平成26年度 春期に実施されたプロジェクトマネージャ試験
午前Ⅱの全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:プロジェクトマネージャ試験について
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問1
情報システムの企画,開発,運用,保守作業に関わる国際標準の一つである SPA(Software Process Assessment)の説明として,適切なものはどれか。
ア ソフトウェアプロセスがどの程度の能力水準にあり,継続的に改善されているかを判定することを目的としている。 正解
イ ソフトウェアライフサイクルを合意プロセス,テクニカルプロセス,運用・サービスプロセスなどのプロセス群に分け,作業内容を定めている。
ウ 品質保証に関する要求項目を体系的に規定した国際規格の一部である。
エ プロジェクトマネジメントの知識体系と応用のためのガイドである。
正解 ア
解説
SPA(Software Process Assessment)は,組織のソフトウェアプロセスを診断して,その能力水準がどの段階にあるか,継続的に改善されているかを判定する枠組みで,ISO/IEC 15504(JIS X 0145 シリーズ)としてまとめられている。アが正しい。判定の結果を基にプロセスの改善を進めたり,委託先の能力を評価したりするのに使う。
イはソフトウェアライフサイクルのプロセスと作業内容を定める ISO/IEC 12207(JIS X 0160)や共通フレームの説明。ウは品質マネジメントシステムの要求事項を定める ISO 9000 シリーズの説明。エはプロジェクトマネジメントの知識体系をまとめた PMBOK ガイドの説明である。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
図は一般的なプロジェクトにおける開始から終結までの時間の経過に伴って変動する要素について表している。a,b に対応する要素の適切な組はどれか。
ア a:ステークホルダの影響力,b:要件変更への対応コスト 正解
イ a:プロジェクト要員数,b:リスク
ウ a:要件変更への対応コスト,b:プロジェクト要員数
エ a:リスク,b:ステークホルダの影響力
正解 ア
解説
プロジェクトの開始時は,ステークホルダが成果物の特性や最終的なコストに与えられる影響力が最も大きく,プロジェクトが進むにつれて小さくなる(a)。逆に,要件の変更やエラーの修正に掛かるコストは,開始時は小さく,作業が進んで成果物ができあがっていくほど大きくなる(b)。この組合せのアが正しい。
イのプロジェクト要員数は,開始時は少なく中盤で最も多くなり終盤に減る山形になるので,a の形には当たらない。リスク(不確実性)は開始時が最も大きく時間とともに減るので,b の形とは逆である。ウとエも,要員数やリスク,影響力の変化の向きが図と合わない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3
PMBOK において,プロジェクト憲章は,どの知識エリアのどのプロセス群で作成するか。
ア プロジェクトコミュニケーションマネジメントの実行プロセス群
イ プロジェクトスコープマネジメントの計画プロセス群
ウ プロジェクト統合マネジメントの計画プロセス群
エ プロジェクト統合マネジメントの立上げプロセス群 正解
正解 エ
解説
PMBOK ガイドでは,プロジェクト憲章の作成は,プロジェクト統合マネジメントの知識エリアに属し,立上げプロセス群のプロセスである。プロジェクト憲章でプロジェクトを公式に認可し,プロジェクトマネージャに資源を使う権限を与えてから,計画が始まる。エが正しい。
アのコミュニケーションマネジメントの実行プロセス群には,情報の配布などが属する。イのスコープマネジメントの計画プロセス群では,要求事項の収集やスコープの定義,WBS の作成を行う。ウの統合マネジメントの計画プロセス群では,プロジェクトマネジメント計画書を作成する。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問4
PMBOK によれば,組織のプロセス資産を“プロセスと手順”と“企業の知識ベース”に分類したとき,“企業の知識ベース”に含まれるものはどれか。
ア WBS のテンプレートやリスクの評価を行う際のテンプレート
イ 各プロジェクトで作成されたパフォーマンス測定のベースラインや品質のベースラインなどのプロジェクトファイル 正解
