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情報処理安全確保支援士試験

平成21年度 秋期 午後Ⅱ(旧試験)

平成21年度 秋期に実施された情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱの全2問(記述式)の全設問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。事例本文のどこが根拠になるかを示し,IPA の解答例・採点講評と並べています。

この試験について:情報処理安全確保支援士試験について

この年度を解いてみる

問1 認証・認可基盤構築の実施計画

認証・認可基盤構築の実施計画に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

X社は,従業者数10,000名の大手小売業である。X社は,各事業組織の独立性が高く,それぞれが必要な業務システムを開発し,情報システム部は主に基盤の提供,業務システムの開発ガイドラインの提供及び業務システムの運用管理を行っている。CIOは,ITガバナンスが不十分であると認識しており,効率的なIT運用を図ると同時に,セキュリティ管理の強化や技術標準の確立などを急ぐ必要があると考えている。

X社は戦略的に経営統合を行い,成長を図ってきた。現在,Y社と1年後の経営統合を目指して交渉を進めている。

X社の経営トップは,経営統合のためには,統合両社の従業者による情報共有や連携作業を安全にかつ効率よく行う必要があると考えている。そこで,CIOは,情報システム部に対して,IT施策の実施を加速し,Y社との経営統合に間に合わせるよう指示を出した。情報システム部では,プロジェクトチーム(以下,Pチームという)を編成して検討を始め,まず,認証・認可基盤の構築が必要であると判断し,CIOに報告した。CIOの承認を受け,Pチームは認証・認可基盤構築の実施計画を策定する作業に入った。

〔X社情報システム群の概要と認証・認可基盤構築の基本方針〕

X社には,図1に示す大小合わせて100の業務システム(以下,X社情報システム群という)が存在する。多くのシステムは,Web技術に基づいたもの(以下,Web方式という)であるが,基幹業務システムの一部には,Web方式でない独自技術に基づくクライアントサーバ方式(以下,C/S方式という)も存在する。C/S方式の業務システムについては,今年度後半に,Web方式に再構築することを計画している。

現行の業務システムには,購買システムのように,アプリケーションプログラムに認証機能が組み込まれているもの(以下,アプリ認証方式という)と,研究開発システムのように,アプリケーションプログラムが稼働しているWebサーバの前段にリバースプロキシ型の認証サーバを設置しているもの(以下,プロキシ認証方式という)がある。

Pチームでは,これまでのX社情報システム群の問題を洗い出し,認証・認可基盤構築についての基本方針を決定するために集中検討会を行うことにした。

X社情報システム群の概要図。社内ネットワークに,PC(複数)と六つの業務システムが接続されている。購買システムは,業務サーバ,DBサーバ,LDAPサーバとDIR(ディレクトリ),利用者管理機能,権限情報Rep(リポジトリ)で構成される。顧客管理システムは,業務サーバ,DBサーバ,DBサーバとDIR,利用者管理機能で構成される。人事管理システムは,業務サーバ,DBサーバ,LDAPサーバとDIRで構成される。営業管理システムは,Webサーバ,DBサーバとDIR,利用者管理機能で構成される。研究開発システムは,認証サーバ,Webサーバ,DBサーバ,LDAPサーバとDIR,利用者管理機能で構成される。このほかに情報共有システム,Web方式を使った他システムが重なって描かれている。凡例 DB:データベース,DIR:ディレクトリ,Rep:リポジトリ。
図1 X社情報システム群の概要

集中検討会では,利用者認証,アクセス権付与管理,利用者認証・認可に用いるディレクトリ(以下,ディレクトリという)の統合,利用者認証・認可に用いる情報(以下,利用者情報という)の維持管理の4点について現状と問題を整理し,改善策の検討を行った後,Y社との経営統合に備え,Y社の従業者によるX社情報システム群の利用について検討を行うことにした。

〔利用者認証に関する現状と問題〕

利用者ID体系については,従業者番号に基づいた利用者IDを使用している業務システムが多いが,従業者の氏名に基づいた利用者IDを使用している業務システムもある。そのため,利用者は,各業務システムに利用者ID,パスワードなどを入力する際に混乱したり,覚えきれなかったりするという問題が起きている。

〔アクセス権付与管理に関する現状と問題〕

X社では,組織変更に伴う役職に対する役割や職掌の変更が頻繁に発生する。例えば,請求書にかかわる業務は,現在は営業部の担当であるが,過去には営業部と独立した,ほかの組織が担当したこともあった。また,組織横断的なプロジェクトチームが組織されて業務を遂行することも多く,従業者が複数の組織に属したり,複数の役割を同時にもったりすることも,しばしば発生している。そのため,1人の従業者による業務システムへのアクセスでも,所属組織や役割によって,使用できる機能を限定することが必要になってきている。

さらに,以前から,業務システムによっては不必要なアクセス権が利用者に与えられていて,セキュリティ上好ましくないという意見があった。

〔ディレクトリの統合に関する現状と問題〕

現在のX社情報システム群の業務システム名,システム方式,認証方式,ディレクトリの実現方法,登録されている利用者ID数及び利用者情報を表に示す。

ディレクトリについては,業務システムごとに構築され維持運用されているので,統合化などによって,運用効率及びコストの改善を図るようCIOから指示されている。そこで,Pチームでは,標準技術であるLDAP規格に準拠しているディレクトリは統合できるのではないかと考え,調査を行った。しかし,①LDAPを使用する業務システムを調査した結果,いずれもLDAP規格に準拠した製品を使用しているにもかかわらず,ディレクトリを容易に統合できないということが分かった。

X社情報システム群の業務システム一覧の表(列は業務システム名,システム方式,認証方式,ディレクトリの実現方法,利用者ID数,利用者情報)。購買:C/S方式,アプリ認証方式,LDAP,4,000,LDAP標準スキーマに加え,拡張属性として“担当業務”を定義して使用。顧客管理:C/S方式,アプリ認証方式,独自,5,000,RDBの列として,利用者ID,パスワード,権限区分を定義して使用。人事管理:C/S方式,アプリ認証方式,LDAP,3,000,LDAP標準スキーマである“inetOrgPerson”を使用。営業管理:Web方式,アプリ認証方式,独自,6,000,RDBの列として,利用者ID,パスワード,権限区分を定義して使用。研究開発:Web方式,プロキシ認証方式,LDAP,1,000,LDAP標準スキーマに加え,拡張属性として“研究区分”を定義して使用。情報共有:Web方式,プロキシ認証方式,LDAP,10,000,LDAP標準スキーマを使用。X社従業者全員にアクセス権付与。最後の行は省略を表す「:」が並ぶ。
表 X社情報システム群の業務システム一覧とディレクトリの実現方法など

〔利用者情報の維持管理に関する現状と問題〕

次にPチームは,利用者情報である利用者の認証情報(利用者ID,パスワードなど)と認可情報(アクセス権付与などの設定情報)の維持管理について,現状と問題を調査した。

現状では,利用者認証・認可機能は,業務システムごとに個別に実装されており,利用者情報も,業務システムごとに維持運用されている。

各業務システムの利用者情報の維持管理は,システムごとに決められたシステム管理者によって行われている。業務システムを新たに利用開始する従業者は,その業務システムの管理者に対して,利用者情報の登録申請を行っている。

利用者情報の業務システムへの登録及び削除は,小規模な業務システムでは,システム管理者が管理台帳に基づいて手作業で行っているが,購買システムなどの基幹業務システムでは,個別に開発した利用者管理機能で行っている。利用者IDの新規作成やアクセス権の追加が必要になった場合には速やかに処理が行われるものの,②利用者IDやアクセス権の一部が不要になった場合に,その削除処理が忘れられることがしばしばある。

以上のとおり,検討項目4点について現状と問題を整理した。これらの問題を解決するために,Pチームでは,まず,実際のアクセス権付与の状況を具体的に調査することにした。

〔主要業務システムにおけるアクセス権付与状況の調査〕

調査には,システムモデリングの手法を用いることにし,職務の遂行者を抽象的に類型化したアクタ(例えば,営業部員,営業部長)ごとのアクセス権付与状況を洗い出した。具体的には,システム再構築を予定している購買システム及び顧客管理システム,並びに企業活動の中心となる営業管理システムに絞り,アクタごとのアクセス権付与の状況について調査を行った。購買システムは購買部で,顧客管理システム及び営業管理システムは営業部で使用されている。

Pチームは調査結果を図2のとおり整理した。業務機能は,業務対象と業務操作から成っている。例えば,顧客管理システムでは,顧客情報という業務対象に対して入力更新という業務操作を行う業務機能があり,その業務機能に対するアクセス権が,アクタである営業部員に付与されている。営業管理システムにおいては営業部長に対して,購買システムにおいては購買部長に対して,すべての業務機能に対するアクセス権が付与されている。Pチームでは,営業部長及び購買部長に付与されているアクセス権が本当に必要なのかどうか,確認すべきであると考えた。

