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応用情報技術者試験

令和5年度 春期 科目A(午前)

令和5年度 春期に実施された応用情報技術者試験 午前(2026年度からの科目A)の全80問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:応用情報技術者試験について

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問1

0以上255以下の整数 n に対して,

next(n) の定義。0≦n<255 のとき n+1,n=255 のとき 0。

と定義する。next(n)と等しい式はどれか。ここで,x AND y 及び x OR y は,それぞれ x と y を2進数表現にして,桁ごとの論理積及び論理和をとったものとする。

正解 ア

解説

255 は2進数で 11111111(下位8ビットがすべて1)。したがって「AND 255」は下位8ビットだけを残す操作になる。

n が0〜254のときは n+1 が1〜255なので8ビットに収まり,AND 255 をとっても値は変わらず n+1 のまま。n=255 のときは n+1=256=100000000 となり,AND 255 で下位8ビットだけを残すと 0 になる。これは定義どおりの動きなのでアが正しい。

イの AND 256 は9ビット目だけを残すので常に0か256になる。ウとエの OR はビットを立てる操作なので,値が n+1 に一致しない。

AND 255 で下位8ビットだけを残す 255 は2進数で 11111111 なので,AND 255 は下位8ビットだけを残す。n が 0〜254 なら n+1 は8ビットに収まり値は変わらない。n=255 のときは n+1=256=1 0000 0000 で,下位8ビットを残すと 0 になる。これは next(n) の定義どおり。 n+1(2進) AND 1111 1111 結果 n=254 → 255 0 1111 1111 1111 1111 255 n=255 → 256 1 0000 0000 0000 0000 0 9 ビット目(256)は AND 255 で消える AND 256 は 9 ビット目だけ,OR はビットを立てるので違う
(n+1) AND 255 は 255 の次で 0 に戻る

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問1(表記を一部改変)

問2

平均が60,標準偏差が10の正規分布を表すグラフはどれか。

正解 ア

解説

正規分布のグラフは平均を中心とした左右対称の釣鐘型になり,平均から標準偏差1つ分だけ離れた位置(変曲点)で曲線の曲がり方が変わる。平均60,標準偏差10なら,頂点が60にあり,60から70までが標準偏差1つ分に当たる。アがこれに合う。

イは頂点は60だが,55から65までが10とされており標準偏差は5になる。ウは山が二つあって正規分布ではない。エは左右非対称なので正規分布ではない。

平均60・標準偏差10の正規分布 正規分布は平均を中心に左右対称の釣鐘形。平均から標準偏差1つ分離れた位置で,曲線の曲がり方が変わる(変曲点)。平均60・標準偏差10なら,頂点が60で,50〜70 が平均±標準偏差1つ分。 40 50 60 70 80 標準偏差 10 変曲点 平均 60 を中心に左右対称
頂点が平均,±標準偏差1つ分の所で曲がり方が変わる

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問2(表記を一部改変)

問3

AI における機械学習で,2クラス分類モデルの評価方法として用いられる ROC 曲線の説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

ROC 曲線は,2クラス分類モデルの性能を評価する曲線である。“正しい”を陽性とし,判定のしきい値を少しずつ変えながら,横軸に偽陽性率(実際は間違いのデータのうち,誤って正しいと予測した割合),縦軸に真陽性率(実際に正しいデータのうち,正しいと予測できた割合)をとって描く。アが正しい。

イとウとエの“適合率”は,正しいと予測したデータのうち実際に正しかったものの割合で,ROC 曲線の軸ではない(適合率と再現率の関係を見るのは PR 曲線)。ウの“正解率”は,全データのうち予測が当たった割合で,これも軸ではない。

ROC 曲線と偽陽性率 “正しい”を陽性とする。真陽性率は,実際に正しいデータのうち正しいと予測できた割合 TP÷(TP+FN)。偽陽性率は,実際は間違いのデータのうち誤って正しいと予測した割合 FP÷(FP+TN)。判定のしきい値を変えながら,横軸に偽陽性率,縦軸に真陽性率を描いたのが ROC 曲線で,左上に寄るほど(曲線の下の面積 AUC が1に近いほど)よいモデル。 予測 正しい 間違い 正 TP FN 誤 FP TN 実際 真陽性率=TP÷(TP+FN) 偽陽性率=FP÷(FP+TN) 偽陽性率 真陽性率 でたらめ 左上に寄るほどよい(AUC)
偽陽性率の分母は「実際は間違い(陰性)」のデータ

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問3(表記を一部改変)

問4

ドップラー効果を応用したセンサーで測定できるものはどれか。

正解 ウ

解説

ドップラー効果は,波を出す物体と観測者が相対的に動くと,観測される周波数が変わる現象である。超音波を血管内の血液(赤血球)に当てると,反射波の周波数が血液の流れる速さに応じて変わるので,その変化量から血流量を測定できる。ウが正しい。

アの血中酸素飽和度は,酸素と結び付いたヘモグロビンと結び付いていないヘモグロビンで光の吸収の仕方が違うことを利用するパルスオキシメータで測る。イの血糖値は,血液中のブドウ糖と反応する酵素などを使ったセンサーで測る。エの体内水分量は,体に微弱な電流を流したときの電気抵抗(生体インピーダンス)から推定する。いずれもドップラー効果は使わない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問4(表記を一部改変)

問5

要求に応じて可変量のメモリを割り当てるメモリ管理方式がある。要求量以上の大きさをもつ空き領域のうちで最小のものを割り当てる最適適合(best-fit)アルゴリズムを用いる場合,空き領域を管理するためのデータ構造として,メモリ割当て時の平均処理時間が最も短いものはどれか。

正解 ウ

解説

最適適合(best-fit)では,要求量以上の大きさをもつ空き領域のうち最小のものを探す。空き領域の大きさをキーとする2分探索木なら,根から大小を比べながら下りていくだけで,要求量以上で最小の領域を,木の高さに比例する時間(領域数を n として log n 程度)で見つけられる。したがってウの平均処理時間が最も短い。

アは,アドレスをキーとする木なので,大きさの条件を満たす最小の領域を探すには木全体を調べる必要があり,領域数に比例する時間が掛かる。イは,大きさの小さい順に並べた片方向連結リストなので,先頭から順にたどる必要があり,領域数に比例する時間が掛かる。エのビットマップは,アドレスに対応して空き・使用中を表すだけで,空き領域の大きさを直接は表さないので,条件に合う領域を探すのに全体を走査する必要がある。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問5(表記を一部改変)

問6

従業員番号と氏名の対が n 件格納されている表に線形探索法を用いて,与えられた従業員番号から氏名を検索する。この処理における平均比較回数を求める式はどれか。ここで,検索する従業員番号はランダムに出現し,探索は常に表の先頭から行う。また,与えられた従業員番号がこの表に存在しない確率を a とする。

正解 エ

解説

従業員番号が表にある確率は 1-a。表にあるときは,探す番号が先頭から何番目にあるかが等確率なので,比較回数は 1 回から n 回まで同じ確率になり,平均は (1+2+…+n)/n=(n+1)/2 回である。表にないとき(確率 a)は,表の全 n 件と比べて見つからないと分かるので,比較回数は n 回。平均比較回数は (n+1)(1-a)/2+na となり,エが正しい。

アは,表にある場合の平均 (n+1)/2 に確率 1-a を掛ける形になっていない。イは,表にない場合の na が抜けている。ウは,表にない場合の比較回数を n/2 としているが,存在しない番号は全件と比べるまで分からないので n 回であり,確率 a も掛かっていない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問6(表記を一部改変)

問7

配列に格納されたデータ 2,3,5,4,1 に対して,クイックソートを用いて昇順に並べ替える。2回目の分割が終わった状態はどれか。ここで,分割は基準値より小さい値と大きい値のグループに分けるものとする。また,分割のたびに基準値はグループ内の配列の左端の値とし,グループ内の配列の値の順番は元の配列と同じとする。

正解 ア

解説

1回目の分割。配列全体 2,3,5,4,1 の左端 2 を基準値とすると,小さい値は 1,大きい値は 3,5,4。グループ内の順番は元のままなので 1|2|3,5,4 となる。

2回目の分割。左のグループ 1 は要素が一つなので分割済み。次のグループ 3,5,4 の左端 3 を基準値にすると,小さい値はなく,大きい値が 5,4。したがって 1|2|3|5,4 となり,並びは 1,2,3,5,4。

クイックソートの分割を2回目まで 1回目の分割は,左端の2を基準値にして,小さい値(1)と大きい値(3,5,4)に分け,1|2|3,5,4 になる。2回目は,要素が1つの左のグループは分割済みなので,右のグループ 3,5,4 の左端3を基準値にし,小さい値はなく大きい値は 5,4 なので,1|2|3|5,4 になる。 はじめ 2 3 5 4 1 基準値 2 1回目の後 1 2 3 5 4 2回目の後 1 2 3 5 4 基準値 3 2回目が終わった状態は 1,2,3,5,4
基準値(塗った箱)より小さいものを左,大きいものを右へ。順番は元のまま

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問7(表記を一部改変)

問8

動作周波数 1.25GHz のシングルコア CPU が1秒間に10億回の命令を実行するとき,この CPU の平均 CPI(Cycles Per Instruction)として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

CPI は1命令の実行に要するクロックサイクル数なので,1秒間のクロック数を1秒間の命令数で割れば求められる。

1.25GHz は1秒間に 1.25×109 サイクル,10億回は 109 命令。したがって CPI=1.25×109÷109=1.25。

アの0.8はこの逆数(1サイクルあたりの命令数,IPC)に当たる。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問8(表記を一部改変)

問9

全ての命令が5ステージで完了するように設計された,パイプライン制御の CPU がある。20命令を実行するには何サイクル必要となるか。ここで,全ての命令は途中で停止することなく実行でき,パイプラインの各ステージは1サイクルで動作を完了するものとする。

正解 ウ

解説

パイプライン制御では,1命令が5ステージで完了するので,最初の命令が終わるまでに5サイクル掛かる。その後は1サイクルごとに1命令ずつ完了する。20命令では,5+(20-1)=24 サイクルになる。ウが正しい。