ウ 使用するコミュニケーション媒体やセキュリティに対する要求事項
エ 標準化された作業指示書やパフォーマンス測定基準
正解 イ
解説
PMBOK ガイドは,組織のプロセス資産を“プロセスと手順”と“企業の知識ベース”に分けている。企業の知識ベースは,過去のプロジェクトで蓄積された情報で,プロジェクトファイル(スコープ・コスト・スケジュール・品質のベースライン,パフォーマンス測定のベースラインなど),教訓,課題や欠陥の管理データ,構成管理の知識ベースなどが含まれる。イが正しい。
アのテンプレート,ウのコミュニケーションの要求事項,エの標準化された作業指示書やパフォーマンス測定基準は,いずれも組織が定めた“プロセスと手順”に分類される。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問5
PMBOK での定義におけるプロジェクトとステークホルダの関係のうち,適切なものはどれか。
ア サプライヤは,プロジェクトが創造するプロダクトやサービスを使用する。
イ スポンサは,契約に基づいてプロジェクトに必要な構成アイテムやサービスを提供する。
ウ 納入者は,プロジェクトに対して資金や現物などの財政的資源を提供する。
エ プログラムマネージャは,関連するプロジェクトの調和がとれるように,個々のプロジェクトの支援や指導をする。 正解
正解 エ
解説
PMBOK ガイドでは,プログラムは互いに関連する複数のプロジェクトをまとめて管理するもので,プログラムマネージャは,プログラムの目標を達成するために個々のプロジェクトを調整し,支援や指導を行う。エが正しい。
アのプロダクトやサービスを使用するのは顧客(ユーザ)である。イの契約に基づいて構成アイテムやサービスを提供するのは,サプライヤ(納入者)である。ウの資金や現物などの財政的資源を提供するのはスポンサである。ア〜ウは役割と名前が入れ替わっている。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問6
PMBOK のプロジェクトスコープマネジメントにおいて,WBS の作成に用いるローリングウェーブ計画法の説明はどれか。
ア WBS を補完するため,WBS 要素ごとに詳細な作業の内容などを記述する。
イ 過去に実施したプロジェクトの WBS をテンプレートとして,新たな WBS を作成する。
ウ 将来実施されるサブプロジェクトについては,上位レベルの WBS にとどめておき,詳細が明確になってから,要素分解して詳細な WBS を作成する。 正解
エ プロジェクトの作業をより詳細化するために,WBS の最下位レベルの作業内容や要素成果物を定義する。
正解 ウ
解説
ローリングウェーブ計画法は,近い将来に行う作業は詳細に計画し,遠い将来の作業は上位のレベルにとどめておき,プロジェクトが進んで詳細が明確になった時点で段階的に詳細化していく計画の方法である。将来実施されるサブプロジェクトを上位レベルの WBS にとどめておき,後で要素分解するウが正しい。
アは WBS の各要素の作業内容や責任者などを記述する WBS 辞書の説明である。イは過去のプロジェクトの WBS をひな型として使うテンプレートの活用の説明である。エは WBS の最下位の作業や成果物を定義して作業を詳細化することの説明で,段階的に詳細化するというローリングウェーブ計画法の特徴を表していない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問7
プロジェクトマネジメントで使用する責任分担表(RAM)の一つである,RACI チャートで示す4種類の役割及び責任の組合せのうち,適切なものはどれか。
ア 実行責任,情報提供,説明責任,相談対応 正解
イ 実行責任,情報提供,説明責任,リスク管理
ウ 実行責任,情報提供,相談対応,リスク管理
エ 実行責任,説明責任,相談対応,リスク管理
正解 ア
解説
RACI チャートは,作業ごとに誰がどの役割を担うかを表す責任分担マトリックスで,Responsible(実行責任),Accountable(説明責任),Consulted(相談対応),Informed(情報提供)の頭文字から名付けられている。四つがそろったアが正しい。
Accountable は作業の結果に最終的な責任を負う人で,一つの作業につき1人に絞るのが原則である。イ・ウ・エに含まれる“リスク管理”は RACI の役割ではなく,プロジェクトマネジメントで扱う対象の一つである。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
