令和7年度 春期に実施された応用情報技術者試験
午前(2026年度からの科目A)の全80問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:応用情報技術者試験について
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問1
論理式 P,Q がいずれも真であるとき,論理式 R の真偽にかかわらず真になる式はどれか。ここで,“ ̄”は否定を,“∨”は論理和を,“∧”は論理積を,“→”は含意(“真→偽”となるときに限り偽となる演算)を表す。
正解 エ
解説
P,Q がいずれも真のとき,各式の前件と後件を順に調べる。エは,P→Q が 真→偽 で偽,Q→P も 真→偽 で偽なので,前件 (P→Q )∨(Q→P ) は 偽∨偽 で偽になる。前件が偽の含意は後件が何であっても真になるので,R の真偽にかかわらず常に真である。
アは,前件が (真∧真)=真 なので,式全体の値は後件 R→Q (Q が真なので R→偽)に等しく,R が真のとき偽になる。イは,Q→P が 真→偽 で偽なので,それ全体に上線を引いた否定は真となり,前件が真になる。式全体の値は後件 Q→R(Q が真なので R と同じ)に等しく,R が偽のとき偽になる。ウは,Q→P が真なので前件が真になり,式全体の値は後件 R→Q に等しく,R が真のとき偽になる。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問1(表記を一部改変)
問2
0≦x≦1 の範囲で単調に増加する連続関数 f(x) が f(0)<0≦f(1) を満たすときに,区間内で f(x)=0 である x の値を近似的に求めるアルゴリズムにおいて,(2) は何回実行されるか。
〔アルゴリズム〕
(1) x0 ←0,x1 ←1 とする。 (2) x←(x0 +x1 )/2 とする。 (3) x1 -x<0.001 ならば x の値を近似値として終了する。 (4) f(x)≧0 ならば x1 ←x として,そうでなければ x0 ←x とする。 (5) (2) に戻る。
正解 ア
解説
二分法(区間を半分に狭めていく方法)の問題。(2) を k 回実行した直後の x1 −x は,そのときの区間幅の半分,すなわち 1/2k になる。
終了条件 1/2k <0.001 は 2k >1000 と同値であり,29 =512,210 =1024 なので k=10 で初めて成立する。よって (2) は10回実行される。
二分法:区間を半分ずつ狭める
f(0)<0≦f(1) の区間 [0,1] の真ん中 x で f(x) の符号を調べ,解がある側の半分に区間を狭める。(2) を k 回実行した直後の x1−x は 1/2^k。1/2^k<0.001 となるのは 2^k>1000 のときで,2^9=512,2^10=1024 なので k=10。
初め
1回目
2回目
3回目
4回目
解
幅:1/2,1/4,… 1/512(9回),1/1024(10回)<0.001
1回ごとに幅が半分。1000分の1未満になるのは10回目
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問2(表記を一部改変)
問3
AI における機械学習の過程において,過学習と疑われたときの解消方法として,最も適切なものはどれか。
ア 訓練した時と同じ精度を出すために,訓練データをテストデータとして使用する。
イ 精度を高めるために,元の訓練データに加工を施し,訓練データの量を増やす。 正解
ウ 予測した結果に近づけるために,モデルをより複雑にする。
エ より多くの未知のデータに対して予測できるように,汎化性能を下げる。
正解 イ
解説
過学習は,訓練データに適合しすぎて未知のデータに対する予測精度(汎化性能)が落ちる状態。元の訓練データに加工を施して量を増やす(データ拡張)と,モデルが訓練データの細部を覚え込みにくくなり,過学習の解消につながる。
アは訓練データでテストしても過学習を検出できない。ウはモデルを複雑にすると過学習は悪化する。エは汎化性能を上げるべきであり,記述が逆。
過学習
モデルを複雑にしていくと,訓練データに対する誤差は下がり続けるが,学習に使っていない検証データに対する誤差はある所から上がり始める。右の図の実線は点の一つ一つに無理に合わせた曲線(過学習)で,破線のほうが未知のデータをよく予測する。対策はデータを増やす(データ拡張),モデルを単純にする,正則化など。
モデルの複雑さ
誤差
訓練
検証
過学習
実線:点に合わせすぎ 破線:ほどよい
訓練データにだけ合いすぎて,未知のデータで外れる状態
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問3(表記を一部改変)
問4
リアルタイム性が求められる組込みシステムにおいて,システムへの入力に対するリアルタイムな応答の方法として,最も適切なものはどれか。
ア OS を使用しないで応答する。
イ 定められた制限時間内に応答する。 正解
ウ 入力された順序を守って応答する。
エ 入力時刻を記録して応答する。
正解 イ
解説
リアルタイムシステムは,入力に対する応答が,あらかじめ定められた制限時間(デッドライン)内に必ず完了することを求められるシステムである。応答の正しさが結果だけでなく時刻にも依存するので,制限時間内に応答するイが適切である。
アはリアルタイム性の条件ではなく,リアルタイム OS を載せて制限時間を守る組込みシステムも多い。ウの入力順の遵守は待ち行列の先入れ先出しの話で,応答時間の保証とは別の性質である。エの入力時刻の記録は,ログや時刻同期のための処理であり,応答の速さを保証するものではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問4(表記を一部改変)
問5
A,B,C の順序で入力されるデータがある。各データについてスタックへの挿入と取出しを1回ずつ行うことができる場合,データの出力順序は何通りあるか。
正解 ウ
解説
スタックは後入れ先出しなので,各データの push と pop を1回ずつ行うときに得られる出力順序は ABC,ACB,BAC,BCA,CBA の5通り。
CAB は作れない。C を最初に出すには A,B,C を全て積む必要があり,その時点で残りは B,A の順にしか取り出せないため。なお,この個数は n=3 のカタラン数に一致する。
スタックで作れる出力順と作れない出力順
A,B,C の順に入力し,それぞれ1回ずつ積んで取り出す。ABC,ACB,BAC,BCA,CBA の5通りは作れる。CAB は作れない。C を最初に出すには A,B,C を全部積む必要があり,そのときスタックの上には B があるので,次に出せるのは B だけ(CBA になる)。
C を最初に出すとき
A
B
C
A,B,C を積む
A
B
→ C
C を出す
A
→ B
次は B しか出せない
作れる:ABC・ACB・BAC・BCA・CBA の5通り
作れない:CAB(C の次に A は出せない)
後から積んだものが先に出る。C を先に出したら,残りは B,A の順に決まる
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問5(表記を一部改変)
問6
図の2分探索木に1と0の二つの要素を順に追加した AVL 木として,適切なものはどれか。
正解 ウ
解説
AVL 木は,どの節点でも左右の部分木の高さの差が 1 以下に保たれる 2 分探索木である。1 を追加すると,2 の左の子になる。このとき各節点の高さの差は 1 以下で,回転は不要である。次に 0 を追加すると,1 の左の子になり,節点 2 では左の部分木(2→1→0)の高さが 2,右の部分木が空で高さの差が 2 になって平衡が崩れる。そこで 2 を根とする部分木を右へ回転すると,1 が部分木の根になって左の子が 0,右の子が 2 となる。木全体は,5 を根に,左が 3(左の子 1(0,2),右の子 4),右が 7(左の子 6)になり,ウが適切である。
アは根が 3,イは根が 4 になっているが,今回の回転は節点 2 の部分木だけで済むので根の 5 は替わらない。エは,6 が 7 の左の子でなく 5 の右の子になり,7 が 6 の右の子になっていて,元の木の 7 と 6 の親子関係が変わっている。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問6(表記を一部改変)
問7
fact(n) は,非負の整数 n に対して n の階乗を返す。fact(n) の再帰的な定義はどれか。
ア if n=0 then return 0 else return n×fact(n−1)
イ if n=0 then return 0 else return n×fact(n+1)
ウ if n=0 then return 1 else return n×fact(n−1) 正解
エ if n=0 then return 1 else return n×fact(n+1)
正解 ウ
解説
階乗は 0!=1,n!=n×(n−1)! と定義される。したがって再帰の終了条件では 1 を返し,それ以外では n×fact(n−1) を返す。ウが正しい。
アとイは n=0 のときに 0 を返すので,どの値を与えても最終的に0が掛かって結果が0になってしまう。イとエは fact(n+1) と引数を増やしており,終了条件に近づかないので無限に再帰して停止しない。
fact(3) の再帰呼出しと戻り
fact(3) は 3×fact(2) を,fact(2) は 2×fact(1) を,fact(1) は 1×fact(0) を呼ぶ。fact(0) は終了条件で 1 を返す。戻りながら 1×1=1,2×1=2,3×2=6 と掛け合わせ,fact(3)=6 になる。fact(0) が 0 を返すと全体が 0 になってしまう。
fact(3)
3×2 = 6
fact(2)
2×1 = 2
fact(1)
1×1 = 1
fact(0)
1 を返す
呼ぶ(下へ)
戻りながら掛ける(上へ)
終了条件 fact(0)=1 で止まり,戻りながら掛けていく
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問7(表記を一部改変)
問8
同じ命令セットをもつコンピュータ A と B とがある。それぞれの CPU クロック周期,及びあるプログラムを実行したときの CPI(Cycles Per Instruction)は,表のとおりである。そのプログラムを実行したとき,コンピュータ A の処理時間は,コンピュータ B の処理時間の何倍になるか。
正解 ウ
解説
1命令あたりの実行時間は CPU クロック周期×CPI で求められる。コンピュータ A は 1ナノ秒×4.0=4ナノ秒,コンピュータ B は 4ナノ秒×0.5=2ナノ秒。
同じ命令セットの同じプログラム(=実行命令数が同じ)なので,処理時間の比はそのまま 4÷2=2 倍になる。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問8(表記を一部改変)
問9
DMA コントローラーの説明として,適切なものはどれか。
ア MPU では時間が掛かる積和演算を,高速に行う。
イ 仮想メモリ機能,メモリ保護機能などのメモリ管理機能を提供する。
ウ 動作クロックに合わせてカウントするカウントレジスタをもち,それによって時間の経過を保持する。
エ メモリと入出力装置,又はメモリとメモリとの間のデータ転送を,MPU を介さずに行う。 正解
正解 エ
解説
DMA(Direct Memory Access)コントローラーは,主記憶と入出力装置,又は主記憶どうしの間のデータ転送を,MPU を介さずに行う装置である。転送の間,MPU は別の処理を続けられるので,エが正しい。
アの積和演算を高速に行うのは DSP(デジタルシグナルプロセッサ)の特徴である。イの仮想メモリ機能やメモリ保護機能を提供するのは MMU(メモリ管理装置)である。ウのクロックに合わせてカウントして時間の経過を保持するのはタイマーである。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問9(表記を一部改変)
問10
オブジェクトストレージの特徴として,適切なものはどれか。
ア オブジェクトにはユニークな識別子が割り当てられ,識別子を使ってアクセスする。 正解
イ オブジェクトの内容を更新する際,上書き更新をする。
ウ 広域分散を実現するためには,遠隔地のストレージと静止点を設けて同期を行う必要がある。
エ ストレージはディレクトリの概念を使った階層構造である。
正解 ア
解説
オブジェクトストレージは,データを階層的なディレクトリではなく一つの平らな空間に置き,オブジェクトごとに割り当てたユニークな識別子(ID)で参照する。識別子を指定して HTTP ベースの API などでアクセスするので,アが正しい。
イの“上書き更新”は,ファイルストレージやブロックストレージのように既存データの一部をその場で書き換える方式の説明で,オブジェクトストレージの特徴としては適切でない。ウは,遠隔地のストレージと静止点を設けて同期するという,ブロックストレージなどのレプリケーションの考え方で,オブジェクトストレージは広域分散を前提とした仕組みなので,そうした同期を必須とするものではない。エの階層構造はファイルストレージの特徴である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問10(表記を一部改変)
問11
マルチプロセッサによる並列処理で得られる高速化率(単一プロセッサのときと比べた倍率)E を,次の式によって評価する。r=0.9 のアプリケーションの高速化率が r=0.3 のものの3倍となるのは,プロセッサが何台のときか。
E=1/(1-r+r/n)
ここで,
