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情報処理安全確保支援士試験

平成26年度 春期 午後Ⅱ(旧試験)

平成26年度 春期に実施された情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱの全2問(記述式)の全設問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。事例本文のどこが根拠になるかを示し,IPA の解答例・採点講評と並べています。

この試験について:情報処理安全確保支援士試験について

この年度を解いてみる

問1 百貨店事業におけるクレジットカード情報の安全な管理

百貨店事業におけるクレジットカード情報の安全な管理に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

L 社は,全国に百貨店事業を展開している従業員数 3,000 名の企業である。L 社では,L 社の百貨店だけで使用できるクレジットカード(以下,ハウスカードという)を発行している。ハウスカードは,顧客がハウスカード申込書を記入して,L 社に提出し,審査に合格した後に発行される。ハウスカードを持つ顧客を会員と呼んでおり,会員がハウスカードを使用して支払ができるサービスと,ハウスカードを利用することでポイントが付与されるサービス(以下,両サービスを併せてハウスカードサービスという)を提供している。ハウスカードサービスでは,会員がハウスカードを使用して支払を行うと,会員にポイントが付与され,ポイントが一定数以上たまると,様々な商品と交換できる。ハウスカードの表面には,数字 16 桁のいわゆるクレジットカード番号(以下,PAN という),会員名,有効期限などが表記されており,裏面にはハウスカードの不正使用を防止するために使用するセキュリティコードが表記されている。PAN はハウスカードごとに異なる番号になっており,重複することはない。これらの情報の一部は,ハウスカードの磁気ストライプの中にも格納されており,各百貨店に設置されている専用端末で読み取ることができる。

〔ハウスカードサービスのシステム概要〕

ハウスカードサービスの主なシステムとネットワーク構成の概要は,図1のとおりである。

ハウスカードサービスの主なシステムとネットワーク構成の概要の図。L 社データセンタの中に,外部接続FW,内部FW,オーソリFW,運用FW,決済集計システム,ポイントシステム,会員管理システム,オーソリシステム,保守端末がある。金融機関など(複数)は専用線で外部接続FWに接続し,外部接続FWは決済集計システムにつながる。L 社の百貨店(専用端末,複数)は専用線で内部FWに接続する。内部FWは決済集計システム,ポイントシステム,会員管理システムにつながり,またオーソリFWにもつながる。オーソリFWはオーソリシステムにつながり,運用FWにもつながる。決済集計システム,ポイントシステム,会員管理システムは,それぞれ運用FWにもつながる。運用FWは保守端末につながり,専用線で L 社本社(業務端末(複数),運用端末(複数))に接続する。FW はファイアウォール。注記 L 社本社の業務端末は執務室に,運用端末は運用ルームにそれぞれ設置されている。
図1 ハウスカードサービスの主なシステムとネットワーク構成の概要

L 社のセキュリティポリシによって,ハウスカードサービスのシステムを含め,全システムで,無線 LAN の利用が禁止されている。図1中の各システムの概要を表1に,各システムが利用しているデータベース(以下,DB という)の主なテーブルの構造を図2に示す。

各システムの概要の表(名称,概要)。決済集計システム:①ハウスカードの決済集計処理を行う。会員が L 社の百貨店でハウスカードを使用して支払をすると,専用端末から決済情報(店舗コード,金額,PAN,会員名,有効期限,暗証番号)を受信し,オーソリシステムにオーソリ処理要求を送信する。オーソリシステムから処理結果を受信すると,専用端末に処理結果を返信し,決済情報を決済集計 DB に書き込む。決済集計処理を行うために,PAN を保存する。②日次バッチ処理で,決済情報を集計し,会員管理システムと連携して,各会員の決済金額とポイントを集計する。集計結果をポイントシステムに送信する。③月次バッチ処理で,決済情報を集計し,会員管理システムと連携して,各会員の決済金額を集計する。外部接続 FW を経由して,集計結果を金融機関などに送信する。④決済ごとにステータスコードと呼ばれる属性をもち,決済処理の進捗情報を記録している。ポイントシステム:決済集計システムから日次バッチの集計結果を受信する。会員管理システムと連携し,ポイント倍率補正処理や,キャンペーンによるポイント補正処理を実行し,ポイント DB に書き込む。決済集計システムとの間でデータを関連付けるために,PAN を保存する。オーソリシステム:①ハウスカードの信用確認処理を行う。決済集計システムからオーソリ処理要求を受信し,ハウスカードの与信枠,有効期限,暗証番号による認証などの信用確認処理を行い,処理結果を決済集計システムに返信する。信用確認処理を行うために PAN を保存する。②オーソリ DB にデータを登録するインタフェースをもち,一連のハウスカード発行処理の中でデータが登録され,その後,定期的に更新される。会員管理システム:①会員情報を管理する。会員情報とは,会員名,住所,電話番号,性別のことで,会員管理 DB に保存される。会員管理システムは,決済集計システムやポイントシステムに対して,専用のインタフェース経由で会員管理 DB の情報を参照させることができる。決済集計システムとの間でデータを関連付けるために,PAN を保存する。②Web インタフェースをもち,会員からの入会申請時には L 社の担当者がブラウザから会員情報を入力することで,会員管理 DB に会員情報を登録することができる。同様に変更申請時は会員情報を変更することができ,退会申請時は退会処理をすることができる。(各システムの概要の各項目は表中では“・”で始まる)
表1 各システムの概要
各 DB の主なテーブルの構造。決済集計 DB:決済集計(決済処理番号,PAN,店舗コード,金額,日時,オーソリ結果,最終処理日時,ステータスコード)。主キーは決済処理番号。ポイント DB:ポイント(PAN,ポイント値,最終更新日時)。主キーは PAN。オーソリ DB:オーソリ(発行管理番号,PAN,有効期限,セキュリティコード,暗証番号,与信枠)。主キーは発行管理番号。会員管理 DB:会員管理(PAN,会員名,住所,電話番号,性別)。主キーは PAN。注記1 下線は主キーであることを表し,主キーには索引が設定される。注記2 発行管理番号は,ハウスカードに対して,発行時に一意に割り当てられる番号である。
図2 各DBの主なテーブルの構造

ハウスカードサービスのシステムは,L 社のカードサービス部が運用している。カードサービス部の各課の業務概要は表2のとおりである。

カードサービス部の各課の業務概要の表(課名称,業務概要)。会員サポート課:会員からの,ハウスカードサービス全般に関する質問や,会員情報の変更申請,退会申請を電話で受け付ける。会員を特定するために受付時に PAN,会員名,住所を聞き,会員管理システムで PAN をキーとして検索し,本人であることを確認の上,会員情報の参照や変更を行う。会員のうち,前年度の支払額が一定の金額を超える会員を VIP 会員と呼び,より質の高いサービスを提供している。VIP 会員の要望を受け,運用課を通して保守課に作業を依頼する場合がある。会員サポート課では,1人につき1台の業務端末が貸与されている。マーケティング課:ハウスカードの新規会員を獲得するために,キャンペーンの企画といったマーケティング活動を行う。カード発行課:ハウスカードの発行,会員へのカードの発送を行う。オーソリシステムへのデータ登録は,一連のハウスカード発行処理の中で自動的に行われる。運用課:ハウスカードサービスのシステムの運用を行う。バックアップなどの定型業務に加え,システム障害への対応などの非定型業務を行う。作業指示書を作成し,作業を保守課に依頼することもある。保守課:ハウスカードサービスのシステムの開発,構築,変更,リリースを行う。その他,運用課からの依頼を受け,特別作業と呼ばれる次の二つの作業を実施する。・特別作業-1: 暗証番号の変更作業 運用課から PAN,現在の暗証番号,変更後暗証番号が記載された作業指示書を受け取る。オーソリ DB のオーソリテーブルから,指示された PAN をキーに,該当する行の全てのカラムを表示する。表示される暗証番号が指示書の現在の暗証番号と同一であることを確認し,暗証番号を変更後暗証番号に更新する。・特別作業-2: ステータスコード確認作業 障害発生時に運用課から決済処理番号が記載された作業指示書を受け取る。決済集計 DB の決済集計テーブルから,指示された決済処理番号をキーに,該当する行の全てのカラムを表示する。表示されたステータスコードと最終処理日時を運用課に報告する。特別作業-1 と特別作業-2 は,それぞれ別のチームが担当しており,両方の作業を実施する担当者はいない。担当者は,あらかじめ割り当てられている DB の利用者 ID を用いて,保守端末から DB に接続し,SQL 文を入力して作業を行う。DB への SQL 文によるアクセスは,オーソリテーブルは,特別作業-1 の DB の利用者 ID にだけ,決済集計テーブルは,特別作業-2 の DB の利用者 ID にだけ,許可されている。
表2 カードサービス部の各課の業務概要

〔会員サポート課の業務内容〕

会員サポート課では,会員から暗証番号の変更要望を受けることがある。その場合,変更要望を断って,新規ハウスカードの発行手続を取るよう説明していた。暗証番号はオーソリシステムが保持しており,会員管理システムでは変更できない。これは,サービス設計当初,暗証番号の変更は原則受け付けずに新規にハウスカードを発行する運用を前提にしていたからである。

会員サポート課には,VIP 会員に対応する専門の担当者(以下,VIP 会員担当という)がいる。VIP 会員からの質問や要望は,VIP 会員専用の電話番号で受け付け,VIP 会員担当が,要望に対して柔軟に対応することで,VIP 会員の顧客満足度を高めている。VIP 会員担当は,特に電話の多い十数名の VIP 会員からの質問や要望に迅速に応えるために,そういった VIP 会員の PAN,会員名,過去の問合せ履歴などを PC 内の VIP ファイルというファイルに記録している。会員管理システムでも同様の記録や管理は可能であるが,VIP 会員担当は,VIP ファイルの方が使いやすいと感じており,VIP 会員から電話があった際には,ときどき,VIP ファイルを使用することもあった。また,VIP 会員担当が,VIP 会員から暗証番号の変更要望を受けたときに,断ることができず,運用課を通して保守課に依頼し,オーソリ DB のオーソリテーブル中の暗証番号を変更してもらうことが度々発生していた。

〔提携カードによる新サービス構想〕

近年,L 社は新規会員獲得のための様々な施策を実行しているものの,会員数は伸び悩んでおり,ハウスカードによる年間の支払総額は減少傾向にあった。そこで,L 社は,顧客のニーズや世の中のトレンドなどを調査し,世界各地で多くの加盟店をもつ H 社と提携した新しいクレジットカード(以下,提携カードという)による新サービスの提供を検討することにした。提携カードは,ハウスカードと異なり,L 社百貨店だけでなく,H 社の加盟店でも利用できる。L 社は,現行のハウスカードサービスのシステムを拡張し,提携カードによる新サービスを実現することにした。ポイント還元率の高いハウスカードと,多くの店舗でカードが利用できる提携カードの両方のサービスを提供することで,顧客の幅広いニーズに応えられると考えた。L 社は,H 社との交渉と提携カードによる新サービスの具体的な検討を進めるために,提携カード検討委員会を設置した。

