契約の形態(請負・準委任・労働者派遣)
システム開発では,社外の会社や人に仕事を頼む場面がたくさんあります。そのときの契約の形によって,何に責任を負うかと誰が作業者に指示を出せるかが変わります。 科目A-1(午前Ⅰ)のほか,PM・ST・SA・SM の科目A-2(午前Ⅱ)で繰り返し出ています。 指揮命令が誰にあるかを軸に整理すると,多くの問題が解けます。
3つの契約の違い
| 契約 | 受ける側の責任 | 作業者への指揮命令 |
|---|---|---|
| 請負 | 仕事の完成(成果物を納める) | 受注者 |
| 準委任 | 作業を適切に行うこと。完成の責任は負わない | 受注者 |
| 労働者派遣 | 条件に合う労働者を送ること | 派遣先(発注した側) |
請負と準委任では,発注者は受注者の作業者に直接指示を出せません。発注者の事業所で作業していても,指揮命令は受注者の責任者が行います。 発注者が直接指示を出したり,休暇の取り方を決めたりすると,契約は請負でも実態は労働者派遣になり,偽装請負として違法になります。
工程ごとの契約の選び方
経済産業省の「情報システム・モデル取引・契約書」は,工程ごとにふさわしい契約の形を示しています。 決め手は,契約する時点で成果物を具体的に決められるかです。
| 要件定義 | 準委任。どんな機能になるか決まっていないので,完成を約束できない |
|---|---|
| システム外部設計 | 準委任又は請負 |
| システム内部設計〜システム結合 | 請負。要件と外部設計が決まり,作る物がはっきりしている |
| システムテスト | 準委任又は請負 |
| 運用テスト | 準委任。ユーザーが主体で行い,ベンダーは支援する |
このほか,一定期間,決まったスキルと人数の要員をベンダーに確保してもらう代わりに,依頼元が一定以上の発注を約束するラボ契約も問われています。
労働者派遣のきまり
- 労働者派遣契約を結ぶのは派遣元と派遣先です。労働者が雇用契約を結ぶのは派遣元です。
- 労働時間や休日などの枠組みは派遣元と派遣労働者の間で決め,派遣先はその範囲内で指揮命令します。
- 派遣先は派遣先責任者を置き,指揮命令する人に,関連する法律や派遣契約の内容などを周知させます。
- 派遣労働者の教育訓練など福祉の増進は,派遣元が講ずべき措置です。
- 同じ組織の単位で同じ派遣労働者を受け入れられるのは,原則として3年までです。
- 派遣されてきた労働者を,さらにほかの会社へ派遣する(二重派遣)ことはできません。
下請法
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は,立場の弱い下請事業者を守るために,発注する側(親事業者)に義務と禁止事項を定めています。
- 発注のときに,業務の内容や下請代金の額などを書いた書面を交付する。ユーザーとの契約代金が決まっていないことを理由に,下請代金を決めずに発注するのは禁止。
- 仕様が決まっていないときは,決まったあとで内容を書面で伝える。口頭だけで伝えるのは禁止。
- 下請代金は,物を受け取った日から60日以内に支払う。下請事業者の事情で修正が必要になったときは,修正したものを受け取った日から数える。
下請法は2026年1月の改正で,名前が「中小受託取引適正化法」(取適法)に変わり,「下請事業者」は「中小受託事業者」と呼ぶようになりました。 過去問は改正前の名前で出題されています。
試験での問われ方
当サイトが収録している科目A(午前)の問題のうち,請負・準委任・労働者派遣・下請などの語が出てくるのは45問です。 型ごとに数えると次のとおりです。
- 工程ごとの契約の形(12問)。請負型が適切なフェーズ(正解は「システム内部設計フェーズからシステム結合フェーズまで」,5問), 準委任型が適切なもの(要件定義と運用テスト,3問),要件定義を準委任にする理由(「構築するシステムがどのような機能となるか明確になっていないので準委任契約にした。」), ラボ契約の特徴(2問),条件から準委任契約を選ぶ問題です。