業務システムにおけるアクタごとのアクセス権付与の状況を示す三つの表。凡例 ○:アクセス権あり,-:アクセス権なし。【購買システム】アクタは購買事務員(派遣従業者),購買部員,購買部長。購買依頼書の同意:3アクタとも○。発注起案書の照会:3アクタとも○。発注起案書の処理:3アクタとも○。支払請求書の管理:3アクタとも○。支払請求書の申請:3アクタとも○。支払請求書の承認:購買事務員-,購買部員-,購買部長○。【顧客管理システム】アクタは営業事務員,営業部員,営業部長。顧客情報の入力更新:営業事務員-,営業部員○,営業部長-。顧客情報の閲覧:3アクタとも○。顧客情報の削除:営業事務員-,営業部員○,営業部長-。【営業管理システム】アクタは営業事務員(派遣従業者),営業部員,営業部長。見積書の作成:3アクタとも○。見積書の承認:営業事務員-,営業部員-,営業部長○。契約書の作成:3アクタとも○。契約書の発行申請:営業事務員-,営業部員○,営業部長○。契約書の発行承認:営業事務員-,営業部員-,営業部長○。請求書の作成:3アクタとも○。請求書の発行承認:営業事務員-,営業部員-,営業部長○。売上報告書の申請:営業事務員-,営業部員○,営業部長○。売上報告書の承認:営業事務員-,営業部員-,営業部長○。購買依頼書の申請:3アクタとも○。購買依頼書の承認:営業事務員-,営業部員-,営業部長○。
図2 業務システムにおけるアクタごとのアクセス権付与の状況(抜粋)

そこで,従業者による業務の実態についてヒアリング調査を行い,ユースケース図を使って図3のとおり整理した。

ユースケース図。左に購買業務の業務機能(購買依頼書同意,発注起案書照会,発注起案書処理,支払請求書管理,支払請求書申請,支払請求書承認)と顧客管理業務の業務機能(顧客情報入力更新,顧客情報閲覧,顧客情報削除),中央に購買部のアクタ(購買事務員(派遣従業者),購買部員,購買部長)と営業部のアクタ(営業事務員(派遣従業者),営業部員,営業部長),右に営業管理業務の業務機能(見積書作成,見積書承認,契約書作成,契約書発行申請,契約書発行承認,請求書作成,請求書発行承認,売上報告書申請,売上報告書承認,購買依頼書承認,購買依頼書申請)が楕円で描かれ,アクタとそのアクタが使用する業務機能が線で結ばれている。購買業務:購買依頼書同意,発注起案書照会,発注起案書処理,支払請求書管理,支払請求書申請の各機能は購買事務員,購買部員,購買部長の3アクタとつながり,支払請求書承認は購買部長だけとつながる。顧客管理業務:顧客情報入力更新と顧客情報削除は営業部員だけとつながり,顧客情報閲覧は営業事務員,営業部員,営業部長の3アクタとつながる。営業管理業務:営業事務員は見積書作成,契約書作成,請求書作成,購買依頼書申請とつながる。営業部員はそれらに加えて契約書発行申請,売上報告書申請とつながる。営業部長はすべての業務機能(見積書承認,契約書発行承認,請求書発行承認,売上報告書承認,購買依頼書承認を含む)とつながる。凡例 人形:アクタ,楕円(業務対象・業務操作):業務機能,線:アクタとそのアクタが使用する業務機能の対応。
図3 業務の実態についてのヒアリング調査結果(抜粋)

図3のユースケースは,業務システムの業務機能と,その業務機能を使用するアクタを示している。図3を職務規程と照らし合わせたところ,問題になる利用実態はなかった。

次に,この図3を用いて,内部統制上の問題がないか,また,図2に過剰なアクセス権付与がないかを分析した。

購買業務では,営業部が発行した購買依頼書に対し,購買部員が発注基準に従って,購買同意又は購買不同意の決定を行い,これを購買依頼書同意機能を使って処理する(業務量が多い場合には部長も当業務を行う場合がある)。購買同意の場合には,発注起案書の申請を購買部員又は購買事務員(派遣従業者)が発注起案書処理機能を使って行い,同じ発注起案書処理機能を使って購買部長が承認の処理を行う。③この購買業務には,アクセス権付与の問題はなかったが,内部統制上の問題が見つかった。そこで,購買部で職務規程を見直してもらい,その結果に基づいて,情報システム部で,どのように業務システムで対応すべきか検討することになった。

営業部の業務には,顧客管理業務と営業管理業務がある。顧客管理業務は,顧客情報を保守する業務である。X社では,顧客ごとに1人又は複数の担当の営業部員が付いている。顧客情報の入力更新及び削除に関する業務は,営業部長は実施せず,個々の顧客を担当する営業部員だけが実施している。この業務には内部統制上の問題もアクセス権付与の問題もなかった。

営業管理業務については,事前に営業部長の申請によって,部長の代行を務める営業部員にアクセス権が付与され,営業部長が不在の際,業務機能を使用する場合がある。営業部の業務には,内部統制上の重大な問題はなかったが,アクセス権付与に関して問題が見つかった。

〔利用者認証に関する問題の解決〕

Pチームは,今年度後半,すべての業務システムをWeb方式に再構築し,シングルサインオン(以下,SSOという)を導入することで,X社情報システム群の現状の利用者認証に関する問題の解決を図ることにした。

〔アクセス権付与に関する改善策の検討〕

Pチームでは,調査を通して,組織変更や職掌変更などに伴うアクセス権付与管理を効率的に行うための仕組みが必要であるという結論に至り,各種アクセス制御の方式を比較検討した。その結果,業務に必要な最小限のアクセス権だけを付与することが実現しやすくなり,組織変更や職掌変更などに伴うアクセス権付与管理を効率的に行えるという理由で,ロールベースのアクセス制御を選ぶことにした。ロールベースのアクセス制御では,アクタに対するアクセス権をロールという単位で付与する。ここでロールとは,組織内における一定の権限や責任を伴う業務上の役割を意味する。

Pチームでは,一つ以上の業務対象と一つ以上の業務操作との組合せに対するアクセス権をロールとして定義することにした。手始めに,営業管理システムにおける営業部長用のロールについて検討を行った。営業管理システムでは営業部長に一つ以上のロールが定義できると考え,図4に示す定義案を作成し,議論した結果,案4を採用することにした。

営業管理システムにおける営業部長用ロールの定義案を示す四つの表。凡例 ○:アクセス権あり,-:アクセス権なし。【案1】営業部長用ロール群は営業部長ロール1の一つ。見積書(作成,承認)○,契約書(作成,発行申請,発行承認)○,請求書(作成,発行承認)○,売上報告書(申請,承認)○,購買依頼書(申請,承認)○。【案2】営業部長用ロール群は営業部長ロール2-1,2-2,2-3の三つ。見積書(作成,承認):2-1○,2-2-,2-3-。契約書(作成,発行申請,発行承認):2-1○,2-2-,2-3-。請求書(作成,発行承認):2-1-,2-2○,2-3-。売上報告書(申請,承認):2-1-,2-2-,2-3○。購買依頼書(申請,承認):2-1-,2-2-,2-3○。【案3】営業部長用ロール群は営業部長ロール3の一つ。見積書(承認)○,契約書(発行承認)○,請求書(発行承認)○,売上報告書(承認)○,購買依頼書(承認)○。【案4】営業部長用ロール群は営業部長ロール4-1,4-2,4-3の三つ。見積書(承認):4-1○,4-2-,4-3-。契約書(発行承認):4-1○,4-2-,4-3-。請求書(発行承認):4-1-,4-2○,4-3-。売上報告書(承認):4-1-,4-2-,4-3○。購買依頼書(承認):4-1-,4-2-,4-3○。
図4 営業管理システムにおける営業部長用ロールの定義案(抜粋)

ほかの業務システムにおいても,案4と同様の考え方に基づいてロールの定義を行う方針にした。Pチームでは,ロールベースのアクセス制御を実現するために,④人事管理システムへの管理項目の追加と人事管理システムの運用見直しを行うことにした。

〔Y社従業者へのアクセス認可方式の検討〕

次に,Pチームは,Y社の従業者に,X社情報システム群へのアクセスを認可する方式について検討を行った。Y社との経営統合では,顧客情報などを共有することが想定されている。顧客情報などを共有するための要件は二つある。まず第一に,X社情報システム群は,Y社情報システムの利用者認証結果に基づいて,Y社従業者にX社情報システム群へのアクセスを認可する。第二に,同様に,Y社の情報システム群は,X社従業者に,Y社の顧客情報を管理する情報システム群へのアクセスを認可する。このようなことを実現する技術の一つにID連携技術があるという意見が出た。ID連携技術とは,お互いに信頼する組織間で,それぞれが管理する利用者の利用者IDを結び付けることによって,複数の組織間のシステム利用において,利用者認証が一度だけで済むSSOを実現する技術である。