n:プロセッサの台数(1≦n) r:対象とする処理のうち,並列化が可能な部分の割合(0≦r≦1) とし,並列化に伴うオーバーヘッドは考慮しないものとする。
正解 エ
解説
E=1/(1−r+r/n) に代入すると,r=0.9 では E=1/(0.1+0.9/n),r=0.3 では E=1/(0.7+0.3/n) である。前者が後者の 3 倍になるには 0.7+0.3/n=3(0.1+0.9/n)=0.3+2.7/n,すなわち 0.4=2.4/n で,n=6 である。n=6 のとき,E は 1/(0.1+0.15)=4 と 1/(0.7+0.05)≒1.33 で,確かに 3 倍になる。エになる。
n=3 では 1/0.4=2.5 と 1/0.8=1.25 で 2 倍,n=4 では 1/0.325≒3.08 と 1/0.775≒1.29 で約 2.4 倍,n=5 では 1/0.28≒3.57 と 1/0.76≒1.32 で約 2.7 倍にとどまり,いずれも 3 倍にならない。
アムダールの法則:並列化できる割合と高速化率
高速化率 E=1÷((1−r)+r÷n)。並列化できる割合 r が 0.9 なら,n=6 で4倍,n をいくら増やしても 1÷0.1=10倍に近づくだけ。r が 0.3 なら n=6 で約1.33倍,上限は 1÷0.7≒1.43倍。並列化できない部分 1−r が上限を決める。
プロセッサ数 n
高速化率 E
r=0.9
r=0.5
r=0.3
10
r=0.9 の上限 1÷0.1
1
4
6
4
1.33
n=6 のとき,r=0.9 は 4倍,r=0.3 は 1.33倍(3倍の差)
並列化できない部分は台数を増やしても縮まないので,高速化率は 1÷(1−r) に頭打ちになる
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問11(表記を一部改変)
問12
二つのシステム A,B の稼働率をそれぞれ αA (0<αA <1),αB (0<αB <1),MTBF をそれぞれ MTBFA ,MTBFB ,MTTR をそれぞれ MTTRA ,MTTRB としたとき,これらの関係として,常に成り立つものはどれか。
ア αA =αB ならば,MTBFA =MTBFB であり,かつ MTTRA =MTTRB である。
イ αA =αB ならば,MTTRA /MTBFA =MTTRB /MTBFB である。 正解
ウ αA >αB ならば,MTBFA >MTBFB であり,かつ MTTRA >MTTRB である。
エ αA >αB ならば,MTTRA /MTBFA >MTTRB /MTBFB である。
正解 イ
解説
稼働率は α=MTBF/(MTBF+MTTR) で表される。これを変形すると MTTR/MTBF=(1−α)/α となり,稼働率が等しければ MTTR/MTBF も必ず等しくなる。よってイが常に成り立つ。
アは誤り。稼働率が同じでも MTBF と MTTR の絶対値が一致するとは限らない(例:MTBF 100・MTTR 10 と MTBF 200・MTTR 20)。ウは誤り。稼働率が高くても MTTR が大きい場合はある。エは誤り。α が大きいほど (1−α)/α は小さくなるので不等号の向きが逆。
MTBF と MTTR が同じ倍率で変わっても稼働率は同じ
稼働率は MTBF÷(MTBF+MTTR)。両方が1.5倍になると 1.5x÷(1.5x+1.5y)=x÷(x+y) で変わらない。稼働率は MTBF と MTTR の比だけで決まるので,稼働率が等しければ MTTR÷MTBF も等しい。ただし MTBF や MTTR そのものが等しいとは限らない。
従来
MTBF x
y
稼働 80%
1.5倍
MTBF 1.5x
1.5y
稼働 80%
1.5x ÷ (1.5x + 1.5y) = x ÷ (x + y)
稼働率は比で決まる。帯の長さが変わっても,稼働の割合は同じ
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問12(表記を一部改変)
問13
図のように3個の装置を並列と直列に組み合わせて構成したシステムがある。装置単体の稼働率と,システムの稼働率の関係を示したグラフはどれか。ここで,3個の装置の稼働率は,全て等しいものとする。
正解 エ
解説
システムは,2 個の装置を並列にした部分と,1 個の装置を直列につないだ構成である。装置単体の稼働率を x とすると,並列部分は 1-(1-x)2 =2x-x2 ,これに直列の装置を掛けて,システムの稼働率は x(2x-x2 )=2x2 -x3 になる。x=0.5 のとき 0.375,x=0.9 のとき約 0.891 で,x が 0 と 1 以外のとき常に x よりも小さい(x-(2x2 -x3 )=x(1-x)2 >0)。0 から 1 まで,対角線の下を通る下に凸の曲線になっているエが該当する。
アは対角線より上にあるので並列だけの構成(1-(1-x)2 )のグラフ,イは装置 1 個のときの対角線,ウは 0.5 で対角線と交わる S 字形で,3 個のうち 2 個以上が動けばよい冗長構成(3x2 -2x3 )などで現れるグラフである。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問13(表記を一部改変)
問14
リアルタイム OS において,実行中のタスクがプリエンプションによって遷移する状態はどれか。
ア 休止状態
イ 実行可能状態 正解
ウ 終了状態
エ 待ち状態
正解 イ
解説
プリエンプションは,実行中のタスクより優先度の高いタスクが実行可能になったときなどに,OS が実行権を取り上げて切り替えること。取り上げられたタスク自体は実行を続けられる状態のままなので,実行状態から実行可能状態に戻る。イが正しい。
アの休止状態はタスクがまだ起動されていないか終了した後の状態。ウの終了状態はタスクが処理を終えたときに移る状態。エの待ち状態は,入出力の完了やイベントの発生をタスク自身が待つときに移る状態で,横取りによる遷移先ではない。
タスクの3つの状態
実行可能状態のタスクは,CPU を割り当てられる(ディスパッチ)と実行状態になる。実行状態のタスクは,入出力の完了などを自分で待つと待ち状態に,優先度の高いタスクに CPU を取り上げられる(プリエンプション)と実行可能状態に移る。待ち状態のタスクは,待っていた事象が起きると実行可能状態に移り,直接は実行状態に移らない。
実行
CPU を使っている
実行可能
CPU の割当て待ち
待ち
入出力の完了待ち
ディスパッチ
プリエンプション
入出力など
を待つ
待っていた事象が起きた
待ち → 実行 へ直接は移らない(一度,実行可能に並ぶ)
プリエンプションで移るのは実行可能状態。待ち状態から実行状態へは直接移らない
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問14(表記を一部改変)
問15
仮想記憶管理におけるページ置換えアルゴリズムとして LRU 方式を採用する。主記憶のページ枠が,4000,5000,6000,7000 番地(いずれも 16 進数)の4ページ分で,プログラムが参照するページ番号の順が,1→2→3→4→2→5→3→1→6→5→4 のとき,最後の参照ページ 4 は何番地にページインされているか。ここで,最初の 1→2→3→4 の参照で,それぞれのページは 4000,5000,6000,7000 番地にページインされるものとする。
ア 4000
イ 5000
ウ 6000 正解
エ 7000
正解 ウ
解説
LRU は最後に参照されてから最も時間が経ったページを追い出す方式。参照順に追うと次のようになる。
1→2→3→4 で 4000,5000,6000,7000 番地が埋まる。2 はヒット。5 で最も古い 1(4000番地)を追い出し 5 が 4000 番地へ。3 はヒット。1 で最も古い 4(7000番地)を追い出し 1 が 7000 番地へ。6 で最も古い 2(5000番地)を追い出し 6 が 5000 番地へ。5 はヒット。最後の 4 で最も古い 3(6000番地)を追い出すので,4 は 6000 番地にページインされる。
LRU のページ置換を追う
参照 1→2→3→4→2→5→3→1→6→5→4 を,4つのページ枠(4000・5000・6000・7000 番地)で追う。空きが無くなってからは,最後に参照されてから最も時間が経ったページを追い出す。5 は 1 を,1 は 4 を,6 は 2 を,最後の 4 は 3 を追い出し,4 は 6000 番地に入る。
参照
1
2
3
4
2
5
3
1
6
5
4
4000
1
1
1
1
1
5
5
5
5
5
5
5000
2
2
2
2
2
2
2
6
6
6
6000
3
3
3
3
3
3
3
3
4
7000
4
4
4
4
1
1
1
1
最後の 4 は,いちばん長く使われていない 3 を追い出す
→ 4 は 6000 番地に入る
塗ったマスがその参照で入ったページ。○はヒット
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問15(表記を一部改変)
問16
表は,OSS のライセンスごとに,そのライセンスの OSS を利用したプログラムを配布するとき,ソースコードを公開しなければならないかどうかを示す。a~d に入れるライセンスの適切な組合せはどれか。ここで,表中の“○”は公開しなければならないことを表し,“×”は公開しなくてもよいことを表す。
ア a:GPL,b:LGPL,c:MPL,d:BSD 正解
イ a:GPL,b:MPL,c:BSD,d:LGPL
ウ a:LGPL,b:GPL,c:MPL,d:BSD
エ a:LGPL,b:MPL,c:BSD,d:GPL
正解 ア
解説
ソースコードの公開義務の強さで並べると,GPL は,GPL のソースを修正した場合はもちろん,静的にも動的にもリンクしたプログラムまで公開が必要で,表の a(すべて○)に当たる。LGPL は,ライブラリ自体を修正したときと静的リンクのときは公開が必要で,動的リンクは公開が不要なので,b(○,○,×)に当たる。MPL は,MPL のソースコードを修正したときは公開が必要だが,リンクしただけのプログラムは公開が不要なので,c(○,×,×)に当たる。BSD は,ソースコードの公開義務がなく,d(すべて×)に当たる。組合せはアである。
イ~エは GPL を a 以外に置いたり,BSD を d 以外に置いたりしており,いずれもライセンスの性質と合わない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問16(表記を一部改変)
問17
OpenAPI Specification に従った API の定義・開発を支援する機能を提供する OSS はどれか。
ア curl
イ OpenAM
ウ Serverspec
エ Swagger 正解
正解 エ
解説
OpenAPI Specification は,REST API を記述する仕様である。Swagger は,OpenAPI Specification に従って API を定義・設計するエディタや,定義から API ドキュメントやコードを生成するツールを提供する OSS で,エが正しい。
アの curl は URL を指定して HTTP などで通信するコマンドラインツール,イの OpenAM はシングルサインオンなどを提供する認証・認可の OSS,ウの Serverspec はサーバーの構成が期待どおりかをコードで検査するテストツールである。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問17(表記を一部改変)
問18
8 ビット D/A 変換器を使って負でない電圧を発生させる。使用する D/A 変換器は,最下位の 1 ビットの変化で出力が 10 ミリ V 変化する。データに 0 を与えたときの出力は 0 ミリ V である。データに 16 進数で 82 を与えたときの出力は何ミリ V か。
ア 820
イ 1,024
ウ 1,300 正解
エ 1,312
正解 ウ
解説
16進数の 82 を10進数に直すと,8×16+2=130 になる。最下位の1ビットの変化で出力が 10 ミリ V 変わり,データ 0 のとき 0 ミリ V なので,出力は 130×10=1,300 ミリ V となる。ウが正しい。
アの 820 は 82 を10進数のまま使った値。エの 1,312 は 82 を16倍して 1,312 とした値など,基数の変換を誤ったときの値である。イの 1,024 は 210 で,この計算とは関係がない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問18(表記を一部改変)
問19
産業機器の制御装置として使われる PLC の説明として,適切なものはどれか。
ア 自動制御であり,偏差の比例,積分及び微分の 3 要素で制御する。
イ 主としてラダー図を用いたシーケンスプログラムによって制御する。 正解
ウ 電圧及び電流のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
エ リレーシーケンス回路のハードウェアによって制御する。
正解 イ
解説
PLC(Programmable Logic Controller)は,産業機器の制御に使われる制御装置で,リレー回路を置き換えるものとして生まれた。リレーシーケンス図を基にしたラダー図を使い,シーケンスプログラムによって制御するので,イが適切である。
アの偏差の比例,積分及び微分の 3 要素で制御するのは PID 制御である。ウのアナログ信号をデジタル信号に変換するのは A/D 変換器である。エのリレーシーケンス回路のハードウェアによって制御するのは,PLC が置き換えた従来のリレー制御盤である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問19(表記を一部改変)
問20
FPGA などに実装するデジタル回路を記述し,論理合成するために使用される言語はどれか。
