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情報処理安全確保支援士試験

平成27年度 秋期 午後Ⅱ(旧試験)

平成27年度 秋期に実施された情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱの全2問(記述式)の全設問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。事例本文のどこが根拠になるかを示し,IPA の解答例・採点講評と並べています。

この試験について:情報処理安全確保支援士試験について

この年度を解いてみる

問1 シンクライアント技術を利用したマルウェア対策

シンクライアント技術を利用したマルウェア対策に関する次の記述を読んで,設問 1〜5 に答えよ。

A 社は,従業員数 20,000 名の金融機関である。A 社では,これまで,本店,国内支店及び海外支店で働く従業員間の情報共有,電子メール(以下,メールという)の送受信及びインターネット上の Web サイトアクセスのための環境を整備してきた。現在の PC,サーバ及びネットワーク(以下,OA システムという)の構成を図 1 に示す。

A 社データセンタ(東京),海外支店,本店及び国内支店の構成図。A 社データセンタ(東京):インターネット側からルータ,FW,IPS の順につながり,IPS の先の DMZ にウイルスフィルタリングサーバがある。DMZ にはほかにメールゲートウェイと URL フィルタリングサーバがあり,ウイルスフィルタリングサーバにつながっている。DMZ は FW を介してイントラネット側のファイルサーバとグループウェアサーバにつながり,それらはルータを介して広域イーサネットにつながる。海外支店:インターネット側からルータ,FW の順につながり,FW の先の DMZ にメールゲートウェイと URL フィルタリングサーバがある。DMZ は FW を介してイントラネット側のファイルサーバ,グループウェアサーバ,PC につながり,それらはルータを介して広域イーサネットにつながる。本店及び国内支店:ルータと PC があり,ルータが広域イーサネットにつながる。広域イーサネットでつながった部分(A 社データセンタと海外支店の FW の内側,本店及び国内支店)がイントラネットである。凡例 IPS:侵入防止システム,FW:ファイアウォール。
図 1 現在の OA システムの構成

PC には,クライアントアプリケーションソフトウェア(以下,クライアントアプリケーションという)として Web ブラウザ,グループウェアクライアント,オフィスソフトウェア及び PDF リーダが導入されている。グループウェアサーバは,メールサーバの機能ももっている。利用者は,グループウェアクライアントを利用して情報共有及びメールの送受信を行うことができる。ウイルスフィルタリングサーバは,HTTP 通信及び SMTP 通信においてファイルのウイルススキャンを行い,ウイルスが検出された場合は,直ちに当該通信を遮断し,ファイルを送受信した従業員と情報システム部の管理者に警告メッセージを送信する。URL フィルタリングサーバは,業務上必要がない Web サイトへのアクセスを禁止する。

A 社は,情報システムのセキュリティ管理の強化及びコストの削減のために,本店及び全支店の PC をシンクライアント(以下,TC という)端末に段階的に移行し,A 社データセンタ(東京)内にサーバを集約することにした。

〔マルウェア対策の要件〕

TC 端末への移行及びサーバの集約に当たり,情報セキュリティ管理部は,情報システム部に対して,近年重大な脅威となっているマルウェア感染による情報漏えいについて対策を求めた。情報セキュリティ管理部が想定した,マルウェアによる情報漏えいのシナリオは次のとおりである。

情報セキュリティ管理部は,マルウェアによってファイルサーバとグループウェアサーバ上の機密ファイルが,インターネット上のサーバに送信されることを防ぐために,情報漏えいのシナリオを踏まえた次の対策を新しい OA システムの要件とした。

情報システム部の Z 部長は,部下の Y さんに,要件 1〜4 を考慮した OA システムの設計を行い,情報セキュリティ管理部のレビューを受けるよう指示した。

〔新しい OA システムの設計〕

Y さんは,新しい OA システムの設計案(以下,設計案 1 という)を作成した。設計案 1 の構成を図 2 に,設計案 1 における通信を表 1 に,それぞれ示す。

本店及び全支店と A 社データセンタ(東京)の構成図。本店及び全支店:PC 又は TC 端末がルータにつながり,ルータが広域イーサネットにつながる。A 社データセンタ(東京):広域イーサネットからルータを経てクライアントネットワークに入り,クライアントネットワークにメールゲートウェイ B と TC サーバがある。クライアントネットワークは,一方の FW を介して DMZ に,もう一方の FW を介してサーバネットワーク(ファイルサーバ,グループウェアサーバ)につながる。DMZ にはメールゲートウェイ A,URL フィルタリングサーバ,認証プロキシサーバ,ウイルスフィルタリングサーバがあり,ウイルスフィルタリングサーバの先に IPS,FW,ルータが並んでインターネットにつながる。メールゲートウェイ A と URL フィルタリングサーバはウイルスフィルタリングサーバにつながり,認証プロキシサーバは URL フィルタリングサーバにつながる。DMZ 側の FW にはメールゲートウェイ A と認証プロキシサーバがつながる。本店及び全支店の PC 又は TC 端末とクライアントネットワーク(広域イーサネットを含む)は網掛けの同じ範囲にある。
図 2 設計案 1 の構成
列は項番,送信元,宛先,プロトコル。1:PC 又は TC 端末 → TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。2:TC サーバ → ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。3:TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。4:グループウェアサーバ → メールゲートウェイ B,SMTP。5:メールゲートウェイ B → メールゲートウェイ A,SMTP。6:メールゲートウェイ A → インターネット上のメールサーバ,SMTP。7:インターネット上のメールサーバ → メールゲートウェイ A,SMTP。8:メールゲートウェイ A → メールゲートウェイ B,SMTP。9:メールゲートウェイ B → グループウェアサーバ,SMTP。10:TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTP over TLS(以下,HTTPS という)。11:認証プロキシサーバ → インターネット上の Web サーバ,HTTP 及び HTTPS。注記 1 DNS 及び Windows のディレクトリサービスの通信は,省略している。注記 2 表及び注記 1 に記載のない通信は FW によって禁止されている。注記 3 FW,ルータなど TCP コネクションを終端しない機器は送信元及び宛先として記載していない。
表 1 設計案 1 における通信

設計案 1 の概要は,次のとおりである。

新しい OA システムは,次のように動作する。

〔マルウェア対策を考慮した修正〕

Y さんが設計案 1 について情報セキュリティ管理部のレビューを受けたところ,次の 3 点が指摘された。

Y さんは,情報セキュリティ管理部の指摘を反映した修正案(以下,設計案 2 という)を作成し,情報セキュリティ管理部と Z 部長の承認を得た。設計案 2 では,TC サーバを,用途によってオフィス環境用 TC サーバ(以下,OA 用 TC サーバという)とインターネットアクセス用 TC サーバ(以下,IA 用 TC サーバという)に分けている。また,本店及び全支店でのメールによるファイル送信及びインターネット上の Web サイトへのファイルアップロードを,情報漏えい防止サーバ(以下,DLP サーバという)を使って制限する対策を追加している。DLP サーバの仕組みは次のとおりである。

設計案 2 の構成を図 3 に,設計案 2 における通信を表 2 に,それぞれ示す。

本店及び全支店と A 社データセンタ(東京)の構成図。本店及び全支店:PC 又は TC 端末がルータにつながり,ルータが広域イーサネットにつながる。A 社データセンタ(東京):広域イーサネットからルータを経てクライアントネットワークに入り,クライアントネットワークにメールゲートウェイ B と OA 用 TC サーバがある。クライアントネットワークは,一方の FW を介して DMZ に,もう一方の FW を介してサーバネットワーク(ファイルサーバ,グループウェアサーバ)につながる。DMZ には DLP サーバ,ウイルスフィルタリングサーバ,IPS,メールゲートウェイ A,URL フィルタリングサーバ,認証プロキシサーバ,IA 用 TC サーバ,SSL プロキシサーバがある。DMZ 側の FW にはメールゲートウェイ A,認証プロキシサーバ,IA 用 TC サーバがつながる。認証プロキシサーバは URL フィルタリングサーバに,メールゲートウェイ A と URL フィルタリングサーバは SSL プロキシサーバにつながる。DLP サーバ,ウイルスフィルタリングサーバ,IPS も SSL プロキシサーバにつながる。SSL プロキシサーバの先に FW,ルータが並んでインターネットにつながる。
図 3 設計案 2 の構成
列は項番,送信元,宛先,プロトコル。1:PC 又は TC 端末 → OA 用 TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。2:OA 用 TC サーバ → ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。3:OA 用 TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。4:グループウェアサーバ → メールゲートウェイ B,SMTP。5:メールゲートウェイ B → メールゲートウェイ A,SMTP。6:メールゲートウェイ A → インターネット上のメールサーバ,SMTP。7:インターネット上のメールサーバ → メールゲートウェイ A,SMTP。8:メールゲートウェイ A → メールゲートウェイ B,SMTP。9:メールゲートウェイ B → グループウェアサーバ,SMTP。10:PC 又は TC 端末 → IA 用 TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。11:IA 用 TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。12:認証プロキシサーバ → SSL プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。13:SSL プロキシサーバ → インターネット上の Web サーバ,HTTP 及び HTTPS。注記 1 DNS 及び Windows のディレクトリサービスの通信は省略している。注記 2 表及び注記 1 に記載のない通信は FW によって禁止されている。注記 3 FW,ルータなど TCP コネクションを終端しない機器は送信元及び宛先として記載していない。
表 2 設計案 2 における通信

設計案 2 において,利用者が受信メール中の URL をクリックした場合,OA 用 TC サーバ上で Web ブラウザが起動されるが,当該 URL へのアクセスは失敗する。OA 用 TC サーバ及び IA 用 TC サーバの作業フォルダ中のファイルは,定期的に削除される。SSL プロキシサーバは,HTTPS 通信の復号及び再暗号化に用いられる。

〔業務要件を踏まえた再修正〕

A 社は,一部の国内支店において新しい OA システムの試行運用を開始した。試行運用は成功し,A 社は新しい OA システムを本店及び全支店に展開することを決めた。展開に先立ち,情報システム部が本店及び全支店に新しい OA システムについて説明したところ,海外支店 X から,他の金融機関との共同融資業務及び幹事業務のために,PC 及び支店固有のインターネット接続回線を継続利用したいという要望が上がった。その業務とは,オンラインストレージとメールを使って,複数の金融機関との間で,融資案件の情報を共有し,参加する金融機関の募集を行うというものである。業務の具体的な内容は次のとおりである。

1 融資案件当たりの案件ファイルの合計サイズは,最大 500 M バイトである。海外支店 X では,業務の最繁時間帯の 9:00〜10:00 の間,100 名の従業員が,1 名当たり最大 3 件の共同融資業務を行っており,この業務スピードを維持する必要がある。融資案件への融資会社募集は,必要な資金が集まった時点で打ち切られ,幹事の金融機関によって融資先及び融資元との間の契約手続が開始されることから,利益率,リスクが好条件の案件ほど参加表明と融資額を早く連絡する必要がある。幹事業務は,9:00〜10:00 の間は行われない。

Y さんは,マルウェア対策に加えて海外支店 X において他の金融機関との共同融資業務及び幹事業務を可能にする修正案(以下,設計案 3 という)を作成した。設計案 3 では,海外支店 X 専用に,ファイルサーバ及び TC サーバが追加されている。