Pチームは,検討した結果,ID連携技術を採用する方針に決めた。

〔ID連携技術の検討〕

Pチームの中でID連携技術検討の担当となったE君は,ID連携技術の選定について,セキュリティコンサルタントのF氏に助言を求めた。次はF氏のE君への説明である。

SAML 2.0によるSSOのメッセージフロー(シーケンス図)。登場するのはブラウザ,SP(複数台が重なって描かれている),IDP。①ブラウザからSPへ“サービスにアクセス要求”。②SPで“IDP決定”。③SPからブラウザ経由でIDPへ“認証要求メッセージをブラウザ経由でIDPに送信”。このときブラウザ側に[ c ]と書かれた枠があり,ブラウザからIDPへHTTP GETが送られる。④ブラウザとIDPの間で“サインオンしていなければ利用者認証を行う”(双方向の破線)。⑤IDPで[ a ]を生成。⑥IDPからブラウザ経由でSPへ“認証応答メッセージをブラウザ経由でSPに送信”([ a ]を載せた書類の図形が添えられている)。このときブラウザ側に[ c ]と書かれた枠があり,ブラウザからSPへ[ a ]を載せたHTTP POSTが送られる。⑦SPで[ a ]を検証。⑧SPからブラウザへ“サービス提供”。
図5 SAML 2.0によるSSOのメッセージフロー

検証済製品にはY社が導入しているものも含まれており,Y社と協議した結果,2社間でのID連携には問題がないことが判明した。そこで,Pチームは,SAML 2.0を採用することに決めた。

〔X社情報セキュリティポリシの改訂〕

Pチームでは,セキュリティ強化及びITによる内部統制の強化を図り,認証・認可基盤との整合性を確保するために,X社の情報セキュリティポリシを改訂すべきであると考えた。図6に改訂した情報セキュリティポリシ(以下,改訂ポリシという)(案)の改訂部分を示す。改訂ポリシ(案)はPチームでの確認と情報システム部内での審査を経た後,経営会議で正式に承認され,2か月後に発効することになった。Pチームは,各業務システムに対して,発効後1年以内に改訂ポリシに準拠するように求めることとした。

枠囲みの文章。(省略)<K-2. 情報システム利用者の識別,認証及び認可>(K-2-1)情報システムの利用者には,利用者の役割や職務に応じた業務上の必要性に基づいて,必要最小限のアクセス権を与えること。(K-2-2)情報システムは,権限の分離原則に基づき利用すること。(K-2-3)利用者にアクセス権を付与する業務は,次に示すように適正に行うこと。(以下,省略)
図6 X社の改訂ポリシ(案)の改訂部分

〔認証・認可基盤の全体方式の決定〕

Pチームでは,認証・認可基盤の全体方式を決定するために議論を重ねた。次は,PチームのリーダであるG主任とメンバのHさんの会話である。

X社情報システム群の認証・認可基盤の全体方式の構成図。社内ネットワークにPC(複数)とSSOサーバ(DIRを備える)が接続され,SSOサーバに,人事管理システム,購買システム,顧客管理システム,営業管理システム,研究開発システム,情報共有システムなど(それぞれDIRを備える)が接続されている。右側に利用者管理機能と認証・認可情報Rep(リポジトリ)がある。人事管理システムから認証・認可情報Repへ“提供”の破線矢印が引かれている。利用者管理機能から,人事管理システムを含む各業務システムのDIRへ“反映”の点線矢印が引かれ,利用者管理機能からSSOサーバのDIRへも“反映”の一点鎖線矢印が引かれている。網掛けは,認証・認可基盤を表す。
図7 X社情報システム群の認証・認可基盤の全体方式

以上のようにして,Pチームによる集中検討会は終了し,認証・認可基盤構築の実施計画が社内に発表され,認証・認可基盤の構築が開始された。

出題趣旨(IPA)

情報システムの構築において,情報セキュリティ技術者は,企業の経営戦略に適した技術を選択するとともに,内部統制の観点も併せもって情報セキュリティを確保するための検討を行うことが求められている。本問では,経営統合に伴うシステム連携を状況として設定し,認証・認可基盤の構築計画策定を題材に,ロールベースのアクセス制御やID連携技術の基本的な理解を問うとともに,ID管理を検討する際に求められる技術及び運用プロセスの両面から総合的に判断し,適切な構築計画を策定する能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問1では,ID連携を含む,認証・認可基盤の統合について出題した。全体として,正答率は低かった。

設問と解答例

設問1 解答欄3つ

ID連携技術について,本文中及び図5中のa,bに入れる適切な字句を,それぞれ10字以内で答えよ。また,図5中のcには,ブラウザにおける動作を示す適切な字句を8字以内で答えよ。

〔a〕解答例

  • 認証アサーション
  • 認証トークン

〔b〕解答例

  • サインオフ

〔c〕解答例

  • リダイレクト
解説

本文の根拠

〔ID連携技術の検討〕

この判定のためにSPはaをブラウザ経由でIDPから受け取ります。

図5

認証応答メッセージをブラウザ経由でSPに送信

〔ID連携技術の検討〕

X社の利用者が,X社情報システム群の認証サーバ,つまり,IDPで一度認証を受ければ,bするまでは,X社とY社のWebアプリケーションは,利用者が個別にサインオンしなくても利用可能となります。

a は“認証アサーション”(別解は“認証トークン”)である。OASIS の SAML 2.0 の Profiles は,Web ブラウザ SSO で IdP が認証アサーション(authentication assertion)を作り,SP がそのアサーションを受け取って利用者のセキュリティコンテキストを確立すると定めている。本文の“SP が利用者にサービスを提供してよいかを判定するために IdP から受け取るもの”は,これに当たる。

b は“サインオフ”である。IdP で一度認証を受けた利用者は,そのセッションが続く間は,SP を導入した X 社と Y 社の Web アプリケーションを個別にサインオンせずに使える。SAML 2.0 の Profiles も,IdP が利用者とセッションを結び,そのセッションを利用者が終えるまでの流れを Single Logout として扱っている。c は“リダイレクト”である。SP が認証要求メッセージをブラウザに返して IdP へ向け直させ,ブラウザが HTTP GET で IdP にそれを届ける。この伝え方は SAML 2.0 では HTTP Redirect バインディングと呼ばれ,SP から IdP への認証要求(AuthnRequest)は,ブラウザを通して IdP に渡される。

字数は a が 8 字(別解は 6 字),b が 5 字,c が 6 字で,制限は a・b が 10 字,c が 8 字である。a は“認証情報”ではなく,利用者認証の結果を表すメッセージの名前である“アサーション”まで書く。

採点講評(IPA)

設問1は,a及びcの正答率が低かった。SAML及びHTTPの標準仕様の中で定義された用語を理解していないと見受けられる解答が多かった。具体的な製品仕様や技術の表層的な理解だけではなく,その標準仕様の全体的な理解も深めてほしい。

設問2(1) 40字以内

本文中の下線①について,LDAP規格に準拠しているディレクトリを容易に統合できない理由を,40字以内で述べよ。

解答例

  • 業務システムごとに拡張属性を定義して使用しており,スキーマが異なるから
解説

本文の根拠

〔ディレクトリの統合に関する現状と問題〕

いずれもLDAP規格に準拠した製品を使用しているにもかかわらず,ディレクトリを容易に統合できない

表 X社情報システム群の業務システム一覧とディレクトリの実現方法など

LDAP標準スキーマに加え,拡張属性として“担当業務”を定義して使用

表 X社情報システム群の業務システム一覧とディレクトリの実現方法など

LDAP標準スキーマに加え,拡張属性として“研究区分”を定義して使用

LDAP を使う業務システムの表を見ると,購買は“担当業務”,研究開発は“研究区分”という拡張属性を,LDAP 標準スキーマに加えて定義している。人事管理は標準スキーマの“inetOrgPerson”,情報共有は標準スキーマだけを使うので,同じ LDAP でも,業務システムごとに持つ属性の種類が違うことになる。

このため,ディレクトリを一つにまとめようとしても,拡張属性の有無や中身がシステムごとに異なり,そのまま統合できない。解答例は“業務システムごとに拡張属性を定義して使用しており,スキーマが異なるから”である。LDAP 規格に準拠していることと,使っているスキーマが同じことは別の話である。

字数は 35 字で,制限の 40 字に収まる。“LDAP 以外の方式のシステムがあるから”のように,表の“独自”の行(顧客管理・営業管理)を理由にしないこと。設問は LDAP を使うシステム同士が統合できない理由を聞いている。

設問2(2) 40字以内

本文中の下線②の現状がもたらすセキュリティ上の問題を,40字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • 業務システムへのアクセスが本来許されない利用者が,アクセス可能な状態になる。
  • 退職や異動で権限がなくなったはずの者が業務システムにアクセスできてしまう。
解説

本文の根拠

〔利用者情報の維持管理に関する現状と問題〕

利用者IDやアクセス権の一部が不要になった場合に,その削除処理が忘れられることがしばしばある

〔利用者情報の維持管理に関する現状と問題〕

利用者情報の業務システムへの登録及び削除は,小規模な業務システムでは,システム管理者が管理台帳に基づいて手作業で行っている

不要になった利用者 ID やアクセス権の削除が忘れられると,それらが業務システムに残ったままになる。残ったアクセス権は,本来それを持つはずのない利用者に,業務システムを使える状態を与える。解答例は“業務システムへのアクセスが本来許されない利用者が,アクセス可能な状態になる。”,又は“退職や異動で権限がなくなったはずの者が業務システムにアクセスできてしまう。”である。