表は,あるプロジェクトの作業リストであり,図は,各作業の関係を表したアローダイアグラムである。このプロジェクトの所要期間を3日間短縮するためには,追加費用は最低何万円必要か。
正解 イ
解説
経路は A→C(11日),A→D→E(13日),B→E(15日)の三つで,クリティカルパスは B→E の15日である。これを12日にする。まず1日当たりの費用が最も安い B を1日縮めると(3万円),B→E が14日。もう1日 B を縮めると(3万円),B→E と A→D→E がともに13日になる。最後の1日は両方の経路を縮める必要があり,E を縮める(6万円)か,B と A を1日ずつ縮める(3+2=5万円)かのうち安い後者を選ぶ。合計は 3+3+5 = 11万円で,イが正しい。
アの9は,B を3日縮めるだけで済むと考えた値で,このとき A→D→E が13日のまま残り,12日にならない。ウの12は,最後の1日に E を縮めた(3+3+6)値,エの14は,E を縮めることから始めた場合などの値で,いずれも最低ではない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
プロジェクトのスケジュールを管理するときに使用する“クリティカルチェーン法”の特徴はどれか。
ア クリティカルパス上の作業に生産性を向上させるための開発ツールを導入する。
イ クリティカルパス上の作業に要員を追加投入する。
ウ クリティカルパス上の先行作業が終了する前に後続作業に着手し,並行して実施する。
エ クリティカルパスを守るために,フィーディングバッファと所要期間バッファを設ける。 正解
正解 エ
解説
クリティカルチェーン法は,資源の制約を考慮して日程を組み,各作業に個別に持たせていた安全余裕を取り上げてまとめる方法。まとめた余裕は,クリティカルチェーンの末尾に置く所要期間バッファ(プロジェクトバッファ)と,合流する作業の手前に置くフィーディングバッファとして管理する。
イはクラッシング(資源の追加投入),ウはファストトラッキング(先行作業と後続作業の並行実施)。アはツール導入による生産性向上であり,いずれもクリティカルチェーン法の特徴ではない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
用語解説:クリティカルパス
問10
プロジェクトマネジメントの実績報告のプロセスにおいて,スコープ,コスト,スケジュールに関して,ベースラインと実績のかい離を明確にするために使用される技法はどれか。
ア what-if シナリオ分析
イ 傾向分析
ウ 差異分析 正解
エ モンテカルロ分析
正解 ウ
解説
差異分析は,計画(ベースライン)と実績を比べて,その差(差異)の大きさと原因を明らかにする技法である。実績報告では,スコープ,コスト,スケジュールについてベースラインとのかい離を示すために使う。ウが正しい。
アの what-if シナリオ分析は,“もしこうなったら”という仮定の状況を想定してスケジュールなどへの影響を評価する技法である。イの傾向分析は,実績の推移から将来の成果を予測する技法で,かい離そのものではなく今後の見通しを示す。エのモンテカルロ分析は,乱数を使ったシミュレーションで所要期間やコストのばらつきを見積もる技法である。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
用語解説:デルファイ法と問題分析の技法
問11
あるソフトウェア会社の社員は週40時間働く。この会社が,開発工数440人時のプログラム開発を引き受けた。開発コストを次の条件で見積もるとき,10人のチームで開発する場合のコストは,1人で開発する場合のコストの約何倍になるか。
〔条件〕
(1) 10人のチームでは,コミュニケーションをとるための工数が余分に発生する。 (2) コミュニケーションはチームのメンバが総当たりでとり,その工数は2人1組の組合せごとに週当たり4人時(1人当たり2時間)である。 (3) 社員の週当たりコストは社員間で差がない。 (4) (1)〜(3)以外の条件は無視できる。
正解 ウ
解説
1人で開発する場合は,440 ÷ 40 = 11人週かかる。10人のチームでは,2人1組の組合せが 10 × 9 ÷ 2 = 45組あり,コミュニケーションに週 45 × 4 = 180人時を使う。チーム全体の週の工数は 10 × 40 = 400人時なので,開発に使えるのは 400 − 180 = 220人時で,440人時の開発には 440 ÷ 220 = 2週かかる。コストは 10人 × 2週 = 20人週で,1人の場合の 20 ÷ 11 ≒ 1.8倍になる。ウが正しい。