設計案 3 の構成を図 4 に,設計案 3 における通信を表 3 に,それぞれ示す。

本店,海外支店 X を除く支店,A 社データセンタ(東京),海外支店 X の構成図。本店,海外支店 X を除く支店:PC 又は TC 端末がルータにつながり,ルータが広域イーサネットを経て A 社データセンタのルータにつながる。A 社データセンタ(東京)のクライアントネットワーク A にはメールゲートウェイ B と OA 用 TC サーバがある。クライアントネットワーク A は,一方の FW を介して DMZ に,もう一方の FW を介してサーバネットワーク(ファイルサーバ,グループウェアサーバ)につながる。DMZ の中身は図 3 と同じで,DLP サーバ,ウイルスフィルタリングサーバ,IPS,メールゲートウェイ A,URL フィルタリングサーバ,認証プロキシサーバ,SSL プロキシサーバ,IA 用 TC サーバがあり,SSL プロキシサーバの先に FW,ルータが並んでインターネットにつながる。DMZ 側の FW からはクライアントネットワーク B にもつながり,クライアントネットワーク B に海外支店 X 用ファイルサーバと海外支店 X 用 TC サーバ,ルータがある。そのルータが広域イーサネットを経て海外支店 X のルータにつながり,海外支店 X のルータに PC 又は TC 端末がつながる。
図 4 設計案 3 の構成
列は項番,送信元,宛先,プロトコル。1:PC 又は TC 端末(本店,海外支店 X を除く支店)→ OA 用 TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。2:OA 用 TC サーバ → ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。3:OA 用 TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。4:グループウェアサーバ → メールゲートウェイ B,SMTP。5:メールゲートウェイ B → メールゲートウェイ A,SMTP。6:メールゲートウェイ A → インターネット上のメールサーバ,SMTP。7:インターネット上のメールサーバ → メールゲートウェイ A,SMTP。8:メールゲートウェイ A → メールゲートウェイ B,SMTP。9:メールゲートウェイ B → グループウェアサーバ,SMTP。10:PC 又は TC 端末(本店,海外支店 X を除く支店)→ IA 用 TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。11:IA 用 TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。12:認証プロキシサーバ → SSL プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。13:SSL プロキシサーバ → インターネット上の Web サーバ,HTTP 及び HTTPS。14:PC 又は TC 端末(海外支店 X)→ 海外支店 X 用 TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。15:海外支店 X 用 TC サーバ → 海外支店 X 用ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。16:海外支店 X 用 TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。17:海外支店 X 用 TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。注記 1 DNS 及び Windows のディレクトリサービスの通信は省略している。注記 2 表及び注記 1 に記載のない通信は FW によって禁止されている。注記 3 FW,ルータなど TCP コネクションを終端しない機器は送信元及び宛先として記載していない。
表 3 設計案 3 における通信

〔パフォーマンス検証〕

Y さんは,設計案 3 について,情報セキュリティ管理部と Z 部長の承認を得た後,海外支店 X に対して説明会を開いた。海外支店 X は,設計案 3 が共同融資業務での業務スピード維持に必要なパフォーマンス要件を満たせるのかどうかについて検証を求めた。

Y さんが試算したところ,パフォーマンス要件を満たすには,インターネット接続回線の帯域幅を確保するために大きなコストが必要になることが判明した。Y さんは,海外支店 X については例外的に,TC 端末に移行せずに,システム運用とセキュリティ管理も含めて PC 及び支店固有のインターネット接続回線を図 1 の現状のまま継続利用せざるを得ないと結論付けた。Y さんは,設計案 3 を更に修正した設計案(以下,設計案 4 という)を作成し,その内容と修正理由を情報セキュリティ管理部と Z 部長に説明した。設計案 4 の構成を図 5 に示す。

本店,海外支店 X を除く支店,A 社データセンタ(東京),海外支店 X の構成図。本店,海外支店 X を除く支店と A 社データセンタ(東京)の構成は図 4 とほぼ同じで,DMZ の URL フィルタリングサーバは“URL フィルタリングサーバ A”と表記されている。A 社データセンタのクライアントネットワーク B には海外支店 X 用の機器はなく,ルータだけがあり,広域イーサネットを経て海外支店 X のルータにつながる。海外支店 X:広域イーサネット側のルータに海外支店 X 用ファイルサーバと PC がつながり,それらは FW を介して海外支店 X の DMZ につながる。DMZ にはメールゲートウェイ C と URL フィルタリングサーバ B があり,DMZ はもう一つの FW とルータを経てインターネットにつながる。海外支店 X の PC と海外支店 X 用ファイルサーバはクライアントネットワーク B(網掛けの範囲)に含まれる。
図 5 設計案 4 の構成

情報セキュリティ管理部と Z 部長は,海外支店 X のインターネット接続におけるセキュリティ対策について,次の二つを条件として,設計案 4 を承認した。

A 社は,条件を満たすように見直した設計案 4 に基づき,新しい OA システムの本格運用を開始した。

出題趣旨(IPA)

シンクライアント技術は,データがクライアントに残らないことから,情報漏えい対策の一つとして広く採用されている。ただし,その設計においては,セキュリティ以外の要件も踏まえる必要がある。本問では,マルウェアによる情報漏えいへの対策,シンクライアント技術及びその他のセキュリティ対策技術を題材に,セキュリティ要件と業務要件及びパフォーマンス要件とのバランスを考慮した,OAシステムの設計能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問1では,近年,標的型攻撃対策としても使われているシンクライアント技術を題材に,セキュリティ対策について出題した。

設問と解答例

設問1(1)(a)

本店の TC 端末を利用して,グループウェアサーバ上のファイルをファイルサーバに転送する。

解答例

  • 1,2,3
解説

本文の根拠

表1 項番1〜3

1:PC 又は TC 端末 → TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。2:TC サーバ → ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。3:TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。

〔新しい OA システムの設計〕

TC サーバの OS 上で,クライアントアプリケーションが稼働する。

〔新しい OA システムの設計〕

D ドライブを保存先に選択すると,当該ファイルが,クライアントアプリケーションが稼働している TC サーバからファイルサーバに転送される。

設計案 1 では,クライアントアプリケーションは TC サーバの OS 上で動き,TC 端末は画面と操作情報をやり取りするだけである。本店の TC 端末で操作するには,まず TC 端末から TC サーバへの通信(項番 1)が要る。グループウェアクライアントは TC サーバ上で動くので,グループウェアサーバ上のファイルは TC サーバが取りに行き(項番 3),D ドライブに保存すると TC サーバからファイルサーバへ転送される(項番 2)。解答例は“1,2,3”である。

本文の“D ドライブを保存先に選択すると,当該ファイルが,…TC サーバからファイルサーバに転送される”が,ファイルが TC 端末を通らずにサーバ間で動くことを示している。グループウェアサーバとファイルサーバの間に直接の通信は表 1 に無いので,必ず TC サーバを経由する。

間違えやすいのは,ファイルを動かす操作だから TC 端末とファイルサーバの間に通信があると考えることである。表 1 にそのような項番は無く,注記 2 により禁止されている。“全ての通信”を問われているので,起点となる項番 1 を落とさないようにする。

採点講評(IPA)

設問1は,設計案における通信経路の特定,マルウェア感染時の動作についての問題である。設問全体の正答率は高めで,多くの受験者が条件設定を正しく理解していたと思われる。

設問1(1)(b)

インターネットから A 社にメールが届き,そのメールを国内支店の TC 端末を利用して閲覧する。

解答例

  • 1,3,7,8,9
解説

本文の根拠

表1 項番7〜9

7:インターネット上のメールサーバ → メールゲートウェイ A,SMTP。8:メールゲートウェイ A → メールゲートウェイ B,SMTP。9:メールゲートウェイ B → グループウェアサーバ,SMTP。

冒頭

グループウェアサーバは,メールサーバの機能ももっている。利用者は,グループウェアクライアントを利用して情報共有及びメールの送受信を行うことができる。

表1 項番3

3:TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。

インターネットから届いたメールは,インターネット上のメールサーバからメールゲートウェイ A(項番 7),メールゲートウェイ A からメールゲートウェイ B(項番 8),メールゲートウェイ B からメールサーバの機能をもつグループウェアサーバ(項番 9)へ SMTP で中継される。閲覧するときは,国内支店の TC 端末から TC サーバ(項番 1)につなぎ,TC サーバ上のグループウェアクライアントがグループウェアサーバからメールを読む(項番 3)。解答例は“1,3,7,8,9”である。

本文に“グループウェアサーバは,メールサーバの機能ももっている”とあるので,メールの最終的な置き場所はグループウェアサーバである。項番 4〜6 は送信の向きの通信なので,受信して閲覧する場面には使われない。

受信の経路(7,8,9)だけを答えて閲覧の側(1,3)を落とす誤りに気を付ける。設問は“メールが届き,そのメールを…閲覧する”の両方を一つの場面としている。

採点講評(IPA)

設問1は,設計案における通信経路の特定,マルウェア感染時の動作についての問題である。設問全体の正答率は高めで,多くの受験者が条件設定を正しく理解していたと思われる。

設問1(1)(c)

海外支店の PC を利用して,インターネット上の Web サイトにアクセスする。

解答例

  • 1,10,11
解説

本文の根拠

図2

本店及び全支店:PC 又は TC 端末がルータにつながり,ルータが広域イーサネットにつながる。

〔新しい OA システムの設計〕

PC にはビューア(TC 端末の機能を提供するソフトウェア)を導入するが,その後,本店及び支店ごとに段階的に PC から TC 端末へ移行する。

表1 項番10・11

10:TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTP over TLS(以下,HTTPS という)。11:認証プロキシサーバ → インターネット上の Web サーバ,HTTP 及び HTTPS。

設計案 1 では,海外支店の PC もビューアを使って TC サーバにつなぎ(項番 1),Web ブラウザは TC サーバ上で動く。Web ブラウザは要件 3 のとおり認証プロキシサーバを経由し(項番 10),認証プロキシサーバがインターネット上の Web サーバにアクセスする(項番 11)。解答例は“1,10,11”である。

図 2 では海外支店も“本店及び全支店”に含まれ,PC 又は TC 端末は広域イーサネット経由でデータセンタにつながっている。図 1 にあった海外支店の FW やインターネット回線は設計案 1 には無く,PC は TC 端末と同じくビューアで TC サーバを使う。

“PC だから直接インターネットに出る”と考えると項番 1 を落とす。設計案 1 では,PC に導入するのはビューアであり,Web ブラウザが動くのは TC サーバであることを押さえる。

採点講評(IPA)

設問1は,設計案における通信経路の特定,マルウェア感染時の動作についての問題である。設問全体の正答率は高めで,多くの受験者が条件設定を正しく理解していたと思われる。

設問1(2) 解答欄2つ

設計案 1 において,受信メールの添付ファイルを海外支店の TC 端末から開いてマルウェアに感染した場合,マルウェアはどの構成要素上で動作するか。図 2 中の用語で答えよ。また,その後,マルウェアがファイルサーバ上のファイル及びグループウェアサーバ上のファイルを盗み出してインターネット上の Web サーバに送信するのに利用する全ての通信を,表 1 中の項番で答えよ。

〔構成要素〕解答例

  • TCサーバ

〔通信〕解答例

  • 2,3,10,11
解説

本文の根拠

〔新しい OA システムの設計〕

グループウェアクライアントは,グループウェアクライアントの実行環境である TC サーバの作業フォルダに,グループウェアサーバから添付ファイルをダウンロードし,OS の設定でファイルタイプに関連付けられたクライアントアプリケーションを起動する。

表1 項番2・3

2:TC サーバ → ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。3:TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。

表1 項番10・11

10:TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTP over TLS(以下,HTTPS という)。11:認証プロキシサーバ → インターネット上の Web サーバ,HTTP 及び HTTPS。

添付ファイルは TC サーバの作業フォルダにダウンロードされ,TC サーバ上のクライアントアプリケーションで開かれる。したがってマルウェアが動作するのは TC 端末ではなく“TCサーバ”である。盗み出しには TC サーバからファイルサーバ(項番 2)とグループウェアサーバ(項番 3)への通信を使い,送信には TC サーバから認証プロキシサーバ(項番 10)と認証プロキシサーバからインターネット上の Web サーバ(項番 11)への通信を使う。解答例は構成要素が“TCサーバ”,通信が“2,3,10,11”である。

本文の“グループウェアクライアントの実行環境である TC サーバの作業フォルダに”が,ファイルを開く場所が TC サーバであることを示している。TC 端末と TC サーバの間で送受信するのは画面と操作情報だけなので,TC 端末上でファイルが実行されることはない。

マルウェアは TC サーバ上で動くので,TC 端末から TC サーバへの項番 1 は盗み出しにも送信にも使わない。(1)(a)・(c)と違い,項番 1 を入れないことが要点である。

採点講評(IPA)

設問1は,設計案における通信経路の特定,マルウェア感染時の動作についての問題である。設問全体の正答率は高めで,多くの受験者が条件設定を正しく理解していたと思われる。

設問2(1) 解答欄2つ

指摘 1 について,ウイルススキャンが行われないのはどのような場合か。二つ挙げ,それぞれ 25 字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • 通信が暗号化されている場合

〔②〕解答例

  • ファイルが暗号化されている場合
解説

本文の根拠

冒頭

ウイルスフィルタリングサーバは,HTTP 通信及び SMTP 通信においてファイルのウイルススキャンを行い

表1 項番10

10:TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTP over TLS(以下,HTTPS という)。

