平成25年度 春期に実施された応用情報技術者試験
午前(2026年度からの科目A)の全80問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:応用情報技術者試験について
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問1
a を正の整数とし,b=a2 とする。a を2進数で表現すると n ビットであるとき,b を2進数で表現すると高々何ビットになるか。
正解 イ
解説
a は n ビットなので 2n−1 ≦a<2n である。2乗すると 22n−2 ≦b<22n となるので,b は 2n−1 ビット又は 2n ビットになる。最大では 2n ビットで,イが正しい。
例えば n=2 のとき,a=2(10)の b=4 は 100 で3ビット(=2n−1),a=3(11)の b=9 は 1001 で4ビット(=2n)になる。アの n+1 やウの n2 ,エの 2n は,a を2乗したときのビット数の上限にならない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問1(表記を一部改変)
問2
次の集合と等価な集合はどれか。ここで,∪ は和集合,∩ は積集合,X は X の補集合を表す。
ア (A ∪B)∩(A∪B ) 正解
イ (A ∪B )∩(A∪B)
ウ (A ∩B)∪(A∩B )
エ (A ∩B )∩(A∪B)
正解 ア
解説
問題の式 (A∪B)∩(A ∪B ) の中身は,A と B の一方にだけ含まれる部分(排他的論理和)である。その全体の補集合は,A と B の両方に含まれる部分と,どちらにも含まれない部分の和 (A∩B)∪(A ∩B ) になる。アの (A ∪B)∩(A∪B ) は,分配して整理すると (A ∩A)∪(A ∩B )∪(B∩A)∪(B∩B )=(A ∩B )∪(A∩B) となり,一致する。
イの (A ∪B )∩(A∪B) とウの (A ∩B)∪(A∩B ) は,どちらも A と B の一方にだけ含まれる部分で,補集合を取る前の中身と同じである。エの (A ∩B )∩(A∪B) は,A∪B の補集合と A∪B の共通部分なので空集合になる。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問2(表記を一部改変)
問3
図は,偶数個の 1 を含むビット列を受理するオートマトンの状態遷移図であり,二重丸が受理状態を表す。a,b の適切な組合せはどれか。
ア a:0,b:0
イ a:0,b:1
ウ a:1,b:0 正解
エ a:1,b:1
正解 ウ
解説
受理状態は“偶”(1 の個数が偶数個)である。“偶”で 1 を読むと“奇”に移り,“奇”でもう一度 1 を読むと 1 の個数が偶数個に戻るので“偶”に移る。したがって“奇”から“偶”への遷移 a は 1 である。0 を読んでも 1 の個数は変わらないので,“偶”の自己ループと同様に“奇”の自己ループ b は 0 になる。a=1,b=0 のウが正しい。
アは a=b=0 で,“奇”で 0 を読んだときの遷移先が“偶”と“奇”の二つになってしまう。エは a=b=1 で,“奇”で 1 を読んだときの遷移先が二つになる。イは a=0,b=1 で,“奇”で 0 を読むだけで“偶”に戻ってしまい,1 の個数の偶奇と無関係になる。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問3(表記を一部改変)
問4
ハミング符号とは,データに冗長ビットを付加して,1ビットの誤りを訂正できるようにしたものである。ここでは,X1 ,X2 ,X3 ,X4 の4ビットから成るデータに,3ビットの冗長ビット P3 ,P2 ,P1 を付加したハミング符号 X1 X2 X3 P3 X4 P2 P1 を考える。付加ビット P1 ,P2 ,P3 は,それぞれ次の式となるように決める。ここで,⊕ は排他的論理和を表す。ハミング符号 1110011 には1ビットの誤りが存在する。誤りビットを訂正したハミング符号はどれか。
X₁ ⊕ X₃ ⊕ X₄ ⊕ P₁ = 0
X₁ ⊕ X₂ ⊕ X₄ ⊕ P₂ = 0
X₁ ⊕ X₂ ⊕ X₃ ⊕ P₃ = 0
ア 0110011 正解
イ 1010011
ウ 1100011
エ 1110111
正解 ア
解説
符号 1110011 を X1 X2 X3 P3 X4 P2 P1 の順に読むと,X1 =1,X2 =1,X3 =1,P3 =0,X4 =0,P2 =1,P1 =1。三つの検査式に当てはめると,X1 ⊕X3 ⊕X4 ⊕P1 =1,X1 ⊕X2 ⊕X4 ⊕P2 =1,X1 ⊕X2 ⊕X3 ⊕P3 =1 となり,三つとも0にならない。三つの式すべてに現れるビットは X1 だけなので,誤っているのは X1 。これを1から0に直した 0110011 が答えになる。
誤りが1ビットなら,成立しない式の組合せで位置を特定できる。1番目の式だけが成立しなければ誤りは P1 ,1番目と2番目だけなら X4 ,というように対応する。イは X2 ,ウは X3 ,エは X4 を反転した符号で,いずれも検査式を満たさない。
ハミング符号 X1X2X3P3X4P2P1 の誤りの位置
受信した符号 1110011 で各検査式の合計を求めると,X1⊕X3⊕X4⊕P1 は 1,X1⊕X2⊕X4⊕P2 は 1,X1⊕X2⊕X3⊕P3 は 1。合わない式のすべてに含まれ,合う式には含まれないビットは X1 なので,それを反転して 0110011 になる。
X1
1
X2
1
X3
1
P3
0
X4
0
P2
1
P1
1
受信
合計
X1⊕X3⊕X4⊕P1
1
1
0
1
1 ✕
X1⊕X2⊕X4⊕P2
1
1
0
1
1 ✕
X1⊕X2⊕X3⊕P3
1
1
1
0
1 ✕
合わない式すべてに入り,合う式に入らない X1 が誤り
X1 を反転して 0110011
丸は各式に入るビット。合計が1(奇数)の式が合わない
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問4(表記を一部改変)
問5
探索表の構成法を例とともに a〜c に示す。最も適した探索手法の組合せはどれか。ここで,探索表のコードの空欄は表の空きを示す。
ア a:2分探索,b:線形探索,c:ハッシュ表探索 正解
イ a:2分探索,b:ハッシュ表探索,c:線形探索
ウ a:線形探索,b:2分探索,c:ハッシュ表探索
エ a:線形探索,b:ハッシュ表探索,c:2分探索
正解 ア
解説
a のようにコード順に並べた表は,中央の要素と比べて探索範囲を半分ずつ絞り込む2分探索が使える。b のように使用頻度順に並べた表は,コードの大小順になっていないので2分探索は使えないが,よく使うコードほど先頭にあるので,先頭から順に調べる線形探索で平均比較回数が少なくなる。
c のようにコードから一意に決まる場所に格納した表は,コードからハッシュ関数で格納位置を計算して直接参照するハッシュ表探索が最も速い。したがって,アが正しい。
探索の方法と探索時間の増え方
線形探索は先頭から順に調べるので,データの個数 n に比例して長くなる(O(n))。2分探索は範囲を半分ずつ絞るので,n が増えても log n でゆっくりしか増えない。ハッシュ表探索は,衝突がなければキーから格納位置を計算して1回で見つかるので,個数によらず一定(O(1))。
データの個数 n
探索時間
線形探索 n
2分探索 log n
ハッシュ表 一定
ハッシュ表は衝突がなければ,計算で1回で見つかる
ハッシュ表は個数によらず一定,2分探索は緩やかに増え,線形探索は比例して増える
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問5(表記を一部改変)
問6
fact(n) は,非負の整数 n に対して n の階乗を返す。fact(n) の再帰的な定義はどれか。
ア if n=0 then return 0 else return n×fact(n−1)
イ if n=0 then return 0 else return n×fact(n+1)
ウ if n=0 then return 1 else return n×fact(n−1) 正解
エ if n=0 then return 1 else return n×fact(n+1)
正解 ウ
解説
階乗は 0!=1,n!=n×(n−1)! と定義される。したがって再帰の終了条件では 1 を返し,それ以外では n×fact(n−1) を返す。ウが正しい。
アとイは n=0 のときに 0 を返すので,どの値を与えても最終的に0が掛かって結果が0になってしまう。イとエは fact(n+1) と引数を増やしており,終了条件に近づかないので無限に再帰して停止しない。
fact(3) の再帰呼出しと戻り
fact(3) は 3×fact(2) を,fact(2) は 2×fact(1) を,fact(1) は 1×fact(0) を呼ぶ。fact(0) は終了条件で 1 を返す。戻りながら 1×1=1,2×1=2,3×2=6 と掛け合わせ,fact(3)=6 になる。fact(0) が 0 を返すと全体が 0 になってしまう。
fact(3)
3×2 = 6
fact(2)
2×1 = 2
fact(1)
1×1 = 1
fact(0)
1 を返す
呼ぶ(下へ)
戻りながら掛ける(上へ)
終了条件 fact(0)=1 で止まり,戻りながら掛けていく
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問6(表記を一部改変)
問7
配列 A に対して次の手続を実行して,2≦k≦100 である素数 k だけを全て出力したい。a,b,c に入るループの初期値,終値,増分として,適切な組合せはどれか。
for k = 2 to 100 step 1:
A[k] = 1;
for m = 2 to 10 step 1:
for k = a to b step c :
A[k] = 0;
for k = 2 to 100 step 1:
if A[k] ≠ 0:
print k;
ア a:2,b:m2 ,c:1
イ a:2m,b:100,c:m 正解
ウ a:m,b:m2 ,c:m
エ a:m2 ,b:100,c:1
正解 イ
解説
素数を求めるエラトステネスのふるいである。A[k] を最初に全部 1 にしておき,m=2〜10 について m の倍数を 0 に変えていく。m の倍数のうち m 自身は素数かもしれないので消してはならず,2m から始めて 100 まで m おきに消す。a=2m,b=100,c=m のイが正しい。m の上限が 10 なのは,100 以下の合成数は 10 以下の約数をもつからである。
アは k を 2 から m² まで 1 ずつ変えるので,素数を含む全ての数を消してしまう。ウは m から m² まで m おきなので,m 自身を消してしまううえ,m² より大きい倍数が消えずに残る。エは m² から 100 まで 1 ずつ変えるので,m² 以上の数を全て消してしまう。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問7(表記を一部改変)
問8
流れ図に示す処理の動作の記述として,適切なものはどれか。ここで,二重線は並列処理の同期を表す。
ア ABC 又は ACB を実行してデッドロックになる。
イ AB 又は AC を実行してデッドロックになる。
ウ A の後に BC 又は CB,BC 又は CB,… と繰り返して実行する。 正解
エ A の後に B の無限ループ又は C の無限ループになる。
正解 ウ
解説