アの 20 は,命令数と同じで,最初の命令が終わるまでの立上がり(4サイクル分)を含めていない。イの 21 は,その立上がりを1サイクル分しか数えていない。エの 25 は,命令数 20 にステージ数 5 を単純に足した値で,最初の命令の最後のステージと次の命令の最初のステージが重なることを考えていない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問9(表記を一部改変)

問10

キャッシュメモリへの書込み動作には,ライトスルー方式とライトバック方式がある。それぞれの特徴のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ライトスルー方式は,書込みのたびにキャッシュメモリと主記憶の両方へ書くので,主記憶の内容が常にキャッシュメモリの内容と一致する。イが正しい。キャッシュだけを見て主記憶が古いという状態にならないため,複数のプロセッサや DMA から主記憶を参照する構成でも整合性を取りやすい。

アはライトバック方式の特徴で,キャッシュだけに書くから速い。ウはライトスルー方式の説明を「ライトバック方式」として書いているので誤り。エはライトバック方式では主記憶が古いままなので,追い出されるときに書き戻しが必要になる。

ライトスルーとライトバック ライトスルー方式は,CPU が書き込むたびにキャッシュメモリと主記憶の両方に書くので,主記憶の内容は常に最新だが,書込みは主記憶の速さに引きずられる。ライトバック方式は,キャッシュメモリにだけ書いて済ませ,そのブロックがキャッシュから追い出されるときにまとめて主記憶に書き戻す。書込みは速いが,追い出されるまで主記憶は古いまま。 ライトスルー CPU キャッシュ 主記憶 書く 同時に書く 主記憶は常に最新,書込みは遅い ライトバック CPU キャッシュ 主記憶 書く 追い出すときに まとめて書き戻す 速いが,主記憶は古いことがある
ライトスルーは主記憶が常に最新,ライトバックは追い出すときに書き戻す

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問10(表記を一部改変)

問11

フラッシュメモリにおけるウェアレベリングの説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

フラッシュメモリは,同じブロックを何度も書き換えると劣化して書けなくなる。ウェアレベリングは,書込み回数が特定のブロックに偏らないように,書込み位置(物理ブロック)をなるべく均等に選ぶ制御で,寿命を延ばせる。アが正しい。

イは,1個のセルに電子の量で複数ビットを記憶させる多値(MLC・TLC など)の説明。ウは,不良ブロックを交換領域のブロックに置き換える代替処理(不良ブロック管理)の説明。エは,フラッシュメモリが上書きできず,ブロック単位で消去してから書き込むという性質の説明で,ウェアレベリングではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問11(表記を一部改変)

問12

有機 EL ディスプレイの説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

有機 EL ディスプレイは,有機化合物の発光層に電圧をかけ,注入された電子と正孔が再結合するときのエネルギーで素子自体が発光する表示装置である。自発光なのでバックライトが不要で,薄型化しやすく,コントラストが高い。アが適切である。

イの電子ビームを蛍光体に当てて発光させるのは CRT(ブラウン管)ディスプレイ,ウのバックライトなどの光の透過量を液晶で制御するのは液晶ディスプレイ,エの放電で発生した紫外線で蛍光体を発光させるのはプラズマディスプレイの説明である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問12(表記を一部改変)

問13

スケールインの説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

スケールインは,台数を増減させるスケールアウト/スケールインのうち,余っているサーバの台数を減らして構成を縮小すること。

ウは台数を増やすスケールアウト。アは1台あたりの能力を下げるスケールダウン,エは1台あたりの能力を上げるスケールアップであり,いずれも台数ではなく性能を変える操作。

スケールアウトとスケールアップ スケールアウトはサーバの台数を増やして負荷を分散し,サーバ群として処理能力を上げる。台数を減らすのはスケールイン。スケールアップは1台の CPU やメモリを強くして性能を上げる。1台の性能を下げるのはスケールダウン。 増やす・上げる 減らす・下げる 台数 スケールアウト スケールイン 1台の性能 スケールアップ スケールダウン 台数で(アウト) 1台を強く(アップ)
台数を変えるのがアウト/イン,1台の性能を変えるのがアップ/ダウン

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問13(表記を一部改変)

問14

CPU と磁気ディスク装置で構成されるシステムで,表に示すジョブ A,B を実行する。この二つのジョブが実行を終了するまでの CPU の使用率と磁気ディスク装置の使用率との組合せのうち,適切なものはどれか。ここで,ジョブ A,B はシステムの動作開始時点ではいずれも実行可能状態にあり,A,B の順で実行される。CPU 及び磁気ディスク装置は,ともに一つの要求だけを発生順に処理する。ジョブ A,B とも,CPU の処理を終了した後,磁気ディスク装置の処理を実行する。

表(単位 秒)。ジョブ A は CPU の処理時間が3,磁気ディスク装置の処理時間が7。ジョブ B は CPU の処理時間が12,磁気ディスク装置の処理時間が10。

正解 イ

解説

A,B の順に実行する。CPU は A に 0〜3 秒,B に 3〜15 秒使う。磁気ディスク装置は,A が CPU を終えた 3 秒後から 7 秒間(3〜10 秒)使い,B は CPU の処理が終わる 15 秒後から 10 秒間(15〜25 秒)使う。二つのジョブが終わるまで 25 秒かかるので,CPU の使用率は (3+12)/25=0.60,磁気ディスク装置の使用率は (7+10)/25=0.68 で,イが正しい。

アの 0.47 と 0.53 は 15/32 と 17/32 で,全体の時間を CPU の時間 15 秒とディスクの時間 17 秒の合計 32 秒とした値である。両装置が同時に動く時間を考えていない。エの 0.88 と 1.00 は 15/17 と 17/17 で,全体を 17 秒とした値だが,B のディスクの処理は B の CPU の処理が終わる 15 秒後から始まるので,17 秒では終わらない。ウも,二つのジョブが終わるまでの 25 秒と合わない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問14(表記を一部改変)

問15

コンピュータシステムの信頼性を高める技術に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

フォールトトレランスは,構成部品に故障が起きても全体としては機能を保ち続けられるように,システムを構成する重要な部品を多重化(冗長化)しておく考え方である。エが適切である。

アのフェールセーフは,故障が起きたときに,安全な状態になるように制御する考え方で,故障が起きないようにするものではない。イのフェールソフトは,故障が起きても機能を縮小して運転を続ける考え方で,ソフトウェアに起因するシステムフォールトに限ったものではない。ウのフォールトアボイダンスは,部品の信頼性を高めて故障の発生そのものを避ける考え方で,故障しても運用を継続できるようにするものではない。

信頼性設計の考え方の見分け方 フォールトトレランスは故障しても機能を保つ(二重化など)。フェールソフトは故障部分を切り離し,機能を落として動かし続ける(フォールバック=縮退運転)。フェールセーフは故障したら安全な側に倒す(信号を赤に)。フールプルーフは人が誤った操作をしても危険にならない(インタロック,逆向きの電池が入らない)。 考え方 きっかけ どうするか 例 フォールトトレランス 故障 機能を保つ 二重化・RAID1 フェールソフト 故障 落として続ける 縮退運転 フェールセーフ 故障 安全側に倒す 信号を全部赤 フールプルーフ 誤操作 危険にしない インタロック フォールバック(縮退運転)は,故障部分を切り離して残りで続けること
何が起きたとき(故障か誤操作か)に,どうするか(保つ・落とす・止める)で見分ける

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問15(表記を一部改変)

問16

3台の装置 X~Z を接続したシステム A,B の稼働率に関する記述のうち,適切なものはどれか。ここで,3台の装置の稼働率は,いずれも0より大きく1より小さいものとし,並列に接続されている部分は,どちらか一方が稼働していればよいものとする。

システム A は,X と Y を並列に接続した部分に Z を直列に接続したもの。システム B は,X と Z を直列に接続した部分に Y を並列に接続したもの。

正解 エ

解説

装置 X,Y,Z の稼働率を x,y,z とする。A は X と Y の並列に Z を直列につないだもので,稼働率は {1−(1−x)(1−y)}z=xz+yz−xyz である。B は X と Z の直列に Y を並列につないだもので,稼働率は 1−(1−xz)(1−y)=xz+y−xyz である。

B から A を引くと y−yz=y(1−z) となり,0<y<1,0<z<1 なので常に正である。したがって常に B の稼働率が高く,エが正しい。

2つのシステムの稼働率を比べる 装置 X,Y,Z の稼働率を x,y,z とする。A は X と Y の並列に Z を直列につないだもので,{1−(1−x)(1−y)}z=xz+yz−xyz。B は X と Z の直列に Y を並列につないだもので,1−(1−xz)(1−y)=xz+y−xyz。B−A=y(1−z) は常に正なので,常に B が高い。 A:(X と Y の並列) に Z を直列 X Y Z {1−(1−x)(1−y)}・z = xz+yz−xyz B:(X と Z の直列) に Y を並列 X Z Y 1−(1−xz)(1−y) = xz+y−xyz B − A = y − yz = y(1−z) > 0 → 常に B が高い
並列をまとめて1台とみなし,直列は掛ける。引き算すると y(1−z)>0

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問16(表記を一部改変)

問17

仮想記憶システムにおいて,ページ置換えアルゴリズムとして FIFO を採用して,仮想ページ参照列 1,4,2,4,1,3 を3ページ枠の実記憶に割り当てて処理を行った。表の割当てステップ“3”までは,仮想ページ参照列中の最初の 1,4,2 をそれぞれ実記憶に割り当てた直後の実記憶ページの状態を示している。残りを全て参照した直後の実記憶ページの状態を示す太枠部分に該当するものはどれか。

表。割当てステップ1は参照ページ1で実記憶ページの状態は 1,-,-。ステップ2は参照ページ4で 1,4,-。ステップ3は参照ページ2で 1,4,2。ステップ4は参照ページ4,ステップ5は参照ページ1で状態は空欄。ステップ6は参照ページ3で状態が太枠の空欄(解答する部分)。