〔マルウェア対策を考慮した修正〕

SSL プロキシサーバは,HTTPS 通信の復号及び再暗号化に用いられる。

ウイルスフィルタリングサーバは通信の中を流れるファイルを検査する。中身を読めなければ検査できないので,スキャンが行われないのは,HTTPS のように通信が暗号化されている場合と,ファイルそのものが暗号化されている場合である。解答例は①“通信が暗号化されている場合”,②“ファイルが暗号化されている場合”である。

表 1 では Web アクセスに HTTP だけでなく HTTPS も使う。設計案 2 で“SSL プロキシサーバは,HTTPS 通信の復号及び再暗号化に用いられる”とされたのは,暗号化された通信の中身をウイルスフィルタリングサーバに見せるための対策である。一方,ファイル自体の暗号化(パスワード付きの圧縮ファイルなど)は通信を復号しても中身が読めない。

字数は各 25 字以内で,解答例は 13 字と 15 字である。“暗号化”の対象が“通信”か“ファイル”かを書き分けないと,二つが同じ答えに見えてしまう。“HTTPS の場合”のように具体例だけを書くより,暗号化されているから読めないという理由が伝わる書き方にする。

設問2(2) 75字以内

指摘 2 について,方式 2 が要件を満たせない理由を,技術的要因を含めて 75 字以内で述べよ。

解答例

  • クライアントアプリケーションのプロセスが起動される度に,IPアドレスが変わるので,認証済みのほかの利用者として認証されてしまう可能性があるから
解説

本文の根拠

〔新しい OA システムの設計〕方式2

方式 2. 認証が成功すると,設定された時間が経過するまでは,クライアントの IP アドレスによって認証済みの利用者とみなす。

〔新しい OA システムの設計〕

クライアントアプリケーションのプロセスが終了すると,当該プロセスで利用されていた仮想 IP アドレスは解放され,他のプロセスが起動したときに再利用される。

要件3

要件 3. 認証プロキシサーバを新設し,利用者 ID とパスワードによる利用者認証及びアクセスログの取得を行う。

方式 2 は,認証に成功したクライアントの IP アドレスを一定時間“認証済みの利用者”とみなす。ところが TC サーバでは,Web ブラウザなどのプロセスが起動するたびに仮想 IP アドレスプールから空いているアドレスを選び,終了すると解放して他のプロセスに再利用させる。そのため,ある利用者が認証した IP アドレスを別の利用者のプロセスが使うと,認証済みのほかの利用者とみなされてしまう。解答例は“クライアントアプリケーションのプロセスが起動される度に,IPアドレスが変わるので,認証済みのほかの利用者として認証されてしまう可能性があるから”である。

要件 3 は利用者 ID とパスワードによる利用者認証とアクセスログの取得を求めている。IP アドレスと利用者の対応が崩れると,認証をすり抜けられるうえ,アクセスログに別の利用者が記録され,マルウェアの通信を誰の操作か特定できなくなる。

字数は 75 字以内で,解答例は 71 字である。“プロセスの起動ごとに IP アドレスが変わる(再利用される)”という技術的要因と,“他の利用者として認証される”という結果の両方を残す。講評が指摘するとおり,結果だけ,又は要因だけの解答では足りない。

採点講評(IPA)

設問2は,マルウェア対策として改善すべき点についての問題である。設問2(2)は正答率が低かった。要件を満たせない理由及び技術的要因を正確に記述できていない解答が多かった。使用する構成要素の仕様を正しく理解し,趣旨を表現する能力を身に付けてほしい。

設問2(3)

設計案 2 において,利用者がインターネット上の Web サイトのファイルを閲覧してマルウェア感染が起きた場合,マルウェアはどの構成要素上で動作するか。図 3 中の用語で答えよ。

解答例

  • IA用TCサーバ
解説

本文の根拠

〔マルウェア対策を考慮した修正〕

設計案 2 では,TC サーバを,用途によってオフィス環境用 TC サーバ(以下,OA 用 TC サーバという)とインターネットアクセス用 TC サーバ(以下,IA 用 TC サーバという)に分けている。

表2 項番11

11:IA 用 TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。

〔新しい OA システムの設計〕

Web ブラウザは,インターネット上の Web サーバから Web ブラウザの実行環境である TC サーバ上の作業フォルダに当該ファイルをダウンロードし,該当するクライアントアプリケーションを起動する。

設計案 2 でインターネット上の Web サイトにアクセスできるのは,認証プロキシサーバへの通信(表 2 項番 11)をもつ IA 用 TC サーバだけである。Web ブラウザは IA 用 TC サーバ上で動き,閲覧したファイルはその作業フォルダにダウンロードされて開かれる。したがってマルウェアは“IA用TCサーバ”上で動作する。

本文の“Web ブラウザの実行環境である TC サーバ上の作業フォルダに当該ファイルをダウンロード”が,ファイルを開く場所を示している。OA 用 TC サーバ上の Web ブラウザでは,受信メール中の URL へのアクセスも失敗するとされており,インターネットには出られない。

“図 3 中の用語で”とあるので,“TCサーバ”ではなく図 3 の表記どおり“IA用TCサーバ”と答える。TC 端末と書くのは誤りである。

設問2(4)

設計案 2 において,利用者が受信メールの添付ファイルを開いてマルウェア感染が起きた場合,マルウェアはどの構成要素上で動作するか。図 3 中の用語で答えよ。

解答例

  • OA用TCサーバ
解説

本文の根拠

表2 項番1・3

1:PC 又は TC 端末 → OA 用 TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。2:OA 用 TC サーバ → ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。3:OA 用 TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。

〔新しい OA システムの設計〕

グループウェアクライアントは,グループウェアクライアントの実行環境である TC サーバの作業フォルダに,グループウェアサーバから添付ファイルをダウンロードし

グループウェアサーバへの通信(表 2 項番 3)をもつのは OA 用 TC サーバなので,グループウェアクライアントは OA 用 TC サーバ上で動く。受信メールの添付ファイルはその作業フォルダにダウンロードされ,関連付けられたクライアントアプリケーションで開かれる。したがってマルウェアは“OA用TCサーバ”上で動作する。

本文の“グループウェアクライアントの実行環境である TC サーバの作業フォルダに…添付ファイルをダウンロード”のとおり,添付ファイルを開く場所はグループウェアクライアントと同じ TC サーバである。設計案 2 で TC サーバを用途別に分けたので,その場所が OA 用 TC サーバになる。

(3)との違いは感染の入口である。Web 閲覧なら IA 用 TC サーバ,メールの添付ファイルなら OA 用 TC サーバとなり,この違いが(5)で FW に止められる通信の違いにつながる。

設問2(5) 解答欄6つ

設計案 2 におけるマルウェア対策について,目的遂行段階でマルウェアが利用する二つの通信のうち,FW によって禁止されているのはどの通信か。マルウェアの実行がインターネット上の Web サイトのファイルを閲覧して起きた場合,及び受信メールの添付ファイルを開いて起きた場合のそれぞれについて,送信元,宛先及びプロトコルを答えよ。

〔Webサイトのファイルを閲覧した場合 送信元〕解答例

  • IA用TCサーバ

〔Webサイトのファイルを閲覧した場合 宛先〕解答例

  • ファイルサーバ
  • グループウェアサーバ

〔Webサイトのファイルを閲覧した場合 プロトコル〕解答例

  • Windowsファイル共有プロトコル
  • グループウェア独自プロトコル

〔受信メールの添付ファイルを開いた場合 送信元〕解答例

  • OA用TCサーバ

〔受信メールの添付ファイルを開いた場合 宛先〕解答例

  • インターネット上のWebサーバ

〔受信メールの添付ファイルを開いた場合 プロトコル〕解答例

  • HTTP及びHTTPS

〔備考〕Webサイトのファイルを閲覧した場合は,a群(IA用TCサーバ,ファイルサーバ,Windowsファイル共有プロトコル)又はb群(IA用TCサーバ,グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル)のどちらかを答える。同じ群中の組合せとする

解説

本文の根拠

〔マルウェア対策の要件〕(5) 目的遂行段階

マルウェアが,ファイルサーバ又はグループウェアサーバから機密情報を含んだファイル(以下,機密ファイルという)を盗み出す。

〔マルウェア対策の要件〕(5) 目的遂行段階

マルウェアが,盗み出した機密ファイルを C&C サーバから指示されたインターネット上のサーバに送信する。

表2 項番2・3

2:OA 用 TC サーバ → ファイルサーバ,Windows ファイル共有プロトコル。3:OA 用 TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。

表2 項番11

11:IA 用 TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。

表2 注記2

注記 2 表及び注記 1 に記載のない通信は FW によって禁止されている。

目的遂行段階でマルウェアが使う通信は,①ファイルサーバ又はグループウェアサーバから機密ファイルを盗み出す通信と,②盗んだファイルをインターネット上のサーバに送る通信の二つである。Web 閲覧で感染した場合,マルウェアは IA 用 TC サーバ上にあり,②は認証プロキシサーバ経由で許可されているが,①の IA 用 TC サーバからファイルサーバ(Windows ファイル共有プロトコル)又はグループウェアサーバ(グループウェア独自プロトコル)への通信は表 2 に無いので禁止される。メールの添付ファイルで感染した場合,マルウェアは OA 用 TC サーバ上にあり,①は項番 2・3 で許可されているが,②の OA 用 TC サーバからインターネット上の Web サーバへの HTTP 及び HTTPS 通信は表 2 に無いので禁止される。

解答例は,Web サイトのファイルを閲覧した場合が送信元“IA用TCサーバ”,宛先“ファイルサーバ”,プロトコル“Windowsファイル共有プロトコル”(a 群),又は送信元“IA用TCサーバ”,宛先“グループウェアサーバ”,プロトコル“グループウェア独自プロトコル”(b 群)で,備考に“同じ群中の組合せとする”とある。受信メールの添付ファイルを開いた場合は送信元“OA用TCサーバ”,宛先“インターネット上のWebサーバ”,プロトコル“HTTP及びHTTPS”である。

Web 閲覧の場合は宛先とプロトコルの組を崩さないこと(ファイルサーバにグループウェア独自プロトコルを組み合わせると誤り)。TC サーバを分けたことで,どちらで感染しても“盗む”か“送る”のどちらかが FW で止まる,という設計案 2 の狙いを読み取る。

設問3(1)

海外支店 X の共同融資業務及び幹事業務のうち,設計案 2 では実現できない項目を全て挙げ,本文中の a〜h の記号で答えよ。

解答例

  • b,c,f,g
解説

本文の根拠

〔マルウェア対策を考慮した修正〕

設計案 2 において,利用者が受信メール中の URL をクリックした場合,OA 用 TC サーバ上で Web ブラウザが起動されるが,当該 URL へのアクセスは失敗する。

〔業務要件を踏まえた再修正〕(1) 共同融資業務

b. 融資依頼のメール中の URL をクリックしてリストにアクセスする。

〔業務要件を踏まえた再修正〕(2) 幹事業務

f. ファイルサーバからオンラインストレージに案件ファイルをアップロードする。

〔新しい OA システムの設計〕

TC 端末及びビューアから TC サーバまでの間は,TC サーバ製品独自のプロトコルで通信し,次のデータを送受信する。

設計案 2 では,メールを扱う OA 用 TC サーバはインターネットに出られず,インターネットに出られる IA 用 TC サーバはファイルサーバにもグループウェアサーバにもつながらない(表 2)。b はメール中の URL をクリックするが,OA 用 TC サーバ上の Web ブラウザからのアクセスは失敗する。c はオンラインストレージから取得したファイルをファイルサーバに保存するが,IA 用 TC サーバからファイルサーバへの通信が無い。f はファイルサーバのファイルをアップロードするが,同じ理由で IA 用 TC サーバからファイルサーバのファイルを扱えない。g は IA 用 TC サーバの Web ブラウザの画面から OA 用 TC サーバのメールに URL をコピーするが,二つの TC サーバの間に通信は無い。解答例は“b,c,f,g”である。

TC 端末と TC サーバの間で送受信するのは画面とキーボード・マウスの操作情報だけなので,TC 端末を介して別々の TC サーバの間でデータを渡すこともできない。a・d・h はメールの受信・送信,e はオフィスソフトウェアでの作成とファイルサーバへの保存で,いずれも OA 用 TC サーバの中で完結するので実現できる。

