ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は,IT サービスを運用・管理するためのベストプラクティス(成功事例)をまとめた書籍群です。 もとは英国政府がまとめたもので,規格ではなく「手本」の位置付けです。 ITサービスマネージャ試験の午前Ⅱでは,ITIL の用語の定義がそのまま問われてきました。
ひとことで
ITIL は,サービスをどう作り,どう運用に移し,どう回し,どう良くしていくかを,プロセスごとに整理しています。 インシデント管理・問題管理・変更管理・可用性管理といったプロセスの名前は,ITIL から広まりました。
これを組織が認証を受けられる要求事項の形にしたのが JIS Q 20000(ISO/IEC 20000)です。 ITIL は「こうするとうまくいく」という手引,JIS Q 20000 は「これを満たすこと」という規格,と覚えると見分けられます。
版の移り変わりと試験
過去問の問題文に出てくる版は次のとおりです。平成21年度は v2,平成22年度・24年度は v3,平成29年度から令和4年度は「ITIL 2011 edition」と版を書いて出題されています。
| 版 | 特徴 |
|---|---|
| ITIL v2 | サービスサポート(インシデント管理・問題管理など)とサービスデリバリ(サービスレベル管理・可用性管理など)の2つを中心にまとめた |
| ITIL v3・ITIL 2011 edition | サービスをライフサイクルで捉え,5つの段階に分けた(下の表)。2011 edition は v3 の改訂版 |
| ITIL 4(2019年〜) | サービスを通じた価値の共創を中心に据えて組み直した。プロセスは「プラクティス」と呼ぶようになった |
当サイトが収録している範囲では,ITIL を名指しする問題は令和4年度春期が最後です。 令和5年度から令和7年度のITサービスマネージャの午前Ⅱには ITIL を名指しする問題が無く, 代わりに JIS Q 20000 を名指しする問題が出ています(令和5年度4問,令和6年度2問,令和7年度6問)。 ただし,プロセスの考え方(インシデント管理と問題管理の違い,可用性の指標など)は JIS Q 20000 でも同じなので,ITIL の過去問は今も練習になります。
サービスライフサイクル(v3・2011 edition)
| 段階 | 何をするか |
|---|---|
| サービスストラテジ | どんなサービスを提供するかの戦略を決める。サービスポートフォリオを管理する |
| サービスデザイン | サービスを設計する。サービスレベル管理・可用性管理・キャパシティ管理・IT サービス継続性管理など |
| サービストランジション | 設計したサービスを運用に移す。変更管理・サービス資産管理および構成管理など |
| サービスオペレーション | 日々の運用。イベント管理・インシデント管理・問題管理・サービスデスクなど |
| 継続的サービス改善 | ほかの4段階を通して,サービスを測り,改善し続ける。7ステップの改善プロセスなど |
段階の順番を図の空欄で問う問題が2回出ています(正解は「a:サービスストラテジ,b:サービスデザイン,c:サービストランジション,d:サービスオペレーション」)。 サービストランジションの説明は「規定された要件と制約に沿って,サービスを運用に移行し,確実に稼働させることである。」が正解の定番です。
サービスポートフォリオとサービスカタログ
サービスポートフォリオは,提供者が管理するすべてのサービスの一覧で,次の3つからなります。
| 構成要素 | 入るサービス |
|---|---|
| サービスパイプライン | 将来提供する予定の,検討中・開発中のサービス |
| サービスカタログ | 稼働中のサービス(顧客が見られる) |
| 廃止済みサービス | 提供を終えたサービス |
サービスパイプラインに入るのは「将来提供する予定である開発中のサービス」で,4回出ています。 サービスカタログとの関係は「サービス・カタログは,サービス・ポートフォリオで管理するサービスのうち,稼働中の全てのサービスを記載したものである。」が正解です(2回)。
