平成21年度 春期に実施されたプロジェクトマネージャ試験
午前Ⅱの全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:プロジェクトマネージャ試験について
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問1
次のシステム開発において,コードインスペクションを行うことによって期待できる効果(削減できる時間)は何時間か。ここで,NCSS はソースコードの注釈を除いた文の個数とする。また,バグ発見率 = 発見したバグ数 ÷ すべてのバグ数 とする。
システムの規模:6,000NCSS システムに存在するバグ数の推定値:1,000NCSS 当たり5件 バグ発見率:コードインスペクションを行った場合,バグ発見率は90%であり,残りのバグは単体テスト以降で発見される。コードインスペクションを行わなかった場合,すべてのバグは単体テスト以降で発見される。 コードインスペクションに要する時間:1,000NCSS 当たり4時間 コードインスペクションでバグが発見された場合のバグ1件当たりの修復時間:1時間 単体テスト以降でバグが発見された場合のバグ1件当たりの修復時間:5時間
正解 イ
解説
バグ数は 6,000 ÷ 1,000 × 5 = 30件である。コードインスペクションを行わない場合,30件すべてを単体テスト以降で直すので 30 × 5 = 150時間かかる。行う場合は,インスペクションに 6 × 4 = 24時間,そこで見つかる 30 × 0.9 = 27件の修復に 27 × 1 = 27時間,残る3件を単体テスト以降で直すのに 3 × 5 = 15時間で,合計 66時間になる。削減できる時間は 150 − 66 = 84時間で,イが正しい。
アの66はコードインスペクションを行った場合の合計時間で,削減量ではない。ウとエは,インスペクションの時間を数え落としたり,残りのバグの修復時間を入れ忘れたりしたときに出る値である。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
プロジェクトの進捗管理を EVM(Earned Value Management)で行っている。コストが超過せず,納期にも遅れないと予想されるプロジェクトはどれか。ここで,それぞれのプロジェクトの開発の生産性は今までと変わらないものとする。
正解 ウ
解説
EVM では,出来高(EV)と実コスト(AC)を比べるとコストの状況が,EV と計画値(PV)を比べるとスケジュールの状況が分かる。今後の生産性が変わらないとき,コストが超過しないのは EV が AC 以上(CPI≧1),納期に遅れないのは EV が PV 以上(SPI≧1)の場合である。現在の時点で EV が最も上にあり,PV,AC の順に並ぶウが両方を満たす。
アは EV が PV より上なので予定より進んでいるが,AC が EV を上回りコストが超過する。イは AC が最も高く EV が最も低いので,コスト超過でスケジュールも遅れている。エは AC が EV より低くコストは収まるが,EV が PV を下回りスケジュールが遅れている。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
用語解説:EVM(アーンドバリューマネジメント)
問3
ソフトウェアの開発規模見積りに利用されるファンクションポイント法の説明はどれか。
ア WBS によって作業を洗い出し,過去の経験から求めた作業ごとの工数を積み上げて規模を見積もる。
イ 外部仕様から,そのシステムがもつ入力,出力や内部論理ファイルなどの5項目に該当する要素の数を求め,さらに複雑さを考慮した重みを掛けて求めた値を合計して規模を見積もる。 正解
ウ ソフトウェアの開発作業を標準作業に分解し,それらの標準作業ごとにあらかじめ決められた標準工数を割り当て,それらを合計して規模を見積もる。
エ プログラム言語とプログラマのスキルから経験的に求めた標準的な生産性と,必要とされる手続の個数とを乗じて規模を見積もる。
正解 イ
解説
ファンクションポイント法は,システムがもつ機能の量を,利用者から見える外部仕様をもとに数える方法である。外部入力・外部出力・外部照会・内部論理ファイル・外部インタフェースファイルの5種類の要素を数え,それぞれの複雑さに応じた重みを掛けて合計し,規模(ファンクションポイント)とする。イが正しい。