講評は,業務要件を正確に理解する必要性を指摘している。a〜h の一つ一つについて,どの TC サーバで動き,どのサーバと通信する必要があるかを表 2 と突き合わせ,“コピーして貼り付ける”のような目立たない操作(g)も落とさないようにする。

採点講評(IPA)

設問3は,業務要件の実現及びマルウェア感染の仕組みについての問題である。設問3(1)は正答率が低かった。セキュリティ技術者も,業務要件を正確に理解する必要があることを認識してほしい。

設問3(2) 解答欄2つ

設計案 3 において,海外支店 X の PC からインターネット上の Web サイトのファイルを閲覧してマルウェアに感染した場合,及び受信メールの添付ファイルを開いてマルウェアに感染した場合,それぞれマルウェアはどの構成要素上で動作するか。図 4 中の用語で答えよ。

〔Webサイトのファイルを閲覧した場合〕解答例

  • 海外支店X用TCサーバ

〔受信メールの添付ファイルを開いた場合〕解答例

  • 海外支店X用TCサーバ
解説

本文の根拠

表3 項番14

14:PC 又は TC 端末(海外支店 X)→ 海外支店 X 用 TC サーバ,TC サーバ製品の独自プロトコル。

表3 項番16・17

16:海外支店 X 用 TC サーバ → グループウェアサーバ,グループウェア独自プロトコル。17:海外支店 X 用 TC サーバ → 認証プロキシサーバ,HTTP 及び HTTPS。

設計案 3 で海外支店 X の PC がつなぐのは海外支店 X 用 TC サーバだけで(表 3 項番 14),このサーバはグループウェアサーバへの通信(項番 16)と認証プロキシサーバへの通信(項番 17)を両方もつ。つまり Web ブラウザもグループウェアクライアントも海外支店 X 用 TC サーバ上で動く。したがって,Web サイトのファイルを閲覧した場合も受信メールの添付ファイルを開いた場合も,マルウェアは“海外支店X用TCサーバ”上で動作する。

設計案 3 は,b・c・f・g を実現するために,一つの TC サーバでインターネットアクセスとメール・ファイルサーバの利用を兼ねさせた。その代わり,設計案 2 で OA 用と IA 用に分けた効果は海外支店 X については失われている。

“図 4 中の用語で”とあるので,“IA用TCサーバ”“OA用TCサーバ”や単に“TCサーバ”と答えないよう,表 3 で送信元を確かめる。PC と答えるのも誤りで,PC はビューアとして画面を表示するだけである。

設問4(1)

パフォーマンス要件を満たすために必要な回線速度は何 M ビット/秒か。小数第 1 位を四捨五入して整数で答えよ。ここで,回線使用率は 70%とする。また,1M バイト=106 バイト,1M ビット/秒=106 ビット/秒とし,制御データ及びエラーによる再送については,回線使用率の前提条件で考慮されているものとする。

解答例

  • 476
解説

本文の根拠

〔業務要件を踏まえた再修正〕

1 融資案件当たりの案件ファイルの合計サイズは,最大 500 M バイトである。海外支店 X では,業務の最繁時間帯の 9:00〜10:00 の間,100 名の従業員が,1 名当たり最大 3 件の共同融資業務を行っており,この業務スピードを維持する必要がある。

表3 項番13

13:SSL プロキシサーバ → インターネット上の Web サーバ,HTTP 及び HTTPS。

最繁時の 1 時間に,100 名が最大 3 件ずつ,1 件当たり最大 500M バイトの案件ファイルをオンラインストレージからダウンロードする。データ量は 100×3×500M バイト=150,000M バイト=1.2×1012 ビットである。これを 3,600 秒で運ぶと 1.2×1012÷3,600≒3.333×108 ビット/秒(約 333.3M ビット/秒)となる。回線使用率 70%なので 333.3÷0.7≒476.19,小数第 1 位を四捨五入して解答例の“476”になる。

設計案 3 では海外支店 X の業務もデータセンタのインターネット接続回線(表 3 項番 13 の SSL プロキシサーバからインターネット上の Web サーバへの通信)を使うので,この帯域を確保する必要がある。本文が,帯域幅の確保に大きなコストが必要になり,海外支店 X は支店固有の回線を継続利用すると結論付けたのはこの数値による。

間違えやすいのは単位で,バイトをビットに直す(×8)ことと,時間を秒に直すことを忘れない。使用率は“必要な帯域÷0.7”のように割って回線速度を大きくする向きで使う(×0.7 にすると小さくなってしまう)。

採点講評(IPA)

設問4は,パフォーマンス検証及びDMZにおけるセキュリティ対策についての問題である。設問4(1)は正答率が低かった。セキュリティ対策の設計においては,セキュリティ以外の非機能要件とのバランスをとることも重要であり,設計したセキュリティ対策が,非機能要件を満たすことを検証する能力を身に付けてほしい。

設問4(2)

本文中の下線①を実現するために,図 5 中の海外支店 X の DMZ に追加すべき構成要素を解答群の中から全て選び,記号で答えよ。 解答群 ア DLP サーバ イ IA 用 TC サーバ ウ IPS エ OA 用 TC サーバ オ SSL プロキシサーバ カ TC サーバ キ ウイルスフィルタリングサーバ ク 認証プロキシサーバ

解答例

  • ア,ウ,オ,キ,ク
解説

本文の根拠

〔パフォーマンス検証〕

①他の支店と同等の技術的対策を行うこと

図5

DMZ にはメールゲートウェイ C と URL フィルタリングサーバ B があり

図3

DMZ には DLP サーバ,ウイルスフィルタリングサーバ,IPS,メールゲートウェイ A,URL フィルタリングサーバ,認証プロキシサーバ,IA 用 TC サーバ,SSL プロキシサーバがある。

他の支店がインターネットに出るときは,データセンタの DMZ にある DLP サーバ,ウイルスフィルタリングサーバ,IPS,URL フィルタリングサーバ,認証プロキシサーバ,SSL プロキシサーバ,メールゲートウェイを通る。図 5 の海外支店 X の DMZ にはメールゲートウェイ C と URL フィルタリングサーバ B しか無いので,足りない DLP サーバ(ア),IPS(ウ),SSL プロキシサーバ(オ),ウイルスフィルタリングサーバ(キ),認証プロキシサーバ(ク)を追加する。解答例は“ア,ウ,オ,キ,ク”である。

それぞれの役割は本文にある。ウイルスフィルタリングサーバは要件 2,認証プロキシサーバは要件 3,IPS と DLP サーバは要件 4(基盤構築段階・目的遂行段階の通信の制限)と設計案 2 の情報漏えい防止,SSL プロキシサーバは HTTPS 通信を復号してこれらの検査を効かせるために置かれている。

IA 用 TC サーバ,OA 用 TC サーバ,TC サーバは選ばない。海外支店 X は TC 端末に移行せず PC を使い続けると結論付けられており,TC サーバは技術的対策の装置ではない。“全て選べ”なので,SSL プロキシサーバのように他の装置を働かせるための構成要素を落とさない。

設問5 30字以内

設計案 4 において,監査とセキュリティ管理の役割を一つの組織にもたせた場合,どのような不都合が起こるか。30 字以内で述べよ。

解答例

  • セキュリティ管理の状況を客観的に監査できないという不具合
解説

本文の根拠

〔パフォーマンス検証〕

新しい OA システムは,国内,海外ともに情報システム部が構築,運用及びセキュリティ管理を行い,情報セキュリティ管理部がセキュリティ管理状況を定期的に監査すること

監査は,管理を行う者から独立した立場で状況を確かめるから意味がある。セキュリティ管理を行う組織が自分の管理状況を監査すると,自分の不備を自分で評価することになり,客観的な監査ができない。解答例は“セキュリティ管理の状況を客観的に監査できないという不具合”である。

本文の承認条件は,構築・運用・セキュリティ管理を情報システム部に,監査を情報セキュリティ管理部に分けている。海外支店 X が“システム運用とセキュリティ管理も含めて”現状のまま継続利用するという案に対し,役割を分けて客観性を確保させたのがこの条件である。

字数は 30 字以内で,解答例は 28 字である。“客観的に(独立して)監査できない”という核を残す。“不正が起きる”“管理が不十分になる”のように監査の客観性に触れない書き方では,設問の“監査とセキュリティ管理の役割を一つの組織に”という問いに答えたことにならない。

採点講評(IPA)

設問5は,監査の客観性についての問題である。正答率は低かった。客観性は監査における重要な要件であることを理解しておいてほしい。

出典:平成27年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 データの取扱い

データの取扱いに関する次の記述を読んで,設問 1〜6 に答えよ。

V 社は,CM,プロモーションビデオなどのコンテンツを受託制作する従業員数 500 名の会社である。従業員はコンテンツの素材撮影のために国内外に出張する機会が多い。V 社は,コンテンツの制作の一部を他の事業者に委託している。委託先事業者(以下,委託先という)には個人で事業を行うデザイナやクリエイタも多い。

コンテンツの受託制作では,必要なデータを顧客から受け取り,その全部又は一部を委託先と共有して作業を進める場合がある。受け取ったデータだけでなく,当該データから派生した中間データ,及び,撮影又は作成された素材も含めて,適切な保護が必要である。

V 社では,従業員には,業務に応じてデスクトップ PC(以下,DPC という)又はノート PC(以下,NPC という)を貸与している。従業員の識別と認証に必要な利用者情報は,ディレクトリサーバ(以下,D サーバという)で管理している。D サーバは IT 部が運用している。

〔オンラインストレージサービスの導入決定〕

V 社では,業務効率の向上のために,クラウドベースのオンラインストレージの導入を決定し,IT 部の M 部長を導入責任者に任命した。オンラインストレージの用途は,次のとおりである。

M 部長は,IT 部内のチームに複数のオンラインストレージサービスを比較検討させた結果,X 社の Q サービスを採用することにした。

〔Q サービスの概要〕

Q サービスの利用者は,インターネット経由で,Q サービスに任意のファイルを保管できる。Q サービスの概要を表 1 に,Q サービスの利用者用の専用アプリケーションソフトウェア(以下,同期アプリという)の概要を表 2 に,V 社における Q サービスの利用方法案を図 1 に,それぞれ示す。

列は項目,説明。アカウント管理:・利用者に,個別のアカウントを割り当てる。・利用企業は,利用者のアカウントを自社で登録して管理するための機能(以下,管理者機能という)を利用できる。アカウントをもたない者も,Q サービスの一部の機能は利用できる(項目“ファイル管理”参照)。管理者機能:・管理者は,アカウントの作成・停止・再開・廃止,パスワードの初期発行・再発行,ファイル及びフォルダへのアクセス履歴の閲覧,その他の管理のための機能を利用できる。利用者識別・認証:・利用者 ID とパスワードを用いて利用者を識別・認証する。・利用者は,インタフェースを利用して,パスワードを変更できる。ファイル管理:・各アカウントには,それぞれ専用のフォルダ(以下,ルートフォルダという)が与えられる。利用者が登録したファイルやフォルダは,ルートフォルダの下に配置される。・利用者は,インタフェースを利用して,次の機能を実行できる。− ファイルの登録・更新・削除・取得・プロパティの閲覧 − フォルダの作成・削除・閲覧・プロパティの閲覧 − バックアップからのファイルの復元・取得・削除(補足説明 1 参照)− 他の利用者へのファイル又はフォルダのアクセス権の付与・変更(補足説明 2 参照)− ファイルにアクセスするための共有リンクの作成・削除(補足説明 3 参照)【補足説明】1. ファイルが更新又は削除された場合,元のファイルはバックアップとして保管される。利用者は,バックアップとして保管されたファイルのうち,バックアップから削除が行われていないものを,復元・取得できる。2. 他の利用者に付与できる権限には“読み”と“読み書き”の 2 種類がある。“読み”は,ファイルの取得機能などの,ファイルやフォルダの変更を伴わない機能を利用する権限である。“読み書き”は,“読み”の権限に加え,ファイルの更新機能などの,変更を伴う機能を利用する権限である。3. アカウントをもたない者にファイルを配布するための URL を“共有リンク”という。Web ブラウザで当該 URL にアクセスすると利用者認証なしにファイルを取得できる。4. アカウントが廃止されると,そのアカウントで登録したファイルとフォルダが削除される。インタフェース:・同期アプリ,Web インタフェース,API の三つのインタフェースがある。− 同期アプリの機能については,表 2 に概要をまとめる。− Web インタフェースを用いる利用者は,Web ブラウザで Q サービスの Web サーバ(w.example.com)にアクセスし,Q サービスの各機能を利用する。− API を用いて,Q サービスと連携するアプリケーションソフトウェアを開発できる。暗号化:・同期アプリと Q サービス間の通信,及び Web ブラウザと Q サービスの Web インタフェース間の通信は,TLS で暗号化される。・Q サービスは複数のサーバで構成されており,ファイルは,他の利用企業又は個人利用者のファイルと同じサーバに保管される場合がある。登録されたファイルは,暗号化して保管される。暗号鍵は,サーバごとに生成し,Q サービス内で管理する。利用者が Q サービスのインタフェースを利用してファイルにアクセスすると,Q サービスは,ファイルを復号した後に引き渡す。注記 Q サービスでは,“利用者”とは,アカウントをもつ者だけを指す。
表 1 Q サービスの概要
列は項目,説明。ファイル管理:・表 1 の項目“ファイル管理”の機能を提供する。同期機能:・同期アプリは,利用者の PC のローカルディスク上に特別なフォルダ(以下,同期用フォルダという)を作成する。・同期用フォルダには,利用者のアカウントのルートフォルダと,当該利用者がアクセス権をもつ他の利用者のファイル及びフォルダの複製が作成され,これらは Q サービス上のそれぞれのフォルダ又はファイルと自動的に同期される。例えば,利用者が同期用フォルダ配下に複製されたファイルを更新した場合,更新内容は,Q サービスの該当ファイルにも適用される。また,更新されたファイルについて,他の利用者にアクセス権が付与されていた場合,他の利用者の PC の同期アプリが Q サービスの該当ファイルを同期用フォルダにコピーする。同期管理:・同期機能について設定を行う機能を提供する。自動的な同期を行わない場合は,その旨を設定できる。・同期の状況を表示する。その他:・同期アプリは,Q サービスの A サーバ(a.example.com)と通信し,各処理を行う。プロキシサーバを経由した通信もサポートしている。・同期アプリは,X 社がインターネットで配布しており,誰でもダウンロードできる。
表 2 同期アプリの概要
枠で囲んだ文章。・Q サービスの利用に関する社内の管理は IT 部が主管する。・IT 部は,業務上 Q サービスの利用が必要な V 社の従業員及び委託先の作業者に対してアカウントを作成する。
図 1 Q サービスの利用方法案(抜粋)