A を実行した後,上の二重線で B と C が並列に開始され,下の二重線で B と C の両方が終わるまで同期をとる。同期した後は B と C の入口に戻るので,再び B と C を並列に実行する。B と C は並列なので終わる順序は BC にも CB にもなり,A の後に“BC 又は CB”を繰り返して実行することになる。ウが適切である。
アとイは誤り。B と C は同じ資源を奪い合う構造ではなく,同期の後は必ず両方の入口に戻るので,デッドロックにはならない。エは誤り。同期をとるので,B だけ又は C だけが繰り返されることはない。
二重線の同期がある流れ図
A を実行した後,上の二重線で B と C を並行に始め,下の二重線で B と C の両方が終わるのを待つ(同期)。同期した後は B と C の入口に戻るので,再び B と C を並行に実行する。終わる順は BC にも CB にもなり,A の後に“BC 又は CB”を繰り返す。
A
B
C
戻る
下の二重線で B と C の両方が終わるのを待つ
A の後に「BC 又は CB」を繰り返す
二重線で分かれ,二重線で両方を待つ。戻ってまた両方
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問8(表記を一部改変)
問9
表に示す命令ミックスによるコンピュータの処理性能は何 MIPS か。
正解 ウ
解説
命令ミックスは,各命令の実行速度とその出現頻度の加重平均で,1命令当たりの平均実行時間を求める。10×0.5+40×0.3+40×0.2=5+12+8=25 ナノ秒。1秒間に実行できる命令数は 1÷(25×10-9 )=4,000万=40 MIPS になる。ウが正しい。
アの 11 は 1,000÷90 の値で,三つの実行速度を単に足した 90 ナノ秒から求めたもの。イの 25 は平均実行時間(ナノ秒)のままで,MIPS に直していない。エの 90 は 10+40+40 の合計で,頻度で重み付けしていない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問9(表記を一部改変)
問10
CPU のパイプラインハザードのうち,制御ハザードの発生原因として,適切なものはどれか。
ア キャッシュミス
イ 先行する命令の結果に依存する演算命令
ウ ハードウェア資源の競合
エ 分岐命令 正解
正解 エ
解説
パイプラインハザードには,分岐命令などによって次に実行する命令が決まるまで次の命令を取り込めず,パイプラインの流れが乱れる制御ハザードと,先行する命令の結果を待つデータハザード,ハードウェア資源の競合によって起こる構造ハザードがある。制御ハザードの原因は分岐命令で,エが適切である。
イの先行する命令の結果に依存する演算命令はデータハザード,ウのハードウェア資源の競合は構造ハザードの原因である。アのキャッシュミスは,主記憶からの読出しを待つために生じる遅れで,制御ハザードの原因ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問10(表記を一部改変)
問11
複数のデータに対して1個の命令で同一の操作を同時並列に行う方式で,マルチメディアデータなどを扱う CPU に採用されているものはどれか。
ア MIMD
イ MISD
ウ SIMD 正解
エ SISD
正解 ウ
解説
SIMD(Single Instruction Multiple Data)は,1個の命令で複数のデータに同じ操作を同時に施す方式。画像や音声のように同じ処理を大量の要素へ繰り返し適用する場面で効率がよく,CPU のマルチメディア拡張命令に採用されている。ウが正しい。
アの MIMD は複数の命令流が複数のデータを扱う方式でマルチプロセッサが該当する。エの SISD は1命令1データの一般的な逐次処理。イの MISD は1つのデータに複数の命令流を適用する方式で,実用例はほとんどない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問11(表記を一部改変)
問12
キャッシュの書込み方式には,ライトスルー方式とライトバック方式がある。ライトバック方式を使用する目的として,適切なものはどれか。
ア キャッシュと主記憶の一貫性(コヒーレンシ)を保ちながら,書込みを行う。
イ キャッシュミスが発生したときに,キャッシュの内容の主記憶への書き戻しを不要にする。
ウ 個々のプロセッサがそれぞれのキャッシュをもつマルチプロセッサシステムにおいて,キャッシュ管理を簡単な回路構成で実現する。
エ プロセッサから主記憶への書込み頻度を減らす。 正解
正解 エ
解説
ライトバック方式は,書込みをまずキャッシュだけに行い,主記憶(書込み先の記憶装置)への反映は後でまとめて行う方式である。書き込むたびに主記憶へ書き込む必要がないので,プロセッサから主記憶への書込み頻度を減らせる。エが適切である。
アのキャッシュと主記憶の一貫性を保ちながら書き込むのは,キャッシュと主記憶の両方に同時に書き込むライトスルー方式の特徴で,ライトバック方式は反映までの間に一貫性が崩れる。イは誤りで,ライトバック方式ではキャッシュの内容を置き換える前に主記憶へ書き戻す必要がある。ウのように回路構成を簡単にすることは,ライトバック方式の目的ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問12(表記を一部改変)
問13
3層クライアントサーバシステムの各層の役割のうち,適切なものはどれか。
ア データベースアクセス層は,データを加工してプレゼンテーション層に返信する。
イ ファンクション層は,データベースアクセス層で組み立てられた SQL 文を解釈する。
ウ ファンクション層は,データを加工してプレゼンテーション層に返信する。 正解
エ プレゼンテーション層は,データベースアクセス層に SQL 文で問い合わせる。
正解 ウ
解説
3層クライアントサーバシステムは,利用者とのやり取りを受け持つプレゼンテーション層,業務処理(データの加工など)を受け持つファンクション層,データベースへのアクセスを受け持つデータベースアクセス層に分けた構成である。ファンクション層はデータベースアクセス層から受け取ったデータを加工して,プレゼンテーション層に返信する。ウが適切である。
アのデータの加工はデータベースアクセス層ではなく,ファンクション層の役割である。イの SQL 文を組み立ててデータベースに発行するのはデータベースアクセス層で,ファンクション層ではない。エのプレゼンテーション層は画面の入出力を受け持ち,データベースアクセス層に SQL 文で問い合わせることはない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問13(表記を一部改変)
問14
密結合マルチプロセッサの性能が,1台当たりのプロセッサの性能とプロセッサ数の積に等しくならない要因として,最も適切なものはどれか。
ア 主記憶へのアクセスの競合 正解
イ 通信回線を介したプロセッサ間通信
ウ プロセッサのディスパッチ処理
エ 割込み処理
正解 ア
解説
密結合マルチプロセッサは,複数のプロセッサが一つの主記憶を共有して処理する方式である。プロセッサを増やしても,共有する主記憶へのアクセスが競合して待ちが生じるため,性能はプロセッサ数に比例して伸びない。アが最も適切である。
イの通信回線を介したプロセッサ間通信は,主記憶を共有せずにプロセッサ間で通信する疎結合マルチプロセッサで性能が伸びない要因である。ウのディスパッチ処理やエの割込み処理は,プロセッサが1台でも発生する処理で,台数を増やしたときに性能が比例しない主な要因ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問14(表記を一部改変)
問15
システムの信頼性向上技術に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 故障が発生したときに,あらかじめ指定されている安全な状態にシステムを保つことを,フェールソフトという。
イ 故障が発生したときに,あらかじめ指定されている縮小した範囲のサービスを提供することを,フォールトマスキングという。
ウ 故障が発生したときに,その影響が誤りとなって外部に出ないように訂正することを,フェールセーフという。
エ 故障が発生したときに対処するのではなく,品質管理などを通じてシステム構成要素の信頼性を高めることを,フォールトアボイダンスという。 正解
正解 エ
解説
フォールトアボイダンス(故障回避)は,故障が起きてから対処するのではなく,品質管理や高信頼の部品の採用などによって,システムの構成要素そのものの信頼性を高め,故障の発生を防ぐ考え方である。エが適切である。
アの故障時に安全な状態にシステムを保つのはフェールセーフ。イの故障時に縮小した範囲のサービスを提供するのはフェールソフト。ウの故障の影響が誤りとなって外部に出ないように訂正するのはフォールトマスキングの説明で,いずれも用語と説明の組合せが入れ替わっている。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問15(表記を一部改変)
問16
3台の装置 X〜Z を接続したシステム A,B の稼働率について,適切なものはどれか。ここで,3台の装置の稼働率は,いずれも0より大きく1より小さいものとする。
ア 各装置の稼働率の値によって,A と B の稼働率のどちらが高いかは変化する。
イ 常に A と B の稼働率は等しい。
ウ 常に A の稼働率が高い。
エ 常に B の稼働率が高い。 正解
正解 エ
解説
装置 X,Y,Z の稼働率を x,y,z とする。A は X と Y の並列に Z を直列につないだもので,稼働率は {1−(1−x)(1−y)}z=xz+yz−xyz である。B は X と Z の直列に Y を並列につないだもので,稼働率は 1−(1−xz)(1−y)=xz+y−xyz である。
B から A を引くと y−yz=y(1−z) となり,0<y<1,0<z<1 なので常に正である。したがって常に B の稼働率が高く,エが正しい。
2つのシステムの稼働率を比べる
装置 X,Y,Z の稼働率を x,y,z とする。A は X と Y の並列に Z を直列につないだもので,{1−(1−x)(1−y)}z=xz+yz−xyz。B は X と Z の直列に Y を並列につないだもので,1−(1−xz)(1−y)=xz+y−xyz。B−A=y(1−z) は常に正なので,常に B が高い。
A:(X と Y の並列) に Z を直列
X
Y
Z
{1−(1−x)(1−y)}・z
= xz+yz−xyz
B:(X と Z の直列) に Y を並列
X
Z
Y
1−(1−xz)(1−y)
= xz+y−xyz
B − A = y − yz = y(1−z) > 0 → 常に B が高い
並列をまとめて1台とみなし,直列は掛ける。引き算すると y(1−z)>0
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問16(表記を一部改変)
問17
五つのジョブ A〜E に対して,ジョブの多重度が1で,処理時間順方式のスケジューリングを適用した場合,ジョブ B のターンアラウンドタイムは何秒か。ここで,OS のオーバヘッドは考慮しないものとする。
正解 エ
解説
処理時間順方式は,実行待ちのジョブのうち処理時間が最も短いものを先に実行する。時刻 0 にジョブ A が到着して 0〜2 秒を実行する。2 秒の時点で待っているのは B(処理時間 4)と C(処理時間 3)なので,短い C が 2〜5 秒を実行する。5 秒の時点では B(4),D(2),E(1)が待っているので,E が 5〜6 秒,D が 6〜8 秒を実行し,最後に B が 8〜12 秒を実行する。