正解 ウ

解説

FIFO は,実記憶に最も長く置かれているページを追い出す方式である。ステップ3の状態は,1,4,2 の順に入っていて,最も古いのは 1。ステップ4の参照ページ 4 は既に実記憶にあるので,状態は変わらない。ステップ5の参照ページ 1 も既にあるので,変わらない。ステップ6の参照ページ 3 は実記憶にないので,最も古い 1 を追い出して 3 を入れ,状態は 3,4,2 になる。ウが正しい。

アとイとエは,いずれも 2 を追い出した状態で,最も古い 1 を追い出す FIFO の結果にならない。イの 1,4,3 は,最後に使われてからの時間が最も長いページ(2)を追い出す LRU の結果に当たる。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問17(表記を一部改変)

問18

仮想記憶方式に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

LRU(Least Recently Used)アルゴリズムは,最後に使用されてから最も長い時間が経過したページを置換の対象とするページ置換アルゴリズムである。アが適切である。

イは誤り。インデックス方式のアドレス変換で必要なページテーブルは,主記憶に存在するページ分ではなく,仮想記憶空間の全ページ分である。ウは誤り。ページフォールトが発生したときに必要なのは,補助記憶から該当ページを読み込むページインで,ガーベジコレクション(不要になったメモリ領域の回収)ではない。エは誤り。ページングは固定長のページ単位で割り当てるので,小さな空き領域が細切れに発生する外部フラグメンテーションは起きない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問18(表記を一部改変)

問19

ハッシュ表の理論的な探索時間を示すグラフはどれか。ここで,複数のデータが同じハッシュ値になることはないものとする。

正解 エ

解説

ハッシュ表は,キーからハッシュ関数で格納位置を直接計算して求める。衝突(複数のデータが同じハッシュ値になること)がなければ,1回の計算でデータの位置が決まる。

したがって探索時間は表の中のデータの個数に左右されず一定(オーダーは O(1))になり,水平な直線のエが正しい。イは線形探索の O(n),ウは2分探索の O(log n) に近い形。

探索の方法と探索時間の増え方 線形探索は先頭から順に調べるので,データの個数 n に比例して長くなる(O(n))。2分探索は範囲を半分ずつ絞るので,n が増えても log n でゆっくりしか増えない。ハッシュ表探索は,衝突がなければキーから格納位置を計算して1回で見つかるので,個数によらず一定(O(1))。 データの個数 n 探索時間 線形探索 n 2分探索 log n ハッシュ表 一定 ハッシュ表は衝突がなければ,計算で1回で見つかる
ハッシュ表は個数によらず一定,2分探索は緩やかに増え,線形探索は比例して増える

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問19(表記を一部改変)

問20

コンテナ型仮想化の環境であって,アプリケーションソフトウェアの構築,実行,管理を行うためのプラットフォームを提供する OSS はどれか。

正解 ア

解説

Docker は,コンテナ型仮想化の環境で,アプリケーションとその実行に必要な部品をコンテナとしてまとめ,構築・実行・管理するためのプラットフォームを提供する OSS である。コンテナはホスト OS のカーネルを共有するので,ゲスト OS を動かす仮想マシンより軽く,すぐ起動できる。アが正しい。

イの KVM とエの Xen は,ハイパーバイザ型の仮想化を実現するソフトウェアで,仮想マシンごとにゲスト OS が動く。ウの QEMU は,ハードウェアをエミュレートする仮想化ソフトウェアで,KVM と組み合わせて使われることが多い。いずれもコンテナ型のプラットフォームではない。

ハイパーバイザ型とコンテナ型の仮想化 ハイパーバイザ型は,ハードウェアの上のハイパーバイザが仮想マシンを作り,仮想マシンごとにゲスト OS が動く。コンテナ型は,1つのホスト OS のカーネルを共有し,コンテナエンジンがアプリケーションごとに分けた実行環境(コンテナ)を作る。ゲスト OS がないので軽く,すぐ起動する。 ハイパーバイザ型 アプリ ゲスト OS アプリ ゲスト OS ハイパーバイザ ハードウェア コンテナ型 アプリ(コンテナ) アプリ(コンテナ) コンテナエンジン ホスト OS ハードウェア ゲスト OS の有無が違い
コンテナにはゲスト OS がない。ホスト OS のカーネルを共有する

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問20(表記を一部改変)

問21

NAND 素子を用いた次の組合せ回路の出力 Z を表す式はどれか。ここで,論理式中の“・”は論理積,“+”は論理和,“X”は X の否定を表す。

NAND 素子3個の組合せ回路。入力 X を1個目の NAND の両入力に,入力 Y を2個目の NAND の両入力に接続し,その二つの出力を3個目の NAND に入力して出力 Z を得る。

正解 イ

解説

NAND 素子の二つの入力に同じ信号を入れると,否定(NOT)として働く。上の NAND 素子の出力は X,下の NAND 素子の出力は Y になる。

出力段の NAND 素子は X と Y の論理積の否定を出すので,ド・モルガンの法則により NOT(X・Y)=X+Y となる。イが正しい。NAND 素子だけで OR 回路を組み立てられることを示す例である。

NAND 素子で作る論理和 NAND 素子の2つの入力に同じ信号を入れると否定(NOT)になるので,上の素子の出力は X̄,下の素子の出力は Ȳ。最後の NAND 素子は ¬(X̄・Ȳ) を出し,ド・モルガンの法則で X+Y になる。 X Y X Y Z Z = ¬(X・Y) = X + Y
入力をつないだ NAND は NOT になる。最後の NAND はド・モルガンの法則で X+Y

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問21(表記を一部改変)

問22

図1の電圧波形の信号を,図2の回路に入力したときの出力電圧の波形はどれか。ここで,ダイオードの順電圧は 0V であるとする。

図1 入力信号。0V を中心に正,負,正の順に変化する正弦波。図2 回路図。入力の上側に抵抗が直列に入り,その出力側と接地側の間にダイオードが並列に接続されている。ダイオードはアノードが接地側,カソードが出力側の向き。

正解 ア

解説

図2は,入力側に抵抗を直列に入れ,出力側にダイオードを並列に接続した回路で,ダイオードはアノードを接地側,カソードを出力側に向けている。ダイオードの順電圧は 0V とするので,入力が負のときはダイオードが導通して出力は 0V に固定され,入力が正のときはダイオードに電流が流れず,入力電圧がそのまま出力に現れる。したがって,出力は,正の半波はそのまま,負の半波の区間は 0V になる波形で,アが正しい。

イは,負の半波だけが現れる波形で,ダイオードの向きが逆の回路の出力。ウは,0V より高い一定の電圧が出力に現れる波形だが,この回路には直流の電源がないので現れない。エは,負の半波が正に折り返された全波整流の波形で,ダイオードを4個組み合わせたブリッジ回路の出力である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問22(表記を一部改変)

問23

車の自動運転に使われるセンサーの一つである LiDAR の説明として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

LiDAR(Light Detection and Ranging)は,レーザー光をパルス状に照射し,対象物に当たって返ってくる反射光を測定するセンサーである。反射光が戻るまでの時間や方向から,対象物の方向,距離及び形状を計測でき,自動運転車の周囲認識に使われる。エが正しい。

アは,超音波を使う超音波センサーの説明。イは,遠近法の原理を使って,カメラで撮った画像から距離を推定する方法の説明。ウは,ミリ波帯の電磁波を使うミリ波レーダーの説明で,LiDAR は電磁波ではなくレーザー光を使う点が異なる。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問23(表記を一部改変)

問24

NFC(Near Field Communication)の説明として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

NFC(Near Field Communication)は,13.56MHz 帯を使う近距離無線通信の規格で,通信距離は 10cm 程度である。カードとして動作するモード,リーダ/ライタとして動作するモードに加え,端末どうしが直接通信するピアツーピアのモードをもつ。エが正しい。

アは,静電容量式のタッチセンサーの説明で,NFC とは別の技術。イは,NFC が非接触式の IC カードなどの通信方法として利用されるので,“接触式”が誤り。ウは,通信距離が最大 10m ではなく 10cm 程度である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問24(表記を一部改変)

問25

コンピュータグラフィックスに関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

ラジオシティ法は,光が拡散反射面の間で相互に反射し合う効果まで計算に入れて,各面の輝度を求める手法。間接光による柔らかな陰影を表現できる。

アはレイトレーシング,エはテクスチャマッピングの説明で,アとエは入れ替わっている。イのメタボールは,濃度分布をもつ点の集まりで曲面を表現する手法であり,記述はボリュームレンダリングに近い内容。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問25(表記を一部改変)

問26

JSON 形式で表現される図1,図2のような商品データを複数の Web サービスから取得し,商品データベースとして蓄積する際のデータの格納方法に関する記述のうち,適切なものはどれか。ここで,商品データの取得元となる Web サービスは随時変更され,項目数や内容は予測できない。したがって,商品データベースの検索時に使用するキーにはあらかじめ制限を設けない。

A 社 Web サービスの商品データ(JSON)。_id が AA09,品名が 47 型テレビ,価格がオープンプライス,関連商品 id が AA101 と BC06 の配列。図1 A 社 Web サービスの商品データ。
B 社 Web サービスの商品データ(JSON)。_id が AA10,商品名がりんご,生産地が青森,価格が 100,画像 URL が http://www.example.com/apple.jpg。図2 B 社 Web サービスの商品データ。

正解 ウ

解説

取得元の Web サービスによって項目数や項目名が異なり,今後も予測できないので,あらかじめ表の構造(スキーマ)を決めておく必要がないデータベースが適している。ドキュメント型データベースは,JSON などの形式のデータを,項目構成が異なっていてもそのまま一つのドキュメントとして格納でき,任意の項目で検索できる。ウが適切である。

エのリレーショナルデータベースは列を事前に定義する必要があり,項目が変わるたびに表の定義を変更しなければならない。アの階層型データベースで項目名と値を2階層に分けたり,イのグラフ型データベースで項目名の集合と値の集合をノードにしたりすると,一つの商品データとしてのまとまりが失われ,検索や管理がしにくくなる。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問26(表記を一部改変)