正解 イ
解説
FPGA(Field Programmable Gate Array)は,製造後に回路構成を書き換えられる LSI である。その回路は,ハードウェア記述言語(HDL:Hardware Description Language)で動作を記述し,論理合成ツールで回路図に相当する情報へ変換して実装する。HDL には VHDL や Verilog HDL がある。イが正しい。
アの DDL はデータベースのデータ定義言語,ウの UML はソフトウェアの設計を図で表すモデリング言語,エの XML は文書やデータを構造化して記述するマークアップ言語である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問20(表記を一部改変)
問21
IoT システムにおいて,センサーの値をゲートウェイに送信するセンサーノードの消費電流を抑えるため,図のような間欠動作を考える。センサーノードの動作時間は10ミリ秒で,その間は平均して 10mA の電流が流れる。待機中は常に 0.1μA の電流が流れる。間欠動作の平均電流を 1μA 以下にするための待機時間として,最も短いものはどれか。ここで,平均電流の値を求める時間は十分に長いものとする。
ア 1.1秒
イ 11.1秒
ウ 111.1秒 正解
エ 1111.1秒
正解 ウ
解説
待機時間を T 秒とすると 1周期は (0.01+T) 秒。1周期に流れる電気量は 10mA×0.01秒+0.1μA×T=100μA·秒+0.1μA×T となる。
平均電流は (100+0.1T)/(0.01+T) μA なので,これを 1μA 以下にする条件は 100+0.1T ≦ 0.01+T,すなわち 0.9T ≧ 99.99,T ≧ 111.1 となる。最も短い待機時間は 111.1秒。
間欠動作の平均電流
1周期は動作 10 ミリ秒(10mA)と待機 T 秒(0.1μA)。1周期に流れる電気量は 10mA×0.01 秒=100μA・秒と 0.1μA×T。平均電流は (100+0.1T)÷(0.01+T) μA で,これを 1μA 以下にするには 100+0.1T≦0.01+T,T≧111.1 秒。
電流
時間
10mA
10ms
待機 T 秒(0.1μA)
1周期
(100+0.1T)÷(0.01+T)≦1
→ 0.9T ≧ 99.99
→ T ≧ 111.1 秒
待機を長くするほど,動作の 100μA・秒が薄まって平均が下がる(横幅は実際の比ではない)
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問21(表記を一部改変)
問22
ユーザーインタフェースのユーザビリティを評価する手法には,利用者が参加するものと専門家だけで実施するものとがある。利用者が参加する手法と専門家だけで実施する手法との適切な組合せはどれか。
ア 利用者が参加する手法:アンケート,専門家だけで実施する手法:回顧法
イ 利用者が参加する手法:回顧法,専門家だけで実施する手法:思考発話法
ウ 利用者が参加する手法:思考発話法,専門家だけで実施する手法:ヒューリスティック評価法 正解
エ 利用者が参加する手法:認知的ウォークスルー法,専門家だけで実施する手法:ヒューリスティック評価法
正解 ウ
解説
ユーザビリティの評価手法のうち,思考発話法は,利用者に操作しながら考えていることを声に出してもらい,つまずきを調べる手法なので,利用者が参加する手法である。ヒューリスティック評価法は,専門家が経験則(ヒューリスティクス)に照らして画面を点検する手法で,利用者を参加させずに専門家だけで実施できる。ウが適切である。
アのアンケートと回顧法(操作後に利用者に振り返ってもらう手法)は,どちらも利用者が参加する手法である。イも回顧法は利用者が参加する手法で,思考発話法は専門家だけで実施するものではない。エの認知的ウォークスルー法は専門家が実施する手法で,利用者が参加する手法としては誤りである。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問22(表記を一部改変)
問23
W3C で仕様が定義され,矩形や円,直線,文字列などの図形オブジェクトを XML 形式で記述し,Web ページでの図形描画にも使うことができる画像フォーマットはどれか。
ア OpenGL
イ PNG
ウ SVG 正解
エ TIFF
正解 ウ
解説
SVG(Scalable Vector Graphics)は W3C が仕様を定めたベクター画像フォーマットで,矩形・円・直線・文字列などの図形オブジェクトを XML 形式で記述する。拡大しても劣化せず,HTML に直接埋め込んで Web ページの図形描画に使える。
アの OpenGL は3次元グラフィックスの API であって画像フォーマットではない。イの PNG とエの TIFF はいずれもラスタ(ビットマップ)形式の画像フォーマット。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問23(表記を一部改変)
問24
大量の IoT デバイスから送信される大量で,かつ様々な形式のデータを格納可能なデータモデルのうち,行ごとに任意の列数をもち,かつ列ごとに複数の値をもつことによって,柔軟なデータ格納を実現しているデータモデルはどれか。
ア グラフ
イ ドキュメント
ウ リレーショナル
エ ワイドカラム 正解
正解 エ
解説
データモデルのうち,ワイドカラム型は,行ごとに列の数や名前が異なってよく,列ごとに複数の値(バージョンなど)をもつことができるので,様々な形式のデータを柔軟に格納できる。Apache Cassandra や HBase がこの型である。エが正しい。
アのグラフ型は節点と辺で関係性を表すモデルで,ソーシャルネットワークなどに向く。イのドキュメント型は JSON などの文書単位でデータを格納するモデルである。ウのリレーショナル型は,列が固定された表で行を管理するモデルで,行ごとに任意の列数をもつことはできない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問24(表記を一部改変)
問25
UML を用いて表した図のデータモデルを関係データベース上に実装する際の解釈のうち,適切なものはどれか。
ア “指定送付先”を指定する際,“付加情報”表のどの行でも選択できる。
イ “付加情報”表と“顧客”表の行数は一致していなければならない。
ウ “付加情報”表には“顧客”表に対する参照制約を指定する。 正解
エ “付加情報”表には“注文”表に対する参照制約を指定する。
正解 ウ
解説
図では,顧客と付加情報が黒いひし形(コンポジション)の関連“注文主”で結ばれ,顧客が 1,付加情報が * なので,付加情報は必ず一人の顧客に属する。関係データベースでは,付加情報の表に顧客を指す外部キー(顧客番号)を設け,顧客の表への参照制約を指定する。ウが適切である。
アは誤りで,図の制約により,注文の顧客の付加情報だけが指定送付先に選べる。イも誤りで,顧客 1 に対して付加情報は * なので,行数が一致する必要はない。エは,指定送付先の関連が注文から付加情報へ向いているので,参照制約が必要なのは“注文”表側から“付加情報”表への参照である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問25(表記を一部改変)
問26
関係を第2正規形から第3正規形に変換する手順はどれか。
ア 候補キー以外の属性から,候補キーの一部の属性に対して関数従属性がある場合,その関係を分解する。
イ 候補キー以外の属性間に関数従属性がある場合,その関係を分解する。 正解
ウ 候補キーの一部の属性から,候補キー以外の属性への関数従属性がある場合,その関係を分解する。
エ 一つの属性に複数の値が入っている場合,単一の値になるように分解する。
正解 イ
解説
第3正規形は,非キー属性間の関数従属(推移的関数従属)を取り除いた形。第2正規形の関係に非キー属性間の関数従属があれば,その部分を別の関係に分解する。
ウは部分関数従属を取り除く第2正規形への変換,エは繰返し項目をなくす第1正規形への変換。アは非キー属性から候補キーの一部への従属を扱うもので,ボイス・コッド正規形に関する話。
正規化で表を分けていく
受注明細(受注番号,商品番号,顧客番号,顧客名,商品名,数量)の例。主キーは受注番号と商品番号の組。第2正規形にするには,主キーの一部だけで決まる属性を分ける(受注番号で決まる顧客番号・顧客名,商品番号で決まる商品名)。第3正規形にするには,主キー以外の属性で決まる属性を分ける(顧客番号で決まる顧客名)。
第1正規形(1つの欄に1つの値)
受注明細(
受注番号
,
商品番号
,
顧客番号
,
顧客名
,
商品名
,
数量
)
受注番号だけで顧客番号・顧客名が,商品番号だけで商品名が決まる
第2正規形(キーの一部で決まる属性を分ける)
受注(
受注番号
,
顧客番号
,
顧客名
)
受注明細(
受注番号
,
商品番号
,
数量
)
商品(
商品番号
,
商品名
)
受注の中で,顧客番号から顧客名が決まる(推移的関数従属)
第3正規形(キー以外で決まる属性を分ける)
受注(
受注番号
,
顧客番号
)
顧客(
顧客番号
,
顧客名
)
+受注明細・商品
下線は主キー。第2は「キーの一部で決まるもの」,第3は「キー以外で決まるもの」を別の表へ
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問26(表記を一部改変)
問27
SQL 文に示す参照制約が存在する“商品”表と“受注”表とがある。“商品”表の行を削除したとき,削除した行の商品コードと同じ値の商品コードをもつ“受注”表の行を自動的に削除する SQL 文として,a に入れる字句はどれか。
〔SQL 文〕
CREATE TABLE 商品 (
商品コード CHAR(4) PRIMARY KEY ,
商品名 VARCHAR(64)
)
CREATE TABLE 受注 (
受注番号 INTEGER PRIMARY KEY ,
商品コード CHAR(4) ,
受注個数 INTEGER ,
納品日 CHAR(8) ,
FOREIGN KEY (商品コード) REFERENCES 商品(商品コード)
ON DELETE a
)
ア CASCADE 正解
イ RESTRICT
ウ SET DEFAULT
エ SET NULL
正解 ア
解説
参照制約の ON DELETE 句に CASCADE を指定すると,被参照表(商品)の行を削除したときに,それを参照している表(受注)の行も連鎖して自動的に削除される。
イの RESTRICT は参照している行があるとき削除自体を拒否する。ウの SET DEFAULT は外部キーの値を既定値に,エの SET NULL は NULL に置き換えるだけで,受注表の行は残る。
参照されている行を削除したときの動き
“受注”表の商品コードが“商品”表を参照しているとき,“商品”の行を削除したら受注の行をどうするかを ON DELETE で決める。CASCADE は受注の行も連鎖して削除,RESTRICT は削除そのものを拒否,SET NULL は受注の商品コードを NULL に,SET DEFAULT は既定値に置き換える。
指定
商品の行を消すと,受注の行は
CASCADE
一緒に削除される
RESTRICT
残る(商品の削除が拒否される)
SET NULL
残る(商品コードが NULL に)
SET DEFAULT
残る(商品コードが既定値に)
ON DELETE CASCADE = 連鎖して削除
受注の行も自動で消すのは CASCADE
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問27(表記を一部改変)
問28
和両立である関係 R と S がある。R∩S と等しいものはどれか。ここで,-は差演算,∩は共通演算を表す。
ア (R-S)-(S-R)
イ R-(R-S) 正解
ウ R-(S-R)
エ S-(R-S)
正解 イ
解説
差演算で,R-S は R の要素のうち S にないもの,R-(R-S) は R の要素のうち,S にない要素を取り除いた残り,すなわち R の要素のうち S にもあるものである。これは共通演算 R∩S に等しい。イが正しい。
アの (R-S)-(S-R) は,S-R と R-S が共通の要素をもたないので R-S になる。ウの R-(S-R) は,S-R の要素が R に含まれないので R に等しい。エの S-(R-S) は,同様に S に等しい。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問28(表記を一部改変)
問29
無線 LAN のアクセスポイントや IP 電話機などに,LAN ケーブルを利用して給電も行う仕組みはどれか。
正解 イ
解説
PoE(Power over Ethernet)は,LAN ケーブルを使ってデータ通信と給電を同時に行う仕組み。無線 LAN アクセスポイントや IP 電話機,ネットワークカメラなど,電源コンセントを確保しにくい場所の機器に使われる。
アの PLC は電力線を通信に使う技術,ウの UPS は停電時に電力を供給する無停電電源装置,エの USB は周辺機器接続の規格。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問29(表記を一部改変)
問30
MTU(Maximum Transmission Unit)が 1,500 バイトに設定された IPv4 ネットワークで,2,000 バイトのデータを TCP を用いて送信するときに,二つ目に送信されるパケットに含まれるデータは何バイトか。ここで,TCP ヘッダー長は 20 バイト,IP ヘッダー長は 20 バイト,イーサネットのヘッダー長とトレーラー長は,それぞれ 14 バイトと 4 バイトとする。また,データを複数パケットに分割して送信するときは,先に送信するパケットに格納できる上限までデータを含めて送信するものとする。