本文は,登録と削除が業務システムごとにシステム管理者の手で行われること,新規作成や追加は速やかでも削除が漏れることを述べている。そこで,権限がなくなったのは退職や異動で本来の利用者でなくなった者であり,その者がアクセスできてしまう,という流れで書く。

字数は 38 字と 37 字で,制限の 40 字に収まる。“悪用される”“不正アクセスに使われる”だけでは,誰がどのシステムに何をできてしまうのかが伝わらない。“アクセス可能な状態になる”という,削除漏れから生じる具体的な状態まで書く。

採点講評(IPA)

設問2(2)は,正答率が低かった。本文に記述された状況から想定される具体的な問題点を問うたが,削除されずに残った利用者IDやアクセス権が“悪用される”,“不正アクセスに使われる”といった,あいまいな解答が見受けられた。

設問3(1) 解答欄2つ

図3を参照して,顧客管理業務について営業部長に付与されるロールに許可すべき業務対象及び業務操作を答えよ。

〔業務対象〕解答例

  • 顧客情報

〔業務操作〕解答例

  • 閲覧
解説

本文の根拠

〔主要業務システムにおけるアクセス権付与状況の調査〕

顧客情報の入力更新及び削除に関する業務は,営業部長は実施せず,個々の顧客を担当する営業部員だけが実施している。

図3

顧客情報入力更新と顧客情報削除は営業部員だけとつながり,顧客情報閲覧は営業事務員,営業部員,営業部長の3アクタとつながる。

図3 の顧客管理業務では,営業部長とつながっている業務機能は“顧客情報 閲覧”だけである。入力更新と削除は営業部員だけとつながっている。したがって,営業部長に付与するロールに許可すべきなのは,業務対象が“顧客情報”,業務操作が“閲覧”である。

本文も,顧客情報の入力更新と削除は営業部長が実施せず,担当の営業部員だけが実施していると述べている。図2 の顧客管理システムの表では,営業部長に○が付いているのも“閲覧”だけであり,図3 の実態と合っている。顧客管理業務には,過剰なアクセス権付与は見つかっていない。

ここでは図3 の線をたどって答える設問なので,図2 の営業管理システムのように,営業部長にすべての業務機能が付与されている表と取り違えない。

設問3(2)理由 60字以内

本文中の下線③の問題を解決するためには,発注起案書処理機能を二つに分離すべきである。その理由を,内部統制上の観点から60字以内で述べよ。

解答例

  • 発注起案書申請と発注起案書承認が同一人物によって行われ,架空発注などの不正を発見できないおそれがあるから
解説

本文の根拠

〔主要業務システムにおけるアクセス権付与状況の調査〕

購買同意の場合には,発注起案書の申請を購買部員又は購買事務員(派遣従業者)が発注起案書処理機能を使って行い,同じ発注起案書処理機能を使って購買部長が承認の処理を行う。

図6

情報システムは,権限の分離原則に基づき利用すること。

発注起案書の申請と承認は,同じ“発注起案書処理”機能で行われている。図2 の購買システムの表では,発注起案書の処理が購買事務員,購買部員,購買部長の全員に○であり,申請者と承認者を機能の面で区別していない。そのため,同一人物が申請も承認も行える状態になっており,これが内部統制上の問題である(下線③)。

内部統制では,一つの取引を始める者と承認する者を分ける(権限の分離)。改訂ポリシ(図6)の K-2-2 も,権限の分離原則に基づく利用を求めている。分離しないままだと,申請と承認が同一人物で行われても気付けず,架空発注のような不正を発見できないおそれがある。解答例は“発注起案書申請と発注起案書承認が同一人物によって行われ,架空発注などの不正を発見できないおそれがあるから”である。

字数は 52 字で,制限の 60 字に収まる。“同一人物が申請と承認を行える”という事実と,“不正を発見できない”という内部統制上の問題の二つを入れる。

設問3(2)分離後

どのように分離すべきか。分離後の発注起案書処理のユースケースについて,“業務操作”と“アクタとそのアクタが使用する業務機能の対応”を図3に倣って示せ。

解答例(図)

解答例のユースケース図。業務機能は二つに分かれ,“発注起案書 申請”の楕円は購買事務員(派遣従業者)と購買部員の2アクタに線で結ばれ,“発注起案書 承認”の楕円は購買部長だけに線で結ばれている。
解説

本文の根拠

〔主要業務システムにおけるアクセス権付与状況の調査〕

購買同意の場合には,発注起案書の申請を購買部員又は購買事務員(派遣従業者)が発注起案書処理機能を使って行い,同じ発注起案書処理機能を使って購買部長が承認の処理を行う。

図2

支払請求書の承認:購買事務員-,購買部員-,購買部長○。

発注起案書処理機能を,業務操作ごとに“申請”と“承認”の二つの業務機能に分ける。本文のとおり,申請を行うのは購買部員と購買事務員(派遣従業者),承認を行うのは購買部長なので,“発注起案書 申請”は購買事務員と購買部員の二つのアクタに,“発注起案書 承認”は購買部長に結ぶ。

図2 の支払請求書は,管理と申請は3アクタ,承認は購買部長だけに○が付いており,申請と承認がすでに分かれている。発注起案書も同じ形にそろえる。解答例の図は,“発注起案書”の楕円を“申請”と“承認”の2つに分け,申請の楕円から購買事務員(派遣従業者)と購買部員へ,承認の楕円から購買部長へ線を引いている。

この設問は図に描いて答える形式なので,自己採点では解答例の図と見比べる。楕円には図3 に倣って業務対象(発注起案書)と業務操作(申請,承認)を書き,承認の楕円に購買事務員や購買部員の線を引かないこと。

設問3(3) 解答欄2つ

営業管理システムの営業部長用ロール定義案として案4が選ばれた理由を二つ挙げ,それぞれ45字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • 職掌変更などで役職に対する役割に変更が発生した場合に,容易に対応できるから
  • 申請と承認のような分離されるべき責務が,同じ権限として定義されていないから

〔②〕解答例

  • 職掌変更などで役職に対する役割に変更が発生した場合に,容易に対応できるから
  • 申請と承認のような分離されるべき責務が,同じ権限として定義されていないから

〔備考〕このうち異なる二つを答える

解説

本文の根拠

〔アクセス権付与に関する改善策の検討〕

営業管理システムでは営業部長に一つ以上のロールが定義できると考え,図4に示す定義案を作成し,議論した結果,案4を採用することにした。

〔アクセス権付与に関する改善策の検討〕

ここでロールとは,組織内における一定の権限や責任を伴う業務上の役割を意味する。

〔アクセス権付与状況の調査〕

X社では,組織変更に伴う役職に対する役割や職掌の変更が頻繁に発生する。

案4 は,営業部長用のロールを三つに分け(4-1 は見積書と契約書,4-2 は請求書,4-3 は売上報告書と購買依頼書),しかも各ロールに“承認”の操作だけを入れている。この二点が,案1〜3 と比べた理由になる。

一つは,役割の変更に容易に対応できることである。X社では組織変更に伴って役職に対する役割や職掌が頻繁に変わり,請求書にかかわる業務を営業部以外が担当した時期もある。案4 のように業務対象ごとにロールを分けておけば,変わった業務のロールだけを付け替えられる。案1・案3 は一つのロールに全部をまとめており,こうはいかない。もう一つは,申請と承認のような分離すべき責務が,同じ権限にならないことである。案1 と案2 は“作成,承認”“申請,承認”を同じロールに入れており,申請と承認を一人が行える。案4 は承認だけを集めているので,図6 の権限の分離原則に合う。

字数は二つとも 37 字で,制限の 45 字に収まる。解答例は二つの理由を①②に一つずつ答える形で,どちらの理由をどちらの欄に書いてもよい。

設問3(4) 解答欄2つ

本文中の下線④について,追加される管理項目を10字以内で答えよ。また,運用見直しの内容について,50字以内で具体的に述べよ。

〔追加される管理項目〕解答例

  • ロールに関する情報
  • 職掌に関する情報

〔運用見直しの内容〕解答例

  • 人事部あるいは管理者によって,従業者の所属組織や職掌の変更の都度,遅滞なく,情報を更新する。
解説

本文の根拠

〔アクセス権付与に関する改善策の検討〕

④人事管理システムへの管理項目の追加と人事管理システムの運用見直し

図7

人事管理システムから認証・認可情報Repへ“提供”の破線矢印が引かれている。

〔認証・認可基盤の全体方式の決定〕

人事管理システムから提供される利用者に関する情報と図4で検討したロールの定義を認証・認可情報リポジトリで一元管理します。

ロールベースのアクセス制御では,アクセス権を役職や職掌に応じたロールに結び付けて付与する。図7 の方式では,人事管理システムから“提供”される利用者の情報が認証・認可情報リポジトリに集まり,そこにロールの定義と合わせて一元管理され,各業務システムとSSOサーバに反映される。したがって,人事管理システムが持つ利用者情報に,ロールを決めるための項目が要る。追加する管理項目は“ロールに関する情報”又は“職掌に関する情報”である。