アは WBS で作業を洗い出して工数を積み上げるボトムアップ見積り,ウは作業を標準作業に分けて標準工数を割り当てる標準タスク法の説明である。エは言語とプログラマのスキルから求めた生産性を使っており,機能の量を数えるファンクションポイント法ではない。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
工数が500人日と見積もられた開発プロジェクトを4人で開始したが,開発に遅れが出てきた。あと25日を残すところで,まだ160人日の工数が必要と見込まれるので,プログラマを増やすことにした。次のような条件がある場合,予定どおり,あと25日で開発プロジェクトを完了するには,少なくとも何人のプログラマを増やせばよいか。
〔条件〕
(1) 増員するプログラマは最初の10日間はプロジェクトの学習をそれぞれ行うものとする。 (2) プログラマを増員することによる作業の再分割やその後のコミュニケーションのオーバヘッドなどは無視できる。 (3) 増員するプログラマの生産性は,当初からのプログラマの生産性と変わらないものとする。
正解 イ
解説
当初からの4人は残りの25日で 4 × 25 = 100人日をこなせるので,不足は 160 − 100 = 60人日である。増員したプログラマは最初の10日間を学習に充てるため,開発に使えるのは 25 − 10 = 15日で,1人当たり15人日になる。60 ÷ 15 = 4 なので,少なくとも4人を増やせばよい。イが正しい。
アの3人では 45人日しか補えず足りない。ウの7人やエの8人は,学習期間を考えずに 160人日をそのまま割ったり,当初の4人の作業を数え落としたりしたときに出る値で,必要より多い。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
JIS X 0129-1 で規定されるソフトウェアの品質特性のうち,“効率性”の定義はどれか。
ア 指定された条件下で利用するとき,指定された達成水準を維持するソフトウェア製品の能力
イ 指定された条件の下で利用されるときに,明示的及び暗示的必要性に合致する機能を提供するソフトウェア製品の能力
ウ 修正のしやすさに関するソフトウェア製品の能力
エ 明示的な条件の下で,使用する資源の量に対比して適切な性能を提供するソフトウェア製品の能力 正解
正解 エ
解説
JIS X 0129-1(ISO/IEC 9126-1 の JIS 版。のちに JIS X 25010 に置き換わった)は,品質特性を機能性・信頼性・使用性・効率性・保守性・移植性の六つに分けている。効率性は“明示的な条件の下で,使用する資源の量に対比して適切な性能を提供するソフトウェア製品の能力”と定義されており,エが正しい。
アは達成水準を維持する能力で信頼性,イは必要性に合致する機能を提供する能力で機能性,ウは修正のしやすさで保守性の定義である。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
用語解説:JIS X 25010(システム及びソフトウェア品質モデル)
問6
グラフの使い方のうち,適切なものはどれか。
ア 各事業の利益構成比を表現するのに折れ線グラフを使う。
イ 各社の収益性,安定性及び生産性を比較するのに円グラフを使う。
ウ 過去3年間の売上推移を表現するのにレーダチャートを使う。
エ チェーン店における最寄り駅の乗降客数と来客数の相関を表現するのに散布図を使う。 正解
正解 エ
解説
散布図は,二つの量を縦軸と横軸にとって点を打ち,両者の間に相関があるかを見るためのグラフである。最寄り駅の乗降客数と店の来客数の関係を見るのに適しており,エが正しい。
アの構成比は円グラフや帯グラフで表す。折れ線グラフは時間とともに変わる量の推移に向く。イの複数の指標による各社の比較はレーダチャートが向いており,円グラフは一つの全体の内訳を示すものである。ウの売上の推移は折れ線グラフや棒グラフで表す。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
個々の内容の軽重に注目して,展開順序を決める文章の構成法がある。この構成法に従っているものはどれか。
ア 幾つかの事例を示した後に,システムがもつべき機能を説明する。
イ 業務処理の流れに沿って,システムの操作方法を説明する。
ウ プログラムの問題点を分析し,解決策と代替案を検討し,解決策を説明する。
エ 利用頻度の高いものから,システムの機能を説明する。 正解
正解 エ
解説
内容の軽重(重要度)に注目する構成法は,重要なものから順に,又はその逆の順に並べる方法である。利用頻度の高い機能,つまり読み手にとって重要な機能から説明するエがこれに当たる。