ターンアラウンドタイムは到着から完了までの時間なので,ジョブ B は 12−1=11 秒で,エが正しい。アの 8 は,B が実行を始める時刻である。イの 9 とウの 10 は,どの手順で求めても出てこない値で,待ち時間や実行時間の数え間違いによるものである。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問17(表記を一部改変)
問18
ページング方式の仮想記憶において,ページフォールト発生時のオーバヘッドによる1命令当たりの平均遅れ時間を求める式はどれか。
〔記号の説明〕
t:1回当たりのページフォールト処理時間 f:ページフォールト発生率 m:1命令当たりの平均主記憶アクセス回数
ア t−f×m
イ t×f×m 正解
ウ t×f÷m
エ t÷f÷m
正解 イ
解説
1 命令を実行するときの主記憶アクセスは平均 m 回で,アクセスごとにページフォールトが発生する確率が f,1 回のページフォールトの処理に t かかる。したがって 1 命令当たりの平均遅れ時間は,t×f×m である。イが正しい。
アは差を取っており,遅れ時間の式として意味をなさない。ウとエは m で割っているので,1 命令当たりの主記憶アクセス回数が増えるほど遅れが小さくなり,実際と逆になる。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問18(表記を一部改変)
問19
仮想記憶方式におけるプログラムやデータの格納方法に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 一つのプログラムや一連のデータは,主記憶装置及び補助記憶装置で必ず連続した領域に格納される。
イ 頻繁に参照されるプログラムやデータが主記憶装置に格納されているので,仮想記憶を用いない場合に比べて主記憶の平均アクセス時間が短くなる。
ウ プログラムやデータを補助記憶装置に格納し,必要に応じて主記憶に読み込むので,主記憶の見かけの容量を拡大できる。 正解
エ ページアウトされたプログラムやデータがシステムの停止後も補助記憶装置に保持されるので,再起動後に主記憶の内容が復元される。
正解 ウ
解説
仮想記憶方式は,プログラムやデータを補助記憶装置に格納しておき,必要な部分だけを主記憶に読み込んで実行する方式である。主記憶より大きなプログラムも実行できるので,主記憶の見かけの容量を拡大できる。ウが適切である。
アの仮想記憶では,プログラムやデータをページなどの単位に分けて,連続していない領域にも格納できる。イの仮想記憶では,ページフォールトやアドレス変換のオーバヘッドがあるので,主記憶の平均アクセス時間は短くならず,むしろ長くなる。エの主記憶の内容は,システムを停止すると失われ,ページアウトした内容が補助記憶装置に残っていても,再起動後に主記憶の内容が復元されるわけではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問19(表記を一部改変)
問20
メインプログラムを実行した後,メインプログラムの変数 X,Y の値は幾つになるか。ここで,仮引数 X は値呼出し(call by value),仮引数 Y は参照呼出し(call by reference)であるとする。
ア X=2,Y=4
イ X=2,Y=6 正解
ウ X=4,Y=2
エ X=4,Y=6
正解 イ
解説
値呼出しの X は,手続に値のコピーが渡されるので,手続の中で X を変えてもメインプログラムの X は 2 のまま変わらない。参照呼出しの Y は,メインプログラムの変数 Y そのものを参照するので,手続の中での変更がメインプログラムの Y に反映される。
手続では X=X+Y=2+2=4(手続内の X だけが変わる),続いて Y=X+Y=4+2=6 となり,この 6 がメインプログラムの Y に反映される。実行後は X=2,Y=6 で,イが正しい。両方とも参照呼出しとみなすと X=4,Y=6(エ)と誤る。
値呼出しと参照呼出し
値呼出しの X には値のコピーが渡されるので,手続の中で X を 4 に変えても,メインプログラムの X は 2 のまま。参照呼出しの Y は,メインプログラムの Y そのものを指すので,手続の中で Y=X+Y=4+2=6 とすると,メインの Y も 6 になる。
メイン
X
2 のまま
Y
2 → 6
手続 add
X(写し)
2 → 4
Y(参照)
値をコピー
同じ変数を指す
X = X + Y = 2 + 2 = 4(手続の中の X だけ)
Y = X + Y = 4 + 2 = 6(メインの Y が 6 に)
実行後:X = 2,Y = 6
参照呼出しの変更だけが呼出し元に残る
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問20(表記を一部改変)
問21
GPL の下で公開されたソフトウェアを改変・頒布する場合に行わなければならないことはどれか。
ア 初期開発者名の表示
イ 同一ライセンスでの頒布 正解
ウ プログラムの保証
エ 無償での頒布
正解 イ
解説
GPL(GNU General Public License)の下で公開されたソフトウェアを改変して頒布する場合,改変した部分も含む派生物の全体を GPL と同一のライセンスで頒布しなければならない(コピーレフト)。イが該当する。
ウのプログラムの保証は,GPL では無保証が前提で,保証をする義務はない。エの無償での頒布は,GPL でも複製物の頒布に対価を得ることは認められており,義務ではない。アの初期開発者名の表示は,GPL が改変・頒布の条件として求める事項ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問21(表記を一部改変)
問22
RFID のパッシブ方式 RF タグの説明として,適切なものはどれか。
ア アンテナから電力が供給される。 正解
イ 可視光でデータ通信する。
ウ 静電容量の変化を捉えて位置を検出する。
エ 赤外線でデータ通信する。
正解 ア
解説
パッシブ方式の RF タグは電池をもたず,読取り装置(リーダ)のアンテナから送られる電波を受けて,その電力で動作し,タグに記録された情報を返す。アンテナから電力が供給されるアが適切である。
イの可視光による通信は可視光通信,エの赤外線による通信は IrDA などの赤外線通信で,RFID は電波を使う。ウの静電容量の変化を捉えて位置を検出するのは,静電容量方式のタッチパネルなどの仕組みである。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問22(表記を一部改変)
問23
ウォッチドッグタイマの機能はどれか。
ア あらかじめ設定された一定時間内にタイマがクリアされなかった場合,システム異常とみなしてシステムに通知する。 正解
イ システム異常を検出した場合,タイマで設定された時間だけ待ってシステムに通知する。
ウ システム異常を検出した場合,マスカブル割込みでシステムに通知する。
エ システムが一定時間異常であった場合,上位の管理プログラムをコールする。
正解 ア
解説
ウォッチドッグタイマは,システムが正常に動いているあいだ,プログラムが一定時間ごとにタイマをクリア(リセット)することで動作を確認する仕組みである。あらかじめ設定された一定時間内にタイマがクリアされなかった場合は,プログラムの暴走や停止などの異常とみなして,システムに通知する(通知を受けたシステムが,リセットや終了などの処置をとる)。アが正しい。
イは異常を検出してから設定時間だけ待って通知するもので,タイマのクリアを監視する仕組みではない。ウのマスカブル割込みは,割込み禁止にされると受け付けられないので,暴走したシステムの異常通知には向かない(リセットや,マスクできない割込みを使う)。エは異常が一定時間続いたときに上位の管理プログラムをコールするという説明で,ウォッチドッグタイマの機能ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問23(表記を一部改変)
問24
図に示す構造の論理回路は,どの回路か。
正解 エ
解説
図の回路は,2 つの入力を排他的論理和(XOR)と論理積(AND)にそれぞれ入れ,XOR の出力を出力 1,AND の出力を出力 2 としている。2 つの 1 ビットを足したとき,出力 1 が和(その桁),出力 2 が上の桁への桁上げになるので,半加算回路である。エが正しい。
ウの全加算回路は,下の桁からの桁上げを含めた 3 つの入力を足す回路で,半加算回路を 2 つ組み合わせて作る。アの減算回路は,差と借りを求める回路で,借りの計算に否定が必要になる。イの乗算は,1 ビット同士なら論理積(AND)だけで求まる。
半加算器の真理値表
1桁の A+B は,0+0=00,0+1=01,1+0=01,1+1=10。桁上がり X は両方1のときだけ1なので論理積,和の1桁目 Y は A と B が違うときだけ1なので排他的論理和。
A
B
A+B
X 桁上がり
Y 和
0
0
00
0
0
0
1
01
0
1
1
0
01
0
1
1
1
10
1
0
X = A・B(AND),Y = A⊕B(XOR)
桁上がりは AND,和の1桁目は XOR
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問24(表記を一部改変)
問25
Web ページの設計の例のうち,アクセシビリティを高める観点から最も適切なものはどれか。
ア 音声を利用者に確実に聞かせるために,Web ページの表示時に音声を自動的に再生する。
イ 体裁の良いレイアウトにするために,表組みを用いる。
ウ 入力が必須な項目は,色で強調するだけでなく,項目名の隣に“(必須)”などと明記する。 正解
エ ハイパリンク先の内容が予測できるように,ハイパリンク画像の alt 属性にリンク先の URL を付記する。
正解 ウ
解説
色の違いを見分けにくい利用者や,画面読上げソフトを使う利用者には,色で強調しただけでは入力が必須であることが伝わらない。項目名の隣に“(必須)”などと文字で明記すれば,色に頼らずに情報が伝わるので,ウが適切である。
アの音声の自動再生は,画面読上げソフトの音声を妨げたり,利用者が止められなかったりするので避ける。イの表組みをレイアウトに使うと,読上げの順序が崩れて内容が伝わりにくくなる。エの alt 属性には,URL ではなくリンク先の内容や画像の意味を説明する文を記述する。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問25(表記を一部改変)
問26
音声などのアナログデータをディジタル化するために用いられる PCM で,音の信号を一定の周期でアナログ値のまま切り出す処理はどれか。
正解 イ
解説
PCM(パルス符号変調)は,標本化,量子化,符号化の順にアナログ信号をディジタル化する。音の信号を一定の周期で切り出し,その時点の値をアナログ値のまま取り出す処理が標本化(サンプリング)で,イが正しい。
エの量子化は,標本化で取り出したアナログ値を段階的な離散値に近似する処理。ウの符号化は,量子化した値を2進数のビット列に置き換える処理。アの逆量子化は,ディジタル値を元のアナログ値に近い値へ戻す処理である。
PCM:標本化・量子化・符号化
アナログの音の波形を,一定の周期で切り出してその時点の値を取り出す(標本化)。取り出した値を決められた段階の値に近づける(量子化)。段階の値を2進数のビット列にする(符号化)。この順でディジタル化する。
0
1
2
3
4
5
6
7
110
111
110