問27

クライアントサーバシステムにおけるストアドプロシージャの記述として,誤っているものはどれか。

正解 エ

解説

ストアドプロシージャは,一連の SQL 文を手続きとして DBMS に登録しておき,クライアントから CALL 文で名前を指定して呼び出して実行する仕組みである。SQL 文を一つずつ送らなくてよいので,クライアントとサーバの間の通信量を減らせる。エは,データの変更(挿入・更新・削除)をきっかけに,あらかじめ DBMS に定義した処理を自動的に起動して実行する,トリガの説明なので,誤っている。

ア,イ,ウは,いずれもストアドプロシージャの記述として正しい。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問27(表記を一部改変)

問28

データベースシステムの操作の説明のうち,べき等(idempotent)な操作の説明はどれか。

正解 ア

解説

べき等(idempotent)な操作は,同じ操作を1回行っても複数回行っても,結果が同じになる操作である。通信障害などで再送されて同じ操作が複数回実行されても,結果が変わらないので,再試行しやすい。アが正しい。

イは,トランザクションの原子性(アトミック性)の説明。ウは,一つのノードの更新を他のノードにも反映する複製(レプリケーション)の説明。エは,並行して実行したトランザクションの結果が,順番に実行した結果と同じになる直列化可能性(分離性)の説明である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問28(表記を一部改変)

問29

UML を用いて表した図のデータモデルの a,b に入れる多重度はどれか。

〔条件〕

UML のクラス図。左から部門(部門コード,部門名,…),所属履歴(開始日,終了日,…),社員(社員コード,氏名,…)の3クラス。部門と所属履歴を結ぶ線の部門側に 1,所属履歴側に多重度 a。所属履歴と社員を結ぶ線の所属履歴側に多重度 b,社員側に 1。

正解 エ

解説

a は,部門1つに対応する所属履歴の数。条件(1)より部門には1人以上の社員が所属し,その所属は履歴として記録されるので,所属履歴は少なくとも1件ある。よって a は 1..*。

b は,社員1人に対応する所属履歴の数。条件(2)より社員は必ずいずれかの部門に所属し,条件(3)よりその所属が履歴として記録されるので,こちらも少なくとも1件ある。よって b も 1..*。

多重度の読み方 多重度は,関連の相手側の端に書く。部門(1)と社員(*)なら,社員の側から見て部門は必ず1つ(どの社員もちょうど1つの部門に所属し,兼務はない),部門の側から見て社員は0人以上(社員のいない部門もある)。1..* なら1以上,0..1 なら0か1。 部門 社員 1 * 社員から見て部門は 1 つ(必ず,兼務なし) 部門から見て社員は 0 人以上 書き方 意味 1 ちょうど1 0..1 0 か 1 *(0..*) 0 以上 1..* 1 以上
相手から見て何個か,を相手側の端に書く

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問29(表記を一部改変)

問30

図のような関係データベースの“注文”表と“注文明細”表がある。“注文”表の行を削除すると,対応する“注文明細”表の行が,自動的に削除されるようにしたい。参照制約定義の削除規則(ON DELETE)に指定する語句はどれか。ここで,図中の実線の下線は主キーを,破線の下線は外部キーを表す。

“注文”表は注文番号(主キー),注文日,顧客番号(外部キー)の列。“注文明細”表は注文番号(主キーかつ外部キー),明細番号(主キー),商品番号(外部キー),数量の列。

正解 ア

解説

参照制約の削除規則(ON DELETE)に CASCADE を指定すると,参照されている側(注文表)の行を削除したとき,参照している側(注文明細表)の対応する行も連鎖して自動的に削除される。アが正しい。

イの INTERSECT は,二つの問合せ結果の共通部分を求める集合演算で,削除規則ではない。ウの RESTRICT は,参照している行が残っているとき,参照される側の行の削除を拒否する規則。エの UNIQUE は,列の値の重複を禁止する制約で,削除規則には指定できない。

参照されている行を削除したときの動き “受注”表の商品コードが“商品”表を参照しているとき,“商品”の行を削除したら受注の行をどうするかを ON DELETE で決める。CASCADE は受注の行も連鎖して削除,RESTRICT は削除そのものを拒否,SET NULL は受注の商品コードを NULL に,SET DEFAULT は既定値に置き換える。 指定 商品の行を消すと,受注の行は CASCADE 一緒に削除される RESTRICT 残る(商品の削除が拒否される) SET NULL 残る(商品コードが NULL に) SET DEFAULT 残る(商品コードが既定値に) ON DELETE CASCADE = 連鎖して削除
受注の行も自動で消すのは CASCADE

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問30(表記を一部改変)

問31

通信技術の一つである PLC の説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

PLC(Power Line Communication,電力線搬送通信)は,家庭やビルの電力線に高い周波数の信号を重ねて,電力線を通信回線として利用する技術である。コンセントに PLC アダプタを差し込むだけで LAN を構成できる。イが適切である。

アは VoIP の説明である。ウの IEEE 802.11 シリーズに準拠した無線 LAN は,一般に Wi-Fi と呼ばれる。エの無線通信における暗号化技術には,WEP,TKIP,AES を用いる CCMP などがある。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問31(表記を一部改変)

問32

100M ビット/秒の LAN と 1G ビット/秒の LAN がある。ヘッダーを含めて 1,250 バイトのパケットを N 個送付するときに,100M ビット/秒の LAN の送信時間が 1G ビット/秒の LAN より9ミリ秒多く掛かった。N は幾らか。ここで,いずれの LAN においても,パケットの送信間隔(パケットの送信が完了してから次のパケットを送信開始するまでの時間)は1ミリ秒であり,パケット送信間隔も送信時間に含める。

正解 ウ

解説

1,250 バイトは 1,250×8=10,000 ビット。1パケットの送信に掛かる時間は,100M ビット/秒の LAN で 10,000÷(100×106)=0.1 ミリ秒,1G ビット/秒の LAN で 10,000÷109=0.01 ミリ秒であり,1パケット当たり 0.09 ミリ秒の差がある。

パケットの送信間隔はどちらの LAN も1ミリ秒で同じなので,送信時間の差には影響しない。差の合計が9ミリ秒なので,N=9÷0.09=100 となり,ウが正しい。

100M と 1G の LAN の送信時間の差 1,250 バイト=10,000 ビットのパケット1個の送信は,100M ビット/秒で 0.1 ミリ秒,1G ビット/秒で 0.01 ミリ秒。差は1個あたり 0.09 ミリ秒。送信間隔の1ミリ秒はどちらも同じなので差に入らない。9 ÷ 0.09 = 100 個。 1パケット 1,250 バイト = 10,000 ビット 100M 送信 0.1 ms 間隔 1 ms 1G 間隔 1 ms 差 0.09 ms/個 × N = 9 ms N = 100
送信間隔は同じなので,差は送信そのものの時間だけ(帯の長さは目安)

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問32(表記を一部改変)

問33

1個の TCP パケットをイーサネットに送出したとき,イーサネットフレームに含まれる宛先情報の,送出順序はどれか。

正解 ウ

解説

上位層のデータは下位層のヘッダで順に包まれていき,送出時は外側(下位層)のヘッダから先に流れる。

イーサネットフレームは先頭からイーサネットヘッダ(宛先 MAC アドレス),IP ヘッダ(宛先 IP アドレス),TCP ヘッダ(宛先ポート番号)の順に並ぶ。したがって送出順序は 宛先 MAC アドレス → 宛先 IP アドレス → 宛先ポート番号。

カプセル化とフレームの中の順番 TCP のデータは TCP ヘッダ(宛先ポート番号)で包まれ,その外側を IP ヘッダ(宛先 IP アドレス),さらに外側をイーサネットヘッダ(宛先 MAC アドレス)で包む。送り出すときは外側(下位の層)のヘッダから先に流れるので,宛先 MAC アドレス → 宛先 IP アドレス → 宛先ポート番号 の順。 イーサネットヘッダ 宛先 MAC IP ヘッダ 宛先 IP TCP ヘッダ 宛先ポート データ 先に送る 後 宛先 MAC → 宛先 IP → 宛先ポート
外側(下位の層)ほど先に送り出される

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問33(表記を一部改変)

問34

IP ネットワークのプロトコルのうち,OSI 基本参照モデルのトランスポート層に位置するものはどれか。

正解 エ

解説

OSI 基本参照モデルのトランスポート層は,端末間でのデータの転送を担う層で,IP ネットワークでは TCP と UDP がこの層のプロトコルである。エの UDP が正しい。

アの HTTP とウの SMTP は Web や電子メールのためのアプリケーション層のプロトコル,イの ICMP は IP の通信のエラー通知や診断に使うネットワーク層のプロトコルである。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問34(表記を一部改変)

問35

モバイル通信サービスにおいて,移動中のモバイル端末が通信相手との接続を維持したまま,ある基地局経由から別の基地局経由の通信へ切り替えることを何と呼ぶか。

正解 イ

解説

ハンドオーバーは,移動に伴って電波状況が変わったときに,通信を切らずに接続先の基地局を切り替える仕組み。

アのテザリングはスマートフォンを介して他の機器をインターネットに接続させる機能,ウのフォールバックは利用できない機能や回線から下位の方式へ切り替えること,エのローミングは契約している事業者以外の設備を使って接続できるようにする仕組み。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問35(表記を一部改変)

問36

ボットネットにおいて C&C サーバが担う役割はどれか。

正解 ア

解説

C&C(Command and Control)サーバは,感染させたボット(遠隔操作型マルウェア)に対して,情報を集めさせたり攻撃を仕掛けさせたりする指令を出す司令塔の役割を担う。

イは防御側の対策,ウは認証局への不正な働きかけ,エは CMS の機能に関する記述で,いずれも C&C サーバの役割ではない。

ボットネットと C&C サーバ C&C(Command and Control)サーバは,マルウェアに感染して操られる多数のボットに指令を出す司令塔。ボットは指令に従って,情報を集めたり,標的に DDoS 攻撃をしたりする。 C&C サーバ ボット ボット ボット ボット 標的 指令 一斉に攻撃
C&C サーバがボットに指令を出す

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問36(表記を一部改変)

