著作権と知的財産権(特許・営業秘密・ライセンス)
ソフトウェアを作って納める仕事では,作ったプログラムの権利が誰のものになるかが,契約の大事な取決めになります。 知的財産権の問題は科目A-1(午前Ⅰ)で繰り返し出ていて,PM・SC・SA・ST などの科目A-2(午前Ⅱ)にも出ます。 いちばん多いのは契約に定めがないときの著作権の帰属で,答えの考え方は一つ覚えれば済みます。
知的財産権の種類
| 権利 | 守るもの | 権利が生まれるとき |
|---|---|---|
| 著作権 | プログラム・文章・画像などの表現 | 創作した時点で自動的に(届出は要らない) |
| 特許権 | 技術的なアイディア(発明) | 出願して審査を通り,登録されたとき |
| 実用新案権 | 物の形や構造の考案 | 出願して登録されたとき |
| 意匠権 | 製品のデザイン | 出願して登録されたとき |
| 商標権 | 商品やサービスの名前・マーク | 出願して登録されたとき |
| 営業秘密 | 顧客名簿や製造ノウハウなどの秘密の情報 | 権利の登録はない。不正競争防止法が不正な取得や使用を禁じる |
特許権・実用新案権・意匠権・商標権の四つをまとめて産業財産権と呼びます。 著作権が守るのは表現なので,プログラムのアルゴリズムやプログラム言語そのものは著作権では守られません。アイディアを守りたいときは特許です。
契約に定めがないときの著作権の帰属
著作権は,実際に作った者に生まれます。会社の従業員が仕事として作ったプログラムは,その会社のものになります(職務著作)。 ここから,契約に定めがないときの帰属は次のようになります。
| 請負・委託 | 作った請負人(受託した会社)に帰属する。お金を出した注文者のものにはならない。再委託されたときは,実際に作った再委託先の会社のもの |
|---|---|
| 派遣 | 派遣された社員は派遣先の指揮命令を受けて働くので,派遣先に帰属する |
注文者が著作権を持っていないと,納品されたプログラムを自社の別のソフトウェアに流用したり,ほかの会社に改修を頼んだりできなくなるおそれがあります。 そのため,委託の契約では著作権を委託元へ移す(譲渡する)と取り決めます。ただし著作者人格権は人に付いた権利で譲れないので, 「委託先は著作者人格権を行使しない」と書き添えて,委託元が自由に改変できるようにしておきます。
プログラムの著作物で許されること
- 購入したプログラムを,自分のコンピュータで効率よく使うために改変することは,著作権法で認められている。
- バックアップのための複製も認められているが,使用許諾契約で複製を認めていないソフトウェアのプロテクトを外して複製するのは不適切。
- URL を集めて独自の解釈を付けたリンク集のように,選び方や並べ方に創作性があるものは,編集著作物として保護され得る。
- AI の学習に他人の著作物を使うことは,著作権者の利益を不当に害さない限り,許諾なしでできる。一方,生成した画像が既存の著作物と似ていて,それを公開すれば,著作権侵害になる可能性がある。
- 米国などのフェアユースは,批評・報道・研究など公正な目的であれば,一定の範囲で著作物を使っても侵害に当たらないとする考え方。
特許とライセンス
- 特許には新しさ(新規性)が要ります。出願の前に製品を発表した発明は新規性を失います。 顧客に守秘義務を確認したうえで説明しただけなら,公開したことにはなりません。
- 他社が特許を出願するより前から独自に開発して売っていた製品は,その特許権の侵害になりません(先使用)。
- 特許にすると内容が公開されます。アルゴリズムを公開したくない技術は,出願せずにノウハウとして秘匿する選び方もあります。
- 使用許諾(ライセンス)の契約の用語:実施の実績に応じて払うランニングロイヤリティ, 改良した特許をライセンスを与えた側にも使わせるグラントバック, パッケージの包装を破った時点で使用許諾契約が成立したとみなすシュリンクラップ契約。 特許を使っていないソフトウェアでも,使用許諾はできます。
試験での問われ方
当サイトが収録している科目A(午前)の問題のうち,著作権・特許権・営業秘密・使用許諾などの語が出てくるのは51問です。 型ごとに数えると次のとおりです。