H 社との交渉過程で,L 社のそれまでの PAN の取扱方針が不明確である点について,H 社から強い改善要求が示された。H 社は,PAN や,PAN に関連するデータについて,クレジットカードに関する情報を保護するセキュリティ基準として国際的に広く認知されている Payment Card Industry データセキュリティ基準(PCI DSS)に準拠するよう L 社に求めた。L 社は,提携カードによる新サービスを実現するためだけでなく,セキュリティの向上も期待できると考えて,改善要求を受け入れることにした。提携カード検討委員会は,情報システム企画部の Y 部長に,PCI DSS への準拠を検討するよう指示した。Y 部長とその部下の N 主任は,最初に PCI DSS の要件を調査した。

〔PCI DSS 要件への準拠状況の調査〕

PCI DSS の要件は,PAN や,PAN とともに扱う会員名と有効期限,さらに磁気ストライプのデータ,セキュリティコードなどが,保存,処理又は送信される組織と環境にそれぞれ適用されることが分かった。また,PCI DSS の要件が適用される範囲(以下,適用範囲という)を最初に明らかにする必要があることも分かった。そこで,Y 部長は,L 社の PAN の取扱方針を図3のように定めた。

L 社の PAN の取扱方針(枠で囲んだ文章)。方針1. PAN の業務上不要な利用や保存はしない。業務上の利便性だけの理由による利用や保存も禁止する。方針2. 適用範囲を明らかにし,PCI DSS の要件を適用する。PAN を保存する場合には,アクセス制御を行い,必要最小限の利用者だけに,必要最小限のアクセス権限を設定する。業務上 PAN の表示が必要な場合を除き,PAN の表示はしない。
図3 L社のPANの取扱方針

Y 部長と N 主任は,図3の方針に従って検討を開始した。

方針1. について,カードサービス部の業務や表1の各システムにおける,PAN の取扱状況を確認した。すると,会員サポート課の業務の中で,①方針 1. に反する業務があることが分かった。Y 部長は,会員サポート課に対する改善案を提言した。

方針 2. については,PAN や磁気ストライプのデータ,セキュリティコードなども考慮すると,図1中の L 社本社の業務端末及び運用端末,各百貨店の専用端末,並びに L 社データセンタ内のハウスカードサービスのシステム,ネットワーク機器及び端末が適用範囲であることが明らかになった。その上で,適用範囲中のシステムや端末などが,PCI DSS の各要件に準拠しているかどうかを調査した。すると,図4の要件 3.4 及び 11.1 に関して問題があることが分かった。

PCI DSS 要件(枠で囲んだ文章。(省略)の箇所は原本のまま)。3.4 以下の手法を使用して,すべての保存場所で PAN を少なくとも読み取り不能にする(ポータブルデジタルメディア,バックアップメディア,ログを含む)。・強力な暗号化をベースにしたワンウェイハッシュ(PAN 全体をハッシュする必要がある)・トランケーション(PAN の切り捨てられたセグメントの置き換えにはハッシュを使用できない)・インデックストークンとパッド(パッドは安全に保存する必要がある)・関連するキー管理プロセスおよび手順を伴う,強力な暗号化。3.4.1(ファイルまたは列レベルのデータベース暗号化ではなく)ディスク暗号化が使用される場合,論理アクセスはネイティブなオペレーティングシステムの認証およびアクセス制御メカニズムとは別に管理する必要がある(ローカルユーザアカウントデータベースや一般的なネットワークログイン資格情報を使用しないなどの方法で)。復号キーがユーザアカウントと関連付けられていない。11.1 四半期ごとにワイヤレスアクセスポイントの存在をテストし(802.11),すべての承認されているワイヤレスアクセスポイントと承認されていないワイヤレスアクセスポイントを検出し識別するプロセスを実施する。出典:PCI Security Standards Council LLC, “Payment Card Industry(PCI)データセキュリティ基準 要件とセキュリティ評価手順 バージョン 3.0”, 38〜40 ページ及び 89 ページ(URL:https://ja.pcisecuritystandards.org/minisite/en/pci-dss-v3-0.php(平成 26 年 3 月 6 日アクセス))。注記1 “ユーザアカウント”とは,“利用者 ID”と同じである。注記2 要件 3.4 及び 3.4.1 は PAN だけに適用される。
図4 PCI DSS要件

〔PCI DSS 要件 3.4 への準拠〕

要件 3.4 には,PAN を保存する際の要件が書かれている。要件 3.4.1 には,ディスク暗号化に関する要件が書かれている。

Y 部長と N 主任は,DB に保存する PAN について,暗号化による対策を検討することにした。N 主任は表3に示す暗号化方式を選定し,検討を進めた。次は,その時の会話である。

暗号化方式の表(方式名,概要,詳細)。方式1:市販製品を利用したハードディスク暗号化。ハードディスク全体を暗号化する。OS の利用者 ID のログインに成功すると,ハードディスクの全てのデータがアクセス時に自動的に復号されるようになる。ネットワーク経由の OS へのログインについても同様である。方式2:DB の機能を利用した表領域の暗号化。DB の表領域を暗号化する。DB へのログインは OS の利用者 ID とは別の DB の利用者 ID で認証される。DB へのログインに成功すると,復号された状態で DB を利用できる。方式3:DB の機能を利用した列の暗号化。DB の表の指定した列を暗号化する。DB へのログインは OS の利用者 ID とは別の DB の利用者 ID で認証される。DB の利用者 ID ごとに,復号可能な列を権限として設定できる。暗号化された列を復号権限がない DB の利用者 ID で表示した場合,復号されずに表示される。索引を設定した列は暗号化できない。
表3 暗号化方式

その後,N 主任は検討を進め,検討結果を Y 部長に報告した。提携カード検討委員会は,表4のように暗号化方式を決定した。

決定した暗号化方式の表(テーブル名称,方式名)。決済集計テーブル:[ a ]。ポイントテーブル:[ b ]。オーソリテーブル:[ c ]。会員管理テーブル:[ d ]。
表4 決定した暗号化方式

〔PCI DSS 要件 11.1 への準拠〕

N 主任は要件 11.1 についても検討を進めた。次は,要件 11.1 のワイヤレスアクセスポイントのスキャン(以下,W-AP スキャンという)に関する会話である。

N 主任は,実際に運用ルームで W-AP スキャンを行い,結果をまとめた。次は,その結果を Y 部長に報告した際の会話である。

W-AP スキャンの結果(枠で囲んだ文章)。1. 検査結果:測定ポイントから 5m 以内の距離,つまり運用ルーム内にワイヤレスアクセスポイントは検出されなかった。2. 確認日時及び検査方法:(省略)。3. 使用 PC,検査対象無線 LAN 規格,使用ソフトウェア:使用 PC:××× GP28,無線 LAN アダプタ:××× Network Connection,無線 LAN 規格:IEEE802.11 b/g,使用ソフトウェア:×××checker 3.1.6。4. 測定結果:次のワイヤレスアクセスポイントが検出された。表(MAC アドレス,SSID,周波数帯(GHz),推定距離(m))。1行目 ××:××:××:00:08:0F,AbcD,2.4,16。2行目 ××:××:××:00:74:B5,Emcad,2.4,12。3行目 ××:××:××:10:2F:2A,AL45ioew4,2.4,15。
図5 W-APスキャンの結果

〔準拠計画書の提出〕

その後も,Y 部長と N 主任は PCI DSS 要件への準拠性について確認を進め,問題がある要件については,対策計画を明確にした。また,継続的に適用範囲の正確性を確認するとともに,より限定していくという方針を定め,対策計画の内容と合わせて準拠計画書としてまとめた。準拠計画書は,提携カード検討委員会で承認された後,H 社に提出された。H 社からは,L 社の迅速な対応と準拠計画書の内容が高く評価された。

〔新システム化計画〕

L 社内で提携カードによる新サービスの検討が進む中,N 主任は,提携カードの導入と合わせて,提携カードとハウスカードの表面に PAN,会員名,有効期限及び図6に示す仕様のお客様コードを表記し,会員管理テーブルの構造を図7のように修正して,お客様コードをキーに検索できるように会員管理システムを改修する案を Y 部長に提案した。

お客様コードの仕様(枠で囲んだ文章)。・10 桁の英数字で構成する。・PAN とは異なるアルゴリズムで生成する。・クレジットカードごとに一意に採番する。
図6 お客様コードの仕様
会員管理 DB:会員管理(お客様コード,PAN,会員名,住所,電話番号,性別)。主キーはお客様コード(下線)。
図7 お客様コード導入後の会員管理テーブルの構造

N 主任は,“この改修によって,⑥会員サポート課の業務の一部の手順を,準拠計画書に含まれる方針に従って改善することも可能になる”と,お客様コードを表記するメリットを説明した。

Y 部長は,N 主任の提案に対し,“さらに,PAN とお客様コードを相互に関係付けるテーブルをもつ変換 DB を作成し,システムには,PAN から対応するお客様コード,お客様コードから対応する PAN を検索できるインタフェースを作り,各システムから利用できるようにすれば,L 社にとってセキュリティが考慮された DB のテーブルの構造を実現できる”と指摘した。N 主任は Y 部長の指摘を受け,図8に示す DB のテーブル構造案を作成した。また,合わせて他の必要な見直しも実施した。

お客様コード導入後の DB の主なテーブルの構造案。決済集計 DB:決済集計(決済処理番号,PAN,店舗コード,金額,日時,オーソリ結果,最終処理日時,ステータスコード)。主キーは決済処理番号。変換 DB:変換(PAN,お客様コード)。主キーは PAN。ポイント DB:ポイント([ f ])。オーソリ DB:オーソリ(発行管理番号,PAN,有効期限,セキュリティコード,暗証番号,与信枠)。主キーは発行管理番号。会員管理 DB:会員管理([ g ])。
図8 お客様コード導入後のDBの主なテーブルの構造案

提携カード検討委員会は,Y 部長と N 主任の案を採用し,新システムでは,お客様コードを導入することを決定した。

その後,H 社との交渉は無事合意の方向で進み,Y 部長は,提携カードによる新サービスを実現するための新システム化計画を策定することになった。

出題趣旨(IPA)

今や,クレジットカードは広く消費者に普及しており,様々な場面の決済に利用されている。そのため,企業が業務でクレジットカード情報を取り扱う機会は多い。一方で,クレジットカード情報は機密性が高く,極めてリスクの高い情報資産である。企業におけるクレジットカード情報へのセキュリティ対策では,リスクの低減だけでなく,リスクの回避も考慮すべきである。本問では,クレジットカード業界のセキュリティ基準として認知されているPCI DSSを題材に,リスク分析,データの暗号化,ワイヤレスアクセスポイントの管理などについての知識と能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問1では,PCI DSSが求める要件に関するセキュリティ対策について出題した。全体として正答率は高かった。