011
001
000
010
100
110
111
標本化:○ を一定の間隔で取り出す
量子化:● 段階の値にそろえる 符号化:下の2進数
一定の周期で切り出すのが標本化。値を段階にそろえるのが量子化
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問26(表記を一部改変)
問27
クライアントサーバシステムにおいて,クライアント側からストアドプロシージャを利用したときの利点として,適切なものはどれか。
ア クライアントとサーバの間の通信量を削減できる。 正解
イ サーバ内でのデータベースファイルへのアクセス量を削減できる。
ウ サーバのメモリ使用量を削減できる。
エ データの格納領域を削減できる。
正解 ア
解説
ストアドプロシージャは,一連の SQL 文をまとめてサーバ側の DBMS に格納しておき,クライアントからは名前を指定して呼び出すだけで実行できる仕組みである。SQL 文を一つずつ送って結果を受け取る必要がなくなるので,クライアントとサーバの間の通信量を削減できる。アが適切である。
イのデータベースファイルへのアクセス量は,同じ処理を行う以上サーバ内では変わらない。ウのサーバのメモリ使用量は,プロシージャを格納・実行するためにむしろ増えることがある。エのデータの格納領域は,処理の呼出し方とは関係がない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問27(表記を一部改変)
問28
“プログラマは全て社員であり,社員の約 10%を占める。社員は社員番号と氏名をもち,職種がプログラマである場合は,使用できるプログラム言語を一つ以上もつ。”という状況を記録するデータベース設計案として,適切なものはどれか。ここで,実線の下線は主キーを,破線の下線は外部キーを表す。
ア 社員(社員番号(主キー),氏名,職種,プログラム言語)
イ 社員(社員番号(主キー),氏名,プログラム言語)
ウ 社員(社員番号(主キー),氏名) プログラマ(社員番号(主キー,外部キー),プログラム言語)
エ 社員(社員番号(主キー),氏名) プログラマ(社員番号(主キーの一部,外部キー),プログラム言語(主キーの一部)) 正解
正解 エ
解説
プログラマは社員の約10%だけなので,社員表にプログラム言語の列を置くと大半の社員で空欄になり,また一人が複数の言語をもつと繰返し項目になって第1正規形にならない。社員の情報とプログラマの言語は別の表に分ける必要がある。
プログラマ表では,一人の社員が複数のプログラム言語をもつので,社員番号だけでは行を一意に特定できない。社員番号とプログラム言語の組を主キーとし,社員番号を社員表への外部キーとするエが適切である。ウは社員番号だけを主キーにしており,一人のプログラマが複数の言語をもてない。アとイは社員表にプログラム言語をもたせている。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問28(表記を一部改変)
問29
埋込み SQL において,問合せによって得られた導出表を1行ずつ親プログラムに引き渡す操作がある。この操作と関係の深い字句はどれか。
ア CURSOR 正解
イ ORDER BY
ウ UNION
エ UNIQUE
正解 ア
解説
埋込み SQL では,問合せの結果(導出表)を1行ずつ取り出して親プログラムに渡すために,カーソル(CURSOR)を宣言し,OPEN,FETCH,CLOSE で操作する。アが正しい。
イの ORDER BY は結果の並べ替え,ウの UNION は二つの問合せ結果の和集合を求める演算,エの UNIQUE は列の値の重複を許さない制約の指定(又は DISTINCT に相当する重複排除)で,1行ずつ引き渡す操作ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問29(表記を一部改変)
問30
A 表は外部キーによって B 表から参照されている。ここで,A 表の行を削除するとき,それを参照している B 表の行を同時に全て削除することを指定する SQL の参照動作はどれか。
ア CASCADE 正解
イ CONSTRAINT
ウ NO ACTION
エ REFERENCES
正解 ア
解説
SQL の外部キー制約には,参照される行を削除・更新したときの参照動作を指定する ON DELETE,ON UPDATE がある。ON DELETE CASCADE を指定すると,A 表の行を削除したときに,それを参照している B 表の行も同時に削除される。アの CASCADE が正しい。
ウの NO ACTION は,参照している行があれば削除を認めない指定である。イの CONSTRAINT は制約に名前を付けるための句,エの REFERENCES は外部キー制約で参照先の表を示す句で,いずれも参照動作を指定するものではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問30(表記を一部改変)
問31
トランザクションの同時実行制御に用いられるロックの動作に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 共有ロック獲得済の資源に対して,別のトランザクションからの新たな共有ロックの獲得を認める。 正解
イ 共有ロック獲得済の資源に対して,別のトランザクションからの新たな専有ロックの獲得を認める。
ウ 専有ロック獲得済の資源に対して,別のトランザクションからの新たな共有ロックの獲得を認める。
エ 専有ロック獲得済の資源に対して,別のトランザクションからの新たな専有ロックの獲得を認める。
正解 ア
解説
ロックには,読取り用の共有ロックと,更新用の専有ロック(排他ロック)がある。共有ロックどうしは両立するので,共有ロックを獲得済みの資源に対して,別のトランザクションが新たに共有ロックを獲得することは認められる。アが適切である。
共有ロックと専有ロック,専有ロックどうしは両立しない。イは共有ロック済みの資源に専有ロックを,ウは専有ロック済みの資源に共有ロックを,エは専有ロック済みの資源に専有ロックを認めるとしており,いずれも誤りである。
共有ロックと専有ロックの両立
共有ロック(読取り)どうしは同時にかけられるが,専有ロック(更新)はほかのどのロックとも同時にかけられない。並行して実行できるのは先行・後続がともに共有の組合せだけ。表全体へのロックは表の中の全ての行に及ぶので,ある行に共有ロックがある間は,表全体への専有ロックはかけられない。
先行\後続
共有
専有
共有
○ 並行
× 待つ
専有
× 待つ
× 待つ
○ 並行
表と行のロック(SA の問題)
A 表
行 a
X が共有
行 b
Y が行 b に専有 → ○(重ならない)
Y が A 表に専有 → ×(行 a も含む)
並行できるのは共有と共有だけ
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問31(表記を一部改変)
問32
イーサネットで使用される媒体アクセス制御方式である CSMA/CD に関する記述として,適切なものはどれか。
ア それぞれのステーションがキャリア検知を行うとともに,送信データの衝突が起きた場合は再送する。 正解
イ タイムスロットと呼ばれる単位で分割して,同一周波数において複数の通信を可能にする。
ウ データ送受信の開始時にデータ送受信のネゴシエーションとして RTS/CTS 方式を用い,受信の確認は ACK を使用する。
エ 伝送路上にトークンを巡回させ,トークンを受け取った端末だけがデータを送信できる。
正解 ア
解説
CSMA/CD は,送信前に伝送路が使われていないかを調べ(Carrier Sense),空いていれば送信する。同時に送信されて衝突が起きたことを検出したら(Collision Detection)送信を中断し,ランダムな時間だけ待ってから再送する。アが正しい。
イはタイムスロットで分割する TDMA(時分割多元接続)。ウは無線 LAN の CSMA/CA で,無線では衝突を検出できないため RTS/CTS で事前に調整し,ACK で受信を確認する。エはトークンパッシング方式の説明である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問32(表記を一部改変)
問33
TCP/IP ネットワークにおける RARP の機能として,適切なものはどれか。
ア IP パケットが通信先の IP アドレスに到達するかどうかを調べる。
イ MAC アドレスから IP アドレスを求める。 正解
ウ ドメイン名とホスト名から IP アドレスを求める。
エ プライベート IP アドレスとグローバル IP アドレスを相互に変換する。
正解 イ
解説
RARP(Reverse Address Resolution Protocol)は,MAC アドレスから IP アドレスを求めるプロトコルで,IP アドレスから MAC アドレスを求める ARP の逆の動作をする。ハードディスクをもたない端末が起動時に,自分の MAC アドレスを使ってサーバから自分の IP アドレスを教えてもらう場合などに使われた。イが適切である。
アは ICMP(ping など)による IP パケットの到達確認,ウは DNS による名前解決,エは NAT(NAPT)によるアドレス変換の説明である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問33(表記を一部改変)
問34
クラス C の IP アドレスを分割して,10個の同じ大きさのサブネットを使用したい。ホスト数が最も多くなるように分割した場合のサブネットマスクはどれか。
ア 255.255.255.192
イ 255.255.255.224
ウ 255.255.255.240 正解
エ 255.255.255.248
正解 ウ
解説
10 個のサブネットを作るには,ホスト部 8 ビットのうちサブネット用に借りるビット数を n として 2n ≧10 が必要である。n=3 では 8 個しか作れず,n=4 なら 16 個作れる。借りるビットを最小の 4 ビットにすればホスト数が最も多くなり,ネットワーク部は 24+4=28 ビットになる。/28 のサブネットマスクは第 4 オクテットが 11110000=240 なので 255.255.255.240 であり,ウになる。各サブネットのホストは 24 −2=14 台である。
アの 255.255.255.192(/26)はサブネットを 4 個,イの 255.255.255.224(/27)は 8 個しか作れず,10 個に足りない。エの 255.255.255.248(/29)は 32 個のサブネットを作れるが,ホストは各 6 台までに減り,ホスト数が最も多くなる分割ではない。
サブネットを10個・16個に分けるマスク
クラス C(/24)のホスト部8ビットから n ビットを借りると 2ⁿ 個に分けられる。10 個なら 2³=8 では足りず 2⁴=16 で 4 ビット,16 個でも 4 ビット。マスクは /28 で 255.255.255.240。1つのサブネットは16アドレスで,ホストは14台。
ホスト部8ビットのうち 4 ビットを借りる → 16 個に分ける
0
255
第4オクテット 11110000 = 240
サブネットマスク 255.255.255.240(/28)
1つのサブネットは 16 個のアドレス,ホストは 14 台
10 個なら 3 ビット(8個)では足りない。塗ったのが使う10個
必要な個数以上になる最小のビット数を借りる
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問34(表記を一部改変)