正解 イ
解説
MTU は 1 回に送れる IP パケット全体の最大サイズで,ここでは 1,500 バイトである。IP ヘッダー 20 バイトと TCP ヘッダー 20 バイトを引くと,1 つのパケットに入れられるデータは 1,500-40=1,460 バイトである。2,000 バイトのデータは,先に送るパケットに上限の 1,460 バイトを含め,残りの 2,000-1,460=540 バイトが二つ目のパケットに入る。イが正しい。
イーサネットのヘッダー(14 バイト)とトレーラー(4 バイト)は MTU には含まれないので,計算には使わない。アの 500 は 2,000-1,500 で,ヘッダーの分を引いていない値である。ウの 580 とエの 598 は,イーサネットのヘッダーやトレーラーを MTU の内側として扱うなど,条件を読み違えた値である。
MTU と MSS
イーサネットの MTU は,MAC ヘッダと FCS の内側,つまり IP ヘッダから後ろ(IP ヘッダ+TCP ヘッダ+データ)の最大長で,通常 1,500 オクテット。そこから IP ヘッダ 20 と TCP ヘッダ 20 を引いた 1,460 オクテットが,フラグメント化されずに送れるデータの最大長(MSS)。
MAC
ヘッダ
(14)
IP
ヘッダ
(20)
TCP
ヘッダ
(20)
データ
FCS
(4)
MTU 1,500
MSS(データ)
1,500 − 20 − 20 = 1,460 オクテット
MTU は IP パケットの最大長。MAC ヘッダと FCS は含まない
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問30(表記を一部改変)
問31
次のルーティングテーブルをもつルータが宛先 IP アドレス 192.168.1.1 のパケットを受信したとき,選択されるネクストホップはどれか。ここで,宛先 IP アドレスの条件を満たす宛先ネットワークが複数あるときは,それらのうちで,サブネットマスクが最も長い宛先ネットワークのネクストホップを選択する。
ア 10.1.0.1
イ 10.1.0.2
ウ 10.1.0.3
エ 10.1.0.4 正解
正解 エ
解説
宛先 192.168.1.1 に当てはまる宛先ネットワークを探す。0.0.0.0/0 は全てのアドレスが対象,192.168.0.0/16 は 192.168.0.0~192.168.255.255,192.168.1.0/24 は 192.168.1.0~192.168.1.255,192.168.1.0/26 は 192.168.1.0~192.168.1.63 で,いずれも 192.168.1.1 を含む。サブネットマスクが最も長いのは /26 なので,ネクストホップは 10.1.0.4 である。エが正しい。
アは 0.0.0.0/0(デフォルトルート),イは /16,ウは /24 のネクストホップで,いずれも /26 よりマスクが短いので選ばれない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問31(表記を一部改変)
問32
あるサブネットでは,ルータやスイッチなどのネットワーク機器に IP アドレスを割り当てる際,割当て可能なアドレスの末尾から降順に使用するルールを採用している。このサブネットのネットワークアドレスを 10.16.32.64/26 とするとき,10 番目に割り当てられるネットワーク機器のアドレスはどれか。ここで,ネットワーク機器 1 台に対して,このサブネット内のアドレス 1 個を割り当てるものとする。
ア 10.16.32.54
イ 10.16.32.55
ウ 10.16.32.117 正解
エ 10.16.32.118
正解 ウ
解説
ネットワークアドレス 10.16.32.64/26 のサブネットは,ホスト部が 6 ビットなので 64 個のアドレスをもち,10.16.32.64(ネットワークアドレス)から 10.16.32.127(ブロードキャストアドレス)までである。割り当てられるのは 10.16.32.65~10.16.32.126 の 62 個である。末尾から降順に使うので,1 番目は .126,2 番目は .125 となり,10 番目は 126-9=117 の 10.16.32.117 である。ウが正しい。
アとイは 54,55 と,このサブネットの範囲(64~127)の外のアドレスである。エは .118 で,9 番目に当たる。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問32(表記を一部改変)
問33
TCP/IP ネットワークで,データ転送用と制御用とに異なるウェルノウンポート番号が割り当てられているプロトコルはどれか。
正解 ア
解説
FTP(File Transfer Protocol)は,制御用のコネクションに TCP の 21 番,データ転送用のコネクションに 20 番と,異なるウェルノウンポート番号を割り当てている。アが正しい。
イの POP3 は 110 番,ウの SMTP は 25 番(メール投稿は 587 番)で,メッセージの転送と制御を同じポートで行う。エの SNMP は管理要求に 161 番,トラップの通知に 162 番を使うが,データ転送用と制御用の区別ではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問33(表記を一部改変)
問34
30k バイトの JPEG ファイルを電子メールに添付するとき,実際の転送データはおよそ何 k バイトになるか。ここで,添付ファイルは MIME base64 を用いてエンコーディングされるものとする。
正解 ウ
解説
MIME の base64 は,バイナリデータを 6 ビットずつに区切って,64 種類の英数字等に置き換える方式で,3 バイト(24 ビット)が 4 文字(4 バイト)になる。したがって転送データは元の 4/3 倍で,30k バイト×4/3=40k バイトになる。ウが正しい(改行コードなどを加えるとわずかに増える)。
アの 20 は縮小,イの 30 は変化なしの値で,base64 では起こらない。エの 60 は 2 倍で,4/3 倍とは合わない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問34(表記を一部改変)
問35
デジタル庁,総務省及び経済産業省が策定した“電子政府における調達のために参照すべき暗号のリスト(CRYPTREC 暗号リスト)”を構成する暗号リストの説明のうち,適切なものはどれか。
ア 推奨候補暗号リストとは,CRYPTREC によって安全性及び実装性能が確認された暗号技術のうち,市場における利用実績が十分であるか今後の普及が見込まれると判断され,当該技術の利用を推奨するもののリストである。
イ 推奨候補暗号リストとは,候補段階に格下げされ,互換性維持目的で利用する暗号技術のリストである。
ウ 電子政府推奨暗号リストとは,CRYPTREC によって安全性及び実装性能が確認された暗号技術のうち,市場における利用実績が十分であるか今後の普及が見込まれると判断され,当該技術の利用を推奨するもののリストである。 正解
エ 電子政府推奨暗号リストとは,推奨段階に格下げされ,互換性維持目的で利用する暗号技術のリストである。
正解 ウ
解説
CRYPTREC 暗号リストは,電子政府推奨暗号リスト・推奨候補暗号リスト・運用監視暗号リストの3つで構成される。電子政府推奨暗号リストは,CRYPTREC によって安全性及び実装性能が確認され,市場における利用実績が十分であるか今後の普及が見込まれると判断された暗号技術のリストで,ウがこの定義に当たる。
アは,電子政府推奨暗号リストの定義を推奨候補暗号リストに当てはめているので誤り。推奨候補暗号リストは,安全性及び実装性能は確認されたものの,今後電子政府推奨暗号リストに掲載される可能性がある段階の技術のリスト。イとエは運用監視暗号リスト(推奨すべき状態でなくなったが,互換性維持のために利用を認める技術のリスト)の説明であり,対象のリスト名が誤っている。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問35(表記を一部改変)
問36
Web サーバのログを分析したところ,Web サーバへの攻撃と思われる HTTP リクエストヘッダーが記録されていた。次の HTTP リクエストヘッダーから推測できる,攻撃者が悪用しようとしていた可能性が高い脆弱性はどれか。ここで,HTTP リクエストヘッダー中の“%20”は空白を意味する。
〔HTTP リクエストヘッダーの一部〕
GET /cgi-bin/submit.cgi?user=;cat%20/etc/passwd HTTP/1.1
Accept: */*
Accept-Language: ja
UA-CPU: x86
Accept-Encoding: gzip, deflate
User-Agent: (省略)
Host: test.example.com
Connection: Keep-Alive
ア HTTP ヘッダーインジェクション(HTTP Response Splitting)
イ OS コマンドインジェクション 正解
ウ SQL インジェクション
エ クロスサイトスクリプティング
正解 イ
解説
リクエストのパラメータ user に“;cat /etc/passwd”が入っている。“;”は UNIX のシェルでコマンドを区切る記号なので,CGI プログラムがこの値をシェルに渡すと,本来の処理に続けて /etc/passwd の内容を表示する cat コマンドが実行されてしまう。外部から OS のコマンドを実行させようとする OS コマンドインジェクションを狙った攻撃と推測でき,イが該当する。
アの HTTP ヘッダーインジェクションは改行コード(%0d%0a)を埋め込んでレスポンスヘッダを追加・分割する攻撃,ウの SQL インジェクションは“'”や SQL の構文を埋め込む攻撃,エのクロスサイトスクリプティングは“<script>”などのスクリプトを埋め込む攻撃であり,いずれもこのリクエストの特徴とは合わない。
OS コマンドインジェクションの痕跡
パラメータ user に“;cat /etc/passwd”が入っている。“;”はシェルでコマンドを区切る記号なので,プログラムがこの値をシェルに渡すと,本来の処理に続けて /etc/passwd を表示する cat コマンドが実行されてしまう。外部から OS のコマンドを実行させる OS コマンドインジェクションを狙っている。
GET /cgi-bin/prog?user=abc
;cat /etc/passwd
本来の処理
続けて実行されるコマンド
“;” はシェルのコマンドの区切り
対策:シェルを経由して外部コマンドを呼ばない
“;”で区切って,2つ目のコマンドを実行させる
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問36(表記を一部改変)
問37
暗号機能を実装した IoT 機器における脅威のうち,サイドチャネル攻撃に該当するものはどれか。
ア 暗号化関数を線形近似する式を導き,その線形近似式から秘密情報の取得を試みる。
イ 機器が発する電磁波を測定することによって秘密情報の取得を試みる。 正解
ウ 二つの平文の差とそれぞれの暗号文の差の関係から,秘密情報の取得を試みる。
エ 理論的にあり得る復号鍵の全てを機器に入力して秘密情報の取得を試みる。
正解 イ
解説
サイドチャネル攻撃は,暗号機能を実装した機器が処理を行うときの消費電力,処理時間,放射される電磁波などの物理的な情報を測定・解析して,機器内部の暗号鍵などの秘密情報を推定する攻撃である。機器が発する電磁波を測定するイが該当する。
アの暗号化関数を線形近似する式から秘密情報を求めるのは線形解読法,ウの二つの平文の差と暗号文の差の関係から求めるのは差分解読法で,いずれも数学的な暗号解読である。エのあり得る全ての鍵を試すのはブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問37(表記を一部改変)
問38
PKI を構成する OCSP を利用する目的はどれか。
ア 誤って破棄してしまった秘密鍵の再発行処理の進捗状況を問い合わせる。
イ デジタル証明書から生成した鍵情報の交換が OCSP クライアントと OCSP レスポンダーの間で失敗した際,認証状態を確認する。
ウ デジタル証明書が失効しているかどうかの状態を問い合わせる。 正解
エ 有効期限が切れたデジタル証明書の更新処理の進捗状況を確認する。
正解 ウ
解説
OCSP(Online Certificate Status Protocol)は,デジタル証明書が失効していないかを,OCSP レスポンダーにオンラインで問い合わせて確認するためのプロトコルである。CRL(証明書失効リスト)を取得して照合する方法と比べて,最新の失効情報をその都度確認できる。ウが正しい。
アの秘密鍵の再発行やエの有効期限切れの証明書の更新処理の進捗状況は,OCSP で問い合わせるものではない。イの鍵情報の交換の失敗時に認証状態を確認するものでもない。
CRL と OCSP の違い
CRL は,認証局が有効期限内に失効させた証明書のシリアル番号と失効日時を一覧にし,署名を付けて公開するもの。利用者はリストを取ってきて自分で照らし合わせる。OCSP は,利用者が調べたい証明書を OCSP レスポンダ(VA)にオンラインで問い合わせ,有効か失効しているかの答えを受け取る。
CRL(証明書失効リスト)
認証局
CA
失効した証明書の一覧
No.1024 3/10 失効
No.2041 5/02 失効
利用者
ブラウザなど
署名して公開
取ってきて照合
載るのは有効期限内に失効した証明書のシリアル番号と日時
OCSP
利用者
ブラウザなど
OCSP レスポンダ
VA(検証局)
この証明書は有効?