可用性管理の指標
ITIL の可用性管理では,止まらないこと(信頼性)と,止まってもすぐ戻ること(保守性)を分けて測ります。
| 指標 | 求め方 | 表すもの |
|---|---|---|
| MTBF(平均故障間隔) | 使用可能な時間 ÷ 停止の回数 | 信頼性 |
| MTBSI(平均サービス・インシデント間隔) | 全体の時間(使用可能な時間+停止時間)÷ 停止の回数 | 信頼性 |
| MTRS(平均サービス回復時間) | 停止時間の合計 ÷ 停止の回数 | 保守性 |
令和4年度春期の問題では,2,020時間のうち使用可能な時間が2,000時間で,5時間と15時間の停止が1回ずつありました。 MTBSI は 2,020 ÷ 2 = 1,010時間,MTBF は 2,000 ÷ 2 = 1,000時間,MTRS は 20 ÷ 2 = 10時間なので,正解は「MTBSI>MTBF>MTRS」です。 MTBF と稼働率の計算は稼働率のページにまとめています。
試験での問われ方
当サイトが収録している午前の問題のうち,ITIL という語が出てくるのは61問です。 50問がITサービスマネージャの午前Ⅱで,残りは午前Ⅰ(7問)と,プロジェクトマネージャ・情報処理安全確保支援士の午前Ⅱ(2問ずつ)です。 同じ問題が年度を変えて何度も出ているのが特徴です。型ごとに数えると次のとおりです。
- インシデント管理・問題管理とその周り(16問)。 インシデントモデルを定義するメリット(5問。正解は「繰り返し発生するインシデントに対して,事前に定義された経路で,事前に定義された時間枠内に対応できる。」など), イベント管理が分担する活動(4問。「インシデントの発生を検知して,関連するプロセスに通知する。」), 階層的エスカレーション,ワークアラウンド,バーチャルサービスデスク,問題管理の目標などです。 詳しくはインシデント管理と問題管理のページにあります。
- 可用性管理(13問)。可用性管理の定義を選ぶ問題(6問)のほか,KPI に使う指標(「サービスの中断回数」など), MTRS や MTBSI の計算,リアクティブな活動で用いる技法(正解は「サービス障害分析(SFA)」)が出ています。
- サービスライフサイクル(7問)。段階の順番(2問)とサービストランジションの説明(5問)です。
- サービスポートフォリオ(6問)。サービスパイプライン(4問)と,サービスカタログとの関係(2問)です。
- 継続的サービス改善(5問)。目標値の条件“SMART”の“A”(3問。正解は「Achievable(達成可能)」)と,7ステップの改善プロセス(2問)です。
- 変更管理と構成管理(4問)。変更諮問委員会(CAB)の役割(2問。「変更の許可を支援し,変更の評価と優先度付けにおいて変更管理を援助する。」)と, 構成コントロールが適切でないと起きること(2問。「ライセンス契約数を超えて行われる,ソフトウェアの利用」)です。
- このほか,IT サービス継続性管理(2問),サービスレベル管理(2問。SLA のページも参照), キャパシティ管理の監視項目,サプライヤのカテゴリ,Risk IT フレームワーク,“ユーザ”と“顧客”の違い,ギャップ分析などが1問ずつあります。 午前Ⅰには,CMMI を選ばせる問題の誤りの選択肢として ITIL が並んだものもあります。
出題された過去問(61問)
リンク先の年度ページで,問題と解説を読めます。
午前Ⅰ(高度試験 共通)(7問)
- 令和4年度 春期 問20ITIL 2011 edition では,可用性管理における重要業績評価指標(KPI)の例として…
- 平成30年度 秋期 問20図は,ITIL 2011 edition のサービスライフサイクルの各段階の説明と流れである。a…
- 平成29年度 春期 問20ITIL 2011 edition の可用性管理プロセスにおいて,IT サービスの可用性と信頼性…
- 平成27年度 春期 問20ITIL の可用性管理プロセスにおいて,IT サービスの可用性と信頼性の管理に関わる KPI と…