問35
1バイトのデータを16進2桁で表した後,先頭にパーセント記号を付けて %1A のような3バイトの ASCII 文字列にする変換はパーセントエンコーディングと呼ばれる。例えば UTF-8 でエンコードされた“α”の16進表示は CEB1 なので,これをパーセントエンコーディングしたものは %CE%B1 となる。パーセントエンコーディングが使用される場合はどれか。
ア HTTP のベーシック認証で Authorization ヘッダにパスワード情報を指定する場合
イ Web ページのフォーム上の漢字を HTTP の GET メソッドでサーバに送る場合 正解
ウ サブジェクトに日本語の文字を含む電子メールを送る場合
エ フランス語やドイツ語のアルファベットを使った電子メールを送る場合
正解 イ
解説
パーセントエンコーディング(URL エンコード)は,URL に使えない文字や特殊な文字を,%と 16 進 2 桁で表す変換である。Web ページのフォームに入力した漢字を HTTP の GET メソッドで送るときは,URL の後ろにつくクエリ文字列に漢字が入るので,パーセントエンコーディングが使われる。イが該当する。
アのベーシック認証では,ユーザ名とパスワードを Base64 でエンコードして Authorization ヘッダに指定する。ウの電子メールのサブジェクトに日本語を使うときは,MIME の方式(Base64 や Quoted-printable)でエンコードする。エのフランス語やドイツ語のアルファベットを電子メールで送るときも MIME の Quoted-printable などでエンコードし,こちらは“=”と 16 進数で表す。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問35(表記を一部改変)
問36
HTTPS 通信において,暗号化とサーバ認証に使用されるものはどれか。
ア Cookie
イ S/MIME
ウ SSL/TLS 正解
エ ダイジェスト認証
正解 ウ
解説
HTTPS は,HTTP の通信を SSL/TLS で保護するものである。SSL/TLS は,サーバ証明書によるサーバの認証と,通信内容の暗号化の両方を行う。ウが正しい。
アの Cookie は Web サーバが Web ブラウザに状態を保存させる仕組みで,暗号化や認証の機能はもたない。イの S/MIME は電子メールの暗号化とディジタル署名の標準。エのダイジェスト認証は HTTP の利用者認証の方式で,通信の暗号化は行わない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問36(表記を一部改変)
問37
暗号アルゴリズムの危殆化を説明したものはどれか。
ア 外国の輸出規制によって,十分な強度をもつ暗号アルゴリズムを実装した製品が利用できなくなること
イ 鍵の不適切な管理によって,鍵が漏えいする危険性が増すこと
ウ 計算能力の向上などによって,鍵の推定が可能になり,暗号の安全性が低下すること 正解
エ 最高性能のコンピュータを用い,膨大な時間とコストを掛けて暗号強度をより確実なものにすること
正解 ウ
解説
暗号アルゴリズムの危殆化とは,計算機の性能向上や解読手法の進歩によって,当初は現実的な時間では破れないと考えられていた鍵の推定や解読ができるようになり,暗号の安全性が低下することである。かつての DES や鍵長の短い RSA がこの状態になり,より強い方式への移行が進められた。ウが該当する。
アの輸出規制で強い暗号の製品が使えなくなることは制度上の制約で,アルゴリズムそのものの安全性の低下ではない。イの鍵の不適切な管理による漏えいの危険は運用上の問題であり,アルゴリズムが弱くなったわけではない。エは暗号強度を高める話で,危殆化とは逆である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問37(表記を一部改変)
問38
暗号解読のための攻撃法のうち,ブルートフォース攻撃はどれか。
ア 与えられた一組の平文と暗号文に対し,総当たりで鍵を割り出す。 正解
イ 暗号化関数の統計的な偏りを線形関数によって近似して解読する。
ウ 暗号化装置の動作を電磁波から解析することによって解読する。
エ 異なる二つの平文とそれぞれの暗号文の差分を観測して鍵を割り出す。
正解 ア
解説
ブルートフォース攻撃は,考えられる鍵を全て順に試して解読する総当たり攻撃である。与えられた一組の平文と暗号文に対して,総当たりで鍵を割り出す方法で,アが該当する。
イの暗号化関数の統計的な偏りを線形関数で近似するのは線形解読法,エの異なる二つの平文と暗号文の差分を観測するのは差分解読法である。ウの暗号化装置の動作を電磁波などから解析するのは,サイドチャネル攻撃である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問38(表記を一部改変)
問39
公開鍵暗号を使って n 人が相互に通信する場合,全体で何個の異なる鍵が必要になるか。ここで,一組の公開鍵と秘密鍵は2個と数える。
ア n+1
イ 2n 正解
ウ n(n−1)/2
エ log2 n
正解 イ
解説
公開鍵暗号方式では,一人ひとりが自分用の公開鍵と秘密鍵の組を一つ持てばよい。相手に送るときは相手の公開鍵で暗号化し,受け取った相手は自分の秘密鍵で復号するので,通信の相手が何人いても鍵の組を増やす必要はない。n 人なら n 組で,1組を2個と数えるので 2n 個。イが正しい。
ウの n(n−1)/2 は,共通鍵暗号方式で n 人が相互に通信する場合に必要な鍵の数で,2人1組ごとに別々の鍵が要るためである。人数が多いほど,公開鍵暗号方式のほうが必要な鍵の数を大幅に減らせる。
鍵の数とハイブリッド暗号
共通鍵暗号では,n 人が互いに秘密に通信するには2人の組ごとに鍵が要り,n(n−1)÷2 本になる。4人なら6本,100人なら4,950本。公開鍵暗号では1人が公開鍵と秘密鍵の1組を持てばよく,2n 本(100人なら200本)。ハイブリッド暗号では,データは速い共通鍵暗号で暗号化し,その共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化して一緒に送る。
共通鍵:4人で6本
n(n−1)÷2 本
公開鍵:1人1組
2n 本(公開鍵と秘密鍵)
100人なら 共通鍵 4,950本 / 公開鍵 200本
ハイブリッド暗号
データ
共通鍵で暗号化(速い)
暗号文
共通鍵
受信者の公開鍵で暗号化
暗号化した共通鍵
受信者は秘密鍵で共通鍵を取り出し,データを復号する
鍵の配り方は公開鍵暗号で,データの暗号化は速い共通鍵暗号で
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問39(表記を一部改変)
問40
ソーシャルエンジニアリング手法を利用した標的型攻撃メールの特徴はどれか。
ア 件名に“未承諾広告※”と記述されている。
イ 件名や本文に,受信者の業務に関係がありそうな内容が記述されている。 正解
ウ 支払う必要がない料金を振り込ませるために,債権回収会社などを装い無差別に送信される。
エ 偽のホームページにアクセスさせるために,金融機関などを装い無差別に送信される。
正解 イ
解説
標的型攻撃メールは,特定の組織や個人を狙い,ウイルス付きのファイルを開かせたり不正なサイトに誘導したりするために送られる。受信者を信用させて開かせるため,件名や本文に受信者の業務に関係がありそうな内容を記述するなど,ソーシャルエンジニアリングの手法が使われる。イが該当する。
アの件名に“未承諾広告※”と表示するのは,特定電子メール法で広告宣伝メールに求められていた表示で,標的型攻撃メールの特徴ではない。ウの架空請求メールやエのフィッシングメールは,無差別に大量に送信される点で,特定の相手を狙う標的型攻撃とは異なる。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問40(表記を一部改変)
問41
ネットワーク障害の原因を調べるために,ミラーポートを用意して,LAN アナライザを使用するときに留意することはどれか。
ア LAN アナライザがパケットを破棄してしまうので,測定中は測定対象外のコンピュータの利用を制限しておく必要がある。
イ LAN アナライザはネットワークを通過するパケットを表示できるので,盗聴などに悪用されないように注意する必要がある。 正解
ウ 障害発生に備えて,ネットワーク利用者に対して LAN アナライザの保管場所と使用方法を周知しておく必要がある。
エ 測定に当たって,LAN ケーブルを一時的に切断する必要があるので,ネットワーク利用者に対して測定日を事前に知らせておく必要がある。
正解 イ
解説
ミラーポートは,スイッチの特定のポートを通過するパケットを複製して出力するポートで,ここに LAN アナライザを接続すると,ネットワークを流れるパケットの内容を取り込んで表示できる。通信内容を見ることができるので,盗聴などに悪用されないよう,使用する者や保管を管理する必要がある。イが適切である。
アの LAN アナライザはパケットを複製して受け取るだけで,通信中のパケットを破棄しない。ウの保管場所と使用方法を利用者に広く周知すると,悪用の危険が高まる。エのミラーポートを使えば,LAN ケーブルを切断せずに測定できる。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問41(表記を一部改変)
問42
パケットフィルタリング型ファイアウォールのフィルタリングルールを用いて,本来必要なサービスに影響を及ぼすことなく防げるものはどれか。
ア 外部に公開しないサービスへのアクセス 正解
イ サーバで動作するソフトウェアの脆弱性を突く攻撃
ウ 電子メールに添付されたファイルに含まれるマクロウイルスの侵入
エ 電子メール爆弾などの DoS 攻撃
正解 ア
解説
パケットフィルタリング型ファイアウォールは,パケットのヘッダにある IP アドレスやポート番号などを見て通過の可否を判断する。外部に公開しないサービスのポート番号宛てのパケットを遮断すれば,公開している必要なサービスに影響を与えずに,そのサービスへのアクセスを防げる。アが適切である。
イの脆弱性を突く攻撃は,公開しているサービスの正規のポートへの通信に紛れて届くので,ヘッダの情報だけでは区別できない。ウのマクロウイルスは電子メールの添付ファイルの中身にあり,パケットのヘッダでは判断できない。エの電子メール爆弾も正規のメールの通信として届くので,メールサービスを止めずに遮断することはできない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問42(表記を一部改変)
問43
毎回参加者が変わる 100 名程度の公開セミナにおいて,参加者が持参する端末に対して無線 LAN 接続環境を提供する。参加者の端末以外からのアクセスポイントへの接続を防止するために効果があるセキュリティ対策はどれか。
ア アクセスポイントがもつ DHCP サーバ機能において,参加者の端末に対して動的に割り当てる IP アドレスの範囲をセミナごとに変更する。
イ アクセスポイントがもつ URL フィルタリング機能において,参加者の端末に対する条件をセミナごとに変更する。
ウ アクセスポイントがもつ暗号化機能において,参加者の端末とアクセスポイントとの間で事前に共有する鍵をセミナごとに変更する。 正解
エ アクセスポイントがもつプライバシセパレータ機能において,参加者の端末へのアクセス制限をセミナごとに変更する。
正解 ウ
解説