運用の見直しは,その情報が古くならないようにすることである。X社では組織変更に伴う役職・職掌の変更が頻繁に起き,利用者が複数の組織に属することもある。そこで,人事部又は管理者が,所属組織や職掌が変わるたびに遅滞なく情報を更新する。解答例は“人事部あるいは管理者によって,従業者の所属組織や職掌の変更の都度,遅滞なく,情報を更新する。”である。

字数は管理項目が 9 字と 8 字(制限 10 字),運用見直しが 46 字(制限 50 字)である。講評は,ID 管理とアクセス管理では異動や退職の変更を情報システムに即座に反映させることが重要だとし,図7 の方式の説明だけの解答や,図7 と矛盾する解答,“適切に管理する”のようなあいまいな解答を挙げている。“誰が”“いつ”“何を”更新するかまで具体的に書く。

採点講評(IPA)

設問3は,全体では想定どおりの正答率だったが,(4)の運用見直しの内容の正答率は低かった。ID管理及びアクセス管理においては,異動・退職といった変更を情報システムに即座に反映させることが重要である。しかし,図7に示された方式を説明しただけの解答,図7と矛盾する内容の解答が見受けられた。また,“適切に管理する”といった,あいまいな解答も見受けられた。

設問4 解答欄2つ

本文中の下線⑤について,営業管理システムを例にとり,システム改修の内容を二つ挙げ,それぞれ40字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • 認証方式をアプリ認証方式からプロキシ認証方式に変更する。

〔②〕解答例

  • 認可ロジックをロールベースのアクセス制御に対応した実装にする。
解説

本文の根拠

〔認証・認可基盤の全体方式の決定〕

アプリ認証方式の場合には,プログラムの構造をかなり変更する必要があるので,移行作業には時間が掛かりそうですが,技術的な問題はなさそうです。

〔認証・認可基盤の全体方式の決定〕

プロキシ認証方式の場合には,Webサーバの接続先を,今まで使用していた認証サーバから,SSOサーバに切り替えます。

表 X社情報システム群の業務システム一覧とディレクトリの実現方法など

営業管理:Web方式,アプリ認証方式,独自,6,000,RDBの列として,利用者ID,パスワード,権限区分を定義して使用。

営業管理システムは Web 方式で,アプリ認証方式(認証機能をアプリケーションに組み込んでいる),利用者情報は“RDB の列として利用者 ID,パスワード,権限区分を定義”した独自のものである。この業務システムを SSO の SP とし,ロールベースのアクセス制御にするための改修は,認証と認可の二つになる。

認証は,アプリ認証方式からプロキシ認証方式に変更する。H さんが述べるように,プロキシ認証方式なら Web サーバの接続先を認証サーバから SSO サーバに切り替えるだけで済み,プログラムの構造を大きく変えずに済む。認可は,権限区分で付与していた独自のアクセス権を,図4 の案4 のようなロールで付与できる実装にする。解答例は“認証方式をアプリ認証方式からプロキシ認証方式に変更する。”と“認可ロジックをロールベースのアクセス制御に対応した実装にする。”である。

字数は 28 字と 31 字で,制限の 40 字に収まる。講評は,設問が“個々の業務システムのシステム改修”“営業管理システムを例にとり”としているのに,“ID 体系を統一する”“権限情報を一元化する”“ディレクトリを統合する”のような X社情報システム全体の対応を挙げた解答が多く,認証と認可のどちらか一方だけの解答も多かったと述べている。

採点講評(IPA)

設問4は,正答率が低かった。本文及び設問でそれぞれ“個々の業務システムのシステム改修”,“営業管理システムを例にとり”と記載しているにもかかわらず,“ID体系を統一する”,“権限情報を一元化する”,“ディレクトリを統合する”といった,X社情報システム全体に関する解答が多かった。また,営業管理システムの改修として,認証方式の変更と認可方式の変更の両方が必要であるが,どちらか一方だけに関する解答も多かった。

出典:平成21年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 社内LANの見直し

社内LANの見直しに関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。

A社は,従業員数1,000名の電子部品メーカである。都心に本社,郊外に工場があり,全国の主要都市に拠点オフィス(以下,本社,工場,拠点オフィスを事業所という)をもつ。本社には,営業部,総務部及びシステム部があり,拠点オフィスには,営業部に所属する従業者(従業員,派遣従業員及びアルバイト)が常駐している。工場には,総務部,システム部,設計部及び製造部がある。

A社の主力製品は,独自の先端技術を用いた電子部品であり,CADシステムを用いた設計を行っている。近年では顧客の要望にこたえた特注品も生産するようになり,高い技術力と短納期で売上を伸ばしている。

A社では,受注,生産及び出荷データを管理するネットワーク(以下,Sネットワークという)と設計データを管理するネットワーク(以下,Tネットワークという)を利用している。Sネットワークには本社業務サーバと工場業務サーバなどが接続され,Tネットワークには開発サーバと製造サーバなどが接続されており,二つのネットワークはつながっていない。

〔セキュリティ区画の構成〕

A社のセキュリティ区画の定義を表1に示す。

A社のセキュリティ区画の定義の表(列は名称,定義,該当するエリア)。極秘区画:極秘情報及び機密情報を取り扱う領域。該当するエリアはサーバエリア及び設計エリア。機密区画:機密情報を取り扱う領域(例外的に極秘情報を保有又は通過させる場合には適切な対策を施す)。該当するエリアは執務エリア。一般区画:原則として極秘情報及び機密情報を取り扱わない領域(例外的に極秘情報又は機密情報を保有又は通過させる場合には適切な対策を施す)。該当するエリアは作業エリア。
表1 A社のセキュリティ区画の定義

本社は,サーバエリア及び執務エリアから構成されており,拠点オフィスは,執務エリアだけで構成されている。工場は,サーバエリア,設計エリア,執務エリア及び作業エリアから構成されている。極秘情報とは,機密性が極めて高く,設計部など一部の従業員にしか開示しない情報で,開発中の製品データや高度な技術的ノウハウが含まれる。機密情報とは,極秘情報に次いで機密性が高く,発注者である顧客などとの間で機密保持契約が結ばれている場合だけ当該顧客に開示できる情報で,受注情報や生産管理情報が含まれる。設計部員は,極秘情報及び機密情報を扱う場合は設計エリアで作業を行っている。

機密区画への立入りは,磁気カードによる認証が必要である。極秘区画への立入り及び退出の際には,磁気カードによる認証に加えて指紋認証も必要である。一般区画への立入りについては,特別な認証制限を行っていないが,工場においては,敷地外から敷地内に入る際に,外来受付で従業員証又は入構証の提示による入構管理を行っている。従業員証と入構証のどちらも保持していない場合には,その都度,臨時の入構証が発行される。各エリアの業務従事者を表2に示す。

各エリアの業務従事者の表(列はエリアの名称,業務従事者)。サーバエリア:システム部に所属する従業員。設計エリア:設計部に所属する従業員。執務エリア:総務部,営業部及び製造部に所属する従業者。作業エリア:製造部に所属する従業者,運送業者など。
表2 各エリアの業務従事者

A社の情報セキュリティポリシでは,次のことを規定している。

〔Sネットワークと内線電話構成の概要〕

Sネットワークは,本社業務サーバが接続された本社LAN,工場業務サーバが接続された工場LAN,拠点LAN及びこれらのLANを接続するデータ通信用の専用線で構成されている。Sネットワークと内線電話の構成を図1に示す。Sネットワークで取り扱う情報には,機密情報が含まれる。本社LAN及び拠点LANには,各事業所において使用する業務用のPC(以下,GPCという)が接続されている。工場LANには,工場内で使用するGPCのほかに,無線接続が可能なGPC(以下,NPCという)と無線アクセスポイント(以下,APという)で構成される無線LANが含まれる。

Sネットワークと内線電話の構成図。【工場】設計エリア,サーバエリア,執務エリア,作業エリアで構成される。設計エリアにGPC(複数)と電話(複数)。サーバエリアに工場LANのルータ,工場業務サーバ,PBX。執務エリアにGPC(複数),PR(プリンタ),AP(複数)があり,工場LANに接続されている。作業エリアに電話(複数)。APと無線接続されたNPC(複数)が,執務エリアの外側(作業エリア側)に描かれている。設計エリアのGPCも工場LANに接続されている。工場LANはサーバエリアのルータにつながる。PBXは,設計エリア,執務エリア,作業エリアの電話と破線(音声通信用回線)で接続されている。【本社】サーバエリアにルータ,PBX,本社業務サーバが置かれ,本社LANに接続されている。執務エリアに電話(複数)とGPC(複数)があり,GPCは本社LANに接続されている。【拠点オフィス】執務エリアの施錠ラック内にルータとPBXが格納され,拠点LANに接続されたGPC(複数)がある。電話(複数)はPBXに破線で接続されている。工場のルータと本社のルータ,工場のルータと拠点オフィスのルータは実線(専用線)で接続され,各事業所のPBX間は破線(音声通信用の専用線)で接続されている。凡例 PR:プリンタ,電話:多機能電話機。注 破線は音声通信用回線を示す。
図1 Sネットワークと内線電話の構成