アの1.2やイの1.5は,組合せの数を少なく数えたり,1人当たり2時間だけを人数分足したりして,コミュニケーションの工数を小さく見積もったときに出る値である。エの2.1は,組合せの数を 10 × 9 = 90 と重複して数えるなど,工数を大きく見積もったときに近い値になる。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
リスクマネジメントにおける EMV(期待金額価値)の算出式はどれか。
ア リスク事象発生時の影響金額 × リスク事象の発生確率 正解
イ リスク事象発生時の影響金額 ÷ リスク事象の発生確率
ウ リスク事象発生時の影響金額 × リスク対応に掛かるコスト
エ リスク事象発生時の影響金額 ÷ リスク対応に掛かるコスト
正解 ア
解説
EMV(期待金額価値)は,リスク事象が起きたときの影響金額に,その事象の発生確率を掛けた値。確率で重み付けした金額なので,起こりやすさと大きさの両方を 1 つの数値で比べられる。
イのように確率で割ったり,ウ・エのようにリスク対応のコストを掛けたり割ったりしても,期待値にはならない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
PMBOK のリスクマネジメントにおけるリスク対応戦略の適用に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 強化は,マイナスのリスクに対して使用される戦略である。
イ 共有は,プラスのリスクとマイナスのリスクのどちらにも使用される戦略である。
ウ 受容は,プラスのリスクとマイナスのリスクのどちらにも使用される戦略である。 正解
エ 転嫁は,プラスのリスクに対して使用される戦略である。
正解 ウ
解説
PMBOK ガイド第5版は,マイナスのリスク(脅威)への戦略として回避・転嫁・軽減・受容の四つ,プラスのリスク(好機)への戦略として活用・共有・強化・受容の四つを挙げている。受容はどちらにも含まれ,リスクを認めたうえで積極的な対応をとらない戦略である。ウが正しい。
アの強化は,好機の発生確率や影響を高めるプラスのリスクへの戦略。イの共有は,好機を最もうまく生かせる第三者と組むプラスのリスクへの戦略。エの転嫁は,脅威の影響と責任を保険や契約などで第三者に移すマイナスのリスクへの戦略である。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問14
COCOMO にはシステム開発の工数を見積もる式の一つに
MM=3.0×(KDSI)1.12 がある。開発規模(KDSI)と開発生産性(KDSI/MM)の関係を表したグラフはどれか。ここで,MM は開発工数(人月),KDSI は開発規模(注釈を除いたソースコードの行数,単位は k 行)である。
正解 エ
解説
開発生産性は開発規模 ÷ 開発工数なので,式を代入すると 規模 ÷(3.0×規模1.12 )= 規模−0.12 ÷ 3.0 となる。指数がマイナスなので,規模が大きくなるほど生産性は下がる。さらに,指数の絶対値が小さい累乗の曲線なので,規模が小さいうちは大きく下がり,規模が大きくなるにつれて下がり方は緩やかになる。この形はエである。
指数が1を超える(1.12)ことは,規模が大きくなると工数がそれ以上の割合で増える,つまり大規模ほど調整や管理の負担で効率が落ちることを表している。アとイは生産性が上がるグラフで逆。ウは下がり方が次第に急になっており,曲線の曲がり方が逆である。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
プロジェクトの状況を把握するために使用するパレート図の用途として,適切なものはどれか。
ア 工程の状態や品質の状況を時系列に表した図であり,工程が安定した状態にあるかどうかを判断するために用いる。
イ 項目別に層別して出現度数の大きさの順に並べるとともに累積和を示した図であり,主要な原因を識別するために用いる。 正解
ウ 二つの特性を横軸と縦軸にとって測定値を打点した図であり,それらの相関を判断するために用いる。
エ 矢印付き大枝の先端に特性を,中枝,小枝に要因を表した図であり,どれがどれに影響しているかを分析するために用いる。
正解 イ
解説
パレート図は,項目別に層別したデータを出現度数の大きい順に棒グラフで並べ,その累積比率を折れ線グラフで示した図で,問題の主要な原因を識別し,重点的に取り組む対象を決めるのに用いる。イが適切である。
