JIS X 0160 は,ソフトウェアの構想・企画から開発,運用,保守,廃棄までに行う作業を,プロセス・アクティビティ・タスクの階層で体系立てた規格です。 国際規格 ISO/IEC/IEEE 12207 に対応しています。 共通フレームは,この規格と整合させて IPA がまとめたガイドラインで,ソフトウェアやシステムに関わる取得者(ユーザ)と供給者(ベンダ)が 「同じ言葉」で話すための共通の枠組みです。試験では両方が名指しされます。
規格と共通フレームの関係
| 名前 | 基にした国際規格 | 試験での名指し |
|---|---|---|
| 共通フレーム2007 | ISO/IEC 12207 の旧版 | 平成21〜24年度 |
| 共通フレーム2013 | ISO/IEC 12207:2008(JIS X 0160:2012) | 平成29年度〜令和3年度 |
| JIS X 0160:2021 | ISO/IEC/IEEE 12207:2017 | 令和4年度から |
2017年版の国際規格は,システム全体を対象にした ISO/IEC/IEEE 15288(JIS X 0170:2020,システムライフサイクルプロセス)と プロセスの構造をそろえ,プロセスの名前やタスクの記述もほとんど同じにしました。 IPA は 2021年9月,共通フレーム2013 は改訂しないと公表しています。 そのため共通フレーム2013 は最新の JIS X 0160:2021 とは整合しませんが,ソフトウェアに閉じた範囲で企画・開発・運用を行う分には不都合はない,としています。
出典:IPA「国際規格/JIS 改訂に対応する「共通フレーム」の利用について」(2021年9月1日。2026年10月3日に確認)
JIS X 0160:2021 の4つのプロセスグループ
| プロセスグループ | 役割 |
|---|---|
| 合意プロセス | 取得者と供給者の間で,製品やサービスを取得・供給するための合意を結ぶ |
| 組織のプロジェクトイネーブリングプロセス | プロジェクトが利害関係者のニーズを満たせるよう,組織として必要な資源や仕組みを提供する(品質管理,知識管理など) |
| テクニカルマネジメントプロセス | 割り当てられた資源と資産を管理し,合意を果たすためにプロジェクトを運営する(品質保証など) |
| テクニカルプロセス | 利害関係者のニーズを製品やサービスに変換し,運用・保守・廃棄までを行う(要件定義,アーキテクチャ定義,設計定義,実装,統合,検証,移行,妥当性確認,運用,保守,廃棄など) |
2021年版は,旧版にあったソフトウェア固有のプロセスグループ(ソフトウェア実装・ソフトウェア支援・ソフトウェア再利用)を解体し, プロセスの名前からも「ソフトウェア」を外して,システムライフサイクルプロセスと同じ体系にしました。 旧版のシステム適格性確認テストやソフトウェア適格性確認テストなども,独立したプロセスではなくなり,近いプロセスに吸収されています。 また,開発前の超上流として,ビジネスやミッション上の問題・機会を分析するプロセスが加わりました。
よく出る区別:検証と妥当性確認
| 確かめること(「」は過去問の選択肢の文) | |
|---|---|
| 検証 | 「システム又はシステム要素がその指定された要件(要求事項)及び特性を満たしていることの客観的な証拠を提供する。」 =決めたとおりに作れているか |
| 妥当性確認 | システムが利用中に,意図された運用環境で意図された用途を達成し,ビジネスやミッションの目標と利害関係者の要件を満たすという客観的証拠を提供する =本当に役に立つものになっているか |
試験での問われ方
当サイトが収録している午前の問題のうち,JIS X 0160 か共通フレーム(2007・2013)を名指しするのは29問です。 14問がシステムアーキテクトの午前Ⅱです。テーマごとに数えると次のとおりです。
- 企画・要件定義(超上流,11問)。共通フレームの企画プロセス(システム化構想の立案,システム化計画の立案)と要件定義プロセス。 要件の識別で行う作業「利害関係者から要件を漏れなく引き出し,制約条件や運用シナリオなどを明らかにする。」(2問), 要件定義の段階でセキュリティ機能を決めること(2問),システム要件の分析を委託したときに結果を承認するのは「取得者」(1問)などです。