本社業務サーバでは受注管理アプリケーションが稼働しており,本社及び拠点オフィスの営業担当者は,執務エリアに設置されたGPCを用いて,受注管理アプリケーションに受注データを入力する。入力された受注データは,受注管理アプリケーションの夜間バッチによって集計され,工場業務サーバに転送される。工場業務サーバでは生産管理アプリケーションが稼働しており,集計された受注データは生産データ及び出荷データの二つにまとめられる。生産データは製品型番別の生産数を集計したものであり,出荷データは出荷先の顧客別に製品型番,納品数及び納品日をまとめたものである。工場では,製造部の担当者が,工場の執務エリアに設置されたGPCを用いて,生産指示書として生産データの印刷を行い,それに基づいて製品を製造する。完成した製品は,作業エリア内の製品保管庫で保管され,顧客向けに出荷される。工場の製造部の担当者は,NPCから無線LAN経由で工場業務サーバにアクセスし,出荷データに従って製品を出荷する。NPCは共用のPCであり,全員が同じアカウントでログインして使っている。無線LANには,WPA2方式を採用している。生産指示書及びNPCは,作業を行う都度,作業エリアに持ち出して使用し,使用後は執務エリアにおいて保管している。

A社の内線電話は,各事業所に設置されたPBXと電話によって構成されており,各事業所のPBX間は音声通信用の専用線によって接続されている。

本社業務サーバ,工場業務サーバ,本社と工場のルータ及びPBXは,サーバエリアに設置されている。一方,各拠点オフィスのルータ及びPBXは,施錠ラックに格納され,各拠点オフィスの執務エリアに設置されている。

〔Tネットワークの概要〕

A社では,CADシステムと連動した製造装置を5年前に導入し,設計工程及び製造工程の効率向上を図っている。Tネットワークは,これらの製造装置の導入時に構築されたものであり,開発LAN及び製造LANで構成されている。開発LANには,開発サーバ及び設計エリアのPC(以下,KPCという)が接続されており,開発サーバではCADシステムの製品開発用アプリケーションが稼働している。製造LANには,製造サーバ,執務エリアのPC(以下,SPCという)及び作業エリアの製造装置に組み込まれたPC(以下,MPCという)が接続されている。Tネットワークの構成を図2に示す。

Tネットワークの構成図。【工場】設計エリアにKPC(複数)が開発LANに接続されている。サーバエリアに,開発LANにつながるルータ,開発サーバ,FW,製造サーバがある。開発LANと製造LANはFWを介して接続されている(開発サーバとFWが開発LAN側,FWと製造サーバが製造LAN側)。執務エリアにSPC(複数)とルータがあり,製造LANに接続されている。作業エリアには製造LANの一部が敷設され,MPC(製造装置)(複数)が接続されている。執務エリアのルータは作業エリアの製造LANに接続されている。
図2 Tネットワークの構成

図2中の開発サーバに保存されるCADデータは極秘情報に該当するので,A社の情報セキュリティポリシに従い,開発LANと製造LANは,FWを介して接続されている。また,製造LANの一部は,作業エリア内にも敷設されている。作業エリア内のネットワークケーブルは,電線管によって保護されている。

設計部では,KPCを用いて開発サーバ上の設計中の電子部品に関するCADデータにアクセスし,電子部品の設計を行っている。KPCには,CADシステム専用の端末アプリケーションがインストールされており,開発サーバとはCADシステム固有のプロトコルで接続する。設計部において電子部品の設計が完了し,商品化が決定したら,その製造に用いるデータ(以下,製造データという)は,開発サーバから製造サーバへ移され,製造サーバで管理される。製造部では,SPCから製造データにアクセスし,各種製造装置に製造データを入力して製品を製造する。

Tネットワークの構築当時は,同一規格品の生産が主であり,製造データには極秘情報に該当するものは含まれていなかった。しかし,特注品の生産増大に伴い,製造データには極秘情報に該当する独自のノウハウが含まれるようになってきている。つまり,製造サーバにも極秘情報が保存されてきており,この現状はA社の情報セキュリティポリシに違反しており,製造LANの情報セキュリティ対策がシステム部において大きな課題になっている。

〔A社の経営課題〕

A社では,拠点オフィスが増えたことに伴い,内線電話のために設置している専用線の維持費負担が経営課題の一つとなっている。また,顧客からの製品仕様の変更要求に迅速に対応するために,本社又は拠点オフィスの営業担当者と工場の設計担当者との間で迅速に情報連携を行う必要があり,製品仕様変更の打合せでのCADデータの積極的活用が課題となっている。この二つの課題への取組みのため,現在は接続されていないSネットワークとTネットワークの統合を含む,社内LANの再構築が経営会議で決定された。また,これを契機に,将来のテレビ会議システムの導入も視野に入れて検討するよう指示があった。この社内LANの再構築は,システム部が主管となって進めることになった。

〔音声通信とデータ通信の統合〕

まずシステム部では,検討の結果,次の基本方針を定めた。

この基本方針を伝えた上で,音声とデータの通信を統合する方式の提案をSIベンダのB社に求めた。それに対してB社からは,SIPを採用したSIPサーバを含むシステム提案があった。

B社の提案したSIPサーバは,音声通信用のサーバであり,IP電話のアドレス情報の管理,呼制御及び構内電話交換を行うものであった。接続を確立する過程と接続を切断する過程では,SIPサーバが通信制御に介在し,電話番号から相手のIPアドレスを検索して接続要求を転送するなどの処理を行う。接続が確立されてから切断されるまでの通話を行う過程では,IP電話同士が直接通信を行う。

工場のネットワーク構成の見直しは,工場のシステム部に所属しているC君が担当することになった。次は,C君とB社のセキュリティエンジニアのD氏の会話である。

〔SネットワークとTネットワークの統合〕

C君の検討結果を基に作成した,A社の新ネットワークの構成を図3に示す。

新ネットワークの構成図。【工場】設計エリアにGPC(複数),KPC(複数),IP電話(複数)があり,開発LANに接続されている。サーバエリアには,開発LANに接続された開発サーバ,FWx,製造サーバがあり,開発LANと製造LANはFWxを介して接続されている。開発LANの線上に(p),製造LANの線上(FWxと製造サーバの間)に(q)の矢印があり,工場LANの線上(工場業務サーバの上)に(r)の矢印がある。工場LANには,工場業務サーバ,SIPサーバ,認証サーバ,ルータが接続されている。執務エリアにGPC(複数),SPC(複数),PR,IP電話(複数),AP(複数)があり,作業エリアにはIP電話(複数)がある。製造LANは執務エリアのルータを経て作業エリアのMPC(製造装置)につながる。APと無線接続されたNPC(複数)がある。工場のルータはIP-VPNに接続され,IP-VPNは本社のルータ(本社LAN:本社業務サーバ,GPC(複数),IP電話(複数))と,拠点オフィスのルータ(施錠ラック内。拠点LAN:GPC(複数),IP電話(複数))に接続されている。
図3 新ネットワークの構成

C君は,Sネットワークのプライベートアドレスの振り直しを行うとともに,現在使用中のFWをFWxに置き換え,SネットワークとTネットワークを,FWxを介して接続することにした。さらに,営業担当者と設計担当者との間で情報を共有する必要があることから,事業所間において特注品の設計に関するデータを共有するためのサーバ(以下,情報共有サーバという)を,新規に導入することにした。これによって,設計担当者が,営業担当者との設計変更の打合せの際に,極秘情報を削除した共有データを作成して情報共有サーバに保存することで,営業担当者もそのデータを本社及び拠点オフィスから参照できるようになった。

設計エリアのIP電話とGPCは,開発LANに接続することにし,工場の執務エリアのIP電話及びSPC並びに作業エリアのIP電話は,工場LANに接続することにした。SPCを工場LANに接続することに伴い,②製造LANのネットワークケーブルを電線管で保護し,執務エリアの床下に敷設することにした。

また,情報共有サーバの導入に伴い,不正アクセス対策を強化する必要があると考えたC君は,無線LANの認証プロトコルとしてIEEE 802.1X方式を採用することにし,認証サーバを新規に導入することにした。

認証方式については,利用者IDとパスワードを用いるPEAP方式とPCに組み込んだクライアント証明書を用いるEAP-TLS方式を比較し,業務上利用する必要のない従業者がNPCを執務エリアから作業エリアに不正に持ち出して工場LANに接続する場合を考慮し,③PEAP方式を採用することにした。

C君が作成したFWxのアクセス制御ルールを,表3に示す。アクセス制御ルールは,項番順に優先して適用される。

FWxのアクセス制御ルールの表(列は項番,送信元,あて先,サービス,制御)。(1):KPC,製造サーバ,すべて,許可。(2):SPC,製造サーバ,すべて,許可。(3):開発LANのPC,工場LANのサーバ,すべて,許可。(4):本社LAN,工場LAN,拠点LANのIP電話,[ a ],RTP,許可。(5):[ a ],本社LAN,工場LAN,拠点LANのIP電話,RTP,許可。(6):[ b ],[ a ],SIP,許可。(7):[ a ],[ b ],SIP,許可。(8):すべて,すべて,すべて,拒否。注 送信元とあて先については,IPアドレスに代えてPC名,サーバ名などを記載している。また,KPCとSPCに対しては,固定のIPアドレスが付与されている。
表3 FWxのアクセス制御ルール