- プログラムの著作物の扱い(16問)。著作権法上適法な行為(「処理速度を向上させるために,購入したプログラムを改変した」など)と侵害になる行為(4問), フェアユース(3問),Web ページの著作権(2問),生成 AI と AI の学習(2問),SD メモリカードの著作権保護技術(CPRM,2問), GPL のソフトウェアを改変して搭載したときの対応,法人のソフトウェアの著作権の権利期間,パブリックドメインソフトウェアの条件です。 権利期間の問題は平成23年度のもので,正解は当時の「50」年です。2018年12月の改正で,法人の著作物の保護期間は公表後70年に延びました。
- 著作権の帰属(13問)。いちばん多い型です。請負契約に定めがないとき(「請負人に帰属する。」など), 再委託先の社員が作ったとき(正解は実際に作った「C 社」),請負と派遣の違い, 帰属の定めがないときに委託元に起きる問題(「開発成果物を,委託元で開発する別のソフトウェアに適用できなくなる。」),著作者人格権を行使しない取決めの意味です。
- 特許(9問)。特許権の取得が可能な出願(4問),先使用(3問),産業財産権の四つ,ノウハウとして秘匿するのが適切な例です。
- 使用許諾(9問)。シュリンクラップ契約が成立する時点(2問),ランニングロイヤリティ(2問),グラントバック(2問), 特許を使っていないソフトウェアの使用許諾(2問),ソフトウェア管理ガイドラインです。
- 不正競争防止法(3問)。営業秘密の要件(「公然と知られていないこと」),保護されるもの(秘密として管理している顧客名簿), 不正競争行為(商標権のない商品名を用いたドメイン名の取得とコピー商品の販売)です。
- このほか,NFT の説明を選ぶ問題の選択肢に出てきます。
出題された過去問(51問)
リンク先の年度ページで,問題と解説を読めます。
科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)(22問)
- 令和7年度 秋期 問17委託元への著作権の移転に関する条項を含むソフトウェア開発委託契約書に,“委託先は著作者人格権を行…
- 令和7年度 春期 問30著作権法及び関連法令によれば,生成 AI を利用して画像を生成する行為又はその生成物の利用が著作…
- 令和6年度 春期 問30不正競争防止法の不正競争行為に該当するものはどれか。
- 令和4年度 秋期 問30A 社は顧客管理システムの開発を,情報システム子会社である B 社に委託し,B 社は要件定義を行…
- 令和4年度 春期 問30A 社は,B 社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず,A 社の要求仕様に基づいて,販売管理シ…
- 令和元年度 秋期 問17自社開発したソフトウェアの他社への使用許諾に関する説明として,適切なものはどれか。
- 令和元年度 秋期 問30プログラムの著作物について,著作権法上,適法である行為はどれか。
- 平成29年度 秋期 問30企業が請負で受託して開発したか,又は派遣契約によって派遣された社員が開発したプログラムの著作権の…
- 平成29年度 春期 問30Web ページの著作権に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- 平成28年度 秋期 問17自社開発したソフトウェアの他社への使用許諾に関する説明として,適切なものはどれか。
- 平成28年度 秋期 問30日本において,産業財産権と総称される四つの権利はどれか。
- 平成27年度 春期 問30A 社は顧客管理システムの開発を,情報システム子会社である B 社に委託し,B 社は要件定義を行…
- 平成26年度 秋期 問17組込み機器用のソフトウェアを開発委託する契約書に開発成果物の著作権の帰属先が記載されていない場合…
- 平成26年度 秋期 問30不正競争防止法において,営業秘密となる要件は,“秘密として管理されていること”,“事業活動に有用…
- 平成25年度 秋期 問30Web ページの著作権に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- 平成24年度 秋期 問17プログラムの著作権侵害に該当するものはどれか。
- 平成24年度 春期 問30A 社は,B 社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず,A 社の要求仕様に基づいて,販売管理シ…
- 平成23年度 秋期 問17知的財産権戦略として,特許化されていない技術を特許出願せずにノウハウとして秘匿することが適切な例…
- 平成23年度 秋期 問28電機メーカの A 社は,GPL が適用されたオープンソースソフトウェアの一部を改変した二次的著作…
