1 か所を検索する方が簡易である。

40 字以内で,解答例は 36 字。“どのログを”“何の通信先を”調べるのかをそろえる。サイト M へのアクセスではなく,IPn のサイト(マルウェア K 実行後の通信先)にする点が要である。

設問3(5)

図 7 中の下線⑤について,D さんの利用者 ID を用いた PC-B へのログインに最初に成功するまでに,攻撃者が何回ログインに失敗したことが記録されているか。記録されている失敗の回数を答えよ。

解答例

  • 7回
解説

本文の根拠

図7 (2) PC-B について

last はログイン履歴を,lastb はログイン失敗の履歴を出力するコマンドである。

図8

d0325 pts/0 192.168.70.131 Wed Sep 5 10:41 - 10:43 (00:01)

図9

同 Wed Sep 5 10:40 - 10:40 (00:00)

図 7 によると,D さんの利用者 ID でのログイン試行は 9 月 5 日 10 時 35 分から 45 分までのものである。lastb(図 9)の失敗は,9 月 5 日の 10:35,10:36,10:36,10:37,10:37,10:37,10:40,10:43,10:44,10:44 の 10 件と,9 月 3 日 09:34 の 1 件がある。last(図 8)では,9 月 5 日の最初のログイン成功は 10:41 で,D さんがオフィスにいなかった 9 月 5 日の,攻撃者による最初の成功である。この前に記録されている失敗は 10:35,10:36,10:36,10:37,10:37,10:37,10:40 の 7 件である。

9 月 3 日 09:34 の失敗は,直後の 09:35 の成功(図 8 の最下行)と合わせると D さん本人の打ち間違いと考えられ,10:43 以降の 3 件は 10:41 の成功の後のものなので,数えない。

数え間違いやすい点:lastb の 11 行全部(11 回)や,10:41 以降を含めた 10 回を答えない。時刻が“最初の成功”より前かどうかで切り分ける。解答例は 7 回である。

設問3(6) 解答欄1つ

本文中の l に入れる適切な字句を,8 字以内で答えよ。

〔l〕解答例

  • ハッシュ値
解説

本文の根拠

〔マルウェアについての通知〕

C さんは,D さんが利用している機器について,フォレンジックツールを用いて,ファイル A のファイルサイズと l をキーにしてファイルを検索した。

〔マルウェアについての通知〕

ファイル名は異なっていたものの,ファイル A と同じ内容のファイルが作成されていたことが分かった。

ファイル名が変えられていても,内容が同じなら同じ値になるものをキーにすれば検索できる。それがハッシュ値である。ファイルサイズだけで探すと,サイズが偶然一致した別のファイルが混ざるので,ファイルのハッシュ値を併せて照合し,同じ内容のファイルかどうかを確かめる。

本文は,ファイル名が同じとは限らない,削除されている可能性もある,と G 部長が述べて調査を続けさせた経緯を示している。名前,作成日時,場所のように変えられやすい属性をキーにしても見つからない。

8 字以内で,解答例は 5 字の“ハッシュ値”。“ファイルの内容”のような語では,ツールの検索キーとして書けていない。

設問3(7) 解答欄2つ

本文中の下線⑥について,ファイルの社外への送信の可能性を示す記録を図 6 中から選び,行番号で答えよ。また,プロキシサーバ又は FW が取得できる情報のうち,当該記録と併せて見ることによってファイル送信の有無を判断するのに役立つ情報を 35 字以内で答えよ。ただし,送信元の IP アドレス及び図 6 中に示された情報は対象外とする。

〔行番号〕解答例

  • 28行目

〔役立つ情報〕解答例

  • プロキシサーバがインターネットに送信したデータのサイズ
解説

本文の根拠

表1 new3.exe

指定されたファイルを,HTTP の POST メソッドを用いて IPn のサイトに送信する機能をもつ。

図6 (続き)

28: [08/Sep/2018:03:39:04 +0900] "POST http://IPn/admin/g.php HTTP/1.1" 200 35618

図6 注記2

要求元 PC に送信したレスポンスメッセージのサイズ

マルウェア K は,指定されたファイルを HTTP の POST で IPn のサイトに送信する機能をもつ。ファイル A と同じ内容のファイルが PC-A に作成された時刻は 9 月 8 日 3 時 35 分である。図 6 でこの時刻の後にあって IPn に POST しているのは,28 行目(9 月 8 日 03:39:04,POST http://IPn/admin/g.php)だけである。ほかの POST(9,10,21,26 行目)は,いずれもファイル作成より前の記録である。

ただし図 6 の“200 35618”の数値は,注記 2 のとおり,要求元 PC に送信したレスポンスメッセージのサイズで,PC-A から送信したデータのサイズではない。ファイルが実際に送られたかを判断するには,この行の時刻の前後で,プロキシサーバがインターネットに送信したデータのサイズが,ファイルのサイズと合うかを見る。

35 字以内で,解答例は 27 字。送信元の IP アドレスと図 6 に示された情報は対象外とあるので,図 6 のレスポンスのサイズ以外の,“プロキシサーバがインターネットに送信したデータのサイズ”を書く。行番号は“28行目”。

設問4(1) 解答欄3つ

表 2 中の [ ア ]~[ ウ ] に入れる適切な日時を答えよ。

〔ア〕解答例

  • 9/4 14:31

〔イ〕解答例

  • 9/4 14:37

〔ウ〕解答例

  • 9/5 10:41
解説

本文の根拠

図6 4 行目

4: [04/Sep/2018:14:31:15 +0900] "GET http://yyyy/dl/samplebun.zip HTTP/1.1" 200 89331