アは管理図,ウは散布図,エは特性要因図の説明である。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
ソフトウェアの潜在エラー数を推定する方法の一つにエラー埋込み法がある。100個のエラーを故意にプログラムに埋め込んだとき,そのエラーの存在を知らない検査グループが30個のエラーを発見した。そのうち20個は故意に埋め込んでおいたものであった。この時点で,このプログラムには埋込みエラーを除く残存エラー数は幾つと推定できるか。
正解 ア
解説
エラー埋込み法では,埋め込んだエラーも元からあるエラーも同じ割合で検出されると考える。埋め込んだ 100 個のうち 20 個を検出したので,検出率は 20÷100=0.2 である。発見した 30 個のうち元からあったエラーは 30-20=10 個なので,元からあるエラーの総数は 10÷0.2=50 個と推定できる。このうち 10 個は発見済みなので,残存エラー数は 50-10=40 個となり,アになる。
イの 50 は元からあるエラーの推定総数で,発見済みの 10 個を除いていない。エの 150 は,埋込みエラーを含めた総エラー数の推定値(100×30÷20)である。ウの 70 は,この計算からは得られない値である。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
XP(Extreme Programming)のプラクティスの一つに取り入れられているものはどれか。
ア 構造化プログラミング
イ コンポーネント指向プログラミング
ウ ビジュアルプログラミング
エ ペアプログラミング 正解
正解 エ
解説
XP(エクストリームプログラミング)は,短い反復で開発を進めるアジャイル開発手法の一つで,プラクティスとしてペアプログラミング,テスト駆動開発,リファクタリング,継続的インテグレーション,コードの共同所有などを挙げる。2人1組で1台のコンピュータを使い,一方がコードを書き他方がレビューしながら進めるペアプログラミングはその代表で,エが正しい。
アの構造化プログラミングは,順次・選択・繰返しの制御構造でプログラムを組み立てる考え方。イのコンポーネント指向プログラミングは,部品を組み合わせてソフトウェアを作る考え方。ウのビジュアルプログラミングは,図形を操作してプログラムを作る方式で,いずれも XP のプラクティスではない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)
問18
表はシステムの特性や制約に応じた開発方針と,開発方針に適した開発モデルの組である。a〜c に該当する開発モデルの組合せはどれか。
ア a:ウォータフォールモデル,b:進化的モデル,c:段階的モデル
イ a:ウォータフォールモデル,b:段階的モデル,c:進化的モデル 正解
ウ a:進化的モデル,b:ウォータフォールモデル,c:段階的モデル
エ a:段階的モデル,b:進化的モデル,c:ウォータフォールモデル
正解 イ
解説
要求が明確で全機能を一斉に開発するのは,工程を順に一度で進めるウォータフォールモデル(a)である。最初にコア部分を作り,順次機能を追加していくのは,要求を幾つかに分けて段階的に作り込む段階的モデル(インクリメンタルモデル)(b)である。要求に不明確な部分があり,開発を繰り返しながら要求を洗練していくのは,利用者の評価を受けて作り直しながら完成に近づける進化的モデル(c)である。この組合せのイが正しい。
アは段階的モデルと進化的モデルが入れ替わっている。ウとエはウォータフォールモデルを a 以外に当てており,要求が明確で一度に開発するという方針に合わない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
次の図は,ITIL のサービスライフサイクルの各段階の説明と流れである。a〜d の段階名の適切な組合せはどれか。
ア a:サービスストラテジ,b:サービスオペレーション,c:サービストランジション,d:サービスデザイン
イ a:サービスストラテジ,b:サービスデザイン,c:サービストランジション,d:サービスオペレーション 正解
ウ a:サービスデザイン,b:サービスストラテジ,c:サービストランジション,d:サービスオペレーション
エ a:サービスデザイン,b:サービストランジション,c:サービスストラテジ,d:サービスオペレーション
正解 イ
解説