設問と解答例

設問1 40字以内

本文中の下線①について,会員サポート課の業務の中で,どのような点が方針 1. に反しているか。40 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • VIP会員担当がVIPファイルにPANを記録している点
解説

本文の根拠

〔会員サポート課の業務内容〕

VIP 会員担当は,特に電話の多い十数名の VIP 会員からの質問や要望に迅速に応えるために,そういった VIP 会員の PAN,会員名,過去の問合せ履歴などを PC 内の VIP ファイルというファイルに記録している。

〔会員サポート課の業務内容〕

会員管理システムでも同様の記録や管理は可能であるが,VIP 会員担当は,VIP ファイルの方が使いやすいと感じており

図3 方針1

PAN の業務上不要な利用や保存はしない。業務上の利便性だけの理由による利用や保存も禁止する。

方針1は,PAN の“業務上不要な利用や保存”と“業務上の利便性だけの理由による利用や保存”を禁止している。会員サポート課の VIP 会員担当は,PAN を PC 内の VIP ファイルに記録している。解答例は“VIP会員担当がVIPファイルにPANを記録している点”である。

本文は,会員管理システムでも同様の記録や管理は可能だと書いている。つまり,PAN を保存する場所は既に会員管理システムにあり,VIP ファイルへの記録は,VIP ファイルの方が使いやすいという利便性だけの理由によるものである。これが“業務上不要な保存”に当たり,方針1に反する。

解答例は27字で,40字の制限に収まる。“だれが”“どこに”“何を”の3点を入れる。“PAN を PC に保存している”だけでは,VIP 会員担当の業務であることと,保存先が管理外のファイルであることが伝わらない。

設問2(1)

本文中の下線②について,L 社の方針に従った権限の付与を解答群の中から選び,記号で答えよ。解答群 ア 特別作業-1 の DB の利用者 ID に対するオーソリテーブルの PAN 列の復号権限の付与は“与える”,特別作業-2 の DB の利用者 ID に対する決済集計テーブルの PAN 列の復号権限の付与は“与える” イ 前者は“与える”,後者は“与えない” ウ 前者は“与えない”,後者は“与える” エ 前者は“与えない”,後者は“与えない”

解答例

  • イ
解説

本文の根拠

表2 保守課

運用課から PAN,現在の暗証番号,変更後暗証番号が記載された作業指示書を受け取る。

表2 保守課

障害発生時に運用課から決済処理番号が記載された作業指示書を受け取る。

表2 保守課

表示されたステータスコードと最終処理日時を運用課に報告する。

図3 方針2

必要最小限の利用者だけに,必要最小限のアクセス権限を設定する。業務上 PAN の表示が必要な場合を除き,PAN の表示はしない。

特別作業-1(暗証番号の変更)は,作業指示書に書かれた PAN をキーにオーソリテーブルの行を探して表示し,現在の暗証番号と照合してから更新する。PAN を手掛かりに行を特定し,行の内容を確かめる業務であるから,オーソリテーブルの PAN 列の復号権限は必要である。一方,特別作業-2(ステータスコード確認)は,決済処理番号をキーに決済集計テーブルの行を表示し,ステータスコードと最終処理日時を報告する作業で,PAN を使う場面がない。方針2は“業務上 PAN の表示が必要な場合を除き,PAN の表示はしない”と定めているので,決済集計テーブルの PAN 列の復号権限は与えない。以上から,前者を“与える”,後者を“与えない”とした イ が正しい。

図3の方針2は,必要最小限の利用者に必要最小限の権限を設定することも求めている。二つの作業の担当チームは別で,それぞれ割り当てられた DB の利用者 ID だけが対応するテーブルに許可されているので,ID ごとに復号権限を分けることができる。

ア は決済集計テーブルにも復号権限を与えるので,不要な権限になる。ウ は与える相手が逆で,暗証番号の変更に必要な権限がなくなる。エ はどちらにも与えないので,特別作業-1 が PAN をキーに行を確認できなくなる。

採点講評(IPA)

設問2は,全体として正答率が高かった。本文や表,図に記載された細かい条件についても,よく理解されているようであった。

設問2(2) 解答欄2つ

本文中の下線③について,保守課のどの作業を,どのような状態で,できるようになるか。それぞれ 15 字以内で答えよ。

〔作業〕解答例

  • ステータスコード確認作業
  • 特別作業-2

〔状態〕解答例

  • PANを表示しない状態
解説

本文の根拠

表2 保守課

表示されたステータスコードと最終処理日時を運用課に報告する。

表3 方式3

暗号化された列を復号権限がない DB の利用者 ID で表示した場合,復号されずに表示される。

図3 方針2

業務上 PAN の表示が必要な場合を除き,PAN の表示はしない。

方式3では,DB の利用者 ID ごとに復号できる列を権限として設定でき,復号権限のない ID で表示した列は復号されずに表示される。設問2(1)のとおり,ステータスコード確認作業(特別作業-2)の ID には決済集計テーブルの PAN 列の復号権限を与えないので,この作業では PAN が復号されない。ステータスコード確認作業は PAN の表示を必要としない作業なので,PAN を表示しない状態で作業でき,“PAN の表示はしない”という方針2により一層従える。解答例は,作業が“ステータスコード確認作業”(又は“特別作業-2”),状態が“PANを表示しない状態”である。

表2で“該当する行の全てのカラムを表示する”と書かれているのは,両方の特別作業に共通である。特別作業-1 は暗証番号を扱うために PAN 列の復号権限が必要であり,PAN を表示しない状態にはできない。したがって,答えは特別作業-2 である。

“作業”は 12 字(“特別作業-2”なら 6 字),“状態”は 11 字で,どちらも 15 字の制限に収まる。作業名は表2の名称(“ステータスコード確認作業”)のまま,状態は“表示しない”という結果が分かる書き方にする。

採点講評(IPA)

設問2は,全体として正答率が高かった。本文や表,図に記載された細かい条件についても,よく理解されているようであった。

設問2(3) 解答欄4つ

表3の暗号化方式には,図4に示す要件を満たさないものがある。その方式名と満たさない PCI DSS 要件の項目番号をそれぞれ答えよ。また,その方式のどの動作が,要件のどの内容に違反するのか。動作を 40 字以内で,内容を 30 字以内で,それぞれ具体的に述べよ。

〔方式名〕解答例

  • 方式1

〔項目番号〕解答例

  • 3.4.1

〔動作〕解答例

  • OSへのログインの成功後のデータアクセス時の自動的なデータの復号

〔内容〕解答例

  • 復号キーがユーザアカウントと関連付けられていない。
解説

本文の根拠

表3 方式1

OS の利用者 ID のログインに成功すると,ハードディスクの全てのデータがアクセス時に自動的に復号されるようになる。

図4 要件3.4.1

復号キーがユーザアカウントと関連付けられていない。

図4 注記1

“ユーザアカウント”とは,“利用者 ID”と同じである。

図4 注記2

要件 3.4 及び 3.4.1 は PAN だけに適用される。

図4の要件3.4.1は,(ファイルや列レベルの DB 暗号化ではなく)ディスク暗号化を使う場合の要件で,論理アクセスを OS の認証とは別に管理することと,復号キーがユーザアカウントと関連付けられていないことを求める。表3の方式1(ハードディスク暗号化)は,OS の利用者 ID でログインに成功すると,ディスク内の全データがアクセス時に自動的に復号される。OS の利用者 ID(注記1のとおり“ユーザアカウント”と同じ)による認証だけで復号されるので,要件3.4.1に違反する。方式2と方式3は DB へのログインが OS の利用者 ID とは別の DB の利用者 ID で認証され,しかも列・表領域単位の DB 暗号化なので,要件3.4.1の対象外である。

解答例は,方式名が“方式1”,項目番号が“3.4.1”,動作が“OSへのログインの成功後のデータアクセス時の自動的なデータの復号”,内容が“復号キーがユーザアカウントと関連付けられていない。”である。

動作は32字で40字の制限に,内容は25字で30字の制限に収まる。動作には“OS へのログイン成功後”“アクセス時に自動で”“復号される”の3点を入れる。内容は図4の要件の文言をそのまま使う。要件3.4の項目(ハッシュ,トランケーションなど)に当てはめて答えないよう,項目番号は枝番まで書く。

採点講評(IPA)

設問2は,全体として正答率が高かった。本文や表,図に記載された細かい条件についても,よく理解されているようであった。

設問2(4) 35字以内

本文中の下線④の理由を 35 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 主キーであるPANに索引が設定されており暗号化できないから
解説

本文の根拠

表3 方式3

索引を設定した列は暗号化できない。

図2 注記1

下線は主キーであることを表し,主キーには索引が設定される。

図2 会員管理DB

会員管理 DB:会員管理(PAN,会員名,住所,電話番号,性別)。主キーは PAN。

方式3は,索引を設定した列を暗号化できない。図2の注記1のとおり,主キーには索引が設定される。会員管理テーブルは主キーが PAN なので,PAN 列に索引があり,方式3では暗号化できない。要件3.4は,保存場所すべてで PAN を少なくとも読み取り不能にすることを求めるので,PAN 列を暗号化できない方式は採れない。解答例は“主キーであるPANに索引が設定されており暗号化できないから”である。

ポイントテーブルも主キーが PAN なので,会員管理テーブルと同じ理由で方式3を採れない(設問2(5))。決済集計テーブルは主キーが決済処理番号,オーソリテーブルは発行管理番号なので,PAN 列に索引は無い。

解答例は29字で,35字の制限に収まる。“主キー”“索引”“暗号化できない”の3点を入れる。“性能が劣化する”などと書くと,Y 部長が処理性能を考慮点から除外したことと食い違う。

採点講評(IPA)

設問2は,全体として正答率が高かった。本文や表,図に記載された細かい条件についても,よく理解されているようであった。

設問2(5) 解答欄4つ

表4中の a 〜 d に入れる適切な方式名を表3の中から答えよ。

〔a〕解答例

  • 方式3

〔b〕解答例

  • 方式2

〔c〕解答例

  • 方式3

〔d〕解答例

  • 方式2
解説

本文の根拠

図2 決済集計DB

決済集計 DB:決済集計(決済処理番号,PAN,店舗コード,金額,日時,オーソリ結果,最終処理日時,ステータスコード)。主キーは決済処理番号。

図2 ポイントDB

ポイント DB:ポイント(PAN,ポイント値,最終更新日時)。主キーは PAN。

図2 オーソリDB

オーソリ DB:オーソリ(発行管理番号,PAN,有効期限,セキュリティコード,暗証番号,与信枠)。主キーは発行管理番号。

表3 方式3

DB の利用者 ID ごとに,復号可能な列を権限として設定できる。

Y 部長は,処理性能を考慮点から除外し,PCI DSS の要件と L 社の方針に基づいてテーブルごとに最適な方式を採用すると述べている。方式1は設問2(3)のとおり要件3.4.1に違反するので除かれる。方式3は復号権限を DB の利用者 ID ごとに設定できて方針2(必要最小限のアクセス権限)に従いやすいが,索引を設定した列は暗号化できない。そこで,PAN 列に索引が無いテーブルは方式3,PAN が主キーで索引があるテーブルは方式2になる。