無線 LAN のアクセスポイントとの間で事前に共有する鍵(PSK)を用いる暗号化と認証では,鍵を知っている端末だけがアクセスポイントに接続して通信できる。セミナごとに鍵を変更し,その回の参加者にだけ知らせれば,過去の参加者を含め,参加者の端末以外からの接続を防止できる。ウが該当する。
アの DHCP で割り当てる IP アドレスの範囲を変えても,端末に IP アドレスを手動で設定すれば接続できるので,接続の防止にはならない。イの URL フィルタリングは,接続した端末がアクセスできる Web サイトを制限する機能であり,アクセスポイントへの接続を防ぐものではない。エのプライバシセパレータは,同じアクセスポイントに接続した端末同士の通信を遮断する機能であり,参加者以外の端末の接続を防ぐものではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問43(表記を一部改変)
問44
サンドボックスの仕組みについて述べたものはどれか。
ア Web アプリケーションの脆弱性を悪用する攻撃に含まれる可能性が高い文字列を定義し,攻撃であると判定した場合には,その通信を遮断する。
イ 侵入者をおびき寄せるために本物そっくりのシステムを設置し,侵入者の挙動などを監視する。
ウ プログラムの影響がシステム全体に及ぶことを防止するために,プログラムが実行できる機能やアクセスできるリソースを制限して動作させる。 正解
エ プログラムのソースコードで SQL 文の雛形の中に変数の場所を示す記号を置いた後,実際の値を割り当てる。
正解 ウ
解説
サンドボックスは,プログラムを,システムの他の部分から隔離された保護領域の中で動作させ,実行できる機能やアクセスできるファイルなどのリソースを制限する仕組みである。不正なプログラムが動作しても,その影響がシステム全体に及ばないようにできる。ウが正しい。
アの攻撃に含まれる可能性が高い文字列を定義して通信を遮断するのは WAF(ブラックリスト方式)。イの本物そっくりのシステムを設置して侵入者の挙動を監視するのはハニーポット。エの SQL 文の雛形の中に変数の場所を示す記号を置いて後から値を割り当てるのは,SQL インジェクション対策のプレースホルダ(バインド機構)である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問44(表記を一部改変)
問45
図は“顧客が商品を注文する”を表現した UML のクラス図である。“顧客が複数の商品をまとめて注文する”を表現したクラス図はどれか。ここで,“注文明細”は一つの注文に含まれる1種類の商品に対応し,“注文”は複数の“注文明細”を束ねた一つの注文に対応する。
正解 ア
解説
“注文”は複数の“注文明細”を束ねたもので,注文明細は注文の一部として存在する。このような全体と部分の関係は,全体の側(注文)にひし形を付けたコンポジションで表し,1件の注文に1件以上の注文明細が含まれるので,注文側の多重度は 1,注文明細側は 1..* となる。注文明細はそれぞれ1種類の商品に対応し,顧客は注文を0件以上行う。この関係をすべて満たすアが正しい。
イはひし形が注文明細の側にあり,注文明細が全体,注文が部分となって関係が逆になっている。ウとエは顧客が注文ではなく注文明細と,注文が商品と直接関連しており,“注文明細は1種類の商品に対応する”という条件に合わない(エはコンポジションの向きも逆)。
多重度の読み方
多重度は,関連の相手側の端に書く。部門(1)と社員(*)なら,社員の側から見て部門は必ず1つ(どの社員もちょうど1つの部門に所属し,兼務はない),部門の側から見て社員は0人以上(社員のいない部門もある)。1..* なら1以上,0..1 なら0か1。
部門
社員
1
*
社員から見て部門は 1 つ(必ず,兼務なし)
部門から見て社員は 0 人以上
書き方
意味
1
ちょうど1
0..1
0 か 1
*(0..*)
0 以上
1..*
1 以上
相手から見て何個か,を相手側の端に書く
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問45(表記を一部改変)
問46
ソフトウェアの使用性を評価する指標の目標設定の例として,適切なものはどれか。
ア ソフトウェアに障害が発生してから1時間以内に,利用者が使用できること
イ 利用者が使用したい機能の改善を,1週間以内に実装できること
ウ 利用者が使用したい機能を,100%提供できていること
エ 利用者が,使用したいソフトウェアの使用方法を1時間以内に習得できること 正解
正解 エ
解説
JIS X 25010 の品質モデルでは,使用性は利用者が製品を有効かつ効率的に使える度合いで,副特性に習得性(使い方を学べる度合い)や運用操作性などを含む。“使用方法を1時間以内に習得できる”は習得性の目標なので,エが使用性の指標に当たる。
アの障害発生から1時間以内に使用できることは信頼性(回復性),イの機能の改善を1週間以内に実装できることは保守性,ウの利用者が使用したい機能を100%提供できていることは機能性(機能適合性)に関する目標である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問46(表記を一部改変)
問47
エラー埋込み法による残存エラーの予測において,テストが十分に進んでいると仮定する。当初の埋込みエラーは 48 個である。テスト期間中に発見されたエラーの内訳は,埋込みエラーが 36 個,真のエラーが 42 個である。このとき,残存する真のエラーは何個と推定されるか。
正解 イ
解説
エラー埋込み法は,あらかじめ意図的に埋め込んだエラー(埋込みエラー)と,もともとあった真のエラーが,同じ割合で発見されると仮定して,残存エラー数を推定する方法である。埋込みエラー 48 個のうち 36 個が発見されたので,発見率は 36÷48=3/4。真のエラーも 3/4 が発見されたと考えると,真のエラーの総数は 42÷(3/4)=56 個と推定される。すでに 42 個発見されているので,残存する真のエラーは 56−42=14 個で,イが正しい。
アの 6 は 48−42 の値で意味のない引き算。ウの 54 は発見済みの真のエラー 42 に,残っている埋込みエラー 12 個(48−36)を足したもの。エの 56 は真のエラーの総数の推定値で,発見済みの 42 個を引いていない。
バグ埋込み法で残りのバグ数を推定する
埋め込んだバグと元からのバグが同じ割合で見つかると考える。埋め込んだ S=100 個のうち m=20 個が見つかったので,見つかる割合は 0.2。見つかった n=30 個のうち元からのバグは n−m=10 個なので,元からのバグは 10÷0.2=50 個と推定でき,残りは 50−10=40 個。式にすると m/S = (n−m)/T。
埋め込んだバグ S=100
20
見つかった割合 0.2
元からのバグ T
10
同じ 0.2 なら 50
m / S = (n − m) / T
20 / 100 = 10 / T → T = 50
残り = 50 − 10 = 40 個
n:見つかった総数 30(埋め込んだ 20 + 元からの 10)
150 は埋め込みを含めた総数の推定値(誤り)
埋め込んだバグの発見率 = 元からのバグの発見率
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問47(表記を一部改変)
問48
ブラックボックステストのテストデータの作成方法のうち,最も適切なものはどれか。
ア 稼働中のシステムから実データを無作為に抽出し,テストデータを作成する。
イ 機能仕様から同値クラスや限界値を識別し,テストデータを作成する。 正解
ウ 業務で発生するデータの発生頻度を分析し,テストデータを作成する。
エ プログラムの流れ図から,分岐条件に基づいたテストデータを作成する。
正解 イ
解説
ブラックボックステストは,プログラムの内部構造を考慮せず,仕様に基づいて入力と出力の関係を確かめるテストである。機能仕様から,同じ処理になる入力の範囲(同値クラス)や,その境目の値(限界値)を識別してテストデータを作るのが代表的な方法で,イが最も適切である。
エのプログラムの流れ図の分岐条件に基づくテストデータの作成は,内部構造に着目するホワイトボックステストの方法。アの実データの無作為抽出やウのデータの発生頻度の分析では,仕様の境界や例外条件を網羅的に確認できない。
同値分割と限界値分析
1ページに30件ずつ印字するプログラムの例。印字件数を,0件,1〜30件(1ページ),31件以上(2ページ以上)の同値クラスに分ける。同値分割では各クラスから代表の値(例えば15件,45件)を1つずつ選ぶ。限界値分析では誤りの多い境目の値,0件・1件・30件・31件を選ぶ。
1〜30件(1ページ)
31件〜(2ページ以上)
0件
0
1
30
31
15
45
限界値分析:境目の両側 0・1・30・31
同値分割:各グループの代表(15,45 など)
印字する件数
同値分割は各グループの代表,限界値分析は境目の両側を選ぶ
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問48(表記を一部改変)
問49
ソフトウェアのリファクタリングの説明はどれか。
ア 外部から見た振る舞いを変更せずに保守性の高いプログラムに書き直す。 正解
イ ソースコードから設計書を作成する。
ウ ソフトウェア部品を組み合わせてシステムを開発する。
エ プログラムの修正が他の部分に影響していないかどうかをテストする。
正解 ア
解説
リファクタリングは,ソフトウェアの外部から見た振る舞い(機能)は変えずに,内部の構造を整理して,読みやすく修正しやすい,保守性の高いプログラムに書き直すことである。アが正しい。振る舞いが変わっていないことは,テストを繰り返し実行して確かめながら進める。
イのソースコードから設計書を作成するのはリバースエンジニアリング。ウのソフトウェア部品を組み合わせて開発するのはコンポーネントベース開発。エの修正が他の部分に影響していないかを確かめるのは回帰テスト(リグレッションテスト)である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問49(表記を一部改変)
問50
特許のサブライセンスの説明として,適切なものはどれか。
ア 特許の実施権の許諾を受けた者が,開発した改良特許についての実施権を,当該特許の実施権を与えた者に許諾すること
イ 特許の実施権の許諾を受けた者が,更に第三者に当該特許の実施権を許諾すること 正解
ウ 特許の実施権の許諾を受けた者が,当該特許に関し第三者から訴えられ当該特許が無効となった場合,特許の実施権を許諾した者が金銭的な補償をすること
エ 特許の実施権の許諾を受けた者が,当該特許の実施権を独占的に行使すること
正解 イ
解説
サブライセンスは,特許の実施権の許諾を受けた者が,更に第三者に対して,その特許の実施権を許諾することである。イが適切である。
アの改良特許の実施権を,元の実施権を与えた者に許諾することは,グラントバックである。ウは,ライセンス契約で定める,許諾した者の補償(担保責任)の内容で,サブライセンスではない。エの実施権を独占的に行使することは,専用実施権などの独占的な実施権の内容である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問50(表記を一部改変)
問51
ファストトラッキングの説明はどれか。
ア クリティカルパス上のアクティビティに追加資源を投入して,所要期間を短縮する。
イ 時期によって変動するメンバの作業負荷を調整して,作業期間内で平準化する。
ウ 通常は順番に行うアクティビティを並行して行うことによって,所要期間を短縮する。 正解
エ 不測の事態に備えて所要時間をあらかじめ多めに見積もっておく。