- 労働者派遣(9問)。派遣先責任者の役割(3問),労働者派遣契約を結ぶ当事者(「派遣元事業主と派遣先事業主」), 派遣元が講ずべき措置,就業の枠組みを誰が決めるか,派遣期間などです。
- 下請法(7問)。禁止されている行為(下請代金を決めずに発注する,仕様を口頭だけで伝える,5問)と, 修正が必要になったときの支払期日の起算日(「修正済プログラムが納品された日」,2問)です。
- 請負での指揮命令と偽装請負(6問)。偽装請負になるもの(「…発注者側の責任者が業務の割振り,指示を行う。」), 請負なのに派遣とみなされる行為(「休暇取得のルールを発注者側の指示に従って取り決める。」), 委託元の管理者が委託先の開発担当者を指揮命令していることを監査で指摘する問題(2問)などです。
- 著作権の帰属(4問)。請負で作ったプログラムの著作権は,定めがなければ請負人に帰属します。詳しくは著作権と知的財産権のページにあります。
- このほか,アウトソーシングの説明(2問),JIS Q 20000-1 の供給者管理(2問),委託先の情報セキュリティ管理,WBS やダイナミック・ケイパビリティを選ぶ問題の選択肢に出てきます。
出題された過去問(45問)
リンク先の年度ページで,問題と解説を読めます。
科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)(12問)
- 令和7年度 春期 問25ベンダーX 社に対して,表に示すように要件定義フェーズから運用テストフェーズまでを委託したい。X…
- 令和6年度 秋期 問30大規模なシステム開発を受注した A 社では,不足する開発要員を派遣事業者である B 社からの労働…
- 令和5年度 春期 問30労働者派遣法において,派遣元事業主の講ずべき措置等として定められているものはどれか。
- 平成30年度 秋期 問30ユーザから請け負うソフトウェア開発を下請業者に委託する場合,下請代金支払遅延等防止法で禁止されて…
- 平成29年度 秋期 問30企業が請負で受託して開発したか,又は派遣契約によって派遣された社員が開発したプログラムの著作権の…
- 平成28年度 秋期 問25“情報システム・モデル取引・契約書”によれば,要件定義工程を実施する際に,ユーザ企業がベンダと締…
- 平成26年度 秋期 問25“情報システム・モデル取引・契約書”によれば,ユーザ(取得者)とベンダ(供給者)間で請負型の契約…
- 平成26年度 春期 問30労働者派遣法に基づいた労働者の派遣において,労働者派遣契約の関係が存在するのはどの当事者の間か。
- 平成25年度 春期 問30発注者と受注者の間でソフトウェア開発における請負契約を締結した。ただし,発注者の事業所で作業を実…
- 平成23年度 特別試験 問30偽装請負となるものはどれか。
- 平成21年度 春期 問18WBS(Work Breakdown Structure)を利用する効果として,適切なものはどれ…
- 平成21年度 春期 問30請負契約の下で,自己の雇用する労働者を契約先の事業所などで働かせる場合,適切なものはどれか。
プロジェクトマネージャ 科目A-2(午前Ⅱ)(11問)
- 令和7年度 秋期 問21下請代金支払遅延等防止法の対象となる下請事業者から納品されたプログラムに,下請事業者側の事情を原…
- 令和2年度 10月 問22労働者派遣事業における派遣労働者の労働時間,休日,休暇などの具体的な就業に関する枠組み設定のうち…
- 平成31年度 春期 問18企業間で,商用目的で締結されたソフトウェアの開発請負契約書に著作権の帰属に関する内容が記載されて…
- 平成31年度 春期 問22下請代金支払遅延等防止法の対象となる下請事業者から納品されたプログラムに,下請事業者側の事情を原…
- 平成30年度 春期 問21システム開発を請負契約でベンダに委託する場合,ベンダに起因する,機密漏えいなどの情報セキュリティ…