- JIS X 0160:2021 のプロセス(8問)。修整(Tailoring)の定義(2問。令和4年度春期にシステムアーキテクトと情報処理安全確保支援士で同じ問題), 廃棄プロセス(2問),テクニカルプロセスの説明,移行プロセスのタスク,妥当性確認プロセスの目的,ソフトウェア受入れテスト(各1問)です。
- システム適格性確認テスト(4問)。共通フレームで,システム適格性確認テストが適合を評価する対象は「システム要件定義」で定義した内容(3問), テストの説明(1問)です。
- そのほか(6問)。共通フレームの目的と取り決め(2問),旧版の JIS X 0160 のプロセスの成果・タスク(2問),システム結合テストの評価基準,保守プロセスの修正の実施(各1問)です。
これから問われそうなところ(予想)
令和4年度からは JIS X 0160:2021 での出題に切り替わり,毎年出ています。2021年版で新しく加わったり,組み直されたりした部分はまだあまり問われていません。
- ソフトウェア固有のプロセスグループの解体と,システムライフサイクルプロセス(JIS X 0170)との統合
- 超上流の,ビジネスやミッション上の問題・機会の分析
- アーキテクチャ定義・設計定義・システム分析を繰り返して設計を詰めていく考え方
- 品質保証(テクニカルマネジメントプロセス,プロジェクトが対象)と品質管理(組織のプロジェクトイネーブリングプロセス,組織として確立)の対
- 合意プロセスでの合意の変更管理,知識を組織で活用するための知識管理
また,共通フレーム2013 は改訂されないため,今後は共通フレームより JIS X 0160:2021 が名指しされると考えられます。 共通フレームで学んだ「システム適格性確認テスト」などの言葉は,2021年版では独立したプロセスとしては出てこない点に注意します。
予想問題(オリジナル)
当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。ほかの用語の予想問題の一覧
問1JIS X 0160:2021 で,プロジェクトを対象とする品質保証プロセスが属するプロセスグループはどれか。
- ア合意プロセス
- イ組織のプロジェクトイネーブリングプロセス
- ウテクニカルプロセス
- エテクニカルマネジメントプロセス
正解と解説
正解:エ
2021年版では,旧版のソフトウェア支援プロセスグループにあったソフトウェア品質保証プロセスが,プロジェクトを対象とする品質保証プロセスとしてテクニカルマネジメントプロセスに移りました。 組織として確立する品質管理プロセス(組織のプロジェクトイネーブリングプロセス)と対になっています。
問2JIS X 0160:2021 における,旧版(JIS X 0160:2012)からの変更点として,適切なものはどれか。
- ア共通フレーム2013 をそのまま日本産業規格として制定し,取得者と供給者の役割を詳細に規定した。
- イシステム適格性確認テストを独立したプロセスとして新たに設け,ソフトウェア適格性確認テストと区別した。
- ウソフトウェア固有のプロセスグループを解体し,プロセスの名前や成果をシステムライフサイクルプロセスと同じ体系にそろえた。
- エテクニカルプロセスを廃止し,その内容を合意プロセスと組織のプロジェクトイネーブリングプロセスに移した。
正解と解説
正解:ウ
2021年版は,ソフトウェア実装・ソフトウェア支援・ソフトウェア再利用の各プロセスグループを解体し,システムライフサイクルプロセス(JIS X 0170)と同じ体系に統合しました。
- ア:共通フレームは IPA のガイドラインで,JIS ではありません。共通フレーム2013 は改訂もされていません。
- イ:逆です。システム適格性確認テストなどは独立したプロセスではなくなり,近いプロセスに吸収されました。
- エ:テクニカルプロセスは残っています。
出題された過去問(29問)
リンク先の年度ページで,問題と解説を読めます。
午前Ⅰ(高度試験 共通)(2問)
- 平成23年度 特別試験 問17共通フレーム 2007 をソフトウェア産業界に導入する目的として,適切なものはどれか。
- 平成21年度 春期 問25共通フレーム 2007 によれば,要件定義プロセスで行うべき作業はどれか。
システムアーキテクト 午前Ⅱ(14問)
- 令和6年度 春期 問10JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,移行プロセスで実施…