問37

セキュア OS を利用することによって期待できるセキュリティ上の効果はどれか。

正解 ウ

解説

セキュア OS は,強制アクセス制御(MAC)と最小特権の機能をもつ OS である。強制アクセス制御では,システムの管理者が定めたセキュリティポリシーに従ってアクセスが制御され,root などの特権ユーザでもポリシーを越えた操作はできない。ファイルの更新を禁止する設定にしておけば,侵入されてもファイルの改ざんを防止できる。ウが該当する。

アは 1 回の認証で複数のシステムを利用できるシングルサインオン,イは通信を解析して Web アプリケーションへの攻撃を遮断する WAF,エはパスワードに加えてトークンを用いる二要素認証の効果である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問37(表記を一部改変)

問38

メッセージに RSA 方式のデジタル署名を付与して2者間で送受信する。そのときのデジタル署名の検証鍵と使用方法はどれか。

正解 ウ

解説

デジタル署名では,送信者がメッセージのダイジェストを送信者の秘密鍵で暗号化して署名を作り,受信者が送信者の公開鍵で署名を復号してダイジェストを取り出し,受信したメッセージから自分で計算したダイジェストと比べて検証する。したがって,検証鍵は送信者の公開鍵で,受信者がデジタル署名からメッセージダイジェストを取り出す際に使う。ウが正しい。

アは,署名を作成するのに使うのは送信者の秘密鍵であり,受信者の公開鍵は使わない。イの受信者の秘密鍵は,受信者の公開鍵で暗号化された内容を復号するときの鍵で,署名の検証には使わない。エの送信者の秘密鍵は,署名の作成に使う鍵であって,検証鍵ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問38(表記を一部改変)

問39

“政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)”の説明はどれか。

正解 ウ

解説

ISMAP(Information system Security Management and Assessment Program,政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)は,政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスをあらかじめ評価・登録することによって,政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図る制度である。評価に通ったサービスは ISMAP クラウドサービスリストに登録され,政府機関などはそのリストから調達する。ウが適切である。

アは個人情報の適切な取扱いを評価してマークを付与する制度で,プライバシーマーク制度に近い。イは個人データの越境移転に関する記述だが,個人情報保護法では外国にある第三者への提供には原則として本人の同意が必要であり,移転先国の基準を評価すれば同意が不要になる制度は無い。エは ISMS の規格にクラウドサービス向けの管理策を加えた国際規格(ISO/IEC 27017)に基づく ISMS クラウドセキュリティ認証を思わせるが,これは民間の第三者認証であって政府調達のための制度ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問39(表記を一部改変)

問40

ソフトウェアの既知の脆弱性を一意に識別するために用いる情報はどれか。

正解 イ

解説

CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)は,公開されたソフトウェアの脆弱性に,CVE-2023-0001 のような一意の識別番号(CVE 識別子)を付けて管理する仕組みである。既知の脆弱性を一意に識別できるので,脆弱性情報の突合せに使える。イが正しい。

アの CCE(共通設定一覧)は,セキュリティに関する設定項目に識別子を付けるもの。ウの CVSS(共通脆弱性評価システム)は,脆弱性の深刻度を数値化する評価手法。エの CWE(共通脆弱性タイプ一覧)は,脆弱性の種類(弱点のタイプ)を分類して識別子を付けたもので,個々の脆弱性を識別するものではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問40(表記を一部改変)

問41

TPM(Trusted Platform Module)に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

TPM(Trusted Platform Module)は,PC などの機器に搭載され,鍵の生成,ハッシュ演算や暗号処理,鍵の安全な保管などを行うセキュリティチップである。耐タンパ性があり,秘密鍵をチップの外に取り出さずに扱える。アが該当する。

イは,SPF や DKIM などの送信ドメイン認証技術の説明。ウは,ファイアウォール・侵入検知・マルウェア対策などを一体にした UTM(統合脅威管理)の説明。エは,ログを一元管理して相関分析や通知を行う SIEM の説明である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問41(表記を一部改変)

問42

デジタルフォレンジックスの手順は収集,検査,分析及び報告から成る。このとき,デジタルフォレンジックスの手順に含まれるものはどれか。

正解 イ

解説

デジタルフォレンジックスは,インシデントが起きた後に,法的な証拠となり得るデータを保全して解析する一連の手続。削除されたログファイルを復元して不正アクセスの痕跡を突き止めるイが,その「検査・分析」に当たる。

アは SIEM によるリアルタイム監視,ウは送信時の情報漏えい対策,エはマルウェア検査であり,いずれも事後の証拠保全・解析ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問42(表記を一部改変)

問43

公衆無線 LAN のアクセスポイントを設置するときのセキュリティ対策とその効果の組みとして,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

同一のアクセスポイントに無線で接続している端末どうしの通信を遮断する機能(プライバシーセパレータ)を有効にすると,公衆無線 LAN の他の利用者が,同じアクセスポイントに接続している端末にアクセスすることを防止できる。エが適切である。

アの MAC アドレスフィルタリングは,登録した MAC アドレスの端末だけを接続させる機能だが,MAC アドレスは偽装できるので,正規の端末の MAC アドレスに偽装した攻撃者の端末を遮断することはできない。イの SSID は,暗号化して秘匿するものではなく,電波に乗って通知されるので,SSID の盗聴は防止できない。ウは,ドメイン名を SSID に設定しても,同じ SSID を設定した悪意のあるアクセスポイントの設置は防止できない。

プライバシーセパレータ:同じ AP の端末どうしの通信を遮断 プライバシーセパレータ機能(アクセスポイントアイソレーション)は,同じアクセスポイントに接続している端末どうしの直接通信を遮断し,各端末が AP の先のネットワークとだけ通信できるようにする。公衆無線 LAN で,ほかの利用者の端末からのアクセスを防ぐ。 インターネット AP 端末 A 端末 B A と B の直接の通信は遮断(イ)
端末どうしは×,AP の先(インターネット)へは○

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問43(表記を一部改変)

問44

スパムメール対策として,サブミッションポート(ポート番号 587)を導入する目的はどれか。

正解 エ

解説

サブミッションポート(587番)は,利用者がメールサーバへメールを投稿するための専用ポート。ここでは SMTP-AUTH による送信者認証を必須にできるので,認証を通った利用者だけが送信でき,スパムの踏み台にされにくくなる。

アは SPF,イは DKIM による送信ドメイン認証。ウの POP before SMTP はサブミッションポート導入以前に使われた方式で,一定時間は認証なしで送信できてしまうなどの弱点があり,SMTP-AUTH に置き換えられた。

OP25B とサブミッションポート,IP25B ISP A の動的 IP アドレスの PC が,宛先のメールサーバへ25番ポートで直接送る通信は,ISP A の出口で止められる(OP25B)。PC は自分の ISP のメールサーバへサブミッションポート(587番)で接続し,SMTP-AUTH で認証を受けてから送る。メールサーバどうしの転送は25番を使う。IP25B は,他社 ISP の動的 IP アドレスから自社のメールサーバへ入ってくる25番の通信を止める。 ISP A のネットワーク PC 動的 IP アドレス ISP A の メールサーバ 宛先の メールサーバ 587番 SMTP-AUTH 25番 25番で直接送る OP25B IP25B:入ってくる側で止める 他社 ISP の PC 動的 IP アドレス ISP A の メールサーバ 25番で直接届けようとする通信を止める
OP25B は自社の動的 IP から外へ出る25番を,IP25B は他社の動的 IP から入ってくる25番を止める

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問44(表記を一部改変)

問45

次に示すような組織の業務環境において,特定の IP セグメントの IP アドレスを幹部の PC に動的に割り当て,一部のサーバへのアクセスをその IP セグメントからだけ許可することによって,幹部の PC だけが当該サーバにアクセスできるようにしたい。利用するセキュリティ技術として,適切なものはどれか。

〔組織の業務環境〕

正解 エ

解説

認証 VLAN は,接続してきた利用者や端末を認証し,その結果に応じて割り当てる VLAN を動的に決める仕組み。幹部が認証されたときだけ特定の VLAN(IP セグメント)に入れれば,どの席の LAN ポートに挿しても目的の制御ができる。

ウのスタティック VLAN はスイッチのポートごとに VLAN を固定する方式なので,席が日によって変わるフリーアドレス制には適さない。アの IDS は不正侵入の検知であってアクセス制御ではない。イの IP マスカレードはプライベートアドレスとグローバルアドレスを変換する技術。

認証 VLAN スイッチや無線 LAN アクセスポイントにつないだ端末・利用者を認証し,成功したときだけ接続を許す。さらに認証の結果に応じて,所属させる VLAN を決める。席が日によって変わっても,幹部なら幹部用の VLAN(IP セグメント)に入る。ポートで VLAN を固定するスタティック VLAN とは違う。 スイッチ 認証サーバ 幹部の PC 幹部用 VLAN 一般の PC 一般用 VLAN 認証が通らなければつながらない
どのポートにつないでも,認証の結果で VLAN が決まる

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問45(表記を一部改変)

問46

モジュールの独立性を高めるには,モジュール結合度を低くする必要がある。モジュール間の情報の受渡し方法のうち,モジュール結合度が最も低いものはどれか。

正解 ウ

解説

モジュール結合度は弱いものから順に,データ結合・スタンプ結合・制御結合・外部結合・共通結合・内容結合と分類される。必要なデータ項目だけを引数で受け渡すウはデータ結合で,この中で最も結合度が低い。

イは相手の内部の動きを指示する制御結合,エは外部結合,アは共通域を介する共通結合で,いずれもウより結合度が高い。

モジュール結合度とモジュール強度 結合度はモジュールどうしのつながりの強さで,弱いほどよい。弱い順に,データ結合(必要な項目だけを引数で),スタンプ結合(データ構造を引数で),制御結合(制御の情報を渡す),外部結合(単一の大域データ),共通結合(共通域のデータ構造),内容結合(相手の内部を直接参照)。強度はモジュールの中のまとまりで,強いほどよい。機能的強度が最も強く,処理コードで機能を選ぶ論理的強度や,関係のない機能を集めた暗合的強度は弱い。 結合度(弱いほどよい) データ結合 項目を引数で スタンプ結合 構造を引数で 制御結合 制御情報を渡す 外部結合 単一の大域データ 共通結合 共通域の構造 内容結合 内部を直接参照 強度(強いほどよい) 機能的強度 1つの機能 情報的強度 同じ情報を扱う 連絡的強度 データを受け渡す 手順的強度 順に実行する 論理的強度 コードで機能を選ぶ 暗合的強度 関係のないものの寄せ集め 上ほど望ましい(時間的強度は手順的と論理的の間)
結合度は弱いほど,強度は強いほどよい