- 平成22年度 春期 問17ソフトウェアプロセスの標準化と最適化を推進し,製品やサービスの開発,調達及び保守活動において,組…
- 平成22年度 春期 問20ITIL v3 における問題管理プロセスの目標はどれか。
- 平成21年度 秋期 問21ITIL において,問題管理でエラーの根本原因を識別した後に RFC を出す対象となるプロセスは…
ITサービスマネージャ 午前Ⅱ(50問)
- 令和4年度 春期 問3ITIL 2011 edition では,可用性管理における KPI の例として,平均サービス・…
- 令和4年度 春期 問4ITIL 2011 edition によれば,サービス・ポートフォリオとサービス・カタログとの関…
- 令和4年度 春期 問7ITIL 2011 edition によれば,インシデント管理において,インシデント・モデルを定…
- 令和3年度 春期 問4ITIL 2011 edition によれば,インシデントに対する一連の活動のうち,イベント管理…
- 令和3年度 春期 問5“IT サービスが必要とされるときに,合意した条件の下で要求された機能を果たせる状態にある能力”…
- 令和3年度 春期 問7ITIL 2011 edition によれば,“サービス資産管理および構成管理”のプロセスにおけ…
- 令和元年度 秋期 問1ITIL 2011 edition によれば,サービス・ポートフォリオの構成要素のうちのサービス…
- 令和元年度 秋期 問3ITIL 2011 edition によれば,サービス・ポートフォリオとサービス・カタログの関係…
- 令和元年度 秋期 問8ITIL 2011 edition によれば,サプライヤをカテゴリ化するに当たっては,サプライヤ…
- 令和元年度 秋期 問11ITIL 2011 edition のインシデント管理において,インシデント・モデルを定義してお…
- 平成30年度 秋期 問1ITIL 2011 edition において,良い目標値を設定するための条件として“SMART”…
- 平成30年度 秋期 問2“IT サービスが必要とされるときに,合意した条件の下で要求された機能を果たせる状態にある能力”…
- 平成30年度 秋期 問4ITIL 2011 edition における“7 ステップの改善プロセス”の“測定するものを定義…
- 平成30年度 秋期 問9ITIL 2011 edition によれば,“サービス資産管理および構成管理”のプロセスにおけ…
- 平成29年度 秋期 問1ITIL 2011 edition で定義されるサービスのライフサイクルにおける,サービストラン…
- 平成29年度 秋期 問4ITIL 2011 edition によれば,サービス・ポートフォリオの構成要素のうち,サービス…
- 平成29年度 秋期 問7ITIL 2011 edition によれば,リアクティブな可用性管理の活動で用いる技法はどれか…
- 平成29年度 秋期 問12ITIL 2011 edition のインシデント管理において,インシデント・モデルを定義してお…
- 平成28年度 秋期 問1ITIL において,良い目標値を設定するための条件として“SMART”がある。“S”は Spec…
- 平成28年度 秋期 問2ITIL において,インシデントに対する一連の活動のうち,イベント管理プロセスが分担する活動はど…
- 平成28年度 秋期 問3“IT サービスが必要とされるときに,合意した条件の下で要求された機能を果たせる状態にある能力”…
- 平成28年度 秋期 問5ITIL によれば,7 ステップの改善プロセスにおける a,b 及び c の適切な組合せはどれか…
- 平成28年度 秋期 問12ITIL では,可用性管理における KPI の例として,保守性の指標である平均サービス回復時間(…
- 平成27年度 秋期 問1ITIL では,リスクを管理する際のフレームワークの一つとして,Risk IT フレームワークを…
- 平成27年度 秋期 問2ITIL によれば,サービスポートフォリオの構成要素のうち,サービスパイプラインに収録されるサー…