有効・失効・不明を返す
その都度オンラインで問い合わせるので,最新の状態が分かる
CRL は一覧を取ってきて自分で調べる,OCSP はその都度問い合わせる
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問38(表記を一部改変)
問39
欧米などの企業,組織で行われている“セキュリティクリアランス”の事例はどれか。
ア インターネットと重要な秘密情報を取り扱う組織内ネットワークとを,物理的に分離する。
イ 重要な秘密情報へのアクセス権を付与されたアカウントを定期的に調べ,不要な場合は削除する。
ウ 重要な秘密情報を取り扱う部署に配属される予定の個人の適性を評価する。 正解
エ 離席時に机の上の重要な秘密情報を含む書類や媒体を片付ける。
正解 ウ
解説
セキュリティクリアランスは,欧米の企業や組織で,重要な秘密情報を取り扱う職に就く人について,信頼できるかどうかを事前に評価(身元調査や適性評価)する仕組みである。重要な秘密情報を取り扱う部署に配属される予定の個人の適性を評価するウが該当する。
アは,インターネットと内部ネットワークを物理的に分離するネットワーク分離の対策である。イは,アクセス権をもつアカウントの棚卸しである。エは,離席時に書類や媒体を片付けるクリアデスクの事例である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問39(表記を一部改変)
問40
ソフトウェアの情報セキュリティ対策のうち,SBOM(Software Bill Of Materials)管理ツールを用いることができるものはどれか。
ア ソフトウェアでの利用者認証に用いるアカウントの一元管理
イ ソフトウェアについての脆弱性管理 正解
ウ ソフトウェアのソースコードについてのバージョン管理,アクセス制御及び改ざん防止
エ ソフトウェアのソースコードのバックアップとマルウェア混入防止
正解 イ
解説
SBOM(Software Bill Of Materials)は,ソフトウェアを構成する部品(ライブラリなどのコンポーネント)とその依存関係の一覧。どの製品にどのライブラリのどのバージョンが含まれるかを把握できるため,新たな脆弱性が公表されたときに影響範囲を速やかに特定でき,脆弱性管理に活用できる。
アはアカウント管理,ウはバージョン管理システムやアクセス制御,エはバックアップとマルウェア対策の話であり,いずれも SBOM 管理ツールの用途ではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問40(表記を一部改変)
問41
cookie に Secure 属性を設定しなかったときと比較した,設定したときの Web ブラウザの動作として,適切なものはどれか。
ア cookie に設定された有効期間を過ぎると,Web ブラウザが cookie を無効であると判断する。
イ URL 内のスキームが https のときだけ,Web ブラウザから cookie が送出される。 正解
ウ Web ブラウザがアクセスする URL 内のパスと cookie に設定されたパスのプレフィックスが一致するときだけ,Web ブラウザから cookie が送出される。
エ Web ブラウザでは JavaScript による cookie の読出しが禁止される。
正解 イ
解説
cookie の Secure 属性は,その cookie を HTTPS などの暗号化された通信でだけ送出するよう Web ブラウザに指示する属性である。Secure 属性を設定すると,URL のスキームが https のときだけブラウザが cookie を送出し,http の通信では送出しない。イが適切である。
アの有効期間を過ぎると無効と判断するのは,Expires 属性や Max-Age 属性の働きである。ウの URL のパスと cookie のパスのプレフィックスの一致で送出を決めるのは Path 属性である。エの JavaScript による読出しを禁止するのは HttpOnly 属性である。
cookie の Secure 属性
Secure 属性を付けた cookie は,HTTPS などの暗号化された通信のときだけブラウザが送る。HTTP の通信では送らないので,平文の通信で盗聴されてセッション ID などが漏れるのを防げる。有効期限は Expires・Max-Age,JavaScript から読めなくするのは HttpOnly の役目。
ブラウザ
Secure 付き cookie
https:// のページ
http:// のページ
送る
送らない
HttpOnly:JavaScript から読めない Expires:有効期限
Secure を付けると HTTPS のときだけ送る
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問41(表記を一部改変)
問42
Web アプリケーションソフトウェアの開発における OS コマンドインジェクション対策はどれか。
ア SQL 文の組立ては全てプレースホルダで実装する。
イ シェルを起動できる言語機能を利用した実装を避ける。 正解
ウ 直接メモリにアクセスできる言語機能を利用した実装を避ける。
エ 利用者が入力したファイル名にディレクトリが含まれていないかのエラーチェックを実装する。
正解 イ
解説
OS コマンドインジェクションは,外部から与えられた文字列がシェルに渡され,意図しない OS コマンドが実行される脆弱性。シェルを起動できる言語機能(system 関数など)を使わない実装にすれば,そもそも OS コマンドが実行されない。
アは SQL インジェクション,ウはバッファオーバフロー,エはディレクトリトラバーサルの対策。
OS コマンドインジェクションとディレクトリトラバーサル
OS コマンドインジェクションは,入力した値がシェルのコマンドの一部として組み込まれるとき,「; rm -rf /」のように区切り文字の後ろに別のコマンドを付けて実行させる攻撃。ディレクトリトラバーサルは,ファイル名の入力に「../」を含めて,公開用のディレクトリの外にある /etc/passwd などのファイルを読み出させる攻撃。対策はシェルを経由しない関数を使う,入力を許可した文字だけにする,ファイル名から「../」を除き絶対パスで確かめる。
OS コマンドインジェクション
mail -s 件名
user@example.jp; rm -rf /
; の後ろが別のコマンドとして実行される
ディレクトリトラバーサル
/var/www/files/
../../../etc/passwd
→ /etc/passwd(公開用の外)が読まれる
対策:シェルを通さない,許可した文字だけ通す,
パスを正規化して公開用の中か確かめる
どちらも入力がコマンドやパスの「形」を変えてしまう
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問42(表記を一部改変)
問43
VPN で使用されるプロトコルである IPsec,L2TP,TLS の,OSI 基本参照モデルにおける相対的な位置関係はどれか。
正解 ウ
解説
OSI 基本参照モデルでは,L2TP はデータリンク層(第2層)でトンネルを作るプロトコル,IPsec はネットワーク層(第3層)で IP パケットを保護するプロトコル,TLS はトランスポート層より上位(第4〜5層付近)で動作するプロトコル。
したがって上位層から順に TLS,IPsec,L2TP と並ぶ C が正しい。
VPN のプロトコルが動く層
L2TP はデータリンク層(第2層)でトンネルを作る。IPsec はネットワーク層(第3層)で IP パケットを守る。TLS はトランスポート層より上(第4〜5層あたり)で動く。上の層から順に TLS,IPsec,L2TP。
アプリケーション層
トランスポート層
TLS
ネットワーク層
IPsec
データリンク層
L2TP
物理層
TLS はトランスポート層の上(セッション層あたり)
上から TLS → IPsec → L2TP
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問43(表記を一部改変)
問44
パスワードクラックの対策のうち,ストレッチングに該当するものはどれか。
ア あらかじめ利用者だけが知っている質問と答えをシステムに登録しておき,普段と異なるログイン方法の場合に追加で質問を行う。
イ 一定時間内にパスワードを一定回数誤ったとき,それ以降のログインを試行できないようにする。
ウ パスワードの照合のためのハッシュ値を,パスワードに対してハッシュ化を繰り返して,求める。 正解
エ パスワードの照合のためのハッシュ値を,パスワードに利用者 ID ごとに異なる文字列を付加してからハッシュ化して,求める。
正解 ウ
解説
ストレッチングは,パスワードのハッシュ値を求めるときに,ハッシュ化を数千回以上繰り返して,1 回あたりの計算に時間をかけさせる対策である。攻撃者が総当たり攻撃などで試行できる回数を大きく減らせる。ウが該当する。
アは,登録済みの質問への回答を追加で求めるリスクベース認証の例である。イは,一定回数の失敗でログインを受け付けないようにするアカウントロックである。エは,利用者 ID ごとに異なるソルトを付加してハッシュ化する対策で,辞書攻撃やレインボーテーブルによる解析を難しくするものである。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問44(表記を一部改変)
問45
デザインレビューの目的はどれか。
ア 設計工程内で,設計工程の成果物の問題点を発見する。 正解
イ 品質保証部門が,全成果物の出荷の可否を判定する。
ウ 品質保証部門によるプログラムのサンプリング検査によって,設計者では気付かない品質上の問題点を発見する。
エ プロジェクトマネジメントのプロセス上の問題点を発見する。
正解 ア
解説
デザインレビューは,設計工程の中で設計成果物を関係者がレビューし,後工程に不具合を持ち越さないよう設計上の問題点を早期に発見することを目的とする。
イとウは品質保証部門が行う出荷判定や抜取検査であって,設計工程内のレビューではない。エはプロジェクトマネジメントのプロセス上の問題を扱うもので,デザインレビューの目的ではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問45(表記を一部改変)
問46
システムをバージョンアップするとき,システムの稼働環境を二つ用意しておき,一方の環境で現バージョンのシステムを稼働させた状態のままで他方の環境のシステムをバージョンアップし,ロードバランサーなどを使って稼働環境を切り替える。これによって,切替えに伴うシステムのダウンタイムを短くするとともに,バージョンアップしたシステムで不具合が発生したときには,元のバージョンに切り戻す時間を短くすることができる。この手法を何というか。
ア ブルーグリーンデプロイメント 正解
イ ホットスタンバイ
ウ ホットスワップ
エ ローリングアップデート
正解 ア
解説
二つの稼働環境を用意し,一方(現バージョン)で稼働させたまま他方をバージョンアップして,ロードバランサーなどで切り替える手法は,ブルーグリーンデプロイメントである。切替えが短時間ですみ,不具合があれば元の環境に戻すだけなので切戻しも早い。アが正しい。
イのホットスタンバイは,障害に備えて待機系を稼働状態で待たせておく構成である。ウのホットスワップは,システムの稼働中に部品を交換する活線挿抜である。エのローリングアップデートは,サーバーを少数ずつ順に更新していく方法で,二つの環境を切り替えるものではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問46(表記を一部改変)
問47
ソフトウェアの保守性を定量評価するときに使用する指標として,適切なものはどれか。
ア (運用期間中に発生した不具合件数)÷(プログラムの規模)
イ (適正規模の基準を満たすプログラムの数)÷(プログラムの総数) 正解
ウ (テスト実施済みの分岐の数)÷(プログラムの総分岐数)
エ (プログラムの推定総エラー数)-(摘出エラー数)
正解 イ
解説
保守性は,ソフトウェアの修正のしやすさを表す。プログラムの規模が大きすぎると変更の影響を把握しにくいので,適正規模の基準を満たすプログラムの割合は,保守性を定量的に評価する指標になる。イが適切である。
アの運用期間中に発生した不具合件数を規模で割った値は,不具合の発生密度で,信頼性を評価する指標である。ウのテスト実施済みの分岐の数÷総分岐数は,分岐網羅率というテストの網羅度の指標である。エの推定総エラー数から摘出エラー数を引いた値は,残存エラー数で,これも品質(信頼性)の指標である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問47(表記を一部改変)
問48
XP(Extreme Programming)のプラクティスの一つであるものはどれか。
ア 構造化プログラミング
イ コンポーネント指向プログラミング
ウ ビジュアルプログラミング
エ ペアプログラミング 正解
正解 エ
解説
XP(エクストリームプログラミング)は,短い反復で開発を進めるアジャイル開発手法の一つで,プラクティスとしてペアプログラミング,テスト駆動開発,リファクタリング,継続的インテグレーション,コードの共同所有などを挙げる。2人1組で1台のコンピュータを使い,一方がコードを書き他方がレビューしながら進めるペアプログラミングはその代表で,エが正しい。
アの構造化プログラミングは,順次・選択・繰返しの制御構造でプログラムを組み立てる考え方。イのコンポーネント指向プログラミングは,部品を組み合わせてソフトウェアを作る考え方。ウのビジュアルプログラミングは,図形を操作してプログラムを作る方式で,いずれも XP のプラクティスではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問48(表記を一部改変)
問49
分散システムの脆弱性を実験によって発見する手法であるカオスエンジニアリングには,五つの原則がある。この原則のうちの三つは,“定常状態における振る舞いの仮説を立てる”,“実世界の事象を多様化させる”,“継続的に実行できるよう実験を自動化する”である。あと二つの原則の組みはどれか。
ア “開発環境で実験を行う”,“影響範囲を局所化する”
イ “開発環境で実験を行う”,“影響範囲を広く捉える”
ウ “本番環境で実験を行う”,“影響範囲を局所化する” 正解
エ “本番環境で実験を行う”,“影響範囲を広く捉える”
正解 ウ
解説
カオスエンジニアリングの原則は,(1)定常状態における振る舞いの仮説を立てる,(2)実世界の事象を多様化させる,(3)本番環境で実験を行う,(4)継続的に実行できるよう実験を自動化する,(5)影響範囲(ブラスト半径)を最小限にする,の五つである。残る二つは,“本番環境で実験を行う”と“影響範囲を局所化する”で,ウが正しい。
実世界の複雑な条件は開発環境では再現しきれないので,本番環境で実験する。ただし,本番の利用者への影響が大きくならないように影響範囲を小さく抑える。そのため,ア,イの“開発環境で実験を行う”と,イ,エの“影響範囲を広く捉える”は,原則と合わない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問49(表記を一部改変)
問50
スクラムにおいて繰り返し実行するイベントのうち,ステークホルダに作業の結果をプレゼンテーションして,プロダクトゴールに対する進捗について話し合い,必要に応じてスコープを調整するイベントはどれか。
ア スプリントプランニング
イ スプリントレビュー 正解
ウ デイリースクラム
エ レトロスペクティブ