- 令和6年度 春期 問11JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,廃棄プロセスに関す…
- 令和5年度 春期 問11JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ソフトウェアライフ…
- 令和4年度 春期 問11JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,廃棄プロセスのタス…
- 令和4年度 春期 問12JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ライフサイクルモデ…
- 令和3年度 春期 問9共通フレーム 2013 において,システム適格性確認テストで適合を評価する対象となるのは,どのア…
- 令和3年度 春期 問11共通フレーム 2013 によれば,保守プロセスの“修正の実施”アクティビティの中で,ソフトウェア…
- 平成30年度 秋期 問2共通フレーム 2013 によれば,システム要件の分析を供給者に委託した場合,要件の分析結果を承認…
- 平成30年度 秋期 問12共通フレーム 2013 において,システム適格性確認テストで適合を評価する対象となるのは,どのア…
- 平成30年度 秋期 問14共通フレーム 2013 によれば,要件定義プロセスの活動内容には,利害関係者の識別,要件の識別,…
- 平成28年度 秋期 問1JIS X 0160 で規定しているテクニカルプロセスにおける,システム要求事項分析プロセスの成…
- 平成24年度 秋期 問11共通フレーム 2007 における,システム適格性確認テストで確認する内容を明確にするアクティビテ…
- 平成22年度 秋期 問12共通フレーム 2007 において,システム結合テストの評価で考慮すべき基準となっているものはどれ…
- 平成21年度 秋期 問12共通フレーム 2007 によれば,システム化計画の立案よりも後のプロセスで実施するものはどれか。
ITストラテジスト 午前Ⅱ(5問)
- 平成30年度 秋期 問5共通フレーム 2013 によれば,要件定義プロセスの活動内容には,利害関係者の識別,要件の識別,…
- 平成29年度 秋期 問1共通フレーム 2013によれば,システム化構想の立案プロセスで実施するタスクはどれか。
- 平成22年度 秋期 問4共通フレーム 2007 によれば,企画プロセスのシステム化計画の立案において定義するものはどれか…
- 平成21年度 秋期 問6共通フレーム 2007 によれば,システム化計画の立案よりも後のプロセスで実施するものはどれか。
- 平成21年度 秋期 問7共通フレーム 2007 によれば,企画プロセスのアクティビティはどれか。
プロジェクトマネージャ 午前Ⅱ(4問)
- 令和7年度 秋期 問14JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,テクニカルプロセス…
- 令和5年度 秋期 問16JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ソフトウェアシステ…
- 平成30年度 春期 問16共通フレーム2013におけるシステム開発プロセスのアクティビティであるシステム適格性確認テストの…
- 平成28年度 春期 問16JIS X 0160 において,“開発者は,ソフトウェア結合のために暫定的なテスト要求事項及びス…
情報処理安全確保支援士 午前Ⅱ(4問)
- 令和4年度 春期 問23JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ライフサイクルモデ…
- 平成23年度 特別試験 問14共通フレーム 2007 に従いシステム開発の要件定義の段階で実施することとして,適切なものはどれ…
- 平成23年度 特別試験 問23共通フレーム 2007 で取り決められているものはどれか。
- 平成21年度 秋期 問15SLCP(共通フレーム)に従いシステム開発の要件定義の段階で実施することとして,適切なものはどれ…
関連する用語
JIS X 25010(システム及びソフトウェア品質モデル) テスト技法(ブラックボックス・ホワイトボックス) JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)