〔Q サービスの試験導入〕

M 部長は,Q サービスの導入に先だって,3 か月間の試験導入をすることにした。オンラインストレージの利用が想定される部門の中から,試験導入への参加者を偏りなく選ぶことにし,最終的に 30 名の参加者を決定した。この中には,委託先の 5 名のクリエイタが含まれていた。試験導入では,次の項目を確認することにした。

以降,Q サービスについては,V 社が利用する部分だけに限定して述べる。

〔Q サービスの試験導入において表出した問題〕

試験導入の結果,機能及び管理については大きな問題は発見されなかった。しかし,セキュリティについては,同期アプリが,マルウェア感染を拡散させるという問題が認識された。

実際に発生した事件は次のとおりである。委託先のクリエイタが PC で編集していたファイルがマルウェアに感染した。そのことに気付かずにクリエイタが Web インタフェースを使って当該ファイルを Q サービスに登録した結果,同ファイルにアクセス権をもつ複数の利用者の PC の同期アプリが,感染ファイルを Q サービスから同期用フォルダにコピーした。本件では,それぞれの PC にインストールされていたウイルス対策ソフトが感染ファイルを検知したので,大事には至らなかった。しかし,V 社では,事態を重く受け止め,対応について検討することになった。

〔Q サービス利用方法の見直し〕

M 部長は,PC のウイルス対策ソフトだけではなく,複数の対策が必要だと考え,IT 部の U さんに,情報セキュリティ室の R 主任の支援を受けて,マルウェア感染ファイルの拡散について対応を検討するように指示した。

U さんは,検討を進め,専用のサーバ(以下,同期用 FS という)及び専用のディスク(以下,同期ディスクという)を介して,社内ネットワークに接続された PC と Q サービス間でのファイルの交換を行う仕組みを提案した。そのネットワーク構成を図 2 に,ファイル交換の仕組みの概要を図 3 に,同期用 FS の機能の説明を図 4 に示す。

V 社の中に DMZ,サーバセグメント,オフィス LAN があり,それぞれ FW につながる。FW はインターネットにつながる。DMZ にはプロキシサーバがある。サーバセグメントには D サーバと新設部分(同期用 FS と同期ディスク,網掛け)がある。オフィス LAN には DPC と NPC がある。インターネットには Q サービス,委託先(複数),社外の NPC(複数)がつながる。凡例 FW:ファイアウォール。
図 2 ネットワーク構成
枠で囲んだ文章。・同期用 FS は,Q サービスに登録された利用者のアカウントのルートフォルダ及びその配下のフォルダ(以下,Q サービス利用者フォルダという)を監視し,新たに登録された又は更新されたファイルがある場合は,それを取得してマルウェアスキャンを行った後,同期ディスクに保管する。・①同期アプリの利用を禁止する。(“同期アプリの利用を禁止する”に下線①が付いている)・同期用 FS へのアクセスは,FW によって,オフィス LAN からだけに限定する。
図 3 ファイル交換の仕組みの概要
枠で囲んだ文章。1. ファイルの同期 ・ルートフォルダの複製を同期用 FS 内の同期ディスクに保持し,ファイルを同期する。同期は次のように行う。A) Q サービス利用者フォルダにおいて,ファイルの登録又は更新があった場合は,当該ファイルを取得してマルウェアスキャンを行う。その結果,問題がなければ同期ディスクに反映する。マルウェアが検知されたら,Q サービス利用者フォルダにある当該ファイルを削除し,もし対応するファイルが同期ディスクに存在する場合はそれも削除する。登録・更新以外の変更があった場合は,同等の変更を同期ディスクに反映する。B) 同期ディスクのファイルに変更があった場合は,Q サービス利用者フォルダにある対応するファイルに反映する。2. フォルダの同期 ・Q サービス利用者フォルダに変更があった場合は,同期ディスクの対応するフォルダに反映する。・同期ディスクのフォルダに変更があった場合は,対応する Q サービス利用者フォルダに反映する。3. アカウントとアクセス制御 ・D サーバに登録された従業員の利用者情報と Q サービスのアカウントの対応表をもつ。・同期ディスクにアクセスがあった場合,D サーバと連携して従業員を識別した後,前記の対応表を基に利用者のアカウントを判別する。この結果に基づいて,次の処理を許可する。A) 判別されたアカウントの Q サービス利用者フォルダ又はそこにあるファイルに対応する同期ディスクのフォルダ又はファイル:全ての処理 B) 他の利用者のファイル又はフォルダに対応する同期ディスクのファイル又はフォルダ:判別されたアカウントに付与された権限内の処理 4. 補足事項 ・Q サービスに保管されたバックアップのファイルについて,同期用 FS は一切処理を行わない。
図 4 同期用 FS の機能の説明(抜粋)

U さんがこれらの検討結果を M 部長に報告したところ,②試験導入において表出した問題を踏まえると,同期用 FS には,マルウェア対策に関して追加すべき機能があると指摘された。U さんは追加機能を提案し,M 部長は,U さんの提案どおり対応を進めることを承認した。その後,Q サービスと同期用 FS の利用が,全社で開始された。

〔顧客からの要求〕

V 社で Q サービスの利用を開始してから 1 年が経過した頃,重要な顧客である J 社から,情報セキュリティに関して新しい要求の通知があった。J 社の別の委託先において,J 社が開示した新製品に関する CAD データが漏えいするという事件が発生し,対策の一環として,J 社が重要なデータを開示する全ての委託先に対して,新たな要求を課す方針になったとのことであった。J 社からの要求を図 5 に示す。

枠で囲んだ文章。J 社が開示する全ての重要な情報(以下,J 社重要データという)について,次の措置を行うこと ・業務上,必要最小限の者しか J 社重要データにアクセスできないように管理する。・J 社重要データをインターネット上に送信する場合には,暗号化する。・J 社重要データを社外に保管する場合には,暗号化する。・J 社重要データを可搬型機器又は可搬型デバイスに保管する場合には,暗号化する。・業務上不要となった J 社重要データは,直ちに,J 社に返却するか,削除する。・何らかの事故が発生した場合に備え,非常時の連絡体制・手順を確立する。・J 社重要データについて,法令による保護が受けられるように,十分に配慮して管理する。・J 社から受託した業務の一部を再委託する場合は,当該委託先に対して本要求と同等の措置を求め,かつ,その実施について監督する。
図 5 J 社からの要求(概要)

次は,J 社からの要求に関する,M 部長と U さんとの会話である。

〔顧客データの取扱要件〕

U さんは,受託業務で顧客から開示を受けた重要なデータ(以下,顧客データという)の取扱状況を調査し,M 部長に報告した。M 部長は,調査結果を見て,顧客データの取扱いについて改善が必要だと判断した。M 部長は,U さんに,J 社の要求を満たすような顧客データの取扱要件及びその実装方法,並びにその他の必要な措置について検討して提案するように指示した。

U さんは,業務上の必要性のある従業員だけがアクセスできる場所への顧客データの保管,及び顧客データを NPC 又はオンラインストレージに保管する場合の暗号化について検討した。

〔NPC のディスクの暗号化〕

U さんは,顧客データの暗号化のため,NPC のディスクの暗号化,及びオンラインストレージに登録するデータの自動暗号化の導入を検討した。

U さんが検討した,NPC のディスクの暗号化方式を表 3 に示す。

列は名称,説明。フルディスク暗号化方式:ディスク内の全ての領域を暗号化する方式。PC の全ディスクにこの方式を用いた場合,パスワードがないと[ g ]を起動できない。起動後,データの保護は,PC の[ g ]が提供する機能に委ねられる。本方式に対応する製品の多くは,PC が休止モードになる際にメモリの内容を書き出すハイバネーション用ファイルの[ h ]に対応している。仮想ディスク暗号化方式:コンテナと呼ぶ仮想的な入れ物を用いて暗号化する方式。コンテナは仮想ディスクとして機能する。コンテナ内にアクセスする場合,利用者の認証が行われる。認証に成功すると,一定の間,通常のディスクと同様に,コンテナにファイルやフォルダを保管したり取り出したりすることができる。データは暗号化された上でコンテナ内に保管される。コンテナは,PC のデータディスク,USB メモリなどに置かれる。スワップ領域やハイバネーション用ファイルには[ h ]されていない状態のデータが存在する可能性があるが,これらは保護されない。ファイル・フォルダ暗号化方式:ファイル単位・フォルダ単位で暗号化する方式。暗号化されたデータは,一つのファイルになる。当該ファイルへのアクセス権があれば,鍵情報を知らなくても,格納されたファイルやフォルダの名称及び他の属性情報を取得できる場合がある。
表 3 NPC のディスクの暗号化方式

U さんは,検討した結果,フルディスク暗号化方式を採用することを提案した。

次は,暗号化製品に関する,U さんと R 主任との会話である。

利用モードによって,ランダムアクセス時の性能が大きく異なる場合もある。例えば,512 バイトの平文 P を,ブロック長が 128 ビットのブロック暗号アルゴリズムで暗号化した暗号文 C があり,この暗号アルゴリズムでは平文と暗号文の長さは同じとする。平文 P において 1,025 ビット目から始まる 1 ブロック分のデータを修正した場合,平文 P の修正に対応して暗号文 C を修正するためには,暗号化処理を,ECB モードではi回,CBC モードではj回実行しなければならない。

また,別の暗号文 C’で,513 ビット目から始まる 1 ブロック分のデータを復号するためには,暗号化処理又はその逆処理を,ECB モードではk回,CBC モードではl回,OFB モードではm回実行する必要がある。

複数ブロックの並列処理は,nの場合,暗号化時は不可能だが,復号時は可能だ。oの場合は,鍵ストリームに相当するデータを事前に計算することができる。

ただし,一部の利用モードは,特定の攻撃に弱いので注意が必要だ。

三つの利用モードの図。ECB モード:平文のブロック 1,ブロック 2,… をそれぞれ鍵を用いて暗号化処理し,暗号文のブロック 1,ブロック 2,… を得る。各ブロックは独立に処理される。CBC モード:平文のブロック 1 と初期化ベクトルを XOR し,その結果を鍵で暗号化処理して暗号文のブロック 1 を得る。暗号文のブロック 1 を平文のブロック 2 と XOR し,鍵で暗号化処理して暗号文のブロック 2 を得る。以下同様に,直前の暗号文ブロックが次のブロックの XOR に使われる。OFB モード:初期化ベクトルを鍵で暗号化処理し,その出力を平文のブロック 1 と XOR して暗号文のブロック 1 を得る。暗号化処理の出力は次の暗号化処理の入力にもなり,その出力を平文のブロック 2 と XOR して暗号文のブロック 2 を得る。以下同様。
図 6 代表的な暗号の利用モード