アは具体的な事例から一般的な結論へ進む帰納的な構成,イは処理の流れという時間の順序に沿った構成,ウは問題点の分析から解決策へ進む問題解決型の構成で,いずれも内容の軽重で順序を決めてはいない。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
リスクマネジメントにおける EMV(期待金額価値)の算出方法はどれか。
ア リスク事象発生時の影響金額 × リスク事象の発生確率 正解
イ リスク事象発生時の影響金額 ÷ リスク事象の発生確率
ウ リスク事象発生時の影響金額 × リスク対応にかかるコスト
エ リスク事象発生時の影響金額 ÷ リスク対応にかかるコスト
正解 ア
解説
EMV(期待金額価値)は,リスク事象が起きたときの影響金額に,その事象の発生確率を掛けた値。確率で重み付けした金額なので,起こりやすさと大きさの両方を 1 つの数値で比べられる。
イのように確率で割ったり,ウ・エのようにリスク対応のコストを掛けたり割ったりしても,期待値にはならない。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
デルファイ法を利用して,プロジェクトのリスクを抽出しているものはどれか。
ア ステークホルダや専門家にインタビューし,回答を収集してリスクとしてまとめる。
イ 複数の専門家にアンケートを行い,その結果を要約する。さらに要約結果でアンケートを行い,結果を要約することを繰り返すことでリスクをまとめる。 正解
ウ プロジェクトチームのメンバに複数の専門家を加えて会議をし,リスクに対する意見を出し合い,進行役がリスクとしてまとめる。
エ プロジェクトを強み,弱み,好機,脅威の各観点及びその組合せで分析し,リスクをまとめる。
正解 イ
解説
デルファイ法は,複数の専門家に匿名でアンケートを行い,集計した結果を示してもう一度回答してもらう,ということを繰り返して意見を収束させる手法である。互いの顔を合わせないので,声の大きい人や上位者の意見に引きずられにくい。アンケートと要約を繰り返すイが正しい。
アはインタビュー,ウは関係者が集まって意見を出し合うブレーンストーミング,エは強み・弱み・好機・脅威で分析する SWOT 分析によるリスクの抽出である。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
用語解説:デルファイ法と問題分析の技法
問10
プロジェクト遂行上のリスク事象を抽出,識別し,事象の発生確率とプロジェクトへの影響度から分類したリスク対応計画を立案する。リスク対策の考え方をまとめた表として,最も適切なものはどれか。ここで,“予防対策”は“当該リスク事象の発生を未然に防ぐ”ための対策を意味し,“発生時対策”は“当該リスク事象が実際に発生したとき”の対策を意味し,“受容”は“当該リスクへの対策をとらない”ことを意味する。
ア A:発生時対策,B:予防対策,C:予防対策と発生時対策,D:予防対策
イ A:予防対策,B:受容,C:予防対策と発生時対策,D:受容
ウ A:予防対策,B:受容,C:予防対策と発生時対策,D:発生時対策 正解
エ A:予防対策,B:予防対策,C:発生時対策,D:発生時対策
正解 ウ
解説
発生確率が高いリスクには発生を防ぐ予防対策を,影響度が大きいリスクには起きたときに被害を抑える発生時対策を用意する,と考えると整理できる。発生確率が高く影響度が小さい A は予防対策,両方が高い C は予防対策と発生時対策の両方,どちらも低い B は対策の費用に見合わないので受容,発生確率は低いが影響度が大きい D は発生時対策とする。この組合せのウが正しい。
アは発生確率の低い B と D に予防対策を,発生確率の高い A に発生時対策だけを充てており,向きが逆である。イは影響度の大きい D を受容としており,起きたときの被害を放置することになる。エは C に予防対策がなく,B を受容せずに予防対策の費用を掛けている。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
要求仕様が明確になっていない場合,納入者側のリスクが最も高くなる契約形態はどれか。
ア 実費償還契約
イ タイムアンドマテリアル契約
ウ 単価契約
エ 定額契約 正解
正解 エ
解説
定額契約(完成物に対して決まった金額を支払う契約)では,作業量が見込みより増えても代金は変わらない。要求仕様が明確でないと作業量が膨らみやすく,その費用を納入者がかぶることになるので,納入者側のリスクが最も高い。エが正しい。