図6 8 行目

8: [04/Sep/2018:14:37:06 +0900] "GET http://IPn/news.php HTTP/1.1" 200 5429

図8

d0325 pts/0 192.168.70.131 Wed Sep 5 10:41 - 10:43 (00:01)

ア(No.1)は,D さんが PC-A の Web ブラウザで ZIP 形式のファイルをダウンロードした日時で,図 6 の 4 行目(samplebun.zip の GET,9/4 14:31:15)から 9/4 14:31。表 2 の他の行が分単位なので,分までを書く。イ(No.5)は,マルウェア K(o)が IPn のサイトと頻繁な通信を開始した日時である。図 6 の 6,7 行目は IPm(サイト M)への接続とダウンロード(No.3 の 14:35 に当たる),8 行目が最初の IPn へのアクセスで 9/4 14:37。ウ(No.7)は,攻撃者が PC-B へのログインに初成功した日時で,図 8(last)の 9 月 5 日の最初の成功 10:41 から 9/5 10:41。

図 7 によると,9 月 5 日の D さんはオフィスにいなかったので,この 10:41 のログインは攻撃者によるものである。

間違えやすい点:イにサイト M へのアクセス(14:34,14:35)を,ウに失敗の履歴の最初(9/5 10:35。これは No.6 の“ログインの試行を開始”)を書かない。解答例は 9/4 14:31,9/4 14:37,9/5 10:41。

設問4(2) 解答欄7つ

表 2 中の m~s に入れる適切な字句を,解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア “samplebun.zip” イ C さん ウ D さん エ IPn のサイト オ PC-A カ PC-B キ SQL インジェクション ク WHOIS サービス ケ 遠隔操作 コ サイト M サ 総当たり攻撃 シ ファイル A ス フィッシング セ プロキシサーバ ソ マルウェア K タ マルウェア L

〔m〕解答例

  • タ

〔n〕解答例

  • コ

〔o〕解答例

  • ソ

〔p〕解答例

  • ケ

〔q〕解答例

  • シ

〔r〕解答例

  • カ

〔s〕解答例

  • オ
解説

本文の根拠

表1 ファイル W

ダウンローダの機能をもつマルウェア L である。サイト M からプログラムをダウンロードし,実行する。

〔マルウェアについての通知〕

ファイル名は異なっていたものの,ファイル A と同じ内容のファイルが作成されていたことが分かった。

会話

PC-A が攻撃者によって遠隔操作されたことは間違いないと思います。

表 2 を行ごとに読む。No.2 は D さんがファイル W(=マルウェア L)を実行(m=タ)。No.3 は,マルウェア L が,サイト M(n=コ)にアクセスして new3.exe をダウンロードする(表 1 のとおり,ファイル W はサイト M からプログラムをダウンロードして実行する)。No.4 は,マルウェア L が,ダウンロードした new3.exe=マルウェア K(o=ソ)を実行する。No.5 は,マルウェア K が IPn のサイトとの通信を始め,攻撃者による遠隔操作(p=ケ)が始まったと推測される(C さんが“PC-A が攻撃者によって遠隔操作された”と述べている)。

No.8 は,漏えいが疑われるファイルのコピーとファイル A(q=シ)を,PC-B(r=カ。図 7 のとおり PC-B の /tmp/20xx/ に置かれていた)のローカルディスクに作成する。No.9 は,ファイル A と同じ内容のファイルを PC-A(s=オ)のローカルディスクに作成する(本文:9 月 8 日 3 時 35 分に PC-A で作成)。

誤りやすい点:サ“総当たり攻撃”は No.6 のログイン試行にあたり,p ではない。ス“フィッシング”,キ“SQL インジェクション”,ク“WHOIS サービス”は,表 2 の事象と対応する記述が本文にない。

設問5 解答欄2つ

本文中の下線⑦について,図 3 中の(6)に示された課題 a~d の中から,この時点で未対応の課題を選び,記号で答えよ。また,その課題を解決するための措置を,25 字以内で具体的に述べよ。

〔課題〕解答例

  • b

〔措置〕解答例

  • インシデント対応の作業手順書を作成する。
解説

本文の根拠

図3 (6)

b. インシデント対応についての作業手順が明確になっておらず,手探りの作業となった。このため,掲示板事業者への要請といった措置の着手が遅れた。

〔インシデント対応能力の向上への取組み〕

インシデント対応ポリシでは,A-CSIRT 及び各部の役割,責任及び権限レベルを規定した。

〔インシデント対応能力の向上への取組み〕

メンバのスキルを高めるため,定期的に勉強会を開催し,外部の研修などにも積極的に参加してもらう方針を立てた。

図 3 (6) の課題 a〜d に対する,本文の取組みを順に見る。a(各部の責任や役割が曖昧)は,インシデント対応ポリシで A-CSIRT 及び各部の役割,責任及び権限レベルを規定したので対応済み。c(経験・スキルをもつ者がいない)は,勉強会の開催と外部研修への参加の方針を立てたので対応済み。d(ログが少なく調査が難航)は,ログ管理ポリシの作成で対応済み。b(作業手順が明確になっていない)に対応する取組みは,本文に書かれていない。インシデント対応ポリシは基本的な方針であり,具体的な作業の手順を定めたものではない(図 4 の取り組む事項にも手順書の作成は挙がっていない)。したがって未対応の課題は b。

措置は,b を解決するための“インシデント対応の作業手順書を作成する。”(解答例,20 字)。25 字以内なので,“作業手順書の作成”を中心に書く。

間違えやすい点:課題 a の“役割”は,ポリシと A-CSIRT の編成で対応済みであり,措置に“役割の明確化”を書かないこと。インシデント対応ポリシの“策定”は作業手順書の作成の代わりにならない。

出典:平成30年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)