〔同期用 FS の機能拡張〕

表 1 に示したように,Q サービスは,元々,登録されたファイルを自動的に暗号化する機能をもつ。しかし,Q サービスの暗号化機能は,④Q サービスに対するクラッキングや X 社自身のある種の行為に対して効果が期待できない場合があり,これを補完する措置が必要と考えられた。一方,V 社内では,Q サービスの有益性が高く評価されており,継続利用したい。そこで,U さんは,同期用 FS の機能を拡張し,Q サービスに登録する一部のファイルを自動的に暗号化する措置を提案した。同期用 FS の拡張機能を図 7 に,ファイルの暗号化と復号のフローを図 8 に,それぞれ示す。

枠で囲んだ文章。1. 機密フォルダと暗号化フォルダの定義・導入 ・利用者が同期ディスク中のフォルダに“_[c1]”で始まる名称を付けると,そのフォルダは機密フォルダになる。機密フォルダの同期先となる Q サービス上のフォルダを暗号化フォルダという。2. 機密フォルダにアクセスしたときの処理 ・利用者が機密フォルダにファイルを登録した場合又は機密フォルダ内のファイルを更新した場合,同期用 FS は,ファイルを暗号化した上で,Q サービス上の暗号化フォルダに登録するか,暗号化フォルダ内のファイルを更新する。3. Web インタフェースを用いて暗号化フォルダにアクセスしたときの処理 ・利用者は,暗号化フォルダにファイルを登録する場合又は暗号化フォルダ内のファイルを更新する場合,事前に,指定された鍵と暗号化ソフトを用いてファイルを暗号化する(“4. 暗号化のアルゴリズムと鍵”参照)。同期用 FS は,暗号化されたファイルを取得してマルウェアスキャンを行い,マルウェアが検知されなければ,復号した上で,同期ディスク中の対応する機密フォルダに配置する。暗号化フォルダに平文のファイルが登録された場合又は平文のファイルで既存のファイルが更新された場合,同期用 FS は当該ファイルを暗号化して更新した後,利用者に警告メールを送信する。また,暗号化された当該ファイルは,初めから正しく暗号化されたファイルで更新された場合と同様の手続で,同期ディスクに同期される。・利用者は,暗号化フォルダからファイルを取得した場合,指定された鍵と暗号化ソフトを用いて復号した上で利用する。4. 暗号化のアルゴリズムと鍵 ・暗号化のアルゴリズムは鍵長 128 ビットの AES,暗号の利用モードは CBC モードとする。・同期用 FS は,機密フォルダ又は暗号化フォルダが作成された際に,作成されたフォルダごとに数字 16 文字のパスワードをランダムに生成し,さらにそれを基に鍵を生成する。⑤生成された鍵は,当該フォルダ内に登録されるファイルの暗号化と復号だけに利用される。(“生成された鍵は,当該フォルダ内に登録されるファイルの暗号化と復号だけに利用される”に下線⑤が付いている)ただし,名称が“_[c1]”で始まるサブフォルダがある場合は,そのフォルダを別の機密フォルダ又は暗号化フォルダとみなし,新しいパスワード及び鍵を割り当てる。・同期用 FS は,生成したパスワードを,当該フォルダの利用者に電子メールで通知する。・暗号化ソフトは,暗号化と復号の機能をもつ PC 用ソフトウェアであり,利用者に配布される。
図 7 同期用 FS の拡張機能(抜粋)
左に同期ディスク(機密フォルダ“_[c1]sample”),中央に同期用 FS による処理,右に Q サービス(暗号化フォルダ“_[c1]sample”),その右に暗号化ソフトがある。上段の流れ:ファイルを機密フォルダに登録すると,機密フォルダの平文が同期用 FS で暗号化され,Q サービスの暗号化フォルダに暗号文として置かれる。利用者は,暗号化フォルダから暗号化されたファイルを取得後,暗号化ソフトで復号してから利用(暗号文 → 復号 → 平文)。下段の流れ:利用者は,暗号化ソフトでファイルを暗号化した後,暗号化フォルダに登録(平文 → 暗号化 → 暗号文)。暗号化フォルダの暗号文は,同期用 FS でマルウェアスキャン・復号され,機密フォルダに平文として置かれる。機密フォルダからファイルを取得して利用。
図 8 同期用 FS によるファイルの暗号化と復号のフロー(概要)

U さんは,図 7 の方法では,⑥暗号化対象ファイルに関係する情報の一部は秘匿されないが,セキュリティ上容認できると考えた。

U さんが図 7 のパスワードについて R 主任に相談したところ,R 主任は問題を指摘した。R 主任は,図 9 を示し,数字 16 文字のパスワードの場合の数は,英数字p文字のパスワードの場合の数より小さいことを説明した。また,この場合の数は,最近のコンピュータの能力向上を考慮すると,いつまでも安全とはいえないと指摘した。U さんは,R 主任の指摘を受けて,パスワードの構成を見直した。

枠で囲んだ文章と式。英数字 x 文字のパスワードについて,その場合の数が,数字 16 文字のパスワードの場合の数より大きくなる最小の x を考える。ただし,大文字と小文字は区別する。次の式から,求めるパスワードの文字数 x は[ p ]となる。[ q ]のx乗 > 10の16乗,x > 16 log10 10 ÷(log10[ r ]+log10[ s ])=[ t ]。参考 log10 2≒0.301,log10 3≒0.477,log10 13≒1.114,log10 31≒1.491
図 9 パスワードの検討

〔レビューと修正〕

U さんは,IT 部と情報セキュリティ室のメンバ(以下,WG という)に,顧客データの取扱要件とその実装方法の案についてのレビューを依頼した。レビューの結果,オンラインストレージについて,次の点が指摘された。

U さんは,これらの指摘について検討し,修正案を作成した。修正案について,再度 WG でレビューした結果,指摘は解決されていることが確認された。

〔M 部長の最終確認〕

U さんは,修正案及びその他の必要な措置について,M 部長に報告した。

M 部長は U さんの提案を承認し,提案どおり見直しが行われることになった。

出題趣旨(IPA)

近年,企業からの重要データの漏えい事件が世間を騒がせる機会は,ますます増加する傾向にある。本問では,データの管理に焦点を当て,活用が広がるクラウドストレージと暗号技術,その他の技術的手法,運用上の手法などを組み合わせて,適切なセキュリティ環境を構築するための知識と能力を問う。

採点講評(問全体・IPA)

問2では,活用が広がるクラウドベースのオンラインストレージを題材に,データの適切な管理及び保護に焦点を当てて出題した。全体として,正答率は低かった。

設問と解答例

設問1(1) 40字以内

図 3 中の下線①について,この措置は,マルウェア感染ファイルの拡散がどのように起こることを想定したものか。40 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • マルウェア感染ファイルが複数の利用者の同期用フォルダ間で自動同期される。
解説

本文の根拠

表2 同期機能

また,更新されたファイルについて,他の利用者にアクセス権が付与されていた場合,他の利用者の PC の同期アプリが Q サービスの該当ファイルを同期用フォルダにコピーする。

〔Q サービスの試験導入において表出した問題〕

同ファイルにアクセス権をもつ複数の利用者の PC の同期アプリが,感染ファイルを Q サービスから同期用フォルダにコピーした。

図3

①同期アプリの利用を禁止する。

同期アプリは,Q サービス上のファイルと利用者の PC の同期用フォルダを自動的に同期し,アクセス権をもつ他の利用者の PC にも更新されたファイルをコピーする。マルウェアに感染したファイルが一つ登録されると,人手を介さずに複数の利用者の PC へ次々に広がる。下線①はこの拡散経路を断つ措置である。解答例は“マルウェア感染ファイルが複数の利用者の同期用フォルダ間で自動同期される。”である。

試験導入で実際に起きた事件がまさにこの形で,委託先のクリエイタが登録した感染ファイルを,アクセス権をもつ複数の利用者の PC の同期アプリが同期用フォルダにコピーした。同期用 FS を介す仕組みでは,Q サービスからのファイルはマルウェアスキャンを経てから同期ディスクに置かれる。

字数は 40 字以内で,解答例は 36 字である。“複数の利用者(の PC)”に“自動で”広がる,という二点を残す。“同期アプリ経由で感染する”だけでは,どのように拡散するかが具体的に述べられていない。

設問1(2) 30字以内

本文中の下線②について,同期用 FS にどのような機能を追加すればよいか。追加機能の内容を,30 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • マルウェア感染ファイルの発見時に利用者に警告を発する機能
解説

本文の根拠

〔Q サービスの試験導入において表出した問題〕

委託先のクリエイタが PC で編集していたファイルがマルウェアに感染した。そのことに気付かずにクリエイタが Web インタフェースを使って当該ファイルを Q サービスに登録した結果

図4 1.A)

マルウェアが検知されたら,Q サービス利用者フォルダにある当該ファイルを削除し,もし対応するファイルが同期ディスクに存在する場合はそれも削除する。

図 4 の同期用 FS は,マルウェアを検知するとファイルを削除するだけで,誰にも知らせない。試験導入の事件では,感染源のクリエイタは自分の PC の感染に“気付かずに”ファイルを登録していた。削除だけでは感染源の利用者は感染に気付かず,感染した PC を使い続けて感染ファイルを登録し続けるおそれがある。そこで,マルウェア感染ファイルを見つけたときに利用者に警告する機能を追加する。解答例は“マルウェア感染ファイルの発見時に利用者に警告を発する機能”である。

本文の他の箇所でも,検知時の通知は対策の一部として扱われている。同期用 FS の拡張機能(図 7)も,暗号化フォルダに平文のファイルが登録されると利用者に警告メールを送る。感染ファイルについても,登録した利用者に知らせて PC の調査や駆除につなげる必要がある。

字数は 30 字以内で,解答例は 28 字である。“いつ(感染ファイルの発見時)”と“何をするか(利用者に警告)”を残す。“マルウェアスキャン機能”は図 4 にすでにあるので追加機能にならない。講評が求める“置かれた状況を深く理解”とは,感染源が気付いていなかったという事件の経緯に目を向けることである。

採点講評(IPA)

設問1は,マルウェア感染の経路とその対策についての問題である。設問1(2)は,正答率が低かった。マルウェア対策としてどのような措置が必要か,置かれた状況を深く理解し判断する能力を身に付けてほしい。

設問2(1) 解答欄4つ

本文中の a,d〜f に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。 解答群 ア 刑法 イ 個人情報保護法 ウ サイバーセキュリティ基本法 エ 情報公開法 オ 著作権法 カ 犯罪収益移転防止法 キ 不正アクセス禁止法 ク 不正競争防止法 ケ マイナンバー法 コ 民法

〔a〕解答例

  • ク

〔d〕解答例

  • ア

〔e〕解答例

  • オ

〔f〕解答例

  • キ
解説

本文の根拠

〔顧客からの要求〕M部長

aで規定されているbに該当するためには,当該データが,秘密として管理されていること,有用な情報であること,及びcこと,の三つの要件を満たす必要がある。

〔顧客からの要求〕M部長

dの 235 条で規定されている窃盗罪は,他人の財物を窃取した場合に適用される。

〔顧客からの要求〕M部長

思想又は感情を創作的に表現したと考えられるデータであれば,eの保護の対象となる。また,サーバなどの電子計算機に接続して行う不正行為に焦点を当てたfがある。

秘密管理性・有用性・非公知性の三要件で保護されるのは,不正競争防止法の営業秘密である(a はク)。窃盗罪を 235 条で定めるのは刑法(d はア),思想又は感情を創作的に表現したものを保護するのは著作権法(e はオ),電気通信回線を通じた電子計算機への不正行為を対象とするのは不正アクセス禁止法(f はキ)である。解答例は a“ク”,d“ア”,e“オ”,f“キ”である。