ITIL のサービスライフサイクルは,サービスストラテジ,サービスデザイン,サービストランジション,サービスオペレーション,継続的サービス改善の順に並ぶ。a の“全体的な戦略を確立する”がサービスストラテジ,b の“事業要件に応えるサービスを作り出す”がサービスデザイン,c の“テストして本番環境に展開する”がサービストランジション,d の“効果的かつ効率的に提供しサポートする”がサービスオペレーションに当たる。
戦略を決めてから設計し,移行させてから運用する,という流れを押さえておけば,設計と運用が入れ替わっているアや,戦略が後ろにあるウ・エは選ばない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)
問20
システムの改善に向けて提出された4案について,評価項目を設定して採点した結果を,採点結果表に示す。効果及びリスクについては5段階評価とし,それぞれの評価項目の重要度に応じて,重み付け表に示すとおりの重み付けを行った上で次の式で総合評価点を算出したとき,総合評価点が最も高い改善案はどれか。
〔総合評価点の算出式〕
総合評価点 = 効果の総評価点 − リスクの総評価点
採点結果表
重み付け表
正解 ウ
解説
各評価項目の点数に重みを掛けて合計する。効果の総評価点は,案1が 5×3+2×2+3×4=31,案2が 4×3+4×2+4×4=36,案3が 2×3+2×2+5×4=30,案4が 4×3+5×2+2×4=30。リスクの総評価点は,案1が 4×3+2×8=28,案2が 1×3+4×8=35,案3が 5×3+1×8=23,案4が 1×3+5×8=43。
総合評価点は,案1が 31−28=3,案2が 36−35=1,案3が 30−23=7,案4が 30−43=−13 で,最も高いのは案3。ウが正しい。効果だけを比べると案2が最も高いが,重みの大きいスケジュールリスクの点数が高いため総合では伸びない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
IP(知的財産)ライセンス契約の中で規定されるランニングロイヤリティの説明として,適切なものはどれか。
ア 技術サポートを受ける際に課される技術料
イ 技術の開示を受ける際に課される一時金
ウ 特許発明の実施の実績に応じて額が決まる使用料 正解
エ 毎年メンテナンス費用として課される料金
正解 ウ
解説
ランニングロイヤリティは,ライセンスを受けた特許発明などを実施した実績(製品の販売数量や売上高など)に応じて,継続的に支払う使用料である。実施の実績に応じて額が決まるウが正しい。
イの技術の開示を受ける際に課される一時金は,契約時に一括で支払うイニシャルペイメント(一時金)である。アの技術サポートの料金や,エの毎年一定額のメンテナンス費用は,実施の実績に連動しないので,ランニングロイヤリティではない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
問22
ソフトウェア開発を下請事業者に委託する場合,下請代金支払遅延等防止法に照らして,禁止されている行為はどれか。
ア 継続的な取引が行われているので,支払条件,支払期日等を記載した書面をあらかじめ交付し,個々の発注書面にはその事項の記載を省略する。
イ 顧客の都合で,仕様変更の必要が生じたので,下請事業者と協議の上,発生する費用の増加分を下請代金に加算することで仕様変更に応じてもらう。
ウ 顧客の求める仕様が確定していなかったので,発注の際に下請事業者に仕様が未記載の書面を交付し,仕様が確定した時点では,内容を書面ではなく口頭で伝えた。 正解
エ 振込手数料を下請事業者が負担する旨を発注前に書面で合意したので,親事業者が負担した実費の範囲内で振込手数料を差し引いて下請代金を支払う。
正解 ウ
解説
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は,親事業者に,発注の際に給付の内容や下請代金の額,支払期日などを記載した書面(3条書面)を直ちに交付することを義務付けている。発注時に定められない事項は,その理由と予定日を記載して交付し,内容が定まった後は直ちにその事項を記載した書面(補充書面)を交付しなければならない。仕様が確定した時点で内容を口頭で伝えただけのウは,この書面の交付義務に反しており,禁止されている。