正解 イ
解説
スプリントレビューは,スプリントの成果をステークホルダに提示し,プロダクトゴールに対する進捗を話し合って,必要ならプロダクトバックログ(スコープ)を調整するイベント。
アのスプリントプランニングはスプリントの計画を立てるイベント,ウのデイリースクラムは開発者が日々の進捗を同期する短い会議,エのレトロスペクティブはチームの仕事の進め方を振り返って改善するイベント。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問50(表記を一部改変)
問51
プロジェクトマネジメントにおける“プロジェクト憲章”の説明はどれか。
ア プロジェクトの実行,監視,管理の方法を規定するために,スケジュール,リスクなどに関するマネジメントの役割や責任などを記した文書
イ プロジェクトのスコープを定義するために,プロジェクトの目標,成果物,要求事項及び境界を記した文書
ウ プロジェクトの目標を達成し,必要な成果物を作成するために,プロジェクトで実行する作業を階層構造で記した文書
エ プロジェクトを正式に認可するために,ビジネスニーズ,目標,成果物,プロジェクトマネージャ,及びプロジェクトマネージャの責任・権限を記した文書 正解
正解 エ
解説
プロジェクト憲章は,プロジェクトの立ち上げにあたって組織がそれを正式に認可する文書。ビジネスニーズや目標に加え,プロジェクトマネージャを任命してその責任と権限を明示する点が特徴。
アはプロジェクトマネジメント計画書,イはプロジェクトスコープ記述書,ウは WBS の説明。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問51(表記を一部改変)
問52
EVM を使用してマネジメントをしているプロジェクトで,進捗に関する指標値は次のとおりであった。このプロジェクトに対する適切な評価と対策はどれか。
〔進捗に関する指標値〕
CPI(コスト効率指数):0.9 SPI(スケジュール効率指数):1.1 BAC(完成時総予算)に基づく TCPI(残作業効率指数):1.2
ア コストが予算を超えているが,スケジュールには余裕があり,残作業のコスト効率を計画よりも上げる必要はないので,CPI に基づいて完成までに必要なコストを予測する。
イ コストが予算を超えているので,完成時総予算を超過するおそれがあるが,スケジュールには余裕があるので,残作業のコスト効率を上げる対策を検討するか,コンティンジェンシー予備費の使用を検討する。 正解
ウ コストには余裕があるが,スケジュールが予定より遅れており,残作業のコスト効率を計画よりも上げる必要があるので,ファストトラッキングなどを用いたスケジュール短縮を検討するとともに,コンティンジェンシー予備費の使用を検討する。
エ コストには余裕があるので,残作業のコスト効率を計画よりも上げる必要はないが,スケジュールが予定より遅れているので,クラッシングなどを用いたスケジュール短縮を検討する。
正解 イ
解説
CPI=0.9<1 なのでコスト効率が計画を下回っており,コストが予算を超えている。SPI=1.1>1 なのでスケジュールは計画より進んでいる。さらに BAC に基づく TCPI=1.2>1 は,完成時総予算に収めるには残作業を計画より高い効率で進める必要があることを示す。
したがって,予算超過のおそれに対して残作業のコスト効率を上げる対策やコンティンジェンシー予備費の使用を検討するイが適切。アは TCPI>1 を無視して“上げる必要はない”としている点が誤り。ウとエはコストとスケジュールの状態が逆になっている。
CPI と SPI で見通しを読む
コスト効率指数 CPI=EV÷AC,スケジュール効率指数 SPI=EV÷PV。1 より小さいとそれぞれ悪い。現時点で PV>AC>EV なら CPI も SPI も1未満で,このまま進めばコストは計画を超え,完了は遅れる。残作業効率指数 TCPI が1を超えるときは,残りを計画より高い効率で進めないと予算に収まらない。
指数
式
1 未満なら
CPI
EV ÷ AC
コストが超過
SPI
EV ÷ PV
進捗が遅れ
TCPI
残りの作業 ÷ 残りの予算
(1 超)残りを効率よく
PV>AC>EV → CPI<1,SPI<1 → コスト増・完了は遅れる
例:EV 150,AC 150,PV 200 なら CPI=1.0,SPI=0.75
CPI=EV÷AC,SPI=EV÷PV。1 未満なら悪い
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問52(表記を一部改変)
問53
プロジェクトの期間を短縮する方法のうち,クラッシングに該当するものはどれか。
ア 作業の前後関係を組み直し,実施する順番を変える。
イ 作業を分析し,同時に実施できる部分を複数の作業に分割し,並行して実施する。
ウ 先行作業の一部の成果物が完成した時点で,後続作業を開始する。
エ プロジェクトの外部から要員を調達し,クリティカルパス上の作業に投入する。 正解
正解 エ
解説
クラッシングは,要員や設備などの資源を追加投入してクリティカルパス上の作業期間を短縮する技法。コストは増えるが期間を縮められる。
イは同時に実施できる作業を並行させるファストトラッキング。アの作業順序の組替えやウの部分完成による後続作業の前倒しも,資源の追加投入ではないためクラッシングには当たらない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問53(表記を一部改変)
問54
あるシステム開発プロジェクトのシステムテストにおけるテスト密度及び欠陥密度の値は,図に示した領域①~領域④のうち,領域④の範囲内であった。品質管理基準に照らして評価すると,行うべき活動として最も適切なものはどれか。ここで,このプロジェクトの品質管理基準では,定量評価の基準として,表に従ってテスト密度及び欠陥密度の基準値を設定した上で,テスト密度は基準値の 80%以上であること,かつ,欠陥密度は基準値の 80%以上 120%未満であることと定めている。
ア 欠陥密度は基準を満たしているが,システムの品質に問題がないか,欠陥の妥当性を確認する。
イ システムの欠陥が多いので,検出した欠陥の原因を分析した上で,システムの品質改善に取り組む。
ウ システムの欠陥を十分に検出できていない懸念があるので,テストの観点に漏れがないかなど,テストケースの妥当性を確認する。 正解
エ テスト密度が不足しているので,システムの規模に見合うテストケース数以上となるように,テストケースを追加する。
正解 ウ
解説
品質管理基準は,テスト密度が基準値 20 件/KLOC の 80%以上(16 以上),欠陥密度が基準値 0.1 件/KLOC の 80%以上 120%未満(0.08 以上 0.12 未満)である。領域④は,テスト密度が 16 以上で基準を満たしているが,欠陥密度が 0.08 未満で基準より少ない。テストを十分に行っているのに欠陥が少ないので,欠陥を検出できていない懸念があり,テストの観点に漏れがないかなど,テストケースの妥当性を確認するウが適切である。
イは欠陥密度が基準より多い領域②,エはテスト密度が基準に届かない領域①に対応する活動である。アは欠陥密度が基準内にある領域③の場合の確認で,欠陥が基準より少ない領域④の対応としては足りない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問54(表記を一部改変)
問55
あるサービスでは〔サービス可用性の SLA〕に基づき,サービス可用性の目標値の遵守状況を月ごとに測定して評価している。ある月の実績値は 99.3%だった。この月にサービス可用性の目標値を達成するためには,サービス停止時間は,最低,何時間少なければよかったか。
〔サービス可用性の SLA〕
サービス可用性の目標値:99.5%以上 サービス提供時間帯:7 時~22 時 サービス提供日数:20 日/月
正解 イ
解説
サービス提供時間は 7時〜22時の15時間×20日/月=300時間。
目標の99.5%以上を満たすには停止時間を 300×0.5%=1.5時間以内に抑える必要がある。実績99.3%のときの停止時間は 300×0.7%=2.1時間なので,2.1−1.5=0.6時間少なければ目標を達成できた。
可用性の目標から許される停止時間
サービス提供時間は 7〜22 時の15時間×20日=300時間。目標 99.5% 以上なら停止は 300×0.5%=1.5時間まで。実績 99.3% のときの停止は 300×0.7%=2.1時間なので,2.1−1.5=0.6時間少なければ達成できた。
提供時間 15時間 × 20日 = 300 時間(帯の右端を拡大)
許容 1.5
超過 0.6
止まった(数える)
提供時間に含めない(分母から除く)
目標 99.5%:300 × 0.5% = 1.5 時間まで
実績 99.3%:300 × 0.7% = 2.1 時間
2.1 − 1.5 = 0.6 時間
停止時間=提供時間×(1−可用性)
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問55(表記を一部改変)
問56
A 社は,自社がオンプレミスで運用している業務システムを,クラウドサービスへ段階的に移行する。段階的移行では,初めにネットワークとサーバを IaaS に移行し,次に全てのミドルウェアを PaaS に移行する。A 社が行っているシステム運用作業のうち,この移行によって不要となるシステム運用作業の組合せはどれか。
〔A 社が行っているシステム運用作業〕
① 業務システムのバッチ処理のジョブ監視 ② 物理サーバの起動,停止のオペレーション ③ ハードウェアの異常を警告する保守ランプの目視監視 ④ ミドルウェアへのパッチ適用
ア IaaS への移行によって不要となるもの:①,PaaS への移行によって不要となるもの:②,④
イ IaaS への移行によって不要となるもの:①,③,PaaS への移行によって不要となるもの:②
ウ IaaS への移行によって不要となるもの:②,③,PaaS への移行によって不要となるもの:④ 正解
エ IaaS への移行によって不要となるもの:③,PaaS への移行によって不要となるもの:②,④
正解 ウ
解説
オンプレミスから IaaS に移行すると,ネットワークとサーバーのハードウェアは事業者の管理になる。このため,②物理サーバの起動,停止のオペレーションと,③ハードウェアの異常を警告する保守ランプの目視監視は不要になる。次に PaaS で全てのミドルウェアを任せると,④ミドルウェアへのパッチ適用も事業者が行うので不要になる。したがって,IaaS で不要になるのは②,③,PaaS で不要になるのは④で,ウが正しい。
①業務システムのバッチ処理のジョブ監視は,アプリケーションの運用作業であり,IaaS や PaaS に移行しても A 社が行う。ア,イ,エは,①を不要としていたり,②を PaaS への移行で不要としていたり(②は IaaS への移行で不要になる)するので誤りである。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問56(表記を一部改変)
問57
サービスの継続的改善で,改善の達成目標を設定して活動するとき,“サービスの提供やマネジメントの成功に重要な要因”を特定したものを何というか。
正解 ア
解説
CSF(Critical Success Factor:重要成功要因)は,目標を達成するために特に重要な要因をいう。サービスの継続的改善では,サービスの提供やマネジメントの成功に重要な要因を CSF として特定し,その達成度を KPI で測る。アが正しい。
イの KGI(Key Goal Indicator)は,最終目標の達成度を測る指標である。ウの KPI(Key Performance Indicator)は,CSF などの達成度を測る業績評価指標である。エの OKR(Objectives and Key Results)は,目標と主要な成果を設定して管理する手法である。
KGI・CSF・KPI の流れ
まず最終の目標を数値にする(KGI:物流コスト 10%削減)。次にそれを達成する鍵になる要因を見極める(CSF:在庫の削減,誤出荷の削減)。その要因の達成度を測る指標を決める(KPI:在庫日数7日以内,誤出荷率3%以内)。改善を実施して成果を測り,ギャップを分析して KGI に戻る。
物流コストの削減
a KGI の設定
10%の物流コスト削減
目標
b CSF の抽出
在庫・誤出荷の削減
鍵になる要因
c KPI の設定
在庫日数7日・誤出荷率3%
測る指標
改善活動の実施
計測とギャップ分析
a=KGI の設定,b=CSF の抽出,c=KPI の設定
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問57(表記を一部改変)
問58
システム監査におけるウォークスルー法の説明として,適切なものはどれか。
ア 機密データの保管状況に関する資料及び文書類を入手し,内容を点検する。
イ システムの運用状況について,関係者に口頭で問い合わせ,回答を入手する。
ウ データの生成から入力,処理,出力,利活用までのプロセス,及び組み込まれている一連のコントロールを確認する。 正解
エ テストデータを監査対象プログラムで処理し,期待した結果が出力されるかどうかを確かめる。
正解 ウ
解説
ウォークスルー法は,データの生成から入力・処理・出力・利活用に至る一連の流れを追跡し,その過程に組み込まれたコントロールが意図どおり機能しているかを確認する監査技法。
アは資料や文書類を入手して点検する閲覧・査閲,イは関係者に口頭で問い合わせる質問(インタビュー),エは監査人が用意したデータを処理させて結果を確かめるテストデータ法。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問58(表記を一部改変)
問59
システム監査における“監査手続”として,最も適切なものはどれか。
ア 監査計画の立案や監査業務の進捗管理を行うための手続
イ 監査結果を受けて,監査報告書に監査人の結論や指摘事項を記述する手続
ウ 監査項目について,十分かつ適切な証拠を入手するための手続 正解
エ 監査テーマに合わせて,監査チームを編成する手続
正解 ウ
解説
監査手続は,監査項目について監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手するために実施する手順のこと。
アは監査計画の立案や進捗管理,イは監査報告書の作成,エは監査体制の編成であり,いずれも監査証拠を入手する手順そのものではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問59(表記を一部改変)
問60
システム管理基準(令和 5 年)における,ユーザ受入テストに関する監査のチェックポイントとして,適切なものはどれか。
ア 構築された情報システムに,業務要件が適切に反映されていることを確認するために,利用者の立場からテストされていること 正解
イ 情報システムの稼働後に,IT 戦略における目標を達成しているかどうかを確認するために,客観的な情報に基づいてテストされていること
ウ 利用者からのシステム要件が適切に反映されていることを確認するために,情報システムの全ての構成要素について,中間成果物も含めてレビューされていること
エ 利用者が情報システムを利用できるようにするために,情報システムの移行後に,移行結果について,本番環境が利用可能かどうかレビューされていること
正解 ア
解説
システム管理基準(令和 5 年)では,ユーザ受入テスト(Ⅱ.4.4)は,“業務要件を情報システムに適切に反映していることを確認するために,利用者の立場からテストする”ものと位置付けられている。アがそのチェックポイントに当たる。