アの実費償還契約は掛かった費用を発注者が支払うので,リスクは主に発注者側にある。イのタイムアンドマテリアル契約は作業時間と資材に単価を掛けて支払い,ウの単価契約は単位当たりの価格で数量に応じて支払うので,作業量が増えれば代金も増え,納入者のリスクは定額契約より小さい。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
システム開発で行われる各テストについて,そのテスト要求事項が定義されるアクティビティとテストの組合せのうち,適切なものはどれか。
ア システム方式設計:運用テスト,ソフトウェア方式設計:システム結合テスト,ソフトウェア詳細設計:ソフトウェア結合テスト
イ システム方式設計:運用テスト,ソフトウェア方式設計:ソフトウェア結合テスト,ソフトウェア詳細設計:ソフトウェアユニットテスト
ウ システム方式設計:システム結合テスト,ソフトウェア方式設計:ソフトウェア結合テスト,ソフトウェア詳細設計:ソフトウェアユニットテスト 正解
エ システム方式設計:システム結合テスト,ソフトウェア方式設計:ソフトウェアユニットテスト,ソフトウェア詳細設計:ソフトウェア結合テスト
正解 ウ
解説
共通フレームの考え方では,設計の各段階で定義した事項が正しく実現されているかを,対応するテストで確認する(V字モデル)。システム方式設計で定義したシステムの構成や要件はシステム結合テストで,ソフトウェア方式設計で定義したソフトウェアの構造やコンポーネント間のインタフェースはソフトウェア結合テストで,ソフトウェア詳細設計で定義したユニットの仕様はソフトウェアユニットテストで確認する。ウが適切である。
ア,イの運用テストは,利用者が実際の運用環境で業務に使えるかを確認するテストで,システム要件定義や運用の要件に対応する。エはソフトウェア方式設計と詳細設計に対応するテストが入れ替わっている。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
システムの分析・設計に用いられる状態遷移図の特徴はどれか。
ア システムの現在の状態と発生する事象及び次の状態の関係が簡潔に記述可能 正解
イ システムの状態遷移に要する処理時間が分析可能
ウ 発生した事象の時間的関係が分析可能
エ モジュールの制御構造が簡潔に記述可能
正解 ア
解説
状態遷移図は,システムが取りうる状態を丸などで表し,ある状態で事象が発生したときにどの状態へ移るかを矢印でつないで表す図である。現在の状態・発生する事象・次の状態の関係を簡潔に書けるので,アが正しい。
イの処理時間は状態遷移図には書かず,性能の分析や待ち行列の計算で扱う。ウの事象の時間的な前後関係はタイミングチャートやシーケンス図が向いている。エのモジュールの制御構造は構造化チャートやフローチャートで表す。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
ハードウェアの保守点検及び修理作業を実施するときに,運用管理者が実施すべき,事前又は事後の確認に関する説明のうち,適切なものはどれか。
ア システムが自動的に回復処置を行った障害については,障害前後のエラーログが残っているので,障害原因や対応処置の報告ではなく,ログの分析結果を確認する。
イ 定期保守時の点検項目は事前に分かっているので,事前と事後の確認は省略できるが,作業の開始と終了については,保守作業者に確認する。
ウ 予防保守を遠隔保守方式で行う場合,遠隔地のシステムへの影響は出ないので,作業内容などの事前確認は行わず,事後に作業実施結果を確認する。
エ 臨時保守の場合,事前に保守作業者が障害の発生状況を確認したことを確認し,事後に障害原因や作業実施結果を確認する。 正解
正解 エ
解説
臨時保守は,障害が発生したときに行う保守である。運用管理者は,作業前に保守作業者が障害の発生状況を正しく把握したことを確認し,作業後には障害の原因と作業の実施結果を確認して,復旧したことや再発防止策を確かめる。エが適切である。
アのシステムが自動的に回復した障害も,原因や対応処置の報告を受けて再発のおそれがないかを確認する必要があり,ログの分析結果だけで済ませるのは不十分である。イの定期保守でも,作業内容や影響範囲の事前確認と,作業後にシステムが正常に稼働していることの事後確認は省略できない。ウの遠隔保守も遠隔地のシステムに手を加える作業なので影響が出るおそれがあり,事前確認を省くのは誤りである。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
ソフトウェア開発のプロセスモデルのうち,開発サイクルを繰り返すことによって,システムの完成度を高めていくプロセスモデルはどれか。
ア RAD モデル
イ ウォータフォールモデル
ウ スパイラルモデル 正解