〔セキュリティ対策の検討〕

C君が作成した案に対して,システム部において検討会議が行われた。検討会議では,NPCを用いた不正接続を検知するためには,日常の管理を強化する必要のあることが指摘された。このため,NPCの管理状況を④定期的に点検し,点検結果と無線LANの接続履歴とを照合することにした。

検討会議の結果を反映させたC君の修正案は承認され,これに基づいてA社の社内LANの再構築が行われ,無事に完了した。

出題趣旨(IPA)

情報セキュリティの実現に当たっては,取り扱う情報の機密性に応じて適切なセキュリティ対策を講じるとともに,環境の変化に対応して継続的に改善を図る必要がある。本問では,内線電話のIP電話化と情報連携の迅速化という課題への取組みを状況として設定し,ネットワークの統合を含む社内LANの見直しを題材に,ファイアウォールによるアクセス制御や無線LANの認証技術の基本的な理解を問うとともに,機密性の高い情報を保護するための対策を講じる能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問2では,ネットワークの統合を含む,社内LANの見直しについて出題した。全体として,正答率は想定どおりだった。

設問と解答例

設問1 解答欄2つ

表3中のa,bに入れる適切な字句を,それぞれ15字以内で答えよ。

〔a〕解答例

  • 開発LANのIP電話
  • 設計エリアのIP電話

〔b〕解答例

  • SIPサーバ
解説

本文の根拠

〔SネットワークとTネットワークの統合〕

設計エリアのIP電話とGPCは,開発LANに接続することにし

〔音声通信とデータ通信の統合〕

接続を確立する過程と接続を切断する過程では,SIPサーバが通信制御に介在し

〔音声通信とデータ通信の統合〕

接続が確立されてから切断されるまでの通話を行う過程では,IP電話同士が直接通信を行う。

表3 は FWx のアクセス制御ルールで,項番(4)(5)は IP 電話間の通話(RTP)を許可するルールである。設計エリアの IP 電話は開発 LAN に接続することにしたので,本社・工場・拠点の IP 電話との通話は FWx を通る。項番(4)(5)の a は,その相手になる“開発LANのIP電話”(別解は“設計エリアのIP電話”)である。

b は“SIPサーバ”である。SIP では,接続の確立と切断の過程で SIP サーバが通信制御に介在し,通話中は IP 電話同士が直接通信する。項番(6)(7)の SIP は,IP 電話と SIP サーバの間で,開発 LAN の IP 電話が SIP サーバにつながるための通信である。項番(4)(5)が RTP(通話),項番(6)(7)が SIP(呼制御)という対応になる。RFC 3261 は,SIP を“セッションを作成・変更・終了するアプリケーション層の制御(シグナリング)プロトコル”と定めている。

字数は a が 10 字(別解も 10 字),b が 6 字で,制限は各 15 字である。表3 の送信元とあて先は,項番(6)と(7)で a と b が入れ替わっているので,向きを取り違えないこと。

設問2 35字以内

本文中の下線①について,DoS攻撃を想定した場合,FWxに置き換えることによって,どのような効果が期待できるか。35字以内で述べよ。

解答例

  • DoS攻撃のパケットを遮断できる可能性が高くなる。
解説

本文の根拠

〔音声通信とデータ通信の統合〕

RTPは,UDPポート番号の使用範囲が広く,かつ,使用するポート番号を動的に割り当てます。そのため,FWのパケットフィルタリングでは,広範囲なUDPポート番号を許可する必要があります。

〔音声通信とデータ通信の統合〕

SIP対応機能をもたないFWは,音声パケットの通信に利用されるポートを動的に開閉することができない

SIP 対応機能をもたない FW では,RTP が使う UDP ポートが広い範囲にわたるため,その範囲を常時許可しておく必要がある。許可された範囲には DoS 攻撃のパケットも通り抜けられる。FWx は,通話中に割り当てられたポート番号による IP 電話間の通信だけを許可し,それ以外を遮断する。通話に使うポートを必要なときだけ開閉するので,DoS 攻撃のパケットを遮断できる可能性が高くなる。解答例は“DoS攻撃のパケットを遮断できる可能性が高くなる。”である。

RFC 3550 は,RTP のデータと制御のパケットを,UDP では別々のポート番号で多重化して運ぶと定めている。RTP は音声や映像のようなリアルタイム性のあるデータを運ぶので,FW でポートを絞りにくいという事情がある。

字数は 25 字で,制限の 35 字に収まる。講評は,UDP ポートの動的開閉の効果に触れていない解答が散見されたと述べている。“セキュリティが強化される”のような一般論ではなく,“DoS 攻撃のパケットを遮断できる”まで書く。

採点講評(IPA)

設問2では,DoS攻撃を想定した場合における,UDPポートの動的開閉の効果について記述していない解答が散見された。IP電話については,今後,利用がますます促進すると思われるので,関連するセキュリティ対策についても理解を深めてほしい。

設問3(1) 解答欄2つ

C君は,新ネットワークの構成において,情報共有サーバを図3中のどこに接続することにしたと考えられるか。最も適切な箇所を(p)〜(r)の中から選び,記号で答えよ。また,選択した箇所以外には接続すべきでない理由を,70字以内で述べよ。

〔接続箇所〕解答例

  • (r)

〔接続すべきでない理由〕解答例

  • 極秘情報が保存された開発サーバや製造サーバが接続された開発LAN及び製造LANに,営業担当者がアクセスすることを許可すべきではないから
解説

本文の根拠

〔SネットワークとTネットワークの統合〕

事業所間において特注品の設計に関するデータを共有するためのサーバ(以下,情報共有サーバという)を,新規に導入することにした。

〔SネットワークとTネットワークの統合〕

営業担当者もそのデータを本社及び拠点オフィスから参照できるようになった

〔セキュリティ区画の構成〕

極秘情報を保存するサーバが接続されたLANを,機密区画又は一般区画のLANと接続する場合には,ファイアウォール(以下,FWという)によるアクセス制御を行う。

情報共有サーバには,極秘情報を削除した共有データを保存し,営業担当者が本社や拠点オフィスから参照する。開発サーバと製造サーバは極秘情報を保存するサーバで,(p) の開発 LAN と (q) の製造 LAN に接続されている。ここに情報共有サーバを置くと,営業担当者が極秘情報のあるサーバと同じ LAN にアクセスできてしまう。そこで,図3 の (r)(工場 LAN)に接続する。解答例は“(r)”と,“極秘情報が保存された開発サーバや製造サーバが接続された開発LAN及び製造LANに,営業担当者がアクセスすることを許可すべきではないから”である。

(r) の工場 LAN には,Sネットワーク側の機密情報を扱う工場業務サーバがあり,情報共有サーバをここに置けば,営業担当者のアクセスは工場 LAN で受け止められる。開発 LAN・製造 LAN に営業担当者のアクセスを通すと,A 社の情報セキュリティポリシの趣旨(極秘情報を保存するサーバが接続された LAN と他の区画の LAN の間は FW でアクセス制御する)に合わなくなる。

字数は 67 字で,制限の 70 字に収まる。理由には,“開発 LAN と製造 LAN を並べて挙げる”“営業担当者がアクセスする”の二つを必ず入れる。

設問3(2) 解答欄2つ

極秘情報に該当するデータが,情報共有サーバに残存することを防止するために,設計部ではどのような対策を実施すべきか。保存前対策と保存後対策を一つずつ挙げ,それぞれ40字以内で述べよ。

〔保存前対策〕解答例

  • 共有データを保存する際に責任者が内容を確認して承認する。
  • 共有データの作成者とは別の担当者が内容を確認して保存する。
  • 極秘情報と機密情報の区別を明確にして設計部員に周知徹底する。

〔保存後対策〕解答例

  • 極秘データが情報共有サーバに保存されていないことを定期的に検査する。
解説

本文の根拠

〔SネットワークとTネットワークの統合〕

設計担当者が,営業担当者との設計変更の打合せの際に,極秘情報を削除した共有データを作成して情報共有サーバに保存することで

〔セキュリティ区画の構成〕

極秘情報とは,機密性が極めて高く,設計部など一部の従業員にしか開示しない情報で,開発中の製品データや高度な技術的ノウハウが含まれる。

共有データは,設計担当者が極秘情報を削除したうえで作成し,情報共有サーバに保存する。したがって,極秘情報が残ったまま保存される原因は,削除し忘れや,極秘情報の見分け違いである。保存前の対策としては,共有データを保存する際に責任者が内容を確認して承認する,作成者とは別の担当者が内容を確認して保存する,極秘情報と機密情報の区別を明確にして設計部員に周知徹底する,のいずれかを答える。保存後の対策は,極秘データが情報共有サーバに保存されていないことを定期的に検査することである。

保存前は人が残さないようにする予防,保存後は残っていても見つけて取り除く検知であり,二段構えになる。講評は,残存する極秘情報を検知することの重要性を考慮して答えてほしかった,と述べている。

字数は保存前が 28〜30 字,保存後が 34 字で,制限は各 40 字である。保存後対策に“保存前の確認を徹底する”のような予防策を書かず,“保存されていないことを検査する”という点検の内容を書く。