PAN が主キーでないのは,決済集計テーブル(主キーは決済処理番号)とオーソリテーブル(主キーは発行管理番号)で,a と c は方式3。PAN が主キーなのは,ポイントテーブルと会員管理テーブルで,b と d は方式2。解答例は a が“方式3”,b が“方式2”,c が“方式3”,d が“方式2”である。

間違えやすいのは,表2の特別作業の対象であるテーブルを理由に決済集計・オーソリを方式3とし,ポイントも同様に扱うことである。決め手は用途ではなく,PAN 列が主キー(索引付き)かどうかである。図2の下線を必ず確かめる。

採点講評(IPA)

設問2は,全体として正答率が高かった。本文や表,図に記載された細かい条件についても,よく理解されているようであった。

設問3(1) 40字以内

本文中の下線⑤について,セキュリティ上の問題につながる事象を一つ,40 字以内で述べよ。

解答例

  • セキュリティポリシに反してワイヤレスアクセスポイントが設置されること
解説

本文の根拠

〔ハウスカードサービスのシステム概要〕

L 社のセキュリティポリシによって,ハウスカードサービスのシステムを含め,全システムで,無線 LAN の利用が禁止されている。

図4 要件11.1

すべての承認されているワイヤレスアクセスポイントと承認されていないワイヤレスアクセスポイントを検出し識別するプロセスを実施する。

〔PCI DSS 要件 11.1 への準拠〕

それらの事象によって,例えば,情報漏えいなどが起きる可能性もある。

L 社は全システムで無線 LAN の利用を禁止しているので,適用範囲内で検出されたワイヤレスアクセスポイントは,L 社が承認したものではない。要件11.1は,承認されていないワイヤレスアクセスポイントを検出して識別するよう求める。Y 部長が挙げる“セキュリティ上の問題につながる事象”は,禁止されているはずの無線 LAN のアクセスポイントが,適用範囲内に承認なく設置されることである。解答例は“セキュリティポリシに反してワイヤレスアクセスポイントが設置されること”である。

その結果,適用範囲内の PAN を扱うネットワークに,管理されない経路ができて,情報漏えいなどが起きる可能性がある。本文の“それらの事象によって,例えば,情報漏えいなどが起きる”はこの結果を指す。

解答例は34字で,40字の制限に収まる。講評は,L 社の外のワイヤレスアクセスポイントへの接続を答える誤りが多かったと指摘している。要件11.1の対象は適用範囲内の承認されていないアクセスポイントであり,“外部のアクセスポイントに接続する”は事象の対象を取り違えている。

採点講評(IPA)

設問3(1)は,正答率が低かった。ワイヤレスアクセスポイントの管理に関する設問であったが,L社の外のワイヤレスアクセスポイントへの接続について誤って解答する受験者が多かった。本設問は,図4の要件11.1が前提にあり,適用範囲内に承認されていないワイヤレスアクセスポイントがないことを確認することがポイントである。したがって,適用範囲内の承認されていないワイヤレスアクセスポイントに関する“セキュリティ上の問題につながる事象”を解答する必要がある。

設問3(2) 解答欄1つ

本文中の e に入れる適切な字句を答えよ。

〔e〕解答例

  • 5GHz帯
  • IEEE802.11a
解説

本文の根拠

図5

無線 LAN 規格:IEEE802.11 b/g

図5

次のワイヤレスアクセスポイントが検出された。表(MAC アドレス,SSID,周波数帯(GHz),推定距離(m))。

図4 要件11.1

四半期ごとにワイヤレスアクセスポイントの存在をテストし(802.11)

図5の検査は,無線 LAN 規格を IEEE802.11 b/g に限っており,検出された三つのアクセスポイントも周波数帯は 2.4 GHz である。要件11.1が対象とするのは 802.11 全般であり,IEEE802.11 b/g が 2.4 GHz 帯を使うのに対し,IEEE802.11a は 5 GHz 帯を使う。したがって,5 GHz 帯(IEEE802.11a)のアクセスポイントは,この検査では検出できていない。解答例は“5GHz帯 又は IEEE802.11a”で,どちらを答えてもよい。

検査に使った PC の無線 LAN アダプタと検査ソフトウェアが検査対象にした規格が b/g だけだったことが,検査漏れの原因である。測定ポイントの位置や推定距離の計算については,Y 部長が問題ないと述べている。

なお,字数の制限は無い。“規格”として答えるなら IEEE802.11a,“周波数帯”として答えるなら 5GHz 帯と,どちらの言い方でも書ける。2.4GHz 帯の別規格などと答えると,検出済みの帯域と重なってしまう。

設問4(1) 40字以内

本文中の下線⑥について,どの手順をどのように改善できるか。40 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 電話受付時の会員の特定をPANではなくお客様コードで行うように改善できる。
解説

本文の根拠

表2 会員サポート課

会員を特定するために受付時に PAN,会員名,住所を聞き,会員管理システムで PAN をキーとして検索し,本人であることを確認の上,会員情報の参照や変更を行う。

〔新システム化計画〕

提携カードとハウスカードの表面に PAN,会員名,有効期限及び図6に示す仕様のお客様コードを表記し,会員管理テーブルの構造を図7のように修正して,お客様コードをキーに検索できるように会員管理システムを改修する案を Y 部長に提案した。

図3 方針1

PAN の業務上不要な利用や保存はしない。

会員サポート課は,電話を受け付けるとき,会員に PAN,会員名,住所を聞いて,会員管理システムで PAN をキーに検索して会員を特定している。N 主任の案では,カードの表面にお客様コードを表記し,会員管理システムをお客様コードをキーに検索できるように改修する。これにより,電話受付時の会員の特定を,PAN の代わりにお客様コードで行える。会員に PAN を電話で伝えさせる必要がなくなり,PAN の利用を減らすという方針に近づく。解答例は“電話受付時の会員の特定をPANではなくお客様コードで行うように改善できる。”である。

図6のとおり,お客様コードは PAN とは異なるアルゴリズムで生成し,クレジットカードごとに一意に採番する。PAN から計算で求められないので,お客様コードは PAN の代わりの検索キーにできる。

解答例は37字で,40字の制限に収まる。“どの手順を”(電話受付時の会員の特定)と“どのように”(PAN ではなくお客様コードで)の両方を書く。“お客様コードを導入する”だけでは,手順が書けていない。

採点講評(IPA)

設問4は,正答率が高かった。おおむね本文全体を通してのL社の課題を把握し,対策方法を適切に理解しているようであった。

設問4(2) 解答欄2つ

図8中の f , g に入れるテーブル構造を答えよ。なお,主キーには下線を引くこと。

〔f〕解答例

  • お客様コード,ポイント値,最終更新日時

〔g〕解答例

  • お客様コード,会員名,住所,電話番号,性別

〔備考〕解答例では,どちらも“お客様コード”に下線が引かれている(主キー)

解説

本文の根拠

〔新システム化計画〕

PAN とお客様コードを相互に関係付けるテーブルをもつ変換 DB を作成し,システムには,PAN から対応するお客様コード,お客様コードから対応する PAN を検索できるインタフェースを作り,各システムから利用できるようにすれば

図7

会員管理 DB:会員管理(お客様コード,PAN,会員名,住所,電話番号,性別)。主キーはお客様コード(下線)。

図8

変換 DB:変換(PAN,お客様コード)。主キーは PAN。

〔PCI DSS 要件への準拠状況の調査〕

PCI DSS の要件は,PAN や,PAN とともに扱う会員名と有効期限,さらに磁気ストライプのデータ,セキュリティコードなどが,保存,処理又は送信される組織と環境にそれぞれ適用されることが分かった。

Y 部長の指摘は,PAN とお客様コードの対応は変換 DB に持たせ,各システムが変換 DB のインタフェースから PAN を引く形にすることである。図8では,決済集計 DB とオーソリ DB は PAN を持ったままで,変換 DB が PAN とお客様コードの対応を持つ。ポイント DB と会員管理 DB は PAN を持つ必要がなくなるので,PAN の代わりにお客様コードを入れる。ポイントテーブルは元の PAN をお客様コードに置き換えて(お客様コード,ポイント値,最終更新日時),会員管理テーブルは図7の PAN の列も取り除く(お客様コード,会員名,住所,電話番号,性別)。主キーは PAN から置き換えたお客様コードで,f,g ともにお客様コードに下線を引く。解答例も同じである。

PAN を保存するシステムが減れば,PCI DSS の適用範囲を限定しやすくなる。本文が“PAN …が,保存,処理又は送信される組織と環境にそれぞれ適用される”と述べているのと,準拠計画書の方針に,適用範囲をより限定していくとあるのが,この見直しの根拠である。

解答例は,f が“お客様コード,ポイント値,最終更新日時”,g が“お客様コード,会員名,住所,電話番号,性別”である。会員管理テーブルに PAN を残すと,お客様コード導入の意味が薄れる。主キーの下線を忘れないこと。

採点講評(IPA)

設問4は,正答率が高かった。おおむね本文全体を通してのL社の課題を把握し,対策方法を適切に理解しているようであった。

出典:平成26年度 春期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 金属加工業者におけるデータ管理

金属加工業者におけるデータ管理に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。

D 社は,従業員数 200 名の金属加工業者である。CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)システム及び DNC(Direct Numerical Control)システムを導入し,設計と製造に活用している。大型機械製造業や電気機器製造業の大手企業から委託を受けることも多い。特殊な加工が必要な場合は,専門の加工業者(以下,専門加工業者という)に再委託することもある。

〔D 社のネットワーク構成と機器〕

D 社のネットワーク構成を図1に示す。

D 社のネットワーク構成図。インターネットに E 社と F 社が接続している。D 社の中に FW-A,FW-B,DMZ,事務 LAN,設計 LAN,製造 LAN がある。インターネットは FW-A に接続する。FW-A は DMZ の L2SW と事務 LAN の L2SW に接続する。DMZ の L2SW には公開 Web サーバ,メールサーバ,プロキシサーバが接続している。事務 LAN の L2SW には PC(複数)と事務サーバが接続している。事務 LAN の L2SW は FW-B にも接続する。FW-B は設計 LAN の L2SW と製造 LAN の L2SW に接続する。設計 LAN の L2SW には設計管理サーバと CAD/CAM システム(複数)が接続している。製造 LAN の L2SW には DNC システム(複数)と NC 工作機械(複数)が接続している。FW: ファイアウォール,L2SW: レイヤ2スイッチ,NC: Numerical Control。注記 事務 LAN のデフォルトゲートウェイは FW-A である。
図1 D社のネットワーク構成