エ プロトタイピングモデル
正解 ウ
解説
スパイラルモデルは,システムをいくつかの部分に分け,計画,リスク分析,開発,評価のサイクルを繰り返しながら,らせんを描くように少しずつ機能を追加し,システムの完成度を高めていくプロセスモデルである。ウが該当する。
アの RAD は,少人数の開発チームが開発支援ツールなどを活用し,期間を区切って短期間で開発する手法である。イのウォータフォールモデルは,要件定義から設計,製造,テストまでの工程を上流から順に一度だけ進めるモデルである。エのプロトタイピングモデルは,開発の早い段階で試作品を作って利用者に確認してもらい,要求を明確にする手法で,試作は要求を確かめるためのものである。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
ソフトウェアを保守するときなどに利用される技術であるリバースエンジニアリングの説明はどれか。
ア ソースプログラムを解析してプログラム仕様書を作る。 正解
イ ソースプログラムを探索して修正箇所や影響度を調べる。
ウ ソースプログラムを見直して構造化プログラムに変換する。
エ ソースプログラムを分かりやすい表現に書き換える。
正解 ア
解説
リバースエンジニアリングは,既存のソースプログラムなどを解析して,その構造や仕様を読み取り,設計書や仕様書などの上位の表現を得る技術である。ドキュメントの残っていないソフトウェアを保守するときなどに使われる。アが該当する。
イは,修正の影響が及ぶ範囲を調べる影響分析(インパクト分析)である。ウは,機能を変えずにプログラムを構造化された形に変換するリストラクチャリング,エは,外部から見た動作を変えずにプログラムを分かりやすく書き換えるリファクタリングに当たり,いずれも同じ抽象度のままでの変換であって,上位の仕様を得るリバースエンジニアリングではない。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
データベースサーバのハードディスクに障害が発生した場合でもサービスを続行できるようにするための方策として,最も適切なものはどれか。
ア 共通データベースの格納場所を複数のハードディスクに分散させる。
イ サーバのディスクを二重化し,通常稼働時は同時に二つのディスクに書き込む。 正解
ウ サーバの予備機を設置し,OS とアプリケーションソフトを本番機と同じ構成にして待機させておく。
エ 別のディスクにデータベースを毎週末にコピーする。
正解 イ
解説
ディスクを二重化(ミラーリング)し,通常稼働時から常に二つのディスクに同じデータを書き込んでおけば,一方のディスクが故障しても,もう一方のディスクを使ってそのまま処理を続けられる。データも最新の状態に保たれるので,ハードディスクの障害時にサービスを続行する方策としてイが最も適切である。
アの格納場所を複数のディスクに分散させるのは負荷分散の方法で,どれか 1 台が故障すればそのディスクにあるデータが使えなくなる。ウの予備機を待機させても,データベースが本番機のディスクにある限り,ディスクの障害で失われたデータは予備機にない。エの毎週末のコピーでは,最大で 1 週間分の更新が失われ,復元の間はサービスも止まる。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
業務プログラムの運用・保守の考え方のうち,適切なものはどれか。
ア エラーの原因究明のために業務プログラム中に記述した,エラーログ採取やトレースのためのコードは,運用時のデータ処理効率の低下の原因にならない場合でも運用開始時にはすべて取り除くべきである。
イ 業務プログラムに精通することは運用管理を容易にするが,すべての担当者がそうなることは困難なので,運用マニュアルなどを整備しておく必要がある。 正解
ウ 業務プログラムの運用中にエラーが発生したとき,すぐに修正できるものであれば,運用管理者が自ら修正して,業務に支障がないようにすることが望ましい。
エ データ処理の手順の変更に伴い業務プログラムを修正したときは,元のプログラムを開発したときのテストデータだけを使った確認テストを行い,運用を再開することが望ましい。
正解 イ
解説
運用担当者が皆プログラムの中身に精通するのは難しく,担当者が替わることもある。誰が担当しても同じ手順で運用できるよう,運用マニュアルなどを整えておくことが必要で,イが正しい。