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問46(表記を一部改変)

問47

値引き条件に従って,商品を販売する。決定表の動作指定部のうち,適切なものはどれか。

〔値引き条件〕

〔決定表〕

決定表。条件部は「上得意客である」「高額取引である」「現金取引である」の3行で,8列の組合せ(Y Y Y,Y Y N,Y N Y,Y N N,N Y Y,N Y N,N N Y,N N N)。動作指定部は「値引きしない」「元値の 3%を値引きする」「元値の 6%を値引きする」「元値の 9%を値引きする」の4行で,X を付ける欄が選択肢として示される。

正解 ウ

解説

条件①②③は同時に適用するので,成り立つ条件の数だけ値引き率が 3% ずつ増える。決定表の8列を左から見ると,Y・Y・Y は3条件とも成り立つので 9%,Y・Y・N,Y・N・Y,N・Y・Y は2条件が成り立つので 6%,Y・N・N,N・Y・N,N・N・Y は1条件だけなので 3%,N・N・N は値引きしない。したがって,動作指定部は,値引きしない行が列8,3% の行が列4,6,7,6% の行が列2,3,5,9% の行が列1 に X が付く形で,ウが正しい。

アは,列5(N・Y・Y)を 9%,列7(N・N・Y)を 6% としていて,成り立つ条件の数と値引き率が合わない。イは,列3(Y・N・Y)を値引きしないとしているが,2条件が成り立つので 6% である。エは,列4(Y・N・N)を値引きしないとしているが,1条件が成り立つので 3% である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問47(表記を一部改変)

問48

スクラムでは,一定の期間で区切ったスプリントを繰り返して開発を進める。各スプリントで実施するスクラムイベントの順序のうち,適切なものはどれか。

〔スクラムイベント〕

正解 イ

解説

スクラムの1スプリントは,まずスプリントプランニングで,そのスプリントで行う作業を決める。スプリントの期間中は,毎日デイリースクラムを行って進み具合を確かめる。スプリントの終わりに,スプリントレビューで成果物(インクリメント)を確認し,最後にスプリントレトロスペクティブで,次のスプリントに向けてチームのやり方を振り返る。順序は 1→4→3→2 で,イが正しい。

アとウは,スプリントレトロスペクティブがスプリントレビューより前になっている。レトロスペクティブはレビューの後に行う。ウとエは,デイリースクラムがスプリントプランニングより前になっている。スプリントは計画を立ててから始まり,その後の期間中に毎日のデイリースクラムを行う。

スクラムの1スプリントの流れ プロダクトオーナーが優先順位を付けたプロダクトバックログから,スプリントプランニングで今回やることを選んでスプリントバックログにする。1か月以内のスプリントの間,毎日デイリースクラムで進み具合を確かめ,動くインクリメントを作る。最後にスプリントレビューで利害関係者に成果を見せ,スプリントレトロスペクティブでふりかえってから次のスプリントへ進む。 プロダクト バックログ スプリント バックログ プランニング スプリント 1か月以内 毎日 デイリースクラム インクリメント スプリントレビュー 利害関係者に成果を見せる レトロスペクティブ ふりかえり(KPT など) 次のスプリントへ プロダクトオーナー:バックログの優先順位を決める スクラムマスター:進め方を支える 開発者:スプリントバックログを自分たちで変えられる
役割3つ・イベント4つ(プランニング・デイリー・レビュー・レトロスペクティブ)・作成物3つ

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問48(表記を一部改変)

問49

日本国特許庁において特許 A を取得した特許権者から,実施許諾を受けることが必要になる場合はどれか。

正解 イ

解説

特許法は,特許権者が“業として”特許発明の実施をする権利を専有すると定めている(第68条)。“実施”には,物の発明では,その物の生産,使用,譲渡,輸出などが含まれる(第2条第3項第1号)。日本国内で製品を製造する行為は“生産”に当たり,製造した全てを国外へ輸出する場合でも,国内での生産に特許権の効力が及ぶので,特許権者から実施許諾を受けることが必要になる。イが該当する。

アは,家庭内で個人的に利用するだけなら“業として”の実施ではないので,特許権の効力が及ばない。ウは,特許権の存続期間が出願日から原則 20 年で終了するので(第67条第1項),期間を過ぎれば許諾なしで実施できる。エは,出願の時に日本国内で発明の実施の事業をしていた者には,先使用による通常実施権が認められる(第79条)ので,許諾は不要である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問49(表記を一部改変)

問50

サーバプロビジョニングツールを使用する目的として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

サーバプロビジョニングツールは,あるべきシステム構成をコードとして記述しておき,その記述どおりにサーバを自動で構築・設定するためのツール。手作業による設定ミスをなくし,同じ構成のサーバを何台でも再現できる。

アはサービス監視,イは資産管理(ソフトウェア管理),ウは性能監視のためのツールの目的。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問50(表記を一部改変)

問51

プロジェクトマネジメントにおける“プロジェクト憲章”の説明はどれか。

正解 エ

解説

プロジェクト憲章は,プロジェクトの立ち上げにあたって組織がそれを正式に認可する文書。ビジネスニーズや目標に加え,プロジェクトマネージャを任命してその責任と権限を明示する点が特徴。

アはプロジェクトマネジメント計画書,イはプロジェクトスコープ記述書,ウは WBS の説明。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問51(表記を一部改変)

問52

クリティカルチェーン法に基づいてスケジュールネットワーク上にバッファを設ける。クリティカルチェーン上にないアクティビティが遅延してもクリティカルチェーン上のアクティビティに影響しないように,クリティカルチェーンにつながっていくアクティビティの直後に設けるバッファはどれか。

正解 ア

解説

クリティカルチェーン法では,作業ごとの余裕を取り除き,まとめてバッファとして置く。クリティカルチェーンに合流する経路(クリティカルチェーン上にないアクティビティの列)の最後に置くバッファが合流バッファで,合流する経路が遅れても,クリティカルチェーン上のアクティビティに影響しないようにする。アが正しい。

イの資源バッファは,クリティカルチェーン上の作業に必要な資源を使える状態にしておくために,事前に知らせる仕組みで,アクティビティの直後に置くバッファではない。ウのフレームバッファは,画面に表示する内容を保持するメモリで,スケジュール管理とは関係がない。エのプロジェクトバッファは,クリティカルチェーンの最後に置いて,プロジェクト全体の納期を守るためのバッファである。

クリティカルチェーン法のバッファ 各作業の見積りに含まれている余裕を取り除いて短くし,取り除いた余裕の一部をまとめてプロジェクトの最後にプロジェクトバッファとして置く。クリティカルチェーンに合流する経路の末尾には合流バッファを置き,合流する経路の遅れがクリティカルチェーンに及ばないようにする。 従来:作業ごとに余裕を含む A 余裕 B 余裕 C 余裕 CCPM:余裕を取り除き,まとめて置く A B C プロジェクト バッファ D 合流 合流バッファ:合流する経路の末尾に置く
余裕は作業ごとに持たせず,まとめて最後(と合流点)に置く

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問52(表記を一部改変)

問53

過去のプロジェクトの開発実績に基づいて構築した作業配分モデルがある。システム要件定義からシステム内部設計までをモデルどおりに進めて 228 日で完了し,プログラム開発を開始した。現在,200 本のプログラムのうち 100 本のプログラムの開発を完了し,残りの 100 本は未着手の状況である。プログラム開発以降もモデルどおりに進捗すると仮定するとき,プロジェクトの完了まで,あと何日掛かるか。ここで,プログラムの開発に掛かる工数及び期間は,全てのプログラムで同一であるものとする。

〔作業配分モデル〕

表。工程はシステム要件定義,システム外部設計,システム内部設計,プログラム開発,システム結合,システムテストの順。工数比は 0.17,0.21,0.16,0.16,0.11,0.19。期間比は 0.25,0.21,0.11,0.11,0.11,0.21。

正解 イ

解説

期間比で見ると,システム要件定義 0.25,システム外部設計 0.21,システム内部設計 0.11 の合計 0.57 が 228 日に当たるので,全体の期間は 228÷0.57=400 日。プログラム開発は 400×0.11=44 日で,200 本中 100 本が終わっているので残りは 22 日。システム結合は 400×0.11=44 日,システムテストは 400×0.21=84 日。残りの合計は 22+44+84=150 日。

工数比の列は,人員をどう割り振るかを見るための値で,期間の計算には使わない。工数比で同じ計算をすると別の値になるので,どちらの比を使うかを取り違えないことが要点。

作業配分モデルで残りの日数を求める 期間比で考える。要件定義から内部設計までの期間比は 0.25+0.21+0.11=0.57 で,これが 228 日にあたるので,全体は 228÷0.57=400 日。残りはプログラム開発の半分(0.11÷2),システム結合 0.11,システムテスト 0.21 で,期間比 0.375,つまり 400×0.375=150 日。 要件 0.25 外部 0.21 内部 0.11 PG PG 結合 0.11 テスト 0.21 0.11 0.57 → 228 日(全体 400 日) 残り 0.375 400 × 0.375 = 150 日
日数は期間比で計算する。工数比は使わない

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問53(表記を一部改変)

問54

プロジェクトのリスクマネジメントにおける,リスクの特定に使用する技法の一つであるデルファイ法の説明はどれか。

正解 エ

解説

デルファイ法は,複数の専門家に,互いに匿名のままアンケートで意見を求め,集計した結果を回答者に返して再度意見を求めることを何度か繰り返し,意見を収束させる技法である。リスクの特定に使う技法の一つである。エが正しい。

アは,確率分布を使ってシミュレーションを行う手法の説明。イは,過去の情報や知識をもとにまとめたチェックリストと照らし合わせるチェックリスト分析の説明。ウは,他人のアイディアを批判せずに自由に多くのアイディアを出し合うブレーンストーミングの説明である。