D 社は,公開 Web サーバを運用し,そのコンテンツ作成を,コンテンツ作成業者の E 社に委託している。E 社の担当者は,E 社からインターネット経由で,FTP を使用してコンテンツを更新する。

また,D 社では,インターネットサービスプロバイダの F 社が提供するサービス(以下,F 社サービスという)のうち,次のものを使用している。

D 社のネットワークに接続された機器には,固定 IP アドレスを割り当てている。

製造 LAN に接続された機器の運用は,製造課の担当者が行っている。それ以外の機器の運用は,情報システム課の J 課長の下,K さんが行っている。

〔取引時の情報管理〕

設計課の担当者は,委託元指定の安全性が確保された方法を用いて,設計図面を CAD データとして受け取る。その後,ウイルススキャンを行い,設計管理サーバに保存する。さらに,CAD/CAM システムを使用して,CAD データを NC 工作機械用の NC プログラムに変換し,設計管理サーバに保存する。製造課の担当者は,DNC システムを操作し,NC プログラムを設計管理サーバから NC 工作機械に取り込む。また,DNC システムを操作して,NC 工作機械の操作及び監視も行う。

CAD/CAM システムは,加工条件として工具の選択,加工順序などのデータベースを提供している。しかし,CAD/CAM システムが提供しているデータベースだけで全ての注文に対応できるわけではない。複雑な形状の加工の注文もあり,D 社が独自に作成した加工条件を使用することも多い。D 社独自の加工条件や NC プログラムは,D 社の重要情報であるので,情報漏えい対策に取り組んでいる。

専門加工業者に再委託する場合は,ウイルススキャンを行った後に暗号化した上で,次のいずれかの方法で CAD データを送付する。

復号用のパスワードは,CAD データとは別にメールで送付する。

経理課の担当者は,支払や入金の確認に U 銀行のインターネットバンキングサービスを利用している。U 銀行のインターネットバンキングサービスでは,EV SSL 証明書が使用されているので,担当者は,U 銀行のインターネットバンキングサービスにログインする前に,ブラウザのアドレスバーに表示される Web サイト運営者名が U 銀行であることを確認している。

〔情報システム課が運用している機器の概要〕

情報システム課が運用している主な機器の概要を表1に示す。

主な機器の概要の表(機器名,OS,概要)。FW-A,FW-B:専用 OS。ステートフルパケットフィルタリング機能並びに通信の許可及び拒否のログを取得する機能がある。公開 Web サーバ:UNIX。コンテンツ公開機能及びコンテンツ全文検索機能を提供している。コンテンツ更新は,FTP を用いて行う。メールサーバ:UNIX。F 社のメール中継サービスのサーバとの間のメール転送機能及び PC との間のメール送受信機能がある。リゾルバ機能及び DNS キャッシュ機能がある。NTP サーバ機能があり,インターネット上の NTP サーバとの間で時刻同期している。プロキシサーバ:UNIX。P 社のプロキシソフトを使用している。PC からインターネットへの Web アクセス通信中継機能,Web アクセス通信ウイルススキャン機能,URL フィルタリング機能及び HTTP over TLS(以下,HTTPS という)通信対応機能がある。HTTPS 通信対応機能とは,HTTPS 通信を復号し,Web アクセス通信ウイルススキャン機能及び URL フィルタリング機能を使用した後,再暗号化する機能である。プロキシソフトのウイルス定義ファイル及び P 社が提供する URL ブラックリスト(以下,P 社提供リストという)は,P 社の Web サーバから 1 時間ごとに直接ダウンロードし,更新している。D 社では,HTTPS 通信対応機能を使用していない。事務サーバ:Windows。人事情報,経理情報などを格納する。Q 社のウイルス対策ソフトを導入している。NTP サーバ機能があり,メールサーバとの間で時刻同期している。設計管理サーバ:Windows。CAD データ及び NC プログラムを格納する。Q 社のウイルス対策ソフトを導入している。PC との間の CAD データの送受信及び DNC システムの NC プログラム取込みのために,FTP サーバ機能がある。CAD/CAM システム:Windows。設計図面の確認及び修正,並びに CAD データから NC プログラムへの変換を行う。Q 社のウイルス対策ソフトを導入している。
表1 主な機器の概要

D 社では,社内で利用可能なソフトウェアを定めている。OS が Windows の場合は,Q 社のウイルス対策ソフトと R 社の画像閲覧ソフトの導入を必須としている。

D 社では年 3 回,FW-A,FW-B 及び DMZ に設置されたサーバに対して脆弱性修正プログラムを適用している。

事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムでは,OS の脆弱性修正プログラムがリリースされた場合,その週末に OS ベンダの Web サーバからプロキシサーバ経由で脆弱性修正プログラムをダウンロードして,適用している。

従業員が用いる PC は,会社が貸与している。PC の OS は,Windows である。OS の脆弱性修正プログラムは,リリースされると自動的に適用される。

DMZ に設置されたサーバ,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムのデータは,日次でバックアップを行っている。また,OS 及びプログラムのバックアップは,脆弱性修正プログラム適用前及び適用後に行っている。

PC,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムでは,ウイルス対策ソフトのウイルス定義ファイルを,起動時及び起動後 2 時間ごとに Q 社の Web サーバからプロキシサーバ経由でダウンロードし,更新している。

各サーバでは,サーバへのアクセス及びプログラムの動作をログとして取得している。各サーバのログの保存期間は 4 週間である。

FW-A のフィルタリングルールを表2に,FW-B のフィルタリングルールを表3に示す。

FW-A のフィルタリングルールの表(項番,送信元,宛先,サービス,動作,ログ)。1:メールサーバ,インターネット,DNS,NTP,許可,取得しない。2:F 社(注1),メールサーバ,SMTP,許可,取得する。3:メールサーバ,F 社(注1),SMTP,許可,取得する。4:全て,公開 Web サーバ,FTP,許可,取得する。5:全て,公開 Web サーバ,HTTP,許可,取得する。6:PC,事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システム,プロキシサーバ,代替 HTTP(注2),許可,取得する。7:プロキシサーバ,インターネット,FTP,HTTP,HTTPS,許可,取得する。8:事務サーバ,メールサーバ,NTP,許可,取得する。9:PC,メールサーバ,POP3,SMTP,許可,取得する。10:全て,全て,全て,拒否,取得しない。注1 F 社とは,F 社のメール中継サービスのサーバである。注2 代替 HTTP のポート番号は,8080 である。注記 項番が小さいルールから順に,最初に一致したルールが適用される。
表2 FW-Aのフィルタリングルール
FW-B のフィルタリングルールの表(項番,送信元,宛先,サービス,動作,ログ)。1:PC,DNC システム,設計管理サーバ,FTP,許可,取得する。2:設計管理サーバ,CAD/CAM システム,事務サーバ,NTP,許可,取得する。3:設計管理サーバ,CAD/CAM システム,プロキシサーバ,代替 HTTP,許可,取得する。4:全て,全て,全て,拒否,取得しない。注記 項番が小さいルールから順に,最初に一致したルールが適用される。
表3 FW-Bのフィルタリングルール

FW-A 及び FW-B のログの保存期間は 4 週間である。

FW-A 及び FW-B のフィルタリングルールのバックアップは,ルール変更後に行っている。

〔公開 Web サーバのコンテンツ改ざんと対処〕

ある日,E 社の担当者から,“公開 Web サーバのコンテンツを更新しようとしたところ,あるファイルの更新日時が,前回の更新日時と異なっていることに気付いた。D 社で更新したのか”と K さんに問合せがあった。K さんが確認したところ,D 社では誰もそのファイルを更新していなかったので,J 課長に公開 Web サーバのコンテンツが改ざんされた可能性があることを報告した。J 課長が,情報システム担当の M 役員に報告したところ,情報セキュリティ専門会社に調査を依頼するようにとの指示を受けた。J 課長は,情報セキュリティ専門会社の G 社に調査を依頼した。

その日のうちに,G 社の情報セキュリティスペシャリストである A 氏が,D 社を訪問した。A 氏は,公開 Web サーバを①シャットダウンすると調査が困難になるので,調査が完了するまでそのままにしておき,公開だけは直ちに停止するようにと助言し,J 課長と K さんはそれに従った。さらに,A 氏が,FW-A 及び DMZ に設置されたサーバに対して,いつ脆弱性修正プログラムを適用したかを尋ねたところ,K さんは 2 か月前に適用したと答えた。

A 氏は,FW-A 及び DMZ に設置されたサーバで,必要なファイルを採取し,調査を開始した。1 週間後,G 社から J 課長と K さんに調査結果の報告があった。調査結果の概要を図2に示す。

調査結果の概要(枠で囲んだ文章)。1. コンテンツ改ざんについて。1.1 コンテンツファイル改ざんの内容。・コンテンツファイル中に,不正なスクリプトが埋め込まれていた。・不正なスクリプトは,ブラウザ表示の見かけには影響しないものであった。1.2 コンテンツファイル改ざんの手法。・改ざんは,公開 Web サーバのコンテンツ全文検索機能の脆弱性を悪用した可能性が高い。脆弱性情報は,調査開始日の 4 週間前に公表された。脆弱性修正プログラムは,調査開始日の 3 週間前にリリースされた。・調査したログには,不審なアクセスの記録はなかった。調査開始日の 4 週間以上前に改ざんが行われた可能性が高い。2. 不正なスクリプトについて。・改ざんされたコンテンツにアクセスすると,多くの PC ベンダがプリインストールしている R 社の画像閲覧ソフトの脆弱性を悪用し,攻撃者が用意した Web サーバから,新たなウイルスをダウンロードさせる。画像閲覧ソフトの脆弱性修正プログラムは,調査開始日の 3 週間前に,R 社の Web サーバからダウンロードできるようになっていた。・不正なスクリプトは既知のものである。不正なスクリプトに対応したウイルス対策ソフトの定義ファイルは,調査開始日の 2 週間前にリリースされた。・攻撃者が用意した Web サーバは,既に閉鎖されている。3. 復旧方法及び再発防止策について。・<u>②D 社の運用状況を考慮するとバックアップメディアからの復元ではなく,OS,Web サーバプログラム及びコンテンツ全文検索機能のプログラムの最新版をインストールし,コンテンツは E 社が納入したものを用いて復元することを推奨する。</u>・公開 Web サーバの運用再開前に,脆弱性検査を実施することを推奨する。・FW-A,FW-B 及び DMZ に設置されたサーバに関する脆弱性情報の収集を強化する。4. そのほかの推奨事項について。4.1 コンテンツ改ざん事実の公表について。・コンテンツ改ざんの事実を,復旧後の公開 Web サーバに掲載する。4.2 PC,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムへの脆弱性修正プログラムの適用について。・脆弱性修正プログラムの適用対象を見直して,実行する。4.3 公開 Web サーバのコンテンツ更新方法について。・コンテンツ更新方法を見直す。4.4 プロキシサーバの設定について。・Web アクセスによるウイルス感染を減らすために,プロキシサーバの設定を見直す。4.5 ログの取得及び管理方法について。・トラブル調査の迅速化を目的に,ログの取得及び管理方法を見直す。4.6 DMZ に設置されたサーバのウイルス対策について。・DMZ に設置されたサーバにも,ウイルス対策ソフトを導入する。
図2 調査結果の概要