アのエラーログやトレースのコードは,処理効率を落とさないなら運用後の障害の原因究明に役立つので,すべて取り除くべきとは言えない。ウは,運用管理者がプログラムを直接直すと変更管理を経ない修正になり,開発と運用の職務の分離にも反する。エは,変更した手順に合わせたテストデータを用意して確かめる必要があり,元の開発時のテストデータだけでは修正部分を確かめられない。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
IT サービスマネジメントを導入する際の手順はどれか。
a 継続的改善方法の検討 b 現状の把握 c ビジョンの明確化 d 目標達成状況の把握方法の検討 e 目標達成方法の検討 f 目標の設定
ア b→c→e→f→d→a
イ b→f→c→a→d→e
ウ c→b→f→e→d→a 正解
エ c→f→b→a→d→e
正解 ウ
解説
IT サービスマネジメントの導入は,まず目指す姿(ビジョン)を明確にし(c),現状を把握して(b)ビジョンとの差を確かめ,その差を埋める目標を設定する(f)。次に目標を達成する方法を検討し(e),達成状況をどう測るかを決め(d),最後に継続的に改善していく方法を検討する(a)。この順のウが正しい。
アとイは,ビジョンより先に現状の把握から始めており,どこを目指すかが決まらないまま現状を調べることになる。イとエは,目標の達成方法や達成状況の把握方法より先に継続的改善の方法を検討しており,改善の対象となる仕組みがまだ無い段階で改善を考える順序になっている。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
サプライチェーンマネジメントの改善指標となるものはどれか。
ア 残業時間の減少率
イ 販売単価下落の防止率
ウ 不良在庫の減少率 正解
エ 優良顧客数の増加率
正解 ウ
解説
サプライチェーンマネジメント(SCM)は,資材の調達から生産,物流,販売までの一連の流れを企業や部門の枠を越えて統合的に管理し,全体の在庫を適正化してリードタイムの短縮やコストの削減を図る手法である。売れ残りや過剰生産による不良在庫が減ったかどうかは,SCM の改善の度合いを示す指標になる。ウが該当する。
アの残業時間の減少率は労働環境や業務効率の指標,イの販売単価下落の防止率は価格戦略の指標,エの優良顧客数の増加率は CRM(顧客関係管理)の改善指標である。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
情報システムの全体計画立案のために E-R モデルを用いて全社のデータモデルを作成する手順はどれか。
ア 管理層の業務から機能を抽出し,機能をエンティティとする。次に,機能の相互関係に基づいてリレーションシップを定義する。さらに,全社の帳票類を調査,整理し,正規化された項目に基づいて属性を定義し,全社のデータモデルとする。
イ 企業の全体像を把握するため,基本的なエンティティだけを抽出し,それらの相互間のリレーションシップを含めて,鳥瞰図を作成する。次に,エンティティを詳細化し,すべてのリレーションシップを明確にしたものを全社のデータモデルとする。 正解
ウ 業務層の現状システムを分析し,エンティティとリレーションシップを抽出する。それぞれについて適切な属性を定め,これらを基に E-R 図を作成し,それを抽象化して,全社のデータモデルを作成する。
エ 全社のデータとその処理過程を分析し,重要な処理を行っている業務を基本エンティティとする。次に,基本エンティティ相互のデータの流れをリレーションシップとしてとらえ,適切な識別名を与える。さらに,基本エンティティと関係あるデータを属性とし,全社のデータモデルを作成する。
正解 イ
解説
全社のデータモデルは,全体計画の立案に使うため,まず企業全体を見渡せることが重要である。そこで,トップダウンで企業活動の中心となるエンティティだけを抽出し,それらの間のリレーションシップを含めた鳥瞰図を作成して全体像を把握する。次に,エンティティを詳細化し,全てのリレーションシップを明確にして全社のデータモデルに仕上げる。イが適切である。
アは機能をエンティティとしており,業務の機能とデータを取り違えている。ウは業務層の現状システムからボトムアップに積み上げるので,現状の個別システムの構造に引きずられ,全社の視点をもったモデルになりにくい。エは業務(処理)をエンティティ,データの流れをリレーションシップとしており,データフローの考え方と E-R モデルを混同している。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
用語解説:データベースの設計(正規化・E-R 図・参照制約)
問22
共通フレーム2007 によれば,要件定義プロセスのアクティビティはどれか。
ア システム化計画の立案
イ システム方式設計
ウ ソフトウェア要件定義