- 平成27年度 秋期 問3次の図は,ITIL のサービスライフサイクルの各段階の説明と流れである。a〜d の段階名の適切な…
- 平成27年度 秋期 問5ITIL のインシデント管理において,インシデントモデルを定義しておくことによって得られるメリッ…
- 平成26年度 秋期 問3ITIL において,良い目標値を設定するための条件として“SMART”がある。“S”は Spec…
- 平成26年度 秋期 問4“IT サービスが必要とされるときに,合意した条件の下で要求された機能を果たせる状態にある能力”…
- 平成26年度 秋期 問9ITIL において,インシデントに対する一連の活動のうち,イベント管理プロセスが分担する活動はど…
- 平成26年度 秋期 問10ITIL で定義されるサービスのライフサイクルにおけるサービストランジション段階の説明はどれか。
- 平成25年度 秋期 問1ITIL のサービスストラテジ段階で管理するサービスポートフォリオの構成要素のうち,サービスパイ…
- 平成25年度 秋期 問7ITIL によれば,インシデントの階層的エスカレーションに該当するものはどれか。
- 平成25年度 秋期 問8ITIL のインシデント管理の方針において,インシデントモデルを定義しておくことによって得られる…
- 平成25年度 秋期 問9ITIL の IT サービス継続性管理の達成目標に関する説明として,適切なものはどれか。
- 平成25年度 秋期 問10ITIL によれば,既存及び新規の全てのサービスに対してビジネスインパクト分析を行うことを役割と…
- 平成25年度 秋期 問14ITIL において,可用性管理のリアクティブな活動で用いる技法はどれか。
- 平成24年度 秋期 問8ITIL におけるワークアラウンドの説明はどれか。
- 平成24年度 秋期 問9ITIL v3 における変更諮問委員会(CAB)の役割の説明はどれか。
- 平成24年度 秋期 問10“IT サービスが必要とされたときに合意済の機能を実行する能力”について,様々な側面を定義,分析…
- 平成24年度 秋期 問11ITIL v3 におけるサービストランジションの説明はどれか。
- 平成23年度 秋期 問8ITIL のキャパシティ管理において,監視項目となるものはどれか。
- 平成23年度 秋期 問9ITIL において,サービスレベル管理プロセスの活動とされているものはどれか。
- 平成22年度 秋期 問9ITIL v3 における変更諮問委員会(CAB)の役割の説明はどれか。
- 平成22年度 秋期 問11ITIL におけるサービスレベル管理の説明はどれか。
- 平成22年度 秋期 問12“IT サービスが必要とされたときに合意済の機能を実行する能力”について,様々な側面を定義,分析…
- 平成22年度 秋期 問13ITIL v3 におけるサービストランジションの説明はどれか。
- 平成21年度 秋期 問2ITIL v2 における“ユーザ”又は“顧客”の説明のうち,適切なものはどれか。
- 平成21年度 秋期 問6ITIL におけるバーチャルサービスデスクはどれか。
- 平成21年度 秋期 問13IT サービスマネジメントの構築に当たり,現状の業務のやり方と ITIL などのベストプラクティ…
プロジェクトマネージャ 午前Ⅱ(2問)
- 平成30年度 春期 問19ITIL 2011 edition によれば,インシデントに対する一連の活動のうち,イベント管理…
- 平成28年度 春期 問20ITIL で定義されるサービスのライフサイクルにおける,サービストランジション段階の説明はどれか…
情報処理安全確保支援士 午前Ⅱ(2問)
- 平成23年度 特別試験 問24(1)〜(4) はある障害の発生から本格的な対応までの一連の活動である。(1)〜(4) の各活動…
- 平成21年度 春期 問22ITIL におけるインシデント管理プロセスの役割として,適切なものはどれか。
関連する用語
インシデント管理と問題管理 SLA(サービスレベル合意書) 稼働率(MTBF・MTTR) JIS Q 20000(サービスマネジメントシステム)