J 課長と K さんは,図2に示された推奨事項について対処することにした。

まず,J 課長は,公開 Web サーバの復旧を,図2の 3. の方法で行うことを K さんに指示した。K さんは,OS,Web サーバプログラム及びコンテンツ全文検索機能のプログラムの最新版をインストールし,動作確認を行った。J 課長は,脆弱性検査を G 社に依頼し,脆弱性は発見されなかったという報告を受けた。J 課長は,M 役員の了承を得て,公開 Web サーバの運用を再開し,図2の 4.1 の対応を行った。

次に,J 課長と K さんは,図2の 4.2 に対応するために,③PC,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムについて脆弱性修正プログラムの適用対象を追加し,直ちに実行した。

J 課長と K さんは,A 氏の助言を受けながら,図2の 4.3〜4.6 の推奨事項への対応を更に進めた。

〔公開 Web サーバのコンテンツ更新方法の見直し〕

J 課長と K さんは,公開 Web サーバのコンテンツ更新について,幾つかの方法を検討した。K さんが A 氏に相談したところ,A 氏は暗号や認証の技術を利用して,リモートコンピュータとの間でファイル転送や OS へのログインを安全に行うことができるプロトコルである a を用いたファイル転送ソフトの使用を推奨した。K さんは,E 社の担当者とも相談し,表2の項番 4 の項目のうち,サービスを FTP から a に変更することにした。加えて,④表2の項番 4 の項目をもう 1 か所見直した方がよいことに気付き,変更することにした。

K さんは,J 課長の承認を得て,これらの変更を直ちに実施した。実施後,E 社からコンテンツのアップロードができることを確認した。

〔プロキシサーバの設定の見直し〕

プロキシサーバの機能を表4に示す。

プロキシサーバの機能の表(機能名,機能)。Web アクセス通信中継機能:PC やサーバ(以下,PC とサーバを併せて接続元という)とインターネット上の Web サーバ(以下,接続先という)との間の Web アクセスの通信を中継する。Web アクセス通信ウイルススキャン機能:接続元と接続先との間の通信内容に対してウイルススキャンを行う。HTTPS 通信のウイルススキャンを行うには,HTTPS 通信対応機能を有効にする。URL フィルタリング機能:接続元,URL リスト及び動作を組み合わせた URL 制御ルールを用いて,URL フィルタリングを行う。URL 制御ルールの動作には許可又は拒否を指定する。接続元と URL リストの組合せのどれにも該当しない通信は,許可される。許可又は拒否にかかわらず,通信のログを取得する。URL リストには,P 社提供リスト及び利用者が定義するリスト(以下,ユーザ定義リストという)がある。サーバ管理者は,複数のユーザ定義リストを作成して URL を登録できる。P 社提供リストには,通信を拒否する URL が登録されているが,その URL の内容は開示されていない。HTTPS 通信の URL フィルタリングを行うためには,HTTPS 通信対応機能を有効にする。HTTPS 通信対応機能:接続元とプロキシサーバとの間,及びプロキシサーバと接続先との間において,それぞれ独立の HTTPS 通信を確立する。HTTPS 通信確立前に接続先の証明書の検証を行い,検証が失敗した場合は,通信を拒否する。接続先のコモンネームを基に証明書を作成し,その証明書で接続元との間の HTTPS 通信を確立する。サーバ管理者は,HTTPS 通信対応機能を使用したくない URL を除外リストに登録できる。除外リストに登録された URL にアクセスした場合は,接続元と接続先との間で直接 HTTPS 通信が確立される。
表4 プロキシサーバの機能

J 課長と K さんは,URL 制御ルールの設定について検討した。現在の URL 制御ルールを表5に示す。

URL 制御ルールの表(項番,接続元,URL リスト,動作)。1:PC,事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システム,P 社提供リスト,拒否。
表5 URL制御ルール

J 課長と K さんは,表5に対する修正案を作成した。その案を表6に示す。

URL 制御ルールの修正案の表(項番,接続元,URL リスト,動作)。1:事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システム,ユーザ定義リスト 1,許可。2:事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システム,ユーザ定義リスト 2,拒否。3:PC,P 社提供リスト,拒否。注記 項番が小さいルールから順に,最初に一致したルールが適用される。
表6 URL制御ルールの修正案

表6中のユーザ定義リスト 1 及びユーザ定義リスト 2 を表7に示す。

ユーザ定義リスト 1 及びユーザ定義リスト 2 の表(URL リスト,URL)。ユーザ定義リスト 1:[ b ] の URL,[ c ] の URL,[ d ] の URL,…。ユーザ定義リスト 2:全て。
表7 ユーザ定義リスト1及びユーザ定義リスト2

次に,J 課長と K さんは,HTTPS 通信対応機能の使用について検討した。A 氏に相談したところ,次の助言を受けた。

J 課長と K さんは,現在のプロキシサーバの性能では負荷の上昇に対応できないと判断し,HTTPS 通信対応機能は,来年予定されているプロキシサーバの更新以降に使用することにした。

〔ログの取得及び管理方法の見直し〕

J 課長と K さんは,公開 Web サーバがウイルスに感染した場合に備えて,FW-A でのログの取得方法を検討した。表2の項番 10 のログを“取得する”に変更すると,ログ取得数が増え,保存領域の不足が発生するので実現できない。しかし,表8に示すように項番 5 の後にルールを追加し,FW-A のフィルタリングルールを修正すれば,攻撃者が用意したサーバへのウイルスからの通信を効率よく検出することができ,保存領域の不足が発生しにくくなることが分かった。

FW-A のフィルタリングルールの修正案の表(項番,送信元,宛先,サービス,動作,ログ)。最初の行は省略(⋮)。5:全て,公開 Web サーバ,HTTP,許可,取得する。6:[ e ],[ f ],[ g ],拒否,取得する。7:PC,事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システム,プロキシサーバ,代替 HTTP,許可,取得する。最後の行は省略(⋮)。注記 項番が小さいルールから順に,最初に一致したルールが適用される。
表8 FW-Aのフィルタリングルールの修正案

同様に FW-B のフィルタリングルールの修正案も作成した。

続いて,各サーバのハードディスクの使用状況を調査した結果,ログの保存期間を 1 年にしても保存領域の容量不足は発生しないことが分かったので,これらのフィルタリングルールの修正案を適用することにした。

最後に,DMZ に設置されたサーバへのウイルス対策ソフトの導入について検討した。検討の結果,導入してもサーバの動作に悪影響がないことを確認できたので,導入することにした。

〔専門加工業者への CAD データの送信方法の検討〕

J 課長と K さんは,専門加工業者への CAD データ送信方法について,安全でかつ注文から納品までの時間を短縮できる電子的な方法を改めて検討することにした。現在使っているメールに添付して送信する方法では誤送信が問題になっていたが,誤送信を防止する確実な方法は見つけられなかった。そこで,他の方法を調査したところ,T 社が販売している,ファイル交換専用装置(以下,専用装置という)が見つかり,専用装置を DMZ に設置する前提で検討を進めた。

専用装置の仕様概要を図3に示す。

専用装置の仕様概要(枠で囲んだ文章)。1. 利用者インタフェース及び認証方法について。・管理者並びに送信者及び受信者(以下,送信者と受信者を併せて利用者という)向けに Web インタフェースがあり,HTTP 及び HTTPS が使用できる。・管理者は,利用者のメールアドレスを利用者 ID として登録する。・管理者及び利用者の認証は,HTTP の場合はパスワード認証を,HTTPS の場合は,パスワード認証に加え,[ h ] 認証を使用することができる。2. データ送信方式について。利用者が使用するデータ送信方式として,URL 送信方式とデータ共有方式の 2 方式がある。・URL 送信方式:送信者がファイルをアップロードすると,専用装置が,ダウンロード用のランダムな文字列を含む URL を受信者宛てにメールで送信する。ダウンロード後,ファイルは自動的に削除される。送信者は,ダウンロードの有効期間を指定できる。・データ共有方式:管理者は,ファイル交換のためのフォルダを作成し,フォルダに対する利用者ごとの権限を設定する。3. 他の機能。管理者は,次の機能を設定できる。・上長承認機能:送信者の上長が承認した後に,ダウンロードが可能になる。管理者は,各利用者の上長及び上長代行者を登録する。・アクセス制御機能:利用者ごとに IP アドレスを登録しておき,その IP アドレスからのアクセスだけを許可する。・ログ機能:Web インタフェースへのアクセス,メールでの URL 送信,アップロード及びダウンロードのログを記録する。管理者は,Web インタフェースを使用して,ログをダウンロードする。・ウイルススキャン機能:ウイルススキャン機能では,アップロード時及びダウンロード時にウイルススキャンを行う。
図3 専用装置の仕様概要

J 課長と K さんは,図3の 1. については,通信の暗号化が必要であるので,HTTPS を使用することにした。また,h 認証を使用することにし,h 証明書の発行は,商用サービスを使用することにした。

次に,図3の 2. について検討した。専門加工業者から CAD データを受け取ることはないので,URL 送信方式がよいと K さんは説明した。J 課長は,K さんの説明に同意した。

さらに,図3の 3. については,各機能を使用することにした。

これらの検討の結果,⑥専用装置での CAD データの送信は,メールへの添付による送信と比べると,誤送信の防止や復号用パスワードの漏えい防止以外にも利点があることが分かった。

最後に,FW-A のフィルタリングルールに専用装置についてのルールを追加する案を作成した。

J 課長は,検討した対策を M 役員に報告した。M 役員は,報告にある対策の他に,PC への対策を強化することを条件に承認した。

J 課長と K さんは,M 役員の指示について検討を行った。D 社のネットワーク構成を考慮して,⑦ウイルスの活動による PC からインターネットへの通信のうち,止めることはできないがログの分析によって検出できる通信と,⑧ウイルスの活動による PC からインターネットへの通信のうち,止めることはできるがログを分析しても検出できない通信に整理し,PC への対策の検討を開始した。3 か月後,PC への対策を完了した。

出題趣旨(IPA)