- 平成29年度 春期 問21ベンダ X 社に対して,図に示すように要件定義フェーズから運用テストフェーズまでを委託したい。X…
- 平成29年度 春期 問23派遣労働者の受入れに関する記述のうち,適切なものはどれか。
- 平成26年度 春期 問22ソフトウェア開発を下請事業者に委託する場合,下請代金支払遅延等防止法に照らして,禁止されている行…
- 平成22年度 春期 問23経済産業省の“情報システム・モデル取引・契約書”によれば,ユーザとベンダ間で請負型の契約を推奨し…
- 平成22年度 春期 問24プロジェクトマネージャの P 氏は,A 社から受託予定のソフトウェア開発を行うために,X 社から…
- 平成21年度 春期 問24ソフトウェア開発を下請業者に委託する場合,下請代金支払遅延等防止法で禁止されている行為はどれか。
ITサービスマネージャ 科目A-2(午前Ⅱ)(7問)
- 令和5年度 春期 問25ユーザーから請け負うソフトウェア開発を下請事業者に委託し,下請代金支払遅延等防止法の適用を受ける…
- 平成30年度 秋期 問10図は,IT サービスを提供するサプライチェーン関係の例である。JIS Q 20000-1:201…
- 平成28年度 秋期 問9図は,IT サービスを提供するサプライチェーン関係の例である。JIS Q 20000-1 の供給…
- 平成25年度 秋期 問25派遣労働者の受入れに関する記述のうち,派遣先責任者の役割,立場として,適切なものはどれか。
- 平成23年度 秋期 問25請負契約を締結していても,労働者派遣とみなされる受託者の行為はどれか。
- 平成22年度 秋期 問17請負契約でシステム開発を委託している案件について,委託元のシステム監査人の指摘事項に該当するもの…
- 平成21年度 秋期 問25労働者派遣法に適合するものはどれか。
ITストラテジスト 科目A-2(午前Ⅱ)(7問)
- 令和6年度 春期 問5“情報システム・モデル取引・契約書<第二版>”によれば,ウォーターフォールモデルによるシステム開…
- 令和4年度 春期 問5ベンダ X 社に対して,表に示すように要件定義フェーズから運用テストフェーズまでを委託したい。X…
- 令和4年度 春期 問6D. J. ティースが提唱したダイナミック・ケイパビリティの説明として,適切なものはどれか。
- 平成28年度 秋期 問23ソフトウェア開発を下請事業者に委託する場合,下請代金支払遅延等防止法に照らして,禁止されている行…
- 平成25年度 秋期 問25派遣労働者の受入れに関する記述のうち,派遣先責任者の役割,立場として,適切なものはどれか。
- 平成22年度 秋期 問25次の三つの条件を満たす契約はどれか。
- 平成21年度 秋期 問5情報システムのアウトソーシングを説明したものはどれか。
システムアーキテクト 科目A-2(午前Ⅱ)(5問)
- 令和7年度 春期 問14ラボ契約の特徴はどれか。
- 令和4年度 春期 問15ラボ契約の特徴はどれか。
- 平成28年度 秋期 問16“情報システム・モデル取引・契約書”によれば,ユーザ(取得者)とベンダ(供給者)間で請負型の契約…
- 平成23年度 秋期 問15経済産業省の“情報システム・モデル取引・契約書”によれば,ユーザとベンダ間で請負型の契約を推奨し…
- 平成21年度 秋期 問11情報システムのアウトソーシングを説明したものはどれか。
情報処理安全確保支援士 科目A-2(午前Ⅱ)(3問)
- 令和7年度 秋期 問23商用目的で開発するソフトウェアの開発請負契約書には,企業間で様々な事項を取り決めておく必要がある…
- 平成29年度 秋期 問23企業間で,商用目的で締結されたソフトウェアの開発請負契約書に著作権の帰属が記載されていない場合,…
- 平成22年度 秋期 問25請負契約でシステム開発を委託している案件について,委託元のシステム監査人の指摘事項に該当するもの…