- 平成22年度 秋期 問17特許権に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- 平成22年度 秋期 問30A 社は,B 社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず,A 社の要求仕様に基づいて,販売管理シ…
- 平成22年度 春期 問30プログラムの著作物について,著作権法上適法である行為はどれか。
情報処理安全確保支援士 科目A-2(午前Ⅱ)(9問)
- 令和7年度 秋期 問23商用目的で開発するソフトウェアの開発請負契約書には,企業間で様々な事項を取り決めておく必要がある…
- 令和5年度 春期 問23プログラムの著作権管理上,不適切な行為はどれか。
- 令和4年度 秋期 問23SD メモリカードに使用される著作権保護技術はどれか。
- 平成29年度 秋期 問23企業間で,商用目的で締結されたソフトウェアの開発請負契約書に著作権の帰属が記載されていない場合,…
- 平成27年度 秋期 問23特許権に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- 平成24年度 秋期 問23特許権に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- 平成24年度 春期 問23開発した製品で利用している新規技術に関して特許の出願を行った。日本において特許権の取得が可能なも…
- 平成23年度 特別試験 問13経済産業省 “ソフトウェア管理ガイドライン” に定められた,ソフトウェアを使用する法人,団体など…
- 平成21年度 秋期 問23開発した製品で利用している新規技術に関して特許の出願を行った。日本において特許権の取得が可能なも…
プロジェクトマネージャ 科目A-2(午前Ⅱ)(6問)
- 令和5年度 秋期 問17組込み機器用のソフトウェアを開発委託する契約書に開発成果物の著作権の帰属先が記載されていない場合…
- 平成31年度 春期 問18企業間で,商用目的で締結されたソフトウェアの開発請負契約書に著作権の帰属に関する内容が記載されて…
- 平成27年度 春期 問22不正競争防止法で保護されるものはどれか。
- 平成26年度 春期 問21IP(知的財産)ライセンス契約の中で規定されるランニングロイヤリティの説明として,適切なものはど…
- 平成23年度 特別試験 問24法人が作成し,公開,発売したソフトウェアの著作権の権利期間は公開から何年か。
- 平成21年度 春期 問23A 社は,B 社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず,A 社の要求仕様に基づいて,販売管理シ…
ITサービスマネージャ 科目A-2(午前Ⅱ)(4問)
- 令和6年度 春期 問25NFT の説明として,適切なものはどれか。
- 平成30年度 秋期 問25フェアユースの説明はどれか。
- 平成29年度 秋期 問25シュリンクラップ契約において,ソフトウェアの使用許諾契約が成立するのはどの時点か。
- 平成27年度 秋期 問25シュリンクラップ契約において,ソフトウェアの使用許諾契約が成立するのはどの時点か。
ITストラテジスト 科目A-2(午前Ⅱ)(4問)
- 令和7年度 春期 問22フェアユースの説明はどれか。
- 令和6年度 春期 問22公衆への提供などが行われた他人の著作物を AI の学習データとして利用する行為に関して,著作権法…
- 令和4年度 春期 問22フェアユースの説明はどれか。
- 平成21年度 秋期 問25パブリックドメインソフトウェアとするための条件はどれか。
システムアーキテクト 科目A-2(午前Ⅱ)(4問)
- 令和元年度 秋期 問15知的財産権使用許諾契約の中で規定する,ランニングロイヤリティの説明はどれか。
- 令和元年度 秋期 問16グラントバックの説明はどれか。
- 平成29年度 秋期 問15グラントバックの説明はどれか。
- 平成21年度 秋期 問10開発した製品で利用している新規技術に関して特許の出願を行った。日本において特許権の取得が可能なも…
ネットワークスペシャリスト 科目A-2(午前Ⅱ)(2問)
- 令和元年度 秋期 問25SD メモリカードに使用される著作権保護技術はどれか。
- 平成21年度 秋期 問25開発した製品で利用している新規技術に関して特許の出願を行った。日本において特許権の取得が可能なも…