デルファイ法の進め方 複数の専門家に匿名でアンケートを行い,集計した結果を回答者に返して,同じ質問にもう一度答えてもらう。これを繰り返すと,ばらばらだった予測が収束していく。専門家どうしを直接議論させないので,声の大きい人に引っ張られにくい。 専門家 専門家 専門家 専門家 匿名で別々に回答 集計する 集計結果を返して,答え直してもらう 回数を重ねると予測の幅が狭まる 1回目 2回目 3回目
直接議論させず,集計を返して答え直してもらうことを繰り返す

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問54(表記を一部改変)

問55

JIS Q 20000-1:2020(サービスマネジメントシステム要求事項)によれば,サービスマネジメントシステム(SMS)における継続的改善の説明はどれか。

正解 エ

解説

JIS Q 20000-1:2020 の 3.1.4 は,継続的改善を“パフォーマンスを向上するために繰り返し行われる活動”と定義している。一度きりの改善ではなく,繰り返す点がこの用語の要点。

アは 3.1.18(プロセス),イは 3.2.22(サービスマネジメント),ウは 3.2.19(サービス継続)の定義であり,いずれも継続的改善ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問55(表記を一部改変)

問56

JIS Q 20000-1:2020(サービスマネジメントシステム要求事項)によれば,組織は,サービスレベル目標に照らしたパフォーマンスを監視し,レビューし,顧客に報告しなければならない。レビューをいつ行うかについて,この規格はどのように規定しているか。

正解 イ

解説

8.3.3(サービスレベル管理)は,サービスレベル目標に照らしたパフォーマンスを「あらかじめ定めた間隔で」監視・レビューし,顧客に報告することを求めている。定期的に確認することで,傾向の変化や目標未達の兆しを早く捉えられる。

ア・ウ・エはいずれも出来事をきっかけとした不定期のレビューであり,規格が求める定期的なレビューには当たらない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問56(表記を一部改変)

問57

A 社は,自社がオンプレミスで運用している業務システムを,クラウドサービスへ段階的に移行する。段階的移行では,初めにネットワークとサーバを IaaS に移行し,次に全てのミドルウェアを PaaS に移行する。A 社が行っているシステム運用作業のうち,この移行によって不要となる作業の組合せはどれか。

〔A 社が行っているシステム運用作業〕

正解 ウ

解説

オンプレミスから IaaS に移行すると,ネットワークとサーバーのハードウェアは事業者の管理になる。このため,②物理サーバの起動,停止のオペレーションと,③ハードウェアの異常を警告する保守ランプの目視監視は不要になる。次に PaaS で全てのミドルウェアを任せると,④ミドルウェアへのパッチ適用も事業者が行うので不要になる。したがって,IaaS で不要になるのは②,③,PaaS で不要になるのは④で,ウが正しい。

①業務システムのバッチ処理のジョブ監視は,アプリケーションの運用作業であり,IaaS や PaaS に移行しても A 社が行う。ア,イ,エは,①を不要としていたり,②を PaaS への移行で不要としていたり(②は IaaS への移行で不要になる)するので誤りである。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問57(表記を一部改変)

問58

システム監査基準(平成 30 年)における予備調査についての記述として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

予備調査は,本調査に入る前に監査対象の全体像をつかむ段階。事務手続やマニュアル,組織図などの資料から業務内容や業務分掌の体制を把握し,どこを重点的に調べるかを見定める。

アは誤り。資料の閲覧やヒアリングでもよく,必ず現地に赴く必要はない。ウは監査証拠を集める本調査の話。エは誤り。関連部門も対象に含めてよい。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問58(表記を一部改変)

問59

システム監査基準(平成 30 年)における監査手続の実施に際して利用する技法に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

インタビュー法は,監査人が関係者に直接口頭で問い合わせて回答を得る技法。アはその定義そのもの。

イは誤り。現地調査は業務の実際を観察するものなので,むしろ業務時間内に行う必要がある。ウは誤り。表計算ソフトや汎用の監査ツールを使ってもよく,専用ソフトウェアに限られない。エは誤り。チェックリストを作成するのは監査人であり,監査対象部門ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問59(表記を一部改変)

問60

金融庁“財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(令和元年)”における,内部統制に関係を有する者の役割と責任の記述のうち,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

内部監査人は,モニタリングの一環として内部統制の整備及び運用状況を検討・評価し,必要に応じて経営者や取締役会に報告して改善を促す職務を担う。

アは誤りで,内部統制の整備及び運用について最終的な責任を負うのは経営者である。イも誤りで,基本方針を決定するのは取締役会。ウは役割が入れ替わっており,取締役の職務の執行に対する監査の一環として独立した立場から監視・検証するのは監査役である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問60(表記を一部改変)

問61

情報化投資計画において,投資効果の評価指標である ROI を説明したものはどれか。

正解 ア

解説

ROI(Return On Investment,投資利益率)は,投資によって得られた利益額を投資額で割った比率。投じた資金がどれだけの利益を生んだかを表す。

イはベンチマーキング,ウは NPV(正味現在価値)の説明。エは投資評価の指標ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問61(表記を一部改変)

問62

B. H. シュミットが提唱した CEM(Customer Experience Management)における,カスタマーエクスペリエンスの説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

B. H. シュミットは,顧客が商品やサービスを知り,購入し,使用・利用する過程で得る感覚的・情緒的な経験を“経験価値”(カスタマーエクスペリエンス)と呼び,これを戦略的に管理する CEM を提唱した。経験価値は,SENSE(感覚),FEEL(情緒),THINK(知性),ACT(行動),RELATE(関係)の五つに分類される。商品やサービスの購入・使用・利用の際の満足や感動はこれに当たり,アが適切である。

イの購入時のトラブルは,顧客満足を損なう事象であって経験価値そのものではない。ウの購買履歴の数値は,顧客の購買行動のデータである。エの接客での対応経験は,顧客ではなく販売員の側が得る経験である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問62(表記を一部改変)

問63

ビッグデータの利活用を促す取組の一つである情報銀行の説明はどれか。

正解 ウ

解説

情報銀行は,個人との契約などに基づき,個人情報を含むデータを預託され,本人の指示又は事前に指定した条件に基づいて,そのデータを他の事業者に提供する取組である。本人が自分のデータの提供先や範囲を管理でき,データの利活用を促す。ウが正しい。

アは,金融機関が自社の顧客データを自らの営業活動に活用する取組で,本人からデータを預かって他の事業者に提供するものではない。イは,国や自治体が公共データを民間に提供する取組(オープンデータ)の説明。エは,事業者が産業用データを取引市場を介して他の事業者に提供する取組(データ取引市場)の説明で,個人から預託されたデータを扱うものではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問63(表記を一部改変)

問64

システム要件定義プロセスにおいて,トレーサビリティが確保されていることを説明した記述として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

トレーサビリティ(追跡可能性)は,利害関係者の要求がどの成果物に対応しているかをたどれる状態のこと。要求の根拠と成果物の相互関係が文書化されていれば,仕様変更が起きたときに元の要求まで立ち返って妥当性を検証できる。

ア・イ・ウはいずれも文書化や決定が済んでいることを述べているだけで,要求と成果物の対応関係をたどれることを示していない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問64(表記を一部改変)

問65

情報システムの調達の際に作成される RFI の説明はどれか。

正解 ア

解説

RFI(Request For Information,情報提供依頼書)は,調達の検討段階で,実現手段や技術動向などの情報提供をベンダに依頼する文書。提案を求める前の情報収集が目的。

イは RFP(提案依頼書)の説明。ウとエは契約変更や契約締結に関するもので,いずれも RFI ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問65(表記を一部改変)

問66

組込み機器の開発を行うために,ベンダーに見積りを依頼する際に必要なものとして,適切なものはどれか。ここで,システム開発の手順は共通フレーム 2013 に沿うものとする。

正解 エ

解説

組込み機器の開発をベンダーに依頼するとき,見積りを依頼する側は,何を作るのかをベンダーに伝えなければ,ベンダーは見積りを出せない。開発する機器に求める機能・性能・制約などをまとめた要件定義書が,見積りの前提になる情報として必要である。エが適切である。

アの納品書は,成果物を納品するときに添える書類で,見積りの時点では存在しない。イの評価仕様書は,開発した機器を評価する工程で使う書類。ウの見積書は,ベンダーが見積りの結果として提出する書類で,見積りを依頼する際に必要なものではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問66(表記を一部改変)

問67

Web で広告費を 600,000 円掛けて,単価 1,500 円の商品を 1,000 個販売した。ROAS(Return On Advertising Spend)は何%か。

正解 ウ

解説

ROAS(Return On Advertising Spend)は,広告費に対して売上がどれだけ得られたかを表す指標で,売上高÷広告費×100(%)で求める。売上高は 1,500 円×1,000 個=1,500,000 円,広告費は 600,000 円なので,1,500,000÷600,000×100=250% になる。ウが正しい。

アの 40 は,広告費÷売上高(600,000÷1,500,000)の値で,割り算の向きが逆である。イの 60 は,売上高から広告費を引いた 900,000 円を売上高で割った値。エの 600 は,広告費 600,000 円を販売数 1,000 個で割った,1個当たりの広告費(600 円)の数値で,割合ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問67(表記を一部改変)

問68

バランススコアカードで使われる戦略マップの説明はどれか。

正解 イ

解説

戦略マップは,バランススコアカードの四つの視点(財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長)に課題・施策・目標を配置し,それらの因果関係を矢印でつないで一枚に表したもの。下位の視点の取組みが上位の成果につながる筋道を可視化する。

アはポジショニングマップ,ウはビジネススクリーン,エはドメインの定義に関する説明。

バランススコアカードの4つの視点と戦略マップ 下から学習と成長,内部ビジネスプロセス,顧客,財務の4つの視点を積み上げる。専門人材を育てると出荷までの日数を縮められ,顧客満足度が上がり,売上高が伸びる,という因果関係を矢印でつないだものが戦略マップ。各視点に目標と指標(KPI)を置く。 財務 売上高を伸ばす 売上高・利益率 顧客 顧客満足度を上げる 顧客満足度・シェア 内部ビジネスプロセス 出荷を速くする 出荷までの日数 学習と成長 専門人材を育てる 育成人数・特許件数
下の視点の成果が上の視点の成果につながる(因果関係)