アは,継続的な取引で共通する支払条件などをあらかじめ書面で通知しておき,個々の発注書面ではその記載を省略することが認められている。イは,下請事業者と協議して費用の増加分を代金に加算しており,不当な給付内容の変更には当たらない。エは,書面で合意したうえで,親事業者が実際に負担した振込手数料の範囲内で差し引くもので,下請代金の減額には当たらないとされている。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
コンティンジェンシープランにおける留意点はどれか。
ア 企業の全てのシステムを対象とするのではなく,システムの復旧の重要性と緊急性を勘案して対象を決定する。 正解
イ 災害などへの対応のために,すぐに使用できるよう,バックアップデータはコンピュータ室内又はセンタ内に保存しておく。
ウ バックアップの対象は,機密情報の中から機密度を勘案して選択する。
エ 被害のシナリオを作成し,これに基づく“予防策策定手順”を策定する。
正解 ア
解説
コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)は,災害や障害などの緊急事態が起きたときに,業務への影響を最小限にとどめて復旧するための対応手順をあらかじめ定めた計画である。全てのシステムを同時に復旧することは難しいので,業務への影響から復旧の重要性と緊急性を評価し,対象や優先順位を決めることが大切である。アが適切である。
イのバックアップデータをコンピュータ室やセンタ内に保存すると,災害時に本番データと同時に失われるので,遠隔地に保管する。ウのバックアップの対象は,機密度ではなく業務の継続や復旧に必要かどうかで選ぶ。エの“予防策策定手順”は,緊急事態が発生した後の対応を定めるコンティンジェンシープランの中心ではなく,緊急時の対応手順や復旧手順を策定する。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
メールサーバ(SMTP サーバ)の不正利用を防止するために行う設定はどれか。
ア ゾーン転送のアクセス元を制御する。
イ 第三者中継を禁止する。 正解
ウ ディレクトリに存在するファイル名の表示を禁止する。
エ 特定のディレクトリ以外での CGI プログラムの実行を禁止する。
正解 イ
解説
SMTP サーバが自組織と無関係な送信元から無関係な宛先へのメールを中継してしまう状態(オープンリレー)だと,迷惑メールの踏み台にされる。これを防ぐには第三者中継を禁止し,自組織に関係する送信元・宛先だけを中継するように設定する。
アの DNS サーバのゾーン転送の制限,ウの Web サーバのディレクトリリスティングの禁止,エの Web サーバでの CGI 実行場所の制限は,いずれも別のサーバに対する設定である。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
用語解説:電子メールのプロトコル(SMTP・POP・IMAP)
問25
SSL に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア SSL で使用する Web サーバのディジタル証明書には IP アドレスの組込みが必須なので,Web サーバの IP アドレスを変更する場合は,ディジタル証明書を再度取得する必要がある。
イ SSL で使用する個人認証用のディジタル証明書は,IC カードなどに格納できるので,格納場所を特定の PC に限定する必要はない。 正解
ウ SSL は Web サーバを経由した特定の利用者間の通信のために開発されたプロトコルであり,Web サーバ提供者への事前の利用者登録が不可欠である。
エ 日本国内では,SSL で使用する共通鍵の長さは,128ビット未満に制限されている。
正解 イ
解説
SSL のクライアント認証に使う個人認証用のディジタル証明書と秘密鍵は,IC カードなどの持ち運べる媒体に格納できるので,特定の PC に保存しておく必要はない。イが適切である。
アは誤りで,サーバ証明書にはサーバの FQDN(コモンネーム)を記載し,IP アドレスを変更しても FQDN が同じなら再取得は不要である。ウは誤りで,SSL は Web ブラウザと Web サーバの間の通信を暗号化するためのプロトコルで,利用者登録を前提としていない。エは誤りで,日本国内で共通鍵の長さが 128 ビット未満に制限されているという規制はない。
出典:平成26年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
用語解説:共通鍵暗号と公開鍵暗号 TLS(SSL)
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