正解 ウ
解説
ファストトラッキングは,スケジュールを短縮する技法の一つで,本来は順番に行うアクティビティを並行して行うことによって,所要期間を短縮する。ウが正しい。
アのクリティカルパス上のアクティビティに追加資源を投入して短縮するのは,クラッシングである。イの作業負荷を調整して平準化するのは,資源平準化である。エの不測の事態に備えて所要時間を多めに見積もっておくのは,予備時間(コンティンジェンシ)の考え方で,期間を短縮するものではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問51(表記を一部改変)
問52
ソフトウェアの開発規模見積りに利用されるファンクションポイント法の説明はどれか。
ア WBS によって作業を洗い出し,過去の経験から求めた作業ごとの工数を積み上げて規模を見積もる。
イ 外部仕様から,そのシステムがもつ入力,出力や内部論理ファイルなどの5項目に該当する要素の数を求め,複雑さを考慮した重みを掛けて求めた値を合計して規模を見積もる。 正解
ウ ソフトウェアの開発作業を標準作業に分解し,それらの標準作業ごとにあらかじめ決められた標準工数を割り当て,それらを合計して規模を見積もる。
エ プログラム言語とプログラマのスキルから経験的に求めた標準的な生産性と,必要とされる手続の個数とを掛けて規模を見積もる。
正解 イ
解説
ファンクションポイント法は,システムがもつ機能の量を,利用者から見える外部仕様をもとに数える方法である。外部入力・外部出力・外部照会・内部論理ファイル・外部インタフェースファイルの5種類の要素を数え,それぞれの複雑さに応じた重みを掛けて合計し,規模(ファンクションポイント)とする。イが正しい。
アは WBS で作業を洗い出して工数を積み上げるボトムアップ見積り,ウは作業を標準作業に分けて標準工数を割り当てる標準タスク法の説明である。エは言語とプログラマのスキルから求めた生産性を使っており,機能の量を数えるファンクションポイント法ではない。
ファンクションポイント法の5つの機能
アプリケーションの境界の内側で管理するデータが内部論理ファイル(ILF),外部のアプリケーションが管理し参照だけするデータが外部インタフェースファイル(EIF)。境界を越えるやり取りは,データを入れて更新する外部入力(EI),計算や加工をして出す外部出力(EO),そのまま取り出して見せる外部照会(EQ)。
アプリケーションの境界
ILF
内部論理ファイル
EIF
外部のファイル
利用者
EI 入力
利用者
EO 出力
EQ 照会
参照
データ2種(ILF・EIF)と,境界を越える処理3種(EI・EO・EQ)
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問52(表記を一部改変)
問53
プロジェクトで発生している品質問題を解決するために,図を作成して原因の傾向を分析したところ,発生した問題の 80%以上が少数の原因で占められていることが判明した。作成した図はどれか。
ア 管理図
イ 散布図
ウ 特性要因図
エ パレート図 正解
正解 エ
解説
パレート図は,問題の件数を原因別に多い順の棒グラフで並べ,その累積比率を折れ線で重ねた図である。“発生した問題の80%以上が少数の原因で占められている”といった,影響の大きい原因の偏りを見つけるのに使う。エが正しい。
アの管理図は,工程のデータを時系列に並べて管理限界線と比べ,工程が安定しているかを見る図。イの散布図は,二つの特性の値を点で打ち,相関の有無を見る図。ウの特性要因図は,結果とそれに影響する要因の関係を魚の骨の形に整理する図である。
パレート図
不良の原因などを件数の多い順に棒で並べ,累積比率を折れ線で重ねる。上位の少数の項目で全体の大部分(例えば80%)を占めることが分かり,どこから対策すれば効果が大きいかを決めるのに使う。
寸法
傷
汚れ
欠け
色
他
80%
100%
累積比率
上位2項目で約7割 → ここから対策する
多い順の棒と累積比率の折れ線。左の数項目に集中して対策する
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問53(表記を一部改変)
問54
プロジェクト要員がインフルエンザに感染することを予防するために,“ワクチン接種”費用をプロジェクトで負担し,また“アルコール製剤”をプロジェクトルームの入り口やトイレに配備する。このリスク対応策は,どのリスク対応戦略に該当するか。ここで,リスク対応戦略の分類は PMBOK に従うものとする。
正解 イ
解説
リスクの軽減は,リスクの発生確率や発生したときの影響を許容できる程度まで小さくする戦略である。ワクチン接種やアルコール製剤の配備は,インフルエンザに感染する確率を下げる対策なので,軽減に当たる。イが正しい。
アの回避は,計画を変更するなどしてリスクそのものを取り除く戦略。ウの受容は,リスクを認識したうえで特別な対策をとらない戦略。エの転嫁は,保険や契約によってリスクの影響と責任を第三者に移す戦略である。
リスクへの対応の戦略
マイナスのリスク(脅威)には,回避(原因を取り除く・計画を変える),転嫁(保険や契約で第三者に移す),軽減(確率や影響を下げる),受容(何もしないか予備を持つ)。プラスのリスク(好機)には,活用(確実に起こす),共有(能力のある第三者と組む),強化(確率や影響を上げる),受容。
脅威(マイナス)
好機(プラス)
なくす/確実に
回避
活用
他者へ
転嫁(保険など)
共有(組む)
小さく/大きく
軽減
強化
何もしない
受容
受容
保険を掛けるのは転嫁,計画を変えて避けるのは回避
脅威は回避・転嫁・軽減・受容,好機は活用・共有・強化・受容
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問54(表記を一部改変)
問55
SLA を説明したものはどれか。
ア IT サービスマネジメントのベストプラクティスを集めたフレームワーク
イ 開発から保守までのソフトウェアライフサイクルプロセス
ウ サービス及びサービス目標値に関するサービス提供者と顧客間の合意 正解
エ 品質マネジメントシステムに関する国際規格
正解 ウ
解説
SLA(サービスレベル合意書)は,提供するサービスとその目標値(可用性,応答時間など)について,サービス提供者と顧客の間で合意した内容をまとめたものである。ウが該当する。
アの IT サービスマネジメントのベストプラクティスを集めたフレームワークは ITIL。イの開発から保守までのソフトウェアライフサイクルプロセスは,共通フレームなどで定める SLCP。エの品質マネジメントシステムに関する国際規格は ISO 9001 である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問55(表記を一部改変)
問56
(1)〜(4)はある障害の発生から本格的な対応までの一連の活動である。(1)〜(4)の各活動とそれに対応する ITIL v3 の管理プロセスの組合せのうち,適切なものはどれか。
(1) 利用者からサービスデスクに“特定の入力操作が拒否される”という連絡があったので,別の入力操作による回避方法を利用者に伝えた。 (2) 原因を開発チームで追究した結果,アプリケーションプログラムに不具合があることが分かった。 (3) 原因となったアプリケーションプログラムの不具合を改修する必要があるのかどうか,改修した場合に不具合箇所以外に影響が出る心配はないかどうかについて,関係者を集めて確認し,改修することを決定した。 (4) 改修したアプリケーションプログラムの稼働環境への適用については,利用者への周知,適用手順及び失敗時の切戻し手順の確認など,十分に事前準備を行った。
ア (1):インシデント管理,(2):問題管理,(3):変更管理,(4):リリース管理及び展開管理 正解
イ (1):インシデント管理,(2):問題管理,(3):リリース管理及び展開管理,(4):変更管理
ウ (1):問題管理,(2):インシデント管理,(3):変更管理,(4):リリース管理及び展開管理
エ (1):問題管理,(2):インシデント管理,(3):リリース管理及び展開管理,(4):変更管理
正解 ア
解説
(1) の,利用者からの連絡を受けて回避方法を伝え,まずサービスを使える状態に戻すのはインシデント管理である。(2) の,障害の根本原因を追究してアプリケーションの不具合を突き止めるのは問題管理である。(3) の,改修が必要か,他への影響はないかを関係者で確かめて改修を決めるのは変更管理である。(4) の,改修したプログラムを稼働環境へ適用するための周知や手順,切戻しの準備を行うのはリリース管理及び展開管理である。この組合せのアが適切である。
ウとエは (1) と (2) が逆で,原因の追究を後回しにしてまず業務を回復させるのがインシデント管理,根本原因を取り除くのが問題管理という役割分担に合わない。イとエは (3) と (4) が逆で,改修するかどうかの判断が変更管理,決まった変更を安全に稼働環境へ届けるのがリリース管理である。
障害が起きてから本格的に直るまで
インシデント管理はサービスをできるだけ早く元に戻し,原因が分からなくても再起動や回避策で戻ればよしとする。問題管理は根本原因を突き止め,原因と回避策を既知の誤りとして記録してインシデント管理に渡す。恒久的な解決策は変更要求(RFC)として変更管理に出され,リリース管理を経て本番に展開される。
インシデント管理
早く元に戻す
問題管理
根本原因を探す
変更管理
変更を評価・承認
リリース管理
本番に展開
RFC
既知の誤り・回避策
時間をかけずに戻す
時間をかけてでも再発を防ぐ
原因を調べるのはインシデント管理ではなく問題管理
既知の誤り(原因と回避策)の情報は,問題管理からインシデント管理へ渡る
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問56(表記を一部改変)
問57
新システムの開発を計画している。このシステムの TCO は何千円か。ここで,このシステムは開発された後,3年間使用されるものとする。
ア 40,500
イ 90,000
ウ 95,000
エ 135,500 正解
正解 エ
解説
TCO は導入から廃棄までに掛かる費用の総額。一度きりの費用はハードウェア導入 40,000+システム開発 50,000+導入教育 5,000=95,000 千円。毎年掛かる費用はネットワーク通信 1,500+システム保守 7,000+システム運営 5,000=13,500 千円で,3 年間では 40,500 千円。合計して 135,500 千円になる。
アの 40,500 は 3 年分の運用費用だけ,ウの 95,000 は初期費用だけ,イの 90,000 はハードウェア導入とシステム開発だけを足した値であり,いずれも総所有費用にはならない。
TCO(総所有費用)の積上げ
TCO は導入から使い終わるまでに掛かる費用の総額。一度だけ掛かる費用(ハードウェア 40,000+開発 50,000+教育 5,000=95,000 千円)に,毎年掛かる費用(通信 1,500+保守 7,000+運営 5,000=13,500 千円)の3年分 40,500 千円を足して 135,500 千円。利用部門で起きる見えにくい費用(教え合いの時間,停止中の手待ちなど)も含めて考える。
導入 95,000
1年目
2年目
3年目
単位 千円
13,500×3
95,000 + 13,500 × 3 = 135,500 千円
利用部門の見えない費用(教え合い・手待ち)も含める
一度だけの費用+毎年の費用×使う年数
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問57(表記を一部改変)