条文で確かめると,不正競争防止法 2 条 6 項は営業秘密を“秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの”と定義している。刑法 235 条は“他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし”と定め,著作権法 2 条 1 項 1 号は著作物を“思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの”としている。不正アクセス禁止法は 1 条で“電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止”を目的に掲げており,本文の“ネットワークを通じて行われる攻撃を対象としている”に対応する。

講評によれば d・e・f の正答率は高かった。a は個人情報保護法と迷いやすいが,三要件(秘密管理性・有用性・非公知性)は営業秘密の要件である。顧客の技術データは個人情報とは限らないことにも注意する。

採点講評(IPA)

設問2は,データの保護に関係する法令についての問題である。設問2(1)の(d),(e)及び(f)は,正答率が高かった。設問2(2)は,正答率が低かった。技術だけでなく,法令も考慮した上で,効果的なデータ保護を実現できるようになってほしい。

設問2(2) 解答欄2つ

本文中の b,c に入れる適切な字句を,b は 5 字以内で,c は 15 字以内でそれぞれ答えよ。

〔b〕解答例

  • 営業秘密

〔c〕解答例

  • 公然と知られていない
解説

本文の根拠

〔顧客からの要求〕M部長

当該データが,秘密として管理されていること,有用な情報であること,及びcこと,の三つの要件を満たす必要がある。秘密として管理されているというためには,その情報が,客観的に見て秘密として管理されている状態になっていなければならない。

図5

J 社重要データについて,法令による保護が受けられるように,十分に配慮して管理する。

不正競争防止法で保護される情報は“営業秘密”であり,その要件は秘密管理性・有用性・非公知性の三つである。本文には前の二つが書かれているので,c は残る非公知性,すなわち“公然と知られていない”である。解答例は b“営業秘密”,c“公然と知られていない”である。

不正競争防止法 2 条 6 項は営業秘密を“秘密として管理されている…事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの”と定義しており,三要件はこの定義から来ている。図 5 の“法令による保護が受けられるように,十分に配慮して管理する”は,顧客データを客観的に見て秘密として管理し,営業秘密の要件を満たす状態にしておくことを求めたものと読める。

字数は b が 5 字以内(解答例 4 字),c が 15 字以内(解答例 10 字)である。b を“機密情報”“秘密情報”と書くと法律上の用語にならない。c は“非公知である”でも意味は通るが,本文の“…ていること,…であること,及びcこと”につながる形にする。

採点講評(IPA)

設問2は,データの保護に関係する法令についての問題である。設問2(1)の(d),(e)及び(f)は,正答率が高かった。設問2(2)は,正答率が低かった。技術だけでなく,法令も考慮した上で,効果的なデータ保護を実現できるようになってほしい。

設問3(1) 解答欄2つ

表 3 中の g,h に入れる適切な字句をそれぞれ 5 字以内で答えよ。

〔g〕解答例

  • OS

〔h〕解答例

  • 暗号化
解説

本文の根拠

表3 フルディスク暗号化方式

PC の全ディスクにこの方式を用いた場合,パスワードがないとgを起動できない。起動後,データの保護は,PC のgが提供する機能に委ねられる。

表3 フルディスク暗号化方式

本方式に対応する製品の多くは,PC が休止モードになる際にメモリの内容を書き出すハイバネーション用ファイルのhに対応している。

表3 仮想ディスク暗号化方式

スワップ領域やハイバネーション用ファイルにはhされていない状態のデータが存在する可能性があるが,これらは保護されない。

フルディスク暗号化はディスク全体を暗号化するので,起動用の領域も含めて,パスワードで復号しない限り OS を起動できない。起動した後は OS のアクセス制御などに保護を委ねることになる。ハイバネーション用ファイルにはメモリの内容がそのまま書き出されるので,暗号化しておく必要がある。解答例は g“OS”,h“暗号化”である。

表 3 の仮想ディスク暗号化方式の説明に“スワップ領域やハイバネーション用ファイルにはhされていない状態のデータが存在する可能性がある”とあり,h が暗号化であることはここから確かめられる。フルディスク暗号化方式はディスク全体を対象とするので,ハイバネーション用ファイルも暗号化の範囲に入る,という対比になっている。

字数はそれぞれ 5 字以内である。g に“パソコン”“BIOS”などを入れると,“起動後,データの保護は,PC のgが提供する機能に委ねられる”と合わない。h は“保護”では仮想ディスクの説明の“hされていない状態のデータ”とつながらない。

採点講評(IPA)

設問3は,データの保護に利用される暗号技術についての問題である。設問3(1),(3)の(i)と(k),及び(4)の正答率は高く,ほかは低めであった。暗号は,“AESだから安全”,“鍵が長いから安全”と簡単に決まるものではなく,同時に利用される様々な技術に依存して,特性に大きな違いが生まれる。セキュリティ技術者として,暗号技術を適切に利用するために,十分な知見を身に付けてほしい。

設問3(2) 45字以内

本文中の下線③について,セキュリティ上の問題を,45 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 平文が同じブロックは同じ暗号文になるので,暗号文から平文を推測されやすい。
解説

本文の根拠

図6 ECBモード

ECB モード:平文のブロック 1,ブロック 2,… をそれぞれ鍵を用いて暗号化処理し,暗号文のブロック 1,ブロック 2,… を得る。各ブロックは独立に処理される。

〔NPC のディスクの暗号化〕R主任

例えば,③ディスクやファイルの暗号化に ECB モードをそのまま用いるのは,セキュリティ上の問題がある。

ECB モードは各ブロックを同じ鍵で独立に暗号化するので,同じ内容の平文ブロックは必ず同じ暗号文ブロックになる。ディスクやファイルには同じ内容のブロックが繰り返し現れることが多く,暗号文の繰り返しのパターンから平文の内容や構造を推測される。解答例は“平文が同じブロックは同じ暗号文になるので,暗号文から平文を推測されやすい。”である。

NIST SP 800-38A の 6.1 節も,ECB モードでは同じ鍵の下で同じ平文ブロックが常に同じ暗号文ブロックに暗号化されると述べている。図 6 では,CBC モードは直前の暗号文ブロックを,OFB モードは前の暗号化処理の出力を次のブロックに使うので,同じ平文ブロックでも位置によって暗号文が変わる。

字数は 45 字以内で,解答例は 37 字である。“同じ平文ブロック→同じ暗号文ブロック”という性質と,“平文を推測される”という問題の両方を残す。“鍵が短い”“解読されやすい”のように理由のない書き方では,ECB モード特有の問題を述べたことにならない。

採点講評(IPA)

設問3は,データの保護に利用される暗号技術についての問題である。設問3(1),(3)の(i)と(k),及び(4)の正答率は高く,ほかは低めであった。暗号は,“AESだから安全”,“鍵が長いから安全”と簡単に決まるものではなく,同時に利用される様々な技術に依存して,特性に大きな違いが生まれる。セキュリティ技術者として,暗号技術を適切に利用するために,十分な知見を身に付けてほしい。

設問3(3) 解答欄5つ

本文中の i〜m に入れる適切な数値を答えよ。

〔i〕解答例

  • 1

〔j〕解答例

  • 24

〔k〕解答例

  • 1

〔l〕解答例

  • 1

〔m〕解答例

  • 5
解説

本文の根拠

〔NPC のディスクの暗号化〕

例えば,512 バイトの平文 P を,ブロック長が 128 ビットのブロック暗号アルゴリズムで暗号化した暗号文 C があり,この暗号アルゴリズムでは平文と暗号文の長さは同じとする。

〔NPC のディスクの暗号化〕

また,別の暗号文 C’で,513 ビット目から始まる 1 ブロック分のデータを復号するためには,暗号化処理又はその逆処理を

図6 CBCモード

以下同様に,直前の暗号文ブロックが次のブロックの XOR に使われる。

図6 OFBモード

暗号化処理の出力は次の暗号化処理の入力にもなり,その出力を平文のブロック 2 と XOR して暗号文のブロック 2 を得る。

512 バイト=4,096 ビットを 128 ビットで割ると 32 ブロックになる。1,025 ビット目は(1,025−1)÷128=8 より 9 番目のブロックの先頭である。ECB モードはブロックが独立なので,第 9 ブロックを 1 回暗号化し直せばよい(i=1)。CBC モードは第 9 ブロックの暗号文が変わるとそれを使う第 10 ブロック以降も全て変わるので,第 9〜32 ブロックの 24 回が要る(j=24)。513 ビット目は(513−1)÷128=4 より第 5 ブロックである。ECB モードは第 5 ブロックを 1 回逆処理すればよい(k=1)。CBC モードは第 5 ブロックの暗号文を逆処理し,第 4 ブロックの暗号文と XOR すればよいので 1 回(l=1)。OFB モードは初期化ベクトルから暗号化処理を 5 回繰り返して第 5 ブロック用の出力を作る必要がある(m=5)。解答例は i“1”,j“24”,k“1”,l“1”,m“5”である。

図 6 の CBC モードでは“直前の暗号文ブロックが次のブロックの XOR に使われる”ので,暗号化は後ろへ連鎖するが,復号は暗号文が全てそろっていれば各ブロック 1 回で済む。OFB モードでは暗号化処理の出力が次の暗号化処理の入力になるので,第 n ブロックには n 回の暗号化処理が必要になる。

間違えやすいのは,ブロック番号の数え方(1 ビット目が第 1 ブロックの先頭)と,CBC モードの復号を暗号化と同じく連鎖すると考えることである。講評によれば i と k の正答率は高く,j・l・m は低めであった。

採点講評(IPA)

設問3は,データの保護に利用される暗号技術についての問題である。設問3(1),(3)の(i)と(k),及び(4)の正答率は高く,ほかは低めであった。暗号は,“AESだから安全”,“鍵が長いから安全”と簡単に決まるものではなく,同時に利用される様々な技術に依存して,特性に大きな違いが生まれる。セキュリティ技術者として,暗号技術を適切に利用するために,十分な知見を身に付けてほしい。

設問3(4) 解答欄2つ

本文中の n,o に入れる適切な暗号の利用モードを,図 6 中の三つの利用モードの中から選んで答えよ。

〔n〕解答例

  • CBCモード

〔o〕解答例

  • OFBモード
解説

本文の根拠

〔NPC のディスクの暗号化〕

複数ブロックの並列処理は,nの場合,暗号化時は不可能だが,復号時は可能だ。oの場合は,鍵ストリームに相当するデータを事前に計算することができる。

図6 OFBモード

OFB モード:初期化ベクトルを鍵で暗号化処理し,その出力を平文のブロック 1 と XOR して暗号文のブロック 1 を得る。

CBC モードの暗号化では,各ブロックの入力に直前の暗号文ブロックが要るので順に処理するしかないが,復号では暗号文ブロックが全てそろっているので各ブロックの逆処理を並列に行える(n は CBC モード)。OFB モードは初期化ベクトルの暗号化を繰り返した出力(鍵ストリーム)を平文と XOR するだけで,その出力は平文や暗号文に依存しないので事前に計算できる(o は OFB モード)。解答例は n“CBCモード”,o“OFBモード”である。

NIST SP 800-38A の 6.2 節は,CBC の暗号化は前の結果に依存するので並列に実行できず,復号は入力となる暗号文ブロックがすぐ得られるので並列に実行できると述べている。6.4 節は,OFB では初期化ベクトルが分かれば,平文や暗号文が得られる前に出力ブロックを生成できると述べている。

ECB モードは暗号化も復号も並列にできるので n には当たらない。OFB モードは並列処理はできない(前の出力に依存する)が事前計算はできる,という違いを押さえる。

採点講評(IPA)

設問3は,データの保護に利用される暗号技術についての問題である。設問3(1),(3)の(i)と(k),及び(4)の正答率は高く,ほかは低めであった。暗号は,“AESだから安全”,“鍵が長いから安全”と簡単に決まるものではなく,同時に利用される様々な技術に依存して,特性に大きな違いが生まれる。セキュリティ技術者として,暗号技術を適切に利用するために,十分な知見を身に付けてほしい。

設問4(1) 30字以内

本文中の下線④について,Q サービスの暗号化機能の効果が期待できないのは,Q サービスのどのような仕様によるものか。30 字以内で述べよ。

解答例

  • 鍵は,サーバごとに生成し,Qサービス内で管理される。
解説

本文の根拠

表1 暗号化

登録されたファイルは,暗号化して保管される。暗号鍵は,サーバごとに生成し,Q サービス内で管理する。利用者が Q サービスのインタフェースを利用してファイルにアクセスすると,Q サービスは,ファイルを復号した後に引き渡す。

〔同期用 FS の機能拡張〕

④Q サービスに対するクラッキングや X 社自身のある種の行為に対して効果が期待できない場合

Q サービスの暗号鍵はサーバごとに生成され,Q サービスの中で管理される。暗号化されたファイルと鍵が同じ Q サービスの中にあるので,Q サービスに侵入した攻撃者や,鍵を管理する X 社の内部者は,鍵を使ってファイルを復号できてしまう。解答例は“鍵は,サーバごとに生成し,Qサービス内で管理される。”である。

表 1 にはさらに,ファイルは他の利用企業や個人利用者のファイルと同じサーバに保管される場合があり,インタフェースからアクセスすると Q サービスが復号して引き渡すとある。V 社の手の届かないところで鍵が管理され,復号も Q サービスが行うことが,下線④の“効果が期待できない場合”の原因である。そのため同期用 FS で V 社自身が鍵を管理して暗号化する措置を提案している。

字数は 30 字以内で,解答例は 26 字である。“鍵が Q サービス(X 社)の中で管理される”という点を必ず書く。“サーバごとに生成”だけ,又は“暗号化される”だけでは,なぜ効果がないのかの理由にならない。

設問4(2) 35字以内

図 7 中の下線⑤について,別の方法として,一つの鍵を全ての機密フォルダで共有して利用する方法がある。これらの二つの方法を比較した場合に,下線⑤の方法が優れている点は何か。35 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 鍵が危殆化しても,当該鍵が利用されるフォルダ以外には影響がない。
解説

本文の根拠

図7 4.