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問68(表記を一部改変)

問69

新規ビジネスを立ち上げる際に実施するフィージビリティスタディはどれか。

正解 イ

解説

フィージビリティスタディ(実現可能性調査)は,事業やプロジェクトに本格的に投資する前に,技術面・採算面などから実現できるかどうかを調査・検証する評価活動。

アは IT 投資の実行,ウはアイディアの社内公募,エは要員の教育訓練で,いずれも実現可能性を調査・分析して評価する活動ではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問69(表記を一部改変)

問70

企業と大学との共同研究に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

大学と企業との共同研究は,大学の教職員と企業の研究者が同じ課題に対等の立場で共同して取り組む制度である。企業が負担する研究経費は,研究の実施に必要な費用を賄うものであって,企業が発注者,大学が受注者という関係を作るものではない。この点で,企業から委ねられた研究を大学側だけで実施する受託研究とは異なるので,ウが適切である。

アは誤りで,TLO は大学等技術移転促進法に基づき承認を受けた技術移転機関で,研究成果の特許化と民間への実施許諾を担う。共同研究を実施する機関ではなく,全ての大学に置かれているわけでもない。イも誤りで,特許法が特許を受ける権利の起点とするのは実際に発明をした自然人であり,法人を発明者とすることはできない。エも誤りで,国立大学法人の共同研究でも企業が経費の一部又は全部を負担するのが通例である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問70(表記を一部改変)

問71

IoT を支える技術の一つであるエネルギーハーベスティングを説明したものはどれか。

正解 イ

解説

エネルギーハーベスティング(環境発電)は,振動・熱・光・電磁波など身の回りにあるわずかなエネルギーを集めて電力に変え,デバイスの電源に使う技術。電池交換が難しい場所に置く IoT デバイスで注目されている。

アはエネルギーマネジメント,ウは PoE,エは間欠動作による省電力化の説明。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問71(表記を一部改変)

問72

アグリゲーションサービスに関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

アグリゲーションサービスは,別々の事業者に分散しているサービスや情報への窓口を一つにまとめ,比較したり,まとめて表示したり,最適な組合せを提示したりして,ワンストップで利用できるようにするサービス。複数の金融機関の口座残高をまとめて表示する家計簿サービスなどが例になる。ウが正しい。

アはオムニチャネル,イはエスクローサービス,エはフランチャイズチェーンの説明。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問72(表記を一部改変)

問73

各種センサーを取り付けた航空機のエンジンから飛行中に収集したデータを分析し,仮想空間に構築したエンジンのモデルに反映してシミュレーションを行うことによって,各パーツの消耗状況や交換時期を正確に予測できるようになる。このように産業機器などに IoT 技術を活用し,現実世界や物理的現象をリアルタイムに仮想空間で忠実に再現することを表したものはどれか。

正解 エ

解説

デジタルツインは,現実世界の機器や環境の状態を,センサーなどの IoT で収集したデータをもとに,仮想空間にリアルタイムで忠実に再現する技術である。再現した仮想空間でシミュレーションを行うことで,エンジンの部品の消耗状況や交換時期を正確に予測するといった使い方ができる。エが正しい。

アのサーバ仮想化は,1台の物理サーバ上で複数の仮想サーバを動かす技術。イのスマートグリッドは,通信技術を使って電力の需給を最適に制御する電力網。ウのスマートメーターは,電力使用量を通信機能で自動計測する電力量計で,いずれも現実世界を仮想空間に再現するものではない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問73(表記を一部改変)

問74

事業部制組織の特徴を説明したものはどれか。

正解 ウ

解説

事業部制組織は,製品,地域,顧客などの単位で事業部を編成し,それぞれの事業部に,利益責任(事業部ごとの損益)と,ある程度の権限をもたせる組織形態である。迅速な意思決定ができ,事業部の責任が明確になる。ウが正しい。

アは,ある問題を解決するために一定期間に限って結成され,解決とともに解散する,プロジェクト組織(タスクフォース)の説明。イは,業務を機能別に分けて命令・指導を行う職能別組織(機能別組織)の説明。エは,戦略的提携や共同開発など外部の経営資源を積極的に活用する,ネットワーク組織の説明である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問74(表記を一部改変)

問75

ビッグデータ分析の手法の一つであるデシジョンツリーを活用してマーケティング施策の判断に必要な事象を整理し,発生確率の精度を向上させた上で二つのマーケティング施策 a,b の選択を行う。マーケティング施策を実行した場合の利益増加額(売上増加額-費用)の期待値が最大となる施策と,そのときの利益増加額の期待値の組合せはどれか。

デシジョンツリー。施策 a(初期費用 30 億円)は,発生確率 0.4 で追加費用の判断に進み,追加費用 60 億円なら発生確率 0.3 で売上増加額 200 億円,0.7 で 100 億円,追加費用なしなら売上増加額 50 億円。発生確率 0.6 では売上増加額 120 億円。施策 b(初期費用 40 億円)は,発生確率 0.3 で追加費用の判断に進み,追加費用 40 億円なら発生確率 0.4 で売上増加額 150 億円,0.6 で 100 億円,追加費用なしなら売上増加額 70 億円。発生確率 0.7 では売上増加額 140 億円。四角は意思決定の分岐点,丸は発生し得る可能性の分岐点。

正解 ウ

解説

意思決定の分岐点(四角)では期待値が大きい方を選び,発生し得る可能性の分岐点(丸)では確率を掛けて期待値を求める。施策 a は,確率 0.4 の側で,追加費用 60 億円を掛けると売上増加額の期待値は 0.3×200+0.7×100=130 億円で,費用を引いて 70 億円,掛けないと 50 億円なので,70 億円を選ぶ。確率 0.6 の側は 120 億円。0.4×70+0.6×120=100 億円から初期費用 30 億円を引くと 70 億円。施策 b は,確率 0.3 の側で,追加費用 40 億円を掛けると 0.4×150+0.6×100=120 億円で,費用を引いて 80 億円,掛けないと 70 億円なので,80 億円を選ぶ。確率 0.7 の側は 140 億円。0.3×80+0.7×140=122 億円から初期費用 40 億円を引くと 82 億円。利益増加額の期待値が最大なのは施策 b の 82 億円で,ウが正しい。

アは施策 a の期待値(70 億円)で,施策 b の 82 億円より小さい。イの 160 億円とエの 162 億円は,この決定木から求められる期待値とは合わない値である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問75(表記を一部改変)

問76

原価計算基準に従い製造原価の経費に算入する費用はどれか。

正解 ア

解説

製造原価の経費に算入できるのは,製品の製造に関わって正常に発生した費用のうち,材料費・労務費以外のもの。生産に使っている機械装置の修繕費用はこれに当たる。

イは災害による損失で非原価項目(特別損失)。ウは賃貸という営業外の活動に関わる費用。エは資金調達に伴う支払利息で営業外費用。いずれも製造原価には算入しない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問76(表記を一部改変)

問77

会社の固定費が 150 百万円,変動費率が 60%のとき,利益 50 百万円が得られる売上高は何百万円か。

正解 エ

解説

売上高を S 百万円とすると,変動費は 0.6S,利益は S-0.6S-150=0.4S-150 で表せる。利益が 50 百万円になるのは 0.4S-150=50 のときで,S=200÷0.4=500 百万円。エが正しい。

アの 333 は,200÷0.6 の値で,変動費率 0.6 を限界利益率(1-0.6=0.4)と取り違えている。イの 425 では利益は 0.4×425-150=20 百万円,ウの 458 では約 33 百万円で,いずれも 50 百万円にならない。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問77(表記を一部改変)

問78

ソフトウェア開発を,下請法の対象となる下請事業者に委託する場合,下請法に照らして,禁止されている行為はどれか。

正解 イ

解説

下請代金支払遅延等防止法第 3 条は,親事業者は下請事業者に製造委託等をしたら直ちに,給付の内容,下請代金の額,支払期日,支払方法などを記載した書面を交付しなければならないと定める。内容が定められないことに正当な理由がある事項は当初の書面で記載を省けるが,その場合も,内容が定まった後直ちにその事項を記載した書面を交付しなければならないとされている。書面によらず口頭で伝えるイが,禁止されている行為に当たる。

アは,一定期間の取引に共通する事項をあらかじめ書面で通知していれば個々の発注書面での記載を省けると,同法第 3 条の書面の記載事項等に関する規則が認めている。ウは,下請事業者と協議した上で増加費用を代金に加算するもので,一方的に不利益を与える行為ではない。エは,発注前に書面で合意し,親事業者が実際に負担した実費の範囲内で差し引くもので,責めに帰すべき理由がないのに代金の額を減ずる行為とは異なる。なお,同法は令和 8 年 1 月 1 日施行の改正で名称が“製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律”に改められ,書面の交付は書面又は電磁的方法による明示として整理された。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問78(表記を一部改変)

問79

労働者派遣法において,派遣元事業主の講ずべき措置等として定められているものはどれか。

正解 エ

解説

派遣元事業主は派遣労働者の雇用主なので,教育訓練の機会を確保するなど福祉の増進を図る義務を負う。

ア・イ・ウはいずれも「派遣先」が講ずべき措置。名称に“派遣先”とある台帳の作成や責任者の選任,そして実際に指揮命令を行う側での契約内容の周知は,派遣先の義務である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問79(表記を一部改変)

問80

技術者倫理の遵守を妨げる要因の一つとして,集団思考というものがある。集団思考の説明として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

集団思考は,結束の強いチームで,全員一致を保とうとする圧力が働いて異論が出にくくなり,批判的に検討しないまま不合理な結論に合意してしまう現象である。エが正しい。

アの自分と違う視点から事態を見られず客観性を欠くのは自己中心的な傾向,イの組織内の権威に無批判に従うのは権威への無批判な服従,ウの正しいことを知っていても実行する勇気や決断力に欠けるのは意志の弱さで,いずれも技術者倫理の遵守を妨げる要因として挙げられる別の項目である。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問80(表記を一部改変)