イは,稼動後評価と報告(Ⅱ.4.6)の,“情報システムが IT 戦略における目標を達成していることを確認するために,客観的な情報を提供する”に当たる。ウは検証(Ⅱ.4.3)の,“システム要件を適切に反映していることを確認するために,中間成果物も含めてレビューする”に当たる。エは本番環境への移行(Ⅱ.4.5)の,“利用者が情報システムを利用できるようにするために,情報システムを本番環境で稼動させる”に当たる。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問60(表記を一部改変)
問61
DX 認定制度における認定基準に含まれている事項はどれか。
ア 経営ビジョン及び DX 戦略を策定して対外発信を行うことに加えて,ビジネスモデルの革新などデジタル技術活用の成果目標も既に達成していること
イ 経営ビジョン及びビジネスモデルの方向性を公表するとともに,策定したビジネスモデルを実現するための方策として,DX 戦略を公表していること 正解
ウ 申請対象が,中小企業基本法で定められた中小企業であること
エ デジタルガバナンス・コード3.0の全項目に対応していること
正解 イ
解説
DX 認定制度は,デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応し,DX 推進の準備が整っている事業者を国が認定する制度。経営ビジョンやビジネスモデルの方向性を公表し,それを実現する方策として DX 戦略を策定・公表していることが認定基準に含まれる。
アは誤り。認定は準備が整っていることを認めるものであり,成果目標の達成までは求めていない。ウは誤り。企業規模を問わず全ての事業者が対象。エは誤り。求められるのは基本的事項への対応であって,コードの全項目への対応ではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問61(表記を一部改変)
問62
A 社は,ソリューションプロバイダから,顧客に対するワントゥワンマーケティングを実現する統合的なソリューションの提案を受けた。この提案に該当するソリューションとして,適切なものはどれか。
ア CRM ソリューション 正解
イ HRM ソリューション
ウ SCM ソリューション
エ 財務管理ソリューション
正解 ア
解説
CRM(Customer Relationship Management,顧客関係管理)は,顧客の属性や購買履歴,問合せ履歴などの情報を一元管理し,顧客一人一人に合わせた対応や提案を行うことで,長期的に良好な関係を築くための仕組みである。顧客ごとに個別の働きかけをするワントゥワンマーケティングを実現するソリューションに当たるので,アが適切である。
イの HRM(人的資源管理)は従業員の採用,評価,育成など人事に関するもの,ウの SCM(サプライチェーンマネジメント)は調達から生産,物流,販売までの供給の流れを最適化するもの,エの財務管理は会計や資金を扱うもので,いずれも顧客への個別のマーケティングを目的としていない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問62(表記を一部改変)
問63
クラウドサービスなどの提供を迅速に実現するためのプロビジョニングの説明はどれか。
ア 企業の情報システムの企画,設計,開発,導入,保守などのサービスを,一貫して又は工程の幾つかを部分的に提供する。
イ 業種や事業内容などで共通する複数の企業や組織が共同でデータセンターを運用して,それぞれがインターネットを通して各種サービスを利用する。
ウ 自社でハードウェア,ネットワークなどの環境を用意し,業務パッケージなどを導入して利用する運用形態にする。
エ 利用者の需要を予想し,ネットワーク設備やシステムリソースなどを計画的に調達して強化し,利用者の要求に応じたサービスを提供できるように備える。 正解
正解 エ
解説
プロビジョニングは,利用者の需要を予測してサーバやネットワークなどのリソースをあらかじめ調達・配備しておき,要求が発生したときにすぐサービスを提供できるように備えること。
アはシステムインテグレーション,イは複数企業が共同でデータセンターを運用する形態の説明。ウは自社で環境を用意するオンプレミスの運用形態。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問63(表記を一部改変)
問64
製品 X と製品 Y を販売している企業が,見積作成と提案書作成に掛かる業務時間を,それぞれ 20%削減できるシステムの構築を検討している。Activity-Based Costing を用いて,次の条件が洗い出された。本システム構築による製品 X の見積作成と製品 X の提案書作成に関する月間総人件費削減効果は幾らか。
〔条件〕
製品 X の見積作成に掛かる月間業務時間は,50 時間 製品 X の提案書作成に掛かる月間業務時間は,50 時間 製品 Y の見積作成に掛かる月間業務時間は,100 時間 製品 Y の提案書作成に掛かる月間業務時間は,400 時間 製品 X と製品 Y の見積作成に掛かる月間総人件費は,60 万円 製品 X と製品 Y の提案書作成に掛かる月間総人件費は,360 万円 見積作成と提案書作成は,それぞれ人件費単価が異なる部門が担っている。 製品 X と製品 Y の見積作成に掛かる人件費単価は,同じである。 製品 X と製品 Y の提案書作成に掛かる人件費単価は,同じである。
ア 4 万円
イ 8 万円
ウ 12 万円 正解
エ 14 万円
正解 ウ
解説
Activity-Based Costing では,活動ごとに人件費の単価を求めて,製品への配分を計算する。見積作成は製品 X と Y で合計 50+100=150 時間,総人件費 60 万円なので,1 時間当たり 60÷150=0.4 万円。製品 X の見積作成は 50×0.4=20 万円である。提案書作成は合計 50+400=450 時間,総人件費 360 万円なので,1 時間当たり 360÷450=0.8 万円。製品 X の提案書作成は 50×0.8=40 万円である。それぞれ 20%削減できるので,削減効果は (20+40)×0.2=12 万円であり,ウになる。
アの 4 万円は見積作成の削減分(20×0.2)だけ,イの 8 万円は提案書作成の削減分(40×0.2)だけの値である。エの 14 万円は,見積と提案書の総人件費 420 万円を総時間 600 時間で割った単価 0.7 万円で,製品 X の 100 時間分を一律に計算した値(70×0.2)であり,活動ごとの単価の違いを反映していない。
活動基準原価計算(ABC)で製品 X の削減額を求める
活動ごとに時間単価を出す。見積作成は X と Y で 50+100=150 時間に 60 万円なので 0.4 万円/時,提案書作成は 50+400=450 時間に 360 万円なので 0.8 万円/時。製品 X は見積 50×0.4=20 万円,提案書 50×0.8=40 万円。20% 削減で (20+40)×0.2=12 万円。
活動
時間(X+Y)
人件費
単価
製品 X
見積作成
50+100
60 万
0.4 万/時
50×0.4=20
提案書作成
50+400
360 万
0.8 万/時
50×0.8=40
製品 X:20 + 40 = 60 万円
20% 削減 → 60 × 0.2 = 12 万円
単価が活動ごとに違うのがポイント
活動ごとの単価 × 製品の時間で配分する
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問64(表記を一部改変)
問65
システム管理基準(令和 5 年)によれば,企画プロセスにおけるビジネス分析の達成目標の一つとして,適切なものはどれか。
ア あるべきビジネスモデル及び業務プロセスによって生じる問題やメリットが明確にされている。 正解
イ 関連する情報システム及び情報システムの構成要素間のインタフェースが特定されている。
ウ 重要な情報システムの遂行能力・性能・稼働率などの実績の測定量が明確にされている。
エ 優先順位付けされた要望が業務要件として明確にされ,利用者及び関係者と合意されている。
正解 ア
解説
システム管理基準(令和 5 年)のⅡ.3.1 ビジネス分析の達成目標には,“あるべきビジネスモデル及び業務プロセスによって生じる問題やメリットが明確にされている”が挙げられている。アが適切である。
イの“関連する情報システム及び情報システムの構成要素間のインタフェースが特定されている”は,Ⅱ.3.4 基本設計の達成目標である。ウの“重要な情報システムの遂行能力・性能・稼働率などの実績の測定量が明確にされている”は,Ⅱ.3.3 システム要件定義の達成目標である。エの“優先順位付けされた要望が業務要件として明確にされ,利用者及び関係者と合意されている”は,Ⅱ.3.2 業務要件定義の達成目標である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問65(表記を一部改変)
問66
ベンダー X 社に対して,表に示すように要件定義フェーズから運用テストフェーズまでを委託したい。X 社との契約に当たって,“情報システム・モデル取引・契約書<第二版>”に照らし,各フェーズの契約形態を整理した。a~d の契約形態のうち,準委任型が適切であるとされるものはどれか。
ア a, b
イ a, d 正解
ウ b, c
エ b, d
正解 イ
解説
“情報システム・モデル取引・契約書<第二版>”は,ユーザーが主体となって決める工程は,ベンダーが専門的な支援を行う準委任型,ベンダーが成果物の完成に責任を負える工程は請負型を適切としている。要件定義はユーザーの業務要件を固める工程なので準委任型(a),運用テストはユーザーが自らの業務で使えるかを確かめる工程なので準委任型(d)が適切である。イが正しい。
一方,システム内部設計(b)とシステム結合(c)は,ソフトウェア設計・プログラミングと同様にベンダーが成果物に責任を負う工程なので請負型が適切とされる。よって準委任型は a と d。
モデル取引・契約書:工程ごとの契約の型
ユーザが主体となって進めるシステム化計画・要件定義・導入・受入支援は準委任型。ベンダが成果物の完成に責任を負えるシステム内部設計からシステム結合までは請負型。システム外部設計とシステムテストは,準委任型か請負型のどちらか。
システム
化計画
準委任
要件定義
準委任
外部設計
どちらか
内部設計
請負
設計・製
造・テス
ト
請負
システム
結合
請負
システム
テスト
どちらか
導入・受
入支援
準委任
請負:内部設計〜システム結合
要件定義と導入・受入支援はユーザが主体(準委任)
成果物を完成させる約束ができる工程(内部設計〜結合)が請負
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問66(表記を一部改変)
問67
市場成長率と相対的市場シェアから,市場と企業との関係を分析し,自社製品や事業についての最適な資源配分方針を求めるための手法はどれか。
正解 ウ
解説
PPM(Product Portfolio Management)は,縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場シェアをとって事業や製品を“花形”“金のなる木”“問題児”“負け犬”の4象限に分類し,最適な資源配分の方針を決める手法。
アの 3C は顧客・競合・自社の観点から事業環境を分析する枠組み,イの BSC は財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの視点で業績を評価する仕組み,エの SWOT は強み・弱み・機会・脅威を整理する分析手法。
PPM の4つの区分
縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場シェア(左が高い)をとる。成長率もシェアも高い花形,成長率が高くシェアが低い問題児,成長率が低くシェアが高い金のなる木,どちらも低い負け犬に分ける。金のなる木が生んだ資金を,花形や問題児に回す。
花形
成長に合わせた投資も要る
問題児
シェアを取るには投資が要る
金のなる木
投資が少なく資金を生む
負け犬
撤退を考える
高
低
成長率
市場
高
低
相対的市場シェア
金のなる木の資金を,花形と問題児へ回す
金のなる木が生む資金を,花形と問題児に回す
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問67(表記を一部改変)
問68
プライスライニング戦略はどれか。
ア 消費者が選択しやすいように,複数の価格帯に分けて商品を用意する。 正解
イ 商品の品質の良さやステータスを訴えるために意図的に価格を高く設定する。
ウ 商品本体の価格を安く設定し,関連消耗品の販売で利益を得る。
エ 新商品に高い価格を設定して早い段階で利益を回収する。
正解 ア
解説
プライスライニングは,商品を“松・竹・梅”のように幾つかの価格帯に分けて用意し,消費者が選びやすくする価格戦略である。アが該当する。
イは,品質やステータスを訴えるために高い価格を設定する威光価格(プレステージ価格)。ウは,本体を安く売り,関連する消耗品で利益を得るキャプティブ価格(ジレット戦略)。エは,新商品に高い価格を設定して早期に開発費などを回収するスキミング価格である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問68(表記を一部改変)
問69
カーシェアビジネスをビジネスモデルキャンバスに当てはめた。b に該当するものはどれか。なお,ア~エは a~d のいずれかに該当する。
〔カーシェアビジネス〕
カーディーラーから車両を調達し,維持・メンテナンスしながら,その車両を提携駐車場に保管・準備する。 必要なときだけ車両を使いたい人が登録する会員制度を構築し,会員から月会費を徴収する。 会員向けの Web サイトで,会員に使いたい車両や利用時間などを予約してもらい,会員に対して車両の時間貸しを行い,利用料を徴収する。
ア 月会費,利用料
イ 車両
ウ 車両の時間貸し 正解
エ 必要なときだけ車両を使いたい人
正解 ウ
解説
ビジネスモデルキャンバスの VP(価値提案)は,顧客に提供する価値を示すブロックである。カーシェアビジネスでは,会員に車両の時間貸しを行うことが提供する価値に当たるので,b はウの“車両の時間貸し”である。
ほかのブロックは,a(KR:主要リソース)が車両でイ,c(CS:顧客セグメント)が必要なときだけ車両を使いたい人でエ,d(R$:収益の流れ)が月会費・利用料でアである。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルを9つの要素で1枚に描く。中心に価値提案を置き,右側に顧客セグメント・チャネル・顧客との関係,左側に主要活動・主要リソース・パートナ,下にコスト構造と収益の流れを置く。
パートナ
主要活動
リソース
価値提案
顧客との関係
チャネル
顧客セグメント
コスト構造
収益の流れ
中央が価値提案。右が顧客側,左がそれを支える側,下がお金
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問69(表記を一部改変)
問70
フリーミアムの特徴はどれか。
ア Web サイト内の広告だけを収益源としているので,サービスの維持・拡大が困難である。
イ 全ての利用者に広く課金するモデルである。
ウ 有料と無料の境界が明確になっていて,高度な機能や充実した内容など有料のサービスの優位性がはっきりしている。 正解
エ 利用者ごとに掛かるコストが大きいので,少数の利用者が限定的に使うような場合にだけ,より高い効果が見込める。
正解 ウ
解説