⑤生成された鍵は,当該フォルダ内に登録されるファイルの暗号化と復号だけに利用される。

図7 4.

同期用 FS は,機密フォルダ又は暗号化フォルダが作成された際に,作成されたフォルダごとに数字 16 文字のパスワードをランダムに生成し,さらにそれを基に鍵を生成する。

図7 4.

同期用 FS は,生成したパスワードを,当該フォルダの利用者に電子メールで通知する。

下線⑤の方法はフォルダごとに別の鍵を使う。一つの鍵を全ての機密フォルダで共有すると,その鍵が漏れたり解読されたりしたとき全ての機密フォルダのファイルが読まれてしまう。フォルダごとの鍵なら,ある鍵が危殆化しても被害はそのフォルダに限られる。解答例は“鍵が危殆化しても,当該鍵が利用されるフォルダ以外には影響がない。”である。

図 7 では,パスワードはフォルダの利用者に電子メールで通知され,利用者が暗号化ソフトで使う。利用者に配る以上,鍵が漏れる可能性はゼロにできないので,漏れたときの被害範囲を小さくすることに意味がある。

字数は 35 字以内で,解答例は 32 字である。“鍵が漏えい(危殆化)した場合”という前提と,“影響がそのフォルダに限定される”という効果の両方を残す。“安全性が高い”だけでは具体的に述べたことにならない。

設問4(3) 解答欄2つ

本文中の下線⑥について,暗号化対象ファイルに関係するどのような情報が秘匿されないか。二つ挙げ,それぞれ 15 字以内で答えよ。

〔①〕解答例

  • ファイルの名称

〔②〕解答例

  • おおよそのファイルサイズ
解説

本文の根拠

表3 ファイル・フォルダ暗号化方式

当該ファイルへのアクセス権があれば,鍵情報を知らなくても,格納されたファイルやフォルダの名称及び他の属性情報を取得できる場合がある。

図7 2.

利用者が機密フォルダにファイルを登録した場合又は機密フォルダ内のファイルを更新した場合,同期用 FS は,ファイルを暗号化した上で,Q サービス上の暗号化フォルダに登録するか,暗号化フォルダ内のファイルを更新する。

図 7 の方法はファイルを一つずつ暗号化して Q サービスの暗号化フォルダに置く。暗号化されるのはファイルの中身なので,Q サービス上ではファイルの名称は読めるままであり,暗号文の長さから元のファイルのおおよその大きさも分かる。解答例は①“ファイルの名称”,②“おおよそのファイルサイズ”である。

表 3 のファイル・フォルダ暗号化方式の説明に“鍵情報を知らなくても,格納されたファイルやフォルダの名称及び他の属性情報を取得できる場合がある”とあり,図 7 はこれと同じ形の暗号化である。図 7 の 4. のとおり利用モードは CBC モードで,図 6 のとおり平文をブロック単位で暗号化するので,暗号文の長さは平文の長さとほぼ同じになる。

字数は各 15 字以内で,解答例は 7 字と 12 字である。サイズは“正確な”サイズではなく“おおよその”サイズであることに注意する。ファイルの中身は暗号化されるので,“ファイルの内容”は答えにならない。

設問4(4) 解答欄5つ

本文中又は図 9 中の p〜t に入れる適切な数値を答えよ。p〜s は整数で,t は小数第 2 位を四捨五入して,小数第 1 位まで求めよ。

〔p〕解答例

  • 9

〔q〕解答例

  • 62

〔r〕解答例

  • 2
  • 31

〔s〕解答例

  • 31
  • 2

〔t〕解答例

  • 8.9

〔備考〕r と s は順不同(2 と 31 を一つずつ答える)

解説

本文の根拠

図9

英数字 x 文字のパスワードについて,その場合の数が,数字 16 文字のパスワードの場合の数より大きくなる最小の x を考える。ただし,大文字と小文字は区別する。

図9

参考 log10 2≒0.301,log10 3≒0.477,log10 13≒1.114,log10 31≒1.491

数字 16 文字のパスワードの場合の数は 1016 である。英数字は大文字 26,小文字 26,数字 10 の合計 62 種類なので,英数字 x 文字の場合の数は 62x(q=62)。62x>1016 の両辺の常用対数をとると x>16 log1010÷log1062 となり,62=2×31 なので分母は log102+log1031(r=2,s=31,順不同)である。16÷(0.301+1.491)=16÷1.792≒8.93 なので t=8.9,これを超える最小の整数は p=9 である。解答例は p“9”,q“62”,r“2”,s“31”,t“8.9”で,r と s は順不同である。

図 9 の参考に log102 と log1031 があることが,62 を 2×31 に分解するヒントになっている。log103 と log1013 は,36 種類(大文字と小文字を区別しない場合)などと誤ったときに使ってしまう値である。

間違えやすいのは文字の種類の数で,大文字と小文字を区別するので 36 ではなく 62 になる。t は小数第 2 位を四捨五入するので 8.93→8.9,p は x>8.93 を満たす最小の整数なので 9 であり,8 ではない。

設問5(1) 50字以内

本文中の下線⑦について,指摘に対応するには,図 7 の拡張機能をどのように修正すればよいか。修正内容を,50 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 暗号化フォルダに登録されたファイルは,復号した後で,マルウェアスキャンを行うようにする。
解説

本文の根拠

図7 3.

同期用 FS は,暗号化されたファイルを取得してマルウェアスキャンを行い,マルウェアが検知されなければ,復号した上で,同期ディスク中の対応する機密フォルダに配置する。

〔レビューと修正〕

⑦マルウェア感染ファイルの拡散防止対策が不十分である。

図 7 では,Web インタフェースから暗号化フォルダに登録された暗号化済みのファイルを,同期用 FS が暗号化されたままマルウェアスキャンし,その後で復号して機密フォルダに置く。暗号文をスキャンしても中のマルウェアは検知できないので,感染ファイルが復号されて同期ディスクに入り,社内の利用者に広がってしまう。そこで,復号してからスキャンする順序に改める。解答例は“暗号化フォルダに登録されたファイルは,復号した後で,マルウェアスキャンを行うようにする。”である。

図 8 の下段の流れ(暗号文→マルウェアスキャン・復号→平文)がこの問題の箇所である。問 1 の設問2(1)と同じく,暗号化されたファイルはそのままではウイルススキャンができない。同期用 FS は鍵を生成して管理しているので,復号してから検査できる。

字数は 50 字以内で,解答例は 44 字である。“どのファイルを”(暗号化フォルダに登録されたファイル)と,“復号した後で”スキャンするという順序の変更を残す。“マルウェアスキャンを強化する”のような書き方では修正内容が具体的でない。

設問5(2) 解答欄2つ

本文中の下線⑧について,どのような場合にファイルが平文のまま Q サービスに保管され続けるのか。35 字以内で具体的に述べよ。また,この状況を防ぐには,同期用 FS の拡張機能にどのような修正を行えばよいか。修正内容を 30 字以内で述べよ。

〔場合〕解答例

  • 利用者が,暗号化していないファイルをWebブラウザで登録した場合

〔修正内容〕解答例

  • 暗号化されていないバックアップのファイルを自動で削除する。
解説

本文の根拠

図7 3.

暗号化フォルダに平文のファイルが登録された場合又は平文のファイルで既存のファイルが更新された場合,同期用 FS は当該ファイルを暗号化して更新した後,利用者に警告メールを送信する。

表1 ファイル管理 補足説明1

1. ファイルが更新又は削除された場合,元のファイルはバックアップとして保管される。

図4 4. 補足事項

Q サービスに保管されたバックアップのファイルについて,同期用 FS は一切処理を行わない。

利用者が Web ブラウザ(Web インタフェース)から暗号化していないファイルを暗号化フォルダに登録すると,同期用 FS はそのファイルを暗号化して更新する。ところが Q サービスでは,ファイルが更新されると元のファイルがバックアップとして保管されるので,平文のファイルがバックアップに残り続ける。同期用 FS はバックアップを一切処理しないので,これを消す仕組みが無い。解答例は,場合が“利用者が,暗号化していないファイルをWebブラウザで登録した場合”,修正内容が“暗号化されていないバックアップのファイルを自動で削除する。”である。

表 1 の補足説明 1 は,バックアップとして保管されたファイルは利用者が復元・取得できるとしている。平文のバックアップが残れば,下線④のクラッキングなどへの対策として暗号化した意味が失われる。同期用 FS から暗号化されたファイルを登録する場合は初めから暗号文なので,この問題は Web インタフェースからの登録でだけ起きる。

字数は場合が 35 字以内(解答例 32 字),修正内容が 30 字以内(解答例 29 字)である。場合には“暗号化していないファイル”と“Web ブラウザ(Web インタフェース)で登録”の両方を書く。修正内容は“警告する”では平文が残ったままなので,“バックアップの(平文の)ファイルを削除する”まで書く。

設問6 35字以内

本文中の下線⑨について,U さんがまとめた対策を,35 字以内で述べよ。

解答例

  • 委託先のデータ管理の実態を監査によって把握して監督する。
解説

本文の根拠

〔M 部長の最終確認〕M部長

当社は委託先との契約の中で,顧客データについて目的外利用の禁止と適切な管理を委託先に要求している。だが,事故の発生を防ぐ点で十分だろうか。

〔M 部長の最終確認〕Uさん

当社の現状について調査した結果,委託先の管理が不十分だったので,IPA が公表している“組織における内部不正防止ガイドライン”を参考にして,技術的対策とは別に⑨対策をまとめました。

図5

J 社から受託した業務の一部を再委託する場合は,当該委託先に対して本要求と同等の措置を求め,かつ,その実施について監督する。

V 社は委託先との契約で目的外利用の禁止と適切な管理を求めているが,契約を結ぶだけでは委託先が実際に守っているかは分からない。U さんの調査でも委託先の管理が不十分だった。そこで,監査によって委託先のデータ管理の実態を把握し,監督する。解答例は“委託先のデータ管理の実態を監査によって把握して監督する。”である。

図 5 の J 社の要求も,再委託先に同等の措置を求めることに加えて“その実施について監督する”ことを求めている。講評も,守秘義務を含めた契約を締結するだけでなく,監査によって実態を把握し監督する手法が有効であるとしている。

字数は 35 字以内で,解答例は 28 字である。“監査(実態の把握)”と“監督”を残す。“契約で守秘義務を課す”は本文ですでに行っていることなので,“技術的対策とは別に”まとめた新しい対策にはならない。

採点講評(IPA)

設問6は,委託先管理についての問題である。正答率は低かった。重要なデータを委託先に開示する場合には,守秘義務を含めた契約を委託先と締結するだけでなく,監査によって委託先のデータ管理の実態を把握し監督するなどの手法が有効である。本文中に示したガイドラインなどを参考に,様々な手法を理解し,実務に役立てられるようになってほしい。

出典:平成27年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)