採点講評(IPA)

設問3(2)は,正答率が低かった。残存する極秘情報を検知することの重要性を考慮して,解答してほしかった。

設問4(1) 25字以内

本文中の下線②について,サーバエリアから製造装置までのネットワークケーブルを電線管によって保護するのは,どのようなリスクの低減を意図したものか。ネットワークケーブルが破損すること以外のリスクを,25字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • ネットワークケーブルへのPCの不正接続
  • ネットワーク上を流れる特注品に関する極秘情報の盗聴
解説

本文の根拠

表2 各エリアの業務従事者

作業エリア:製造部に所属する従業者,運送業者など。

表1 A社のセキュリティ区画の定義

一般区画:原則として極秘情報及び機密情報を取り扱わない領域(例外的に極秘情報又は機密情報を保有又は通過させる場合には適切な対策を施す)。

〔Tネットワークの概要〕

また,製造LANの一部は,作業エリア内にも敷設されている。

製造 LAN の一部は作業エリアにあり,作業エリアは一般区画で,運送業者などの外部の人も出入りする。製造サーバには極秘情報が保存されているので,その通信が流れる製造 LAN のケーブルがむき出しだと,ケーブルに PC を不正に接続されたり,ネットワーク上を流れる特注品に関する極秘情報を盗聴されたりするおそれがある。電線管はケーブルへの接近を難しくし,こうした行為のリスクを下げる。解答例は“ネットワークケーブルへのPCの不正接続”,又は“ネットワーク上を流れる特注品に関する極秘情報の盗聴”である。

設問は“ケーブルが破損すること以外のリスク”を聞いているので,物理的な破損ではなく,不正接続や盗聴のように情報の漏えいにつながる行為を答える。

字数は 19 字と 25 字で,制限の 25 字に収まる。

設問4(2) 90字以内

C君が,工場LANと製造LANを比較した結果,SPCを工場LANに接続すると判断した理由を,90字以内で述べよ。

解答例

  • 情報セキュリティポリシに従い,機密区画にあるSPCから極秘情報を保存することになった製造サーバにアクセスする場合には,FWxによるアクセス制御を行う必要があると判断したから
解説

本文の根拠

〔セキュリティ区画の構成〕

機密区画のPCから極秘情報を保存するサーバへのアクセスは,原則禁止するが,許可する場合には,適切なアクセス制御を行う。

〔Tネットワークの概要〕

製造サーバにも極秘情報が保存されてきており,この現状はA社の情報セキュリティポリシに違反しており

表3 FWxのアクセス制御ルール

(2):SPC,製造サーバ,すべて,許可。

SPC は執務エリア(機密区画)にあり,製造サーバにアクセスして製造データを取り出す。製造サーバには極秘情報が保存されるようになり,SPC から製造サーバへのアクセスは,ポリシの“機密区画の PC から極秘情報を保存するサーバへのアクセス”に当たる。ポリシでは,許可する場合には適切なアクセス制御を行う。SPC を工場 LAN に接続すれば,SPC から製造サーバへの通信が FWx を通り,表3 の項番(2)のようにアクセス制御できる。解答例は“情報セキュリティポリシに従い,機密区画にあるSPCから極秘情報を保存することになった製造サーバにアクセスする場合には,FWxによるアクセス制御を行う必要があると判断したから”である。

工場 LAN と製造 LAN の比較では,製造 LAN は極秘情報を保存する製造サーバのある LAN,工場 LAN は機密情報を扱う LAN である。製造サーバに極秘情報が保存されるという環境の変化が,SPC の接続先を決める理由になる。

字数は 86 字で,制限の 90 字に収まる。講評は,環境の変化に伴い製造サーバに極秘情報が保存されるようになったことの対応を理解していない解答が多く,重要な情報の所在が変わる場合があり,対策の継続的な見直しと改善が必要だと述べている。“ポリシに従い”“極秘情報を保存する製造サーバ”“FWx のアクセス制御”の3点を入れる。

採点講評(IPA)

設問4(2)は,正答率が低かった。環境の変化に伴い,製造サーバに極秘情報が保存されるようになったことについて,新たな対応が必要であることを理解していない解答が多く見られた。重要な情報の所在が変化する場合があり,情報セキュリティ対策の継続的な見直しと改善を図る必要があることを理解しておいてほしい。

設問5(1)

PEAP方式において,認証情報を盗聴のリスクから保護するために使用されている暗号プロトコルを答えよ。

解答例(2通り)

  • SSL
  • TLS
解説

本文の根拠

〔SネットワークとTネットワークの統合〕

認証方式については,利用者IDとパスワードを用いるPEAP方式とPCに組み込んだクライアント証明書を用いるEAP-TLS方式を比較し

答えは“SSL 又は TLS”である。PEAP は,クライアントが認証サーバのサーバ証明書を使って TLS セッションを確立し(フェーズ1),その TLS セッションの中でクライアントの認証を行う(フェーズ2)。Microsoft の MS-PEAP は,フェーズ1の TLS セッションがフェーズ2の認証を保護するので,パスワードのように辞書攻撃を受けうる情報も機密を保ったまま使える,と説明している。

したがって,利用者 ID とパスワードがネットワーク上を流れても盗聴から保護されるのは,TLS(SSL)の暗号化による。PEAP は,EAP の認証を TLS セッションの中で行う形で保護している。

解答例は“SSL 又は TLS”の二つで,どちらを答えてもよい。字数制限はない。EAP-TLS 方式の“TLS”とも同じ名前なので,PEAP の保護も TLS によることを区別して覚える。

設問5(2) 50字以内

本文中の下線③について,C君が,PEAP方式とEAP-TLS方式を比較した結果,PEAP方式を採用すると判断した根拠を,50字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • PEAP方式はEAP-TLS方式に比べて利用者を特定できる利点があるから
  • EAP-TLS方式はクライアント証明書を組み込んだPCを認証するので利用者を特定できないから
解説

本文の根拠

〔SネットワークとTネットワークの統合〕

業務上利用する必要のない従業者がNPCを執務エリアから作業エリアに不正に持ち出して工場LANに接続する場合を考慮し

〔Sネットワークと内線電話構成の概要〕

NPCは共用のPCであり,全員が同じアカウントでログインして使っている。

EAP-TLS 方式は,PC に組み込んだクライアント証明書で認証するので,認証される対象は PC(NPC)である。RFC 5216 は,ピアの識別子(Peer-Id)をクライアント証明書の subject 又は subjectAltName から決めると定めている。NPC は共用で,全員が同じアカウントでログインして使うので,NPC を持ち出した者が誰かは,EAP-TLS では特定できない。

PEAP 方式は,利用者 ID とパスワードで認証するので,利用者を特定できる。業務上利用する必要のない従業者が NPC を不正に持ち出して工場 LAN に接続しようとした場合に,その利用者を認証の記録から特定できる利点がある。解答例は“PEAP方式はEAP-TLS方式に比べて利用者を特定できる利点があるから”,又は“EAP-TLS方式はクライアント証明書を組み込んだPCを認証するので利用者を特定できないから”である。

字数は 36 字と 46 字で,制限の 50 字に収まる。講評が述べるとおり,PEAP 方式は利用者 ID とパスワードによって利用者本人を,EAP-TLS 方式はクライアント証明書によって PC を特定する方式で,認証の対象が違う。“PEAP の方が強固”のような優劣の話ではなく,認証の対象の違いを書く。

採点講評(IPA)

設問5(2)は,正答率が低かった。PEAP方式はEAP方式を強化したものであり,EAP-TLS方式と共通の技術を採用しているが,PEAP方式は利用者IDとパスワードによって利用者本人を特定できる方式であり,EAP-TLS方式はクライアント証明書によってPCを特定できる方式である。採用する認証方式によって,認証の対象が異なることについて理解しておいてほしい。

設問5(3) 35字以内

本文中の下線④について,定期点検を実施する前提として必要と考えられる日常のNPC運用方法を,35字以内で述べよ。

解答例

  • NPCの持出しと返却の日時及び使用者に関する記録を残すこと
解説

本文の根拠

〔Sネットワークと内線電話構成の概要〕

生産指示書及びNPCは,作業を行う都度,作業エリアに持ち出して使用し,使用後は執務エリアにおいて保管している。

〔セキュリティ対策の検討〕

NPCの管理状況を④定期的に点検し,点検結果と無線LANの接続履歴とを照合することにした。

NPC は作業のたびに作業エリアへ持ち出され,使用後は執務エリアで保管される。定期点検の結果を無線 LAN の接続履歴と照合するには,いつ,だれが NPC を持ち出し,いつ返したかが分かっていなければならない。そこで,NPC の持出しと返却の日時及び使用者に関する記録を残す運用が前提になる。解答例は“NPCの持出しと返却の日時及び使用者に関する記録を残すこと”である。

記録があれば,接続履歴に残った日時の接続が,記録された持出しの時間帯のものかを突き合わせられる。記録にない時間帯の接続があれば,NPC を使った不正接続を検知できる。

字数は 29 字で,制限の 35 字に収まる。“日時”と“使用者”の二つの項目を落とさずに書く。

出典:平成21年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)