ウイルス感染による情報漏えいが報告され,その対策が急務になっている。ウイルス対策や不正侵入対策が不十分であると,自組織だけでなく,取引先など関係する組織にも大きな脅威となる。本問では,ドライブバイダウンロード攻撃につながり得る公開Webサーバのコンテンツ改ざんの調査とその対策立案を題材に,インターネット接続システムに関する設計と運用についての知識と能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問2では,インターネット接続システムの情報セキュリティ対策について出題した。

設問と解答例

設問1(1) 25字以内

本文中の下線①について,調査が困難になるのはなぜか。25 字以内で述べよ。

解答例

  • ファイルが書き換えられる可能性があるから
解説

本文の根拠

〔公開 Web サーバのコンテンツ改ざんと対処〕

調査が完了するまでそのままにしておき,公開だけは直ちに停止するようにと助言し

〔公開 Web サーバのコンテンツ改ざんと対処〕

A 氏は,FW-A 及び DMZ に設置されたサーバで,必要なファイルを採取し,調査を開始した。

A 氏は,公開 Web サーバをシャットダウンせず,公開だけを停止するよう助言した。調査では,サーバ上のファイル(コンテンツ,ログ,更新日時など)から改ざんの痕跡を採取して調べる。シャットダウンすると,終了処理でファイルが更新される,あるいは稼働中の状態でしか見られない情報が失われるなど,調査の手掛かりが変わってしまう。解答例は“ファイルが書き換えられる可能性があるから”である。

本文は,K さんが更新日時の違いに気付いて改ざんが疑われたと書いている。ファイルの更新日時は改ざんの時期を推定する材料であり,これが書き換わると調査が困難になる。電源を入れたまま公開だけを止めるのは,外部からのアクセスを止めて被害を広げないことと,証拠を保全することを両立させるためである。

解答例は20字で,25字の制限に収まる。“書き換えられる”という原因と,“可能性”という確定でない書き方を入れる。“電源を切ると調査できない”だけでは,何が困難になる理由なのかが伝わらない。

採点講評(IPA)

設問1(1)は,正答率が高かった。Webサーバへの不正侵入時の調査方法に関して受験者の理解度が高かったことがうかがえる。

設問1(2) 45字以内

図2中の下線②について,バックアップメディアを用いてコンテンツの復元を行わない理由を 45 字以内で述べよ。

解答例

  • バックアップメディアに改ざんされたファイルが含まれている可能性があるから
解説

本文の根拠

図2 1.2

調査したログには,不審なアクセスの記録はなかった。調査開始日の 4 週間以上前に改ざんが行われた可能性が高い。

〔情報システム課が運用している機器の概要〕

各サーバのログの保存期間は 4 週間である。

〔情報システム課が運用している機器の概要〕

DMZ に設置されたサーバ,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムのデータは,日次でバックアップを行っている。

図2の1.2は,ログに不審なアクセスの記録が無く,調査開始日の4週間以上前に改ざんが行われた可能性が高いと述べている。ログの保存期間は4週間なので,改ざんの瞬間のログは残っておらず,改ざんがいつ行われたかが特定できない。公開 Web サーバのデータは日次でバックアップしているが,いつのバックアップに改ざん前の状態が残っているか分からず,バックアップに改ざん済みのファイルが含まれる可能性がある。解答例は“バックアップメディアに改ざんされたファイルが含まれている可能性があるから”である。

復元するなら,OS,Web サーバプログラムとコンテンツ全文検索機能のプログラムも,脆弱性が修正されていない古い版に戻るおそれがある。図2が最新版のインストールと E 社納入のコンテンツでの復元を推奨するのは,そのためである。

解答例は36字で,45字の制限に収まる。“バックアップメディア”“改ざんされたファイル”“含まれている可能性”の3点を入れる。“脆弱性が残る”と書くと,プログラムの話に偏って,コンテンツの復元を行わない理由として外れる。

設問1(3) 15字以内

本文中の下線③について,追加した適用対象を 15 字以内で答えよ。

解答例

  • D社で定めたソフトウェア
解説

本文の根拠

〔情報システム課が運用している機器の概要〕

D 社では,社内で利用可能なソフトウェアを定めている。OS が Windows の場合は,Q 社のウイルス対策ソフトと R 社の画像閲覧ソフトの導入を必須としている。

〔情報システム課が運用している機器の概要〕

事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムでは,OS の脆弱性修正プログラムがリリースされた場合,その週末に OS ベンダの Web サーバからプロキシサーバ経由で脆弱性修正プログラムをダウンロードして,適用している。

図2 2.

画像閲覧ソフトの脆弱性修正プログラムは,調査開始日の 3 週間前に,R 社の Web サーバからダウンロードできるようになっていた。

図2の4.2は,PC,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムへの脆弱性修正プログラムの適用対象を見直すよう勧告している。現状は,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムでは OS のものだけを,PC では OS のものを自動的に適用している。しかし,改ざんされたコンテンツのスクリプトは R 社の画像閲覧ソフトの脆弱性を悪用しており,その修正プログラムは3週間前に提供済みだった。D 社が導入を必須としているのは,Q 社のウイルス対策ソフトと R 社の画像閲覧ソフトなので,これらのソフトウェアの修正プログラムを適用対象に加える必要がある。解答例は“D社で定めたソフトウェア”である。

OS の修正プログラムは既に適用しているので,“OS”と答えると追加にならない。

解答例は12字で,15字の制限に収まる。“R 社の画像閲覧ソフト”のように個別に書いてもよいが,Q 社のウイルス対策ソフトも含めた“D社で定めたソフトウェア”の書き方が,適用対象を漏れなく表す。

設問2(1) 解答欄1つ

本文中の a に入れる適切なプロトコル名を,英字 6 字以内で答えよ。

〔a〕解答例

  • SSH
解説

本文の根拠

〔公開 Web サーバのコンテンツ更新方法の見直し〕

暗号や認証の技術を利用して,リモートコンピュータとの間でファイル転送や OS へのログインを安全に行うことができるプロトコルである a を用いたファイル転送ソフトの使用を推奨した。

表1

コンテンツ公開機能及びコンテンツ全文検索機能を提供している。コンテンツ更新は,FTP を用いて行う。

FTP は認証情報とデータを平文で送る。これに対し,暗号と認証の技術でファイル転送や OS へのログインを安全に行えるプロトコルは SSH である。a には“SSH”が入り,表2の項番4のサービスは FTP から SSH に変更する。解答例は“SSH”である。

本文が“ファイル転送や OS へのログイン”の両方を挙げているのは,SSH がログイン用のプロトコルで,その上でファイル転送ができるからである。

字数は“英字6字以内”の指定で,解答例の“SSH”は3字である。FTPS や HTTPS と書いても,ログインの安全な実行を含むプロトコルとしては合わない。FTP の名前の入った“SFTP”は SSH の仕組みを使うが,解答例は“SSH”である。

設問2(2) 解答欄2つ

本文中の下線④について,変更することにした項目の項目名を答えよ。また,変更後の内容を,図1中の字句を用いて答えよ。

〔項目名〕解答例

  • 送信元

〔変更後の内容〕解答例

  • E社
解説

本文の根拠

〔D 社のネットワーク構成と機器〕

E 社の担当者は,E 社からインターネット経由で,FTP を使用してコンテンツを更新する。

表2 項番4

4:全て,公開 Web サーバ,FTP,許可,取得する。

表2の項番4は,送信元“全て”から公開 Web サーバへの FTP を許可するルールである。コンテンツを更新するのは E 社の担当者だけで,E 社からインターネット経由でアクセスする。そこで,サービスを FTP から SSH に変更するほか,送信元を“全て”から“E 社”に絞る。これが,もう1か所の見直しである。解答例は,項目名が“送信元”,変更後の内容が“E社”である。

送信元が“全て”のままだと,インターネット上のだれでも公開 Web サーバのファイル更新用サービスに接続できてしまう。公開 Web サーバのコンテンツが改ざんされた原因を考えると,更新用の通信を必要な相手だけに限るのが再発防止になる。

項目名は表2の列名(項番,送信元,宛先,サービス,動作,ログ)から選ぶ。“宛先”は公開 Web サーバのままで変える必要が無い。“変更後の内容”は“図1中の字句を用いて”の指定なので,図1に書かれている“E 社”と書く。

設問3(1) 解答欄2つ

本文中の下線⑤について,不都合が生じる業務を行う課を答えよ。また,不都合の内容を 45 字以内で具体的に述べよ。

〔課〕解答例

  • 経理課

〔不都合の内容〕解答例

  • ブラウザのアドレスバーに表示されるWebサイトの運営者名を確認できなくなる。
解説

本文の根拠

〔取引時の情報管理〕

U 銀行のインターネットバンキングサービスでは,EV SSL 証明書が使用されているので,担当者は,U 銀行のインターネットバンキングサービスにログインする前に,ブラウザのアドレスバーに表示される Web サイト運営者名が U 銀行であることを確認している。

表4 HTTPS通信対応機能

接続先のコモンネームを基に証明書を作成し,その証明書で接続元との間の HTTPS 通信を確立する。

HTTPS 通信対応機能を使うと,プロキシサーバが接続先の証明書の代わりに,接続先のコモンネームを基に作った証明書で接続元との間の HTTPS 通信を確立する。経理課の担当者は,EV SSL 証明書が使われている U 銀行のサイトにログインする前に,アドレスバーに表示される Web サイト運営者名が U 銀行であることを確認している。プロキシサーバが作る証明書は,コモンネームを基にした証明書で,Web サイト運営者名を持つ EV SSL 証明書ではないと読めるので,この確認ができなくなる。不都合が生じる業務を行う課は経理課で,不都合の内容は“ブラウザのアドレスバーに表示されるWebサイトの運営者名を確認できなくなる。”である。

除外リストに U 銀行の URL を登録すれば,接続元と接続先の間で直接 HTTPS 通信が確立されるので,運営者名を確認できる。A 氏が“その不都合は,除外リストを使用すれば回避できる”と助言しているのはこのことである。

解答例は38字で,45字の制限に収まる。講評は,EV SSL 証明書による Web サーバ利用者の利点を理解してほしいと述べている。“EV SSL 証明書”と“アドレスバーの運営者名”の2点から,確認できなくなると書く。

採点講評(IPA)

設問3(1)不都合の内容は,正答率が低かった。EV SSL証明書によるWebサーバ利用者の利点を是非理解してほしい。

設問3(2) 解答欄3つ

表7中の b 〜 d に入れる適切な接続先を答えよ。

〔b〕解答例

  • OSベンダのWebサーバ

〔c〕解答例

  • Q社のWebサーバ

〔d〕解答例

  • R社のWebサーバ

〔備考〕順不同

解説

本文の根拠

表6

1:事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システム,ユーザ定義リスト 1,許可。2:事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システム,ユーザ定義リスト 2,拒否。