エ 利害関係者要件の定義 正解
正解 エ
解説
共通フレーム2007 は,企画プロセスの次に要件定義プロセスを置き,そこで利害関係者(ステークホルダ)を識別して要件を引き出し,業務要件などとしてまとめる。そのアクティビティの一つが“利害関係者要件の定義”で,エが正しい。
アのシステム化計画の立案は,要件定義より前の企画プロセスのアクティビティである。イのシステム方式設計とウのソフトウェア要件定義は,要件定義の後の開発プロセスのアクティビティである。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)
問23
A 社は,B 社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず,A 社の要求仕様に基づいて,販売管理システムのプログラム作成を B 社に依頼した。この場合のプログラム著作権の原始的帰属は,どのようになるか。
ア A 社,B 社で共有する。
イ A 社と B 社が話し合って決定する。
ウ A 社に帰属する。
エ B 社に帰属する。 正解
正解 エ
解説
著作権は,原則としてその著作物を実際に創作した者に原始的に帰属する。法人に帰属するのは著作権法第15条の職務著作に当たる場合で,これは法人等の業務に従事する者が職務上作成したときの規定である。今回プログラムを作成したのは受託した B 社なので,特段の取決めがなければ著作権は B 社に帰属する。エが正しい。
アの共有帰属となるのは両社が共同で創作し,各人の寄与を分離して利用できない場合である。イのように後から話し合って決めるのは原始的帰属ではなく,譲渡の取決めの話になる。ウのように委託した A 社に帰属させるには,契約で著作権の譲渡を定めておく必要がある。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
ソフトウェア開発を下請業者に委託する場合,下請代金支払遅延等防止法で禁止されている行為はどれか。
ア 交通費などの経費については金額を明記せず,実費負担とする旨を発注書面に記載する。
イ 下請業者に委託する業務内容は決まっているが,ユーザ側との契約代金が未定なので,下請代金の取決めはユーザとの契約決定後とする。 正解
ウ 発注書面を交付する代わりに,下請業者の承諾を得て,必要な事項を記載した電子メールで発注を行う。
エ ユーザ側の事情で下請予定の業務内容の一部が未定なので,その部分及び下請代金は別途取り決める。
正解 イ
解説
下請代金支払遅延等防止法は,親事業者に対し,発注に当たって下請代金の額を含む必要事項を記載した書面(3条書面)を直ちに交付することを義務付けている。委託する業務内容が決まっているのに,自社とユーザとの契約が決まるまで下請代金を定めないという進め方は,代金を定められない正当な理由があるとはいえず,この義務に反する。イが禁止されている行為である。
アは,具体的な金額を書くことが難しいやむを得ない事情がある場合,金額を定めることとなる算定方法を記載すれば足りるとされているので問題ない。ウは,下請事業者の承諾を得れば電磁的方法(電子メールなど)による提供が認められている。エは,正当な理由で内容を定められない事項について,その理由と内容を定めることとなる予定期日を書いたうえで,定まり次第あらためて書面を交付することが認められている。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
個人情報保護法で保護される個人情報の条件はどれか。
ア 企業が管理している顧客に関する情報に限られる。
イ 個人が秘密にしているプライバシに関する情報に限られる。
ウ 生存している個人に関する情報に限られる。 正解
エ 日本国籍の個人に関する情報に限られる。
正解 ウ
解説
個人情報保護法の個人情報は,生存する個人に関する情報であって,氏名や生年月日などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合して識別できるものを含む)や,個人識別符号を含むものをいう。亡くなった人の情報は対象外なので,ウが正しい。
アは誤りで,顧客に限らず従業員や取引先の担当者などの情報も対象になる。イは誤りで,本人が秘密にしている情報に限らず,公開されている氏名なども個人情報に当たる。エは誤りで,国籍は問わず,外国人の情報も対象になる。
出典:平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
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