フリーミアムは,free(無料)と premium(割増)を組み合わせた造語で,基本的な機能やサービスを無料で提供して多数の利用者を集め,そのうちの一部に,より高度な機能や充実した内容をもつ有料のサービスを使ってもらうことで収益を得るモデルである。無料と有料の境界が明確で,有料のサービスの優位性がはっきりしていることが,無料の利用者を有料へ導く上で欠かせない。ウが正しい。
アは,広告だけを収益源とする広告モデルの説明である。イは,全ての利用者から料金を取る従来型の有料モデルで,無料の部分をもつフリーミアムとは異なる。エは逆で,フリーミアムは多数の無料利用者を抱えても追加の費用がほとんど増えないサービスに向く考え方であり,利用者ごとのコストが大きい場合には成り立ちにくい。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問70(表記を一部改変)
問71
クラウドで学習し,エッジデバイスで推論する機械学習ベースのエッジ AI において,エッジデバイスで行われる推論処理として,適切なものはどれか。
ア 一定の環境の中で試行錯誤を行い,行動に報酬を与えることで学習するプロセス
イ 学習したモデルに従い,実際にデータの識別などを行うプロセス 正解
ウ 識別などを行うためのモデルを,正解のラベルを付けたデータによって作成するプロセス
エ 識別などを行うためのモデルを,正解のラベルを付けないデータによって作成するプロセス
正解 イ
解説
機械学習では,データからモデルを作る処理を学習,学習済みモデルに新しいデータを入力して判断・識別を行う処理を推論という。エッジ AI は,計算負荷の大きい学習をクラウドで行い,エッジデバイスでは推論だけを実行する構成をとる。
アは強化学習,ウは教師あり学習,エは教師なし学習の説明で,いずれも学習側の処理。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問71(表記を一部改変)
問72
スマートファクトリーで使用される AI を用いたマシンビジョンの目的として,適切なものはどれか。
ア クラウドに蓄積した入出荷データを用いて AI が需要予測し,生産数を最適化する。
イ 作業者が装着した VR ゴーグルに AI が作業状況に応じたガイドを表示することによって,作業効率を向上させる。
ウ 設計変更内容を AI によって整理し,製造現場に正確に伝達する。
エ 人間の目視検査を AI が代替し,検査効率を向上させる。 正解
正解 エ
解説
マシンビジョンは,カメラで撮影した画像をコンピュータで解析して,対象物の位置や形状,傷などを判別する技術。スマートファクトリーでは AI による画像認識と組み合わせて,人が目で見て行っていた外観検査などを自動化し,検査の効率と精度を高めるのに使われる。エが適切である。
アは需要予測,イは VR による作業支援,ウは設計変更情報の伝達であり,いずれも画像による検査ではない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問72(表記を一部改変)
問73
コンピテンシーモデルの説明はどれか。
ア 権限行使と命令統制による労務管理を批判し,目標管理制度や経営参加制度などによる動機付けが有効であるとしたもの
イ 最適なリーダーシップの唯一のスタイルは存在せず,望ましいリーダーシップのスタイルは,状況に応じて異なるとしたもの
ウ 人材の評価や育成の基準とするために,恒常的に成果に結び付けることができる個人の行動や思考特性を定義したもの 正解
エ 人間の基本的欲求を低次から,生理的欲求,安全の欲求,所属と愛の欲求,承認の欲求,自己実現の欲求としたもの
正解 ウ
解説
コンピテンシーは,高い成果を上げ続けている人に共通して見られる行動の仕方や考え方の特性をいう。コンピテンシーモデルは,この特性を職務や職位ごとに整理して定義したもので,人材の評価や採用,育成の基準として用いる。恒常的に成果に結び付けることができる個人の行動や思考特性を定義したウが正しい。
アは,権限行使と命令統制による労務管理を批判し,人は条件が整えば自ら働くとして目標管理制度や経営参加制度による動機付けを説いた,マグレガーの Y 理論である。イは,望ましいリーダーシップのスタイルが状況によって変わるとする状況適合理論で,SL 理論などがこれに当たる。エはマズローの欲求段階説である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問73(表記を一部改変)
問74
様々な需要予測モデルのもととなっている時系列モデルに関する記述として,適切なものはどれか。
ア 移動平均法では,平均する期間を長くするほど,短期的な需要の変化の影響が大きくなる。
イ 移動平均法は,長期的な需要のトレンドを把握するのには向かないが,直近の需要の変化を把握するのには向いている。
ウ 指数平滑法では,平滑化定数の値が 0%に近いほど直前の実績値を重視し,100%に近いほど過去の実績値を重視する。
エ 指数平滑法は,過去の実績値よりも直近の実績値を用いるほど予測の精度が向上すると考えられる場合に有効な手法である。 正解
正解 エ
解説
指数平滑法は,次期の予測値を,直近の実績値と直近の予測値を平滑化定数 α で重み付けして求める方法で,過去ほど重みが小さくなる。直近の実績値ほど予測の精度に効くと考えられる場合に有効なので,エが適切である。
アは,移動平均法は平均する期間を長くするほど平滑化が強まり,短期的な変化の影響は小さくなる。イは,移動平均法は平滑化によって,長期的なトレンドの把握に向く手法である。ウは,平滑化定数が 100%に近いほど直前の実績値を重視し,0%に近いほど過去の実績値を重視する,という逆の説明になっている。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問74(表記を一部改変)
問75
引き出された多くの事実やアイディアを,類似するものでグルーピングしていく収束技法はどれか。
ア NM 法
イ ゴードン法
ウ 親和図法 正解
エ ブレーンストーミング
正解 ウ
解説
親和図法は,収集した多くの事実やアイディアを,内容の近さ(親和性)で小さなグループにまとめ,さらにグループどうしをまとめていくことで,全体の構造を整理する収束技法である。ウが該当する。
アの NM 法は,テーマに類似した事柄からヒントを得て発想を広げる類比発想の技法。イのゴードン法は,本当のテーマを参加者に伏せて抽象的なテーマで自由に発想させる技法。エのブレーンストーミングは,批判をせずに自由に多くのアイディアを出し合う技法で,いずれもアイディアを広げる発散技法である。
親和図法
集めた事実やアイデア,意見などの言語データを1枚ずつカードに書き,内容の近いもの(親和性の高いもの)どうしを小さなグループにまとめて見出しを付ける。さらにグループどうしをまとめていき,問題の構造をはっきりさせる。新 QC 七つ道具の一つで,収束技法に当たる。
待ち時間が長い
カード
カード
カード
説明が分かりにくい
カード
カード
カード
設備が古い
カード
カード
カード
見出しの付いたグループを,さらにまとめていく
似たカードどうしをまとめ,見出しを付ける
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問75(表記を一部改変)
問76
表から,卸売業 A 社と小売業 B 社の財務指標を比較したとき,卸売業 A 社について適切な記述はどれか。
ア 売上高,総資産の額がともに低く,総資産回転率も低い。
イ 売上高営業利益率が高く,総資産営業利益率も高い。
ウ 営業利益,総資産の額がともに低く,総資産営業利益率も低い。
エ 総資産回転率が高く,総資産営業利益率も高い。 正解
正解 エ
解説
表から,財務指標を求める。総資産回転率(売上高÷総資産)は A 社が 800÷100=8 回,B 社が 1,000÷900≒1.1 回,総資産営業利益率(営業利益÷総資産)は A 社が 20÷100=20%,B 社が 90÷900=10%,売上高営業利益率は A 社が 20÷800=2.5%,B 社が 90÷1,000=9%である。A 社は総資産回転率が高く,総資産営業利益率も高いので,エが適切である。
アは,売上高と総資産の額は低いが,総資産回転率は B 社より高い。イは,売上高営業利益率は B 社より低い。ウは,営業利益と総資産の額は低いが,総資産営業利益率は B 社より高い。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問76(表記を一部改変)
問77
売上高が 7,000 万円のとき,200 万円の損失,売上高が 9,000 万円のとき,600 万円の利益と予想された。売上高が 8,000 万円のときの変動費は何万円か。ここで,売上高が変わっても変動費率は変わらないものとする。
ア 3,200
イ 4,000
ウ 4,800 正解
エ 5,600
正解 ウ
解説
変動費率が一定なので,売上高の増加分に対する利益の増加分から限界利益率が求められる。売上高が 7,000万円→9,000万円 と 2,000万円増えたとき,利益は −200万円→600万円 と 800万円増えている。
限界利益率=800÷2,000=0.4 なので,変動費率=1−0.4=0.6。売上高が 8,000万円のときの変動費は 8,000×0.6=4,800万円。
損益分岐点図表
横軸に売上高,縦軸に金額をとる。固定費は売上高に関係なく一定で,総費用は固定費に変動費を足したもの。売上高の線と総費用の線が交わる点が損益分岐点で,それより右は利益,左は損失になる。損益分岐点売上高は 固定費 ÷(1 − 変動費率)で求める。
売上高
金額
固定費
総費用
売上高
損益分岐点
損益分岐点売上高
利益
損失
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
売上高の線が総費用の線を越えたところから利益が出る
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問77(表記を一部改変)
問78
著作権法及び関連法令によれば,生成 AI を利用して画像を生成する行為又はその生成物の利用が著作権侵害にあたるか否かに関して,適切な記述はどれか。
ア AI が既存の著作権で保護されている画像をデータセットとして学習している場合は,その AI を利用して画像を生成すると,いかなる場合も著作権侵害になる。
イ AI を利用して生成した画像が著作権で保護された既存の画像と類似しており,それを公開した場合,著作権侵害となる可能性がある。 正解
ウ AI を利用して生成した画像は,AI が自動的に創作したものであるため,いかなる状況でも著作権の対象外となり,著作権侵害の懸念は生じない。
エ AI を利用して生成した画像は,生成した本人の私的使用に限って,利用が認められており,商業利用を行った場合は,いかなる場合も著作権侵害となる。
正解 イ
解説
著作権侵害となるのは,生成物が既存の著作物と“類似性”をもち,かつその著作物に“依拠”して作られたと認められる場合。生成 AI が学習に用いた著作物に類似した画像を生成して公開した場合は,依拠性が認められて侵害となる可能性がある。
アは誤り。学習に使われていても,既存の著作物に類似しない生成物であれば侵害にはならない。ウは誤り。AI を道具として使った場合でも,類似性と依拠性が認められれば侵害となり得る。エは誤り。私的使用は判断要素の一つにすぎず,商業利用が直ちに侵害になるわけでもない。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問78(表記を一部改変)
問79
資金決済法における暗号資産に関する記述として,適切なものはどれか。
ア 暗号資産交換業者は,情報の安全管理や広告・勧誘規制などの行為規制は受けるが,資本金額や純資産額などの財務的規制は受けない。
イ 暗号資産は,不特定の者に対して使用でき,電子的に記録され,移転できるものであり,法定通貨又は法定通貨建ての資産ではないが,法定通貨と相互に交換できる。 正解
ウ 暗号資産は,ブロックチェーン技術を用いて集中管理されており,法定通貨と同様,銀行などの金融機関で入手・交換できる。
エ 利用者の保有する暗号資産の残高や取引は,発行者によって利用者ごとに管理されているので,利用者は保有している暗号資産を発行者の指定する加盟店だけで使用できる。
正解 イ
解説
資金決済法第 2 条では,暗号資産を,物品等の購入などの代価の弁済のために不特定の者に対して使用でき,かつ,不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値で,電子機器などに電子的方法により記録され,電子情報処理組織を用いて移転できるものなどと定めている。本邦通貨及び外国通貨,通貨建資産などは除かれる。法定通貨ではないが,不特定の者との間で法定通貨と交換できるので,イが適切である。
アは誤りで,同法第 63 条の 5 は,暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない法人の登録を拒否すると定めており,財務的な規制も受ける。ウも誤りで,ブロックチェーンは取引の記録を多数の参加者で分散して管理する技術であり,暗号資産の入手や交換は暗号資産交換業者を通じて行う。エは,発行者が残高を管理し加盟店で使用する前払式支払手段(電子マネーなど)の説明に近い。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問79(表記を一部改変)
問80
欧州へ電子部品を輸出するには,RoHS 指令への対応が必要である。この RoHS 指令の目的として,適切なものはどれか。
ア 家電製品から有用な部品や材料をリサイクルし,廃棄物を減量するとともに,資源の有効利用を推進する。
イ 機器が発生する電磁妨害が,無線通信機器及びその他の機器の正常な動作を妨げるレベルを超えないようにする。
ウ 大量破壊兵器の開発及び拡散,通常兵器の過剰備蓄に関わるおそれがある場合など,国際社会の平和と安全を脅かす輸出行為を防止する。
エ 電気電子製品の生産から処分までの全ての段階で,有害物質が環境及び人の健康に及ぼす危険を最小化する。 正解
正解 エ
解説
RoHS 指令(Restriction of Hazardous Substances)は,EU が電気・電子機器に含まれる鉛,水銀,カドミウム,六価クロムなどの特定の有害物質の使用を制限し,人の健康と環境を守ることを目的とする指令である。エが適切である。
アは,使用済みの家電製品の回収とリサイクルを定めた WEEE 指令の目的。イは,機器が出す電磁妨害の上限を定める EMC 指令(電磁両立性)の目的。ウは,大量破壊兵器などに関わる輸出の管理を行う輸出管理の目的である。
出典:令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問80(表記を一部改変)
応用情報技術者試験のほかの年度
科目A(午前)
令和7年度 秋期
令和7年度 春期
令和6年度 秋期
令和6年度 春期
令和5年度 秋期
令和5年度 春期
令和4年度 秋期
令和4年度 春期
令和3年度 秋期
令和3年度 春期
令和2年度 10月
令和元年度 秋期
平成31年度 春期
平成30年度 秋期
平成30年度 春期
平成29年度 秋期
平成29年度 春期
平成28年度 秋期
平成28年度 春期
平成27年度 秋期
平成27年度 春期
平成26年度 秋期
平成26年度 春期
平成25年度 秋期
平成25年度 春期
平成24年度 秋期
平成24年度 春期
平成23年度 秋期
平成23年度 特別試験
平成22年度 秋期
平成22年度 春期
平成21年度 秋期
平成21年度 春期
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