〔情報システム課が運用している機器の概要〕

ウイルス対策ソフトのウイルス定義ファイルを,起動時及び起動後 2 時間ごとに Q 社の Web サーバからプロキシサーバ経由でダウンロードし,更新している。

〔公開 Web サーバのコンテンツ改ざんと対処〕

PC,事務サーバ,設計管理サーバ及び CAD/CAM システムについて脆弱性修正プログラムの適用対象を追加し,直ちに実行した。

表6では,事務サーバ,設計管理サーバ,CAD/CAM システムに対し,項番1でユーザ定義リスト1を許可し,項番2でユーザ定義リスト2(全て)を拒否する。項番の小さいルールから適用されるので,ユーザ定義リスト1にある URL だけが許可され,それ以外のインターネットへの Web アクセスは拒否される。許可すべき接続先は,これらのサーバが業務上プロキシサーバ経由で必要とする先である。OS の脆弱性修正プログラムをダウンロードする“OSベンダのWebサーバ”,ウイルス定義ファイルをダウンロードする“Q社のWebサーバ”,追加した適用対象(R 社の画像閲覧ソフト)の修正プログラムをダウンロードする“R社のWebサーバ”の3つである(順不同)。

P 社提供リストの更新は,プロキシソフト自身が P 社の Web サーバから直接ダウンロードしているので,ユーザ定義リストには入らない。表5の現行ルールでは P 社提供リストの拒否だけで,ユーザ定義リストの許可は無かった。

字数の制限は無い。“OS ベンダ”“Q 社”“R 社”の3社の Web サーバを漏れなく挙げ,“P 社の Web サーバ”などを足さない。

設問4 解答欄3つ

表8中の e 〜 g に入れる適切な字句を答えよ。

〔e〕解答例

  • 公開Webサーバ

〔f〕解答例

  • インターネット

〔g〕解答例

  • 全て
解説

本文の根拠

〔ログの取得及び管理方法の見直し〕

表2の項番 10 のログを“取得する”に変更すると,ログ取得数が増え,保存領域の不足が発生するので実現できない。しかし,表8に示すように項番 5 の後にルールを追加し,FW-A のフィルタリングルールを修正すれば,攻撃者が用意したサーバへのウイルスからの通信を効率よく検出することができ,保存領域の不足が発生しにくくなることが分かった。

表2 項番5・10

10:全て,全て,全て,拒否,取得しない。

項番10(全て拒否,ログ取得しない)のログを“取得する”にするとログが増えすぎるため,表8では項番5の後に,公開 Web サーバがウイルスに感染した場合の通信だけを狙った拒否ルールを置く。公開 Web サーバが自分からインターネットに通信する必要は無く,表2に許可するルールも無い。そのため,感染した公開 Web サーバが攻撃者のサーバへ送る通信は項番10で拒否され,ログは取得されない。項番6で,送信元を公開 Web サーバ,宛先をインターネット,サービスを全てとして拒否・ログ取得にすれば,その通信が記録される。解答例は,e が“公開Webサーバ”,f が“インターネット”,g が“全て”である。

項番5(全て→公開 Web サーバの HTTP を許可)は公開 Web サーバが受け付ける通信なので,向きが逆である。受け付ける通信と,公開 Web サーバから出る通信を区別して考える。項番7以降には PC などからプロキシサーバへの代替 HTTP の許可があり,項番6はそれらの前に置く。

e は“全て”と書かない。送信元を“全て”にすると,項番5の後でインターネット宛の通信一般を拒否して,ログ取得数を減らす狙いが崩れる。

設問5(1) 解答欄1つ

図3中及び本文中の h に入れる適切な字句を 10 字以内で答えよ。

〔h〕解答例

  • クライアント
解説

本文の根拠

図3 1.

管理者及び利用者の認証は,HTTP の場合はパスワード認証を,HTTPS の場合は,パスワード認証に加え,h 認証を使用することができる。

〔専門加工業者への CAD データの送信方法の検討〕

また,h 認証を使用することにし,h 証明書の発行は,商用サービスを使用することにした。

図3の1.は,HTTPS の場合にパスワード認証に加えて使える認証方式を問うている。パスワード認証に加え,証明書の発行を商用サービスから受ける認証は,クライアント証明書認証である。サーバ証明書は専用装置が HTTPS で使うものだが,ここで商用サービスから発行を受ける対象は,利用者の端末(クライアント)に入れる証明書である。解答例は“クライアント”で,“クライアント認証”“クライアント証明書”の両方に当てはまる。

講評は,パスワードリスト攻撃が増えている現状を踏まえると,利用者 ID とパスワードだけの認証には限界があり,強度の高い認証方法を理解してほしいと述べている。パスワード認証に,端末が持つ証明書という別の要素を加えると,パスワードが漏えいしても,証明書が無ければ認証されない。

解答例は6字で,10字の制限に収まる。“多要素”“二要素”のような認証の種類を答えるのではなく,h にそのまま入る“クライアント”を書く。

採点講評(IPA)

設問5(1)は,正答率が低かった。何らかの方法で事前に入手した利用者IDとパスワードのリストを流用したパスワードリスト攻撃と呼ばれる攻撃が増えている現状を考慮すると,利用者IDとパスワードによる認証には限界がある。強度の高い認証方法について理解してほしい。

設問5(2) 30字以内

本文中の下線⑥について,利点とは何か。30 字以内で述べよ。

解答例

  • CADデータ送信時の通信の暗号化が自動的に行われること
解説

本文の根拠

〔取引時の情報管理〕

専門加工業者に再委託する場合は,ウイルススキャンを行った後に暗号化した上で,次のいずれかの方法で CAD データを送付する。

〔専門加工業者への CAD データの送信方法の検討〕

J 課長と K さんは,図3の 1. については,通信の暗号化が必要であるので,HTTPS を使用することにした。

図3 2.

送信者がファイルをアップロードすると,専用装置が,ダウンロード用のランダムな文字列を含む URL を受信者宛てにメールで送信する。

現行の方法では,送信者が CAD データを暗号化し,メール添付または DVD-R で送り,復号用のパスワードを別のメールで送る。専用装置では,Web インタフェースを HTTPS で使うので,アップロードとダウンロードの通信が暗号化される。送信者が個別に暗号化する手間や,暗号化のし忘れが無くなり,CAD データの送信時の通信の暗号化が自動的に行われる。これが誤送信の防止や復号用パスワードの漏えい防止以外の利点である。解答例は“CADデータ送信時の通信の暗号化が自動的に行われること”である。

URL 送信方式は,ダウンロード用の URL をメールで受信者に送り,ダウンロード後はファイルが自動的に削除される。この点も専用装置の特徴だが,解答例が示す利点は暗号化が自動で行われることである。

解答例は27字で,30字の制限に収まる。“暗号化が自動的に行われる”ことを必ず入れる。“誤送信を防止できる”“パスワードが漏えいしない”は設問が除外した利点なので,書いても得点にならない。

設問5(3) 解答欄2つ

本文中の下線⑦の通信を二つ挙げ,それぞれ 50 字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • メールサーバを経由したF社のメールサービスのサーバへのSMTP通信

〔②〕解答例

  • プロキシサーバを経由したP社提供リストにないサーバへのFTP,HTTP及びHTTPS通信
解説

本文の根拠

表2 項番3・7

3:メールサーバ,F 社(注1),SMTP,許可,取得する。

表2 項番7

7:プロキシサーバ,インターネット,FTP,HTTP,HTTPS,許可,取得する。

〔専門加工業者への CAD データの送信方法の検討〕

ウイルスの活動による PC からインターネットへの通信のうち,止めることはできないがログの分析によって検出できる通信

下線⑦は,止めることはできないが,ログの分析で検出できる通信である。FW-A は,許可するルールの通信を止めない一方で,許可・拒否のログを“取得する”設定にしている通信は検出できる。PC が使える経路のうち,FW-A が許可してログを取得する通信は,表2の項番3(メールサーバから F 社へのSMTP)と項番7(プロキシサーバからインターネットへの FTP,HTTP,HTTPS)である。PC は直接インターネットに出られず,メールサーバやプロキシサーバを経由するので,ウイルスに感染した PC の通信は,①“メールサーバを経由したF社のメールサービスのサーバへのSMTP通信”と,②“プロキシサーバを経由したP社提供リストにないサーバへのFTP,HTTP及びHTTPS通信”になる。

②で“P 社提供リストにない”とするのは,P 社提供リストに載っている URL への通信は,URL フィルタリングで拒否されて止められるからである。

①は33字,②は44字で,どちらも50字の制限に収まる。①②は順不同で,どちらにも“経由する機器”“相手”“プロトコル”の3点を入れる。講評は,PC に感染したウイルスが通信を行うことを考慮した出口対策の重要性を述べている。

採点講評(IPA)

設問5(3),(4)は正答率が低かった。ウイルス感染による情報漏えいを防ぐためには,PCに感染したウイルスが通信を行うことを考慮した出口対策が重要であることを理解してほしい。

設問5(4) 35字以内

本文中の下線⑧の通信を,35 字以内で述べよ。

解答例

  • プロキシサーバを経由しないインターネット上のサーバへの通信
解説

本文の根拠

表2 項番9・10

10:全て,全て,全て,拒否,取得しない。

図1 注記

注記 事務 LAN のデフォルトゲートウェイは FW-A である。

〔専門加工業者への CAD データの送信方法の検討〕

ウイルスの活動による PC からインターネットへの通信のうち,止めることはできるがログを分析しても検出できない通信

下線⑧は,止めることはできるが,ログを分析しても検出できない通信である。事務 LAN の PC のデフォルトゲートウェイは FW-A で,PC が FW-A に通過を許される通信は,メールサーバとの POP3・SMTP(項番9)と,プロキシサーバへの代替 HTTP(項番6)だけである。これら以外の通信,つまり PC からプロキシサーバを経由せずにインターネット上のサーバへ向かう通信は,項番10で拒否され,しかもログは“取得しない”ので,止められるが検出できない。解答例は“プロキシサーバを経由しないインターネット上のサーバへの通信”である。

⑦の通信は許可されてログが残り,⑧の通信は拒否されてログが残らない。FW-A の許可・拒否とログの有無の組合せで整理すると,⑦と⑧の違いが分かる。

解答例は29字で,35字の制限に収まる。“プロキシサーバを経由しない”と“インターネット上のサーバへ”の2点が要る。“拒否される通信”とだけ書くと,どの通信なのかが伝わらない。講評は,この設問と⑦が,出口対策の理解不足で正答率が低かったと述べている。

採点講評(IPA)

設問5(3),(4)は正答率が低かった。ウイルス感染による情報漏えいを防ぐためには,PCに感染したウイルスが通信を行うことを考慮した出口対策が重要であることを理解してほしい。

出典:平成26年度 春期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)