問58
情報セキュリティに関する従業員の責任について,“情報セキュリティ管理基準”に基づいて監査を行った。指摘事項に該当するものはどれか。
ア 雇用の終了をもって守秘責任が解消されることが,雇用契約に定められている。 正解
イ 定められた勤務時間以外においても守秘責任を負うことが,雇用契約に定められている。
ウ 定められた守秘責任を果たさなかった場合,相応の措置がとられることが,雇用契約に定められている。
エ 定められた内容の守秘義務契約書に署名することが,雇用契約に定められている。
正解 ア
解説
情報セキュリティ管理基準では,雇用の終了又は変更の後もなお有効な情報セキュリティに関する責任及び義務を定め,要員に伝達することを求めている。情報の秘密保持の責任は雇用の終了後も引き続き有効とすべき責任の代表である。雇用の終了をもって守秘責任が解消されると雇用契約に定めていると,退職者による情報の漏えいを防げないので,指摘事項に該当する。アが該当する。
イの勤務時間外にも守秘責任を負うこと,ウの守秘責任を果たさなかった場合の措置(懲戒手続)を定めること,エの守秘義務契約書への署名を求めることは,いずれも管理基準が求める適切な取決めであり,指摘事項にはならない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問58(表記を一部改変)
問59
情報システム部が開発し,経理部が運用している会計システムの運用状況を監査するシステム監査チームの体制についての記述のうち,適切なものはどれか。
ア 会計システムは企業会計に関する各種基準に準拠しているので,システム監査チームには公認会計士を含めなければならない。
イ 会計システムは機密性の高い情報を扱うので,システム監査チームは経理部長直属としなければならない。
ウ 経理部との癒着を防ぐために,システム監査チームのメンバは毎年入れ替えなければならない。
エ 独立性を担保するために,システム監査チームは情報システム部にも経理部にも所属しない者で組織しなければならない。 正解
正解 エ
解説
システム監査人は,被監査部門から独立した立場で監査しなければならない。会計システムを開発した情報システム部と,運用している経理部のどちらからも独立した者でチームを組織すれば,独立性を担保できる。エが適切である。
アの公認会計士を含めなければならないという決まりはなく,監査に必要な専門知識をもつ者で組織すればよい。イの経理部長直属にすると,被監査部門の指揮下に入るので独立性が損なわれる。ウのメンバを毎年入れ替えることは要件ではなく,癒着を防ぐには所属や指揮系統の独立性を保つことが重要である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問59(表記を一部改変)
問60
特権 ID(システムの設定やデータの追加,変更,削除及びそれらの権限の設定が可能な ID)の不正使用を発見するコントロールはどれか。
ア 特権 ID の貸出し及び返却の管理簿と,特権 ID のログを照合する。 正解
イ 特権 ID の使用を許可された者も,通常の操作では一般利用者 ID を使用する。
ウ 特権 ID の使用を必要とする者は,使用の都度,特権 ID の貸出しを受ける。
エ 特権 ID の設定内容や使用範囲を,用途に応じて細分化する。
正解 ア
解説
特権 ID の不正使用を“発見する”には,実際に特権 ID が使われた記録(ログ)を,正規に貸し出された記録(管理簿)と突き合わせ,貸出しのない時間帯や承認されていない者による使用がないかを確かめる必要がある。アが発見的コントロールに当たる。
イの通常の操作では一般利用者 ID を使うこと,ウの使用の都度貸出しを受けること,エの設定内容や使用範囲の細分化は,いずれも特権 ID の不正使用が起きないようにする予防的コントロールで,起きた不正使用を見つけるものではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問60(表記を一部改変)
問61
“システム管理基準”によれば,情報システム化委員会の説明はどれか。
ア 経営トップや各部門の責任者などから構成された,情報システムに関わる活動全般をモニタリングする組織 正解
イ 情報システムの開発プロセスやシステムの品質を監査し,品質上の問題があれば是正勧告を行う組織
ウ 情報システムの利用担当者で構成された,職場での自主的な改善活動を行う組織
エ 情報システム部門内に設置された,システムの改善要求を調整する組織
正解 ア
解説
情報システム化委員会は,経営トップや各部門の責任者などから構成され,情報システムに関わる活動全般をモニタリングする組織である。アが該当する。
イの開発プロセスやシステムの品質を監査して是正勧告を行うのは,品質保証部門やシステム監査人の役割である。ウの利用担当者が職場で自主的に改善活動を行う組織は,いわゆる小集団活動である。エのシステムの改善要求を調整するのは,情報システム部門内の変更管理の役割で,経営層を含む委員会の役割ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問61(表記を一部改変)
問62
物流業務において,10%の物流コストの削減の目標を立てて,図のような業務プロセスの改善活動を実施している。図中の c に相当する活動はどれか。
ア CSF(Critical Success Factor)の抽出
イ KGI(Key Goal Indicator)の設定
ウ KPI(Key Performance Indicator)の設定 正解
エ MBO(Management by Objectives)の導入
正解 ウ
解説
図の流れでは,a で最終的な目標“10%の物流コストの削減”を定め,b でそれを達成するための重要な成功要因“在庫の削減,誤出荷の削減”を挙げ,c でその達成度合いを測る具体的な数値目標“在庫日数7日以内,誤出荷率3%以内”を決めている。c は KPI(重要業績評価指標)の設定に当たり,ウが正しい。
イの KGI(重要目標達成指標)の設定は最終目標を定める a に,アの CSF(重要成功要因)の抽出は b に相当する。エの MBO(目標による管理)は,従業員が自ら目標を設定して達成度で評価する人事管理の手法で,この流れのどの段階にも当たらない。
KGI・CSF・KPI の流れ
まず最終の目標を数値にする(KGI:物流コスト 10%削減)。次にそれを達成する鍵になる要因を見極める(CSF:在庫の削減,誤出荷の削減)。その要因の達成度を測る指標を決める(KPI:在庫日数7日以内,誤出荷率3%以内)。改善を実施して成果を測り,ギャップを分析して KGI に戻る。
物流コストの削減
a KGI の設定
10%の物流コスト削減
目標
b CSF の抽出
在庫・誤出荷の削減
鍵になる要因
c KPI の設定
在庫日数7日・誤出荷率3%
測る指標
改善活動の実施
計測とギャップ分析
a=KGI の設定,b=CSF の抽出,c=KPI の設定
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問62(表記を一部改変)
問63
スマートグリッドの説明はどれか。
ア 健康診断結果や投薬情報など,類似した症例に基づく分析を行い,個人ごとに最適な健康アドバイスを提供できるシステム
イ 在宅社員やシニアワーカなど,様々な勤務形態で働く労働者の相互のコミュニケーションを可能にし,多様なワークスタイルを支援するシステム
ウ 自動車に設置された情報機器を用いて,飲食店・娯楽情報などの検索,交通情報の受発信,緊急時の現在位置の通報などが行えるシステム
エ 通信と情報処理技術によって,発電と電力消費を総合的に制御し,再生可能エネルギーの活用,安定的な電力供給,最適な需給調整を図るシステム 正解
正解 エ
解説
スマートグリッドは,通信技術と情報処理技術を使って,発電所から家庭などの需要家までの電力網を制御し,発電と電力消費を総合的に調整する次世代の電力網である。再生可能エネルギーの活用,安定的な電力供給,需給の最適な調整を図る。エが該当する。
アは健康情報を分析して個人に助言するヘルスケアシステム,イは多様な働き方を支えるコミュニケーション基盤,ウは自動車の情報機器を使ったテレマティクスの説明である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問63(表記を一部改変)
問64
業務要件定義において,業務フローを記述する際に,処理の分岐や並行処理,処理の同期などを表現できる図はどれか。
ア アクティビティ図 正解
イ クラス図
ウ 状態遷移図
エ ユースケース図
正解 ア
解説
アクティビティ図は,処理の流れを開始から終了まで順に表す UML の図で,条件による分岐(デシジョンノード),並行処理への分割と同期(フォーク・ジョイン),担当者ごとのレーン分け(パーティション)を書ける。業務フローの記述に向くのでアが正しい。
イのクラス図はクラスの属性や操作とクラス間の静的な関係,ウの状態遷移図は一つの対象が取る状態とイベントによる状態の遷移,エのユースケース図は利用者(アクタ)とシステムが提供する機能の関係を表す図で,いずれも業務の流れそのものを表すものではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問64(表記を一部改変)
問65
要件定義段階において,要求品質の向上のために発注者が留意すべきことはどれか。
ア 現行システムと同じ機能の要求であっても,現行システムの機能や使われ方を調査して,要件定義を実施する。 正解
イ ビジネス要求の視点よりも,現行業務で使用されている機能が盛り込まれているか否かの視点で,要件定義の妥当性を検証する。
ウ 要件定義書はあくまでも利用者ニーズの大枠を定めたものとして,実際には設計段階以降に,受注者と議論して具体的な要件を確定していく。
エ 要件定義段階では業務要件を整理し,システムの移行方法・運用方法など非機能要件は,システム稼働前に洗い出す。
正解 ア
解説
要求品質を高めるには,現行システムと同じ機能の要求であっても,現行システムの機能や使われ方を調査して,必要な機能かどうか,業務に合っているかを確かめたうえで要件定義を行うことが重要である。アが適切である。
イは,ビジネス要求の視点を優先すべきで,現行業務の機能が盛り込まれているかだけで妥当性を判断するのは不適切である。ウの設計段階以降に要件を確定していくと,手戻りが大きくなるので,要件は要件定義段階で確定する。エの移行方法・運用方法などの非機能要件も,稼働前ではなく要件定義段階で洗い出す必要がある。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問65(表記を一部改変)
問66
情報システムの調達の際に作成される RFI の説明はどれか。
ア 調達者から供給者候補に対して,システム化の目的や業務内容などを示し,情報の提供を依頼すること 正解
イ 調達者から供給者候補に対して,対象システムや調達条件などを示し,提案書の提出を依頼すること
ウ 調達者から供給者に対して,契約内容で取り決めた内容に関して,変更を要請すること
エ 調達者から供給者に対して,双方の役割分担などを確認し,契約の締結を要請すること
正解 ア
解説
RFI(Request For Information,情報提供依頼書)は,調達の検討段階で,実現手段や技術動向などの情報提供をベンダに依頼する文書。提案を求める前の情報収集が目的。
イは RFP(提案依頼書)の説明。ウとエは契約変更や契約締結に関するもので,いずれも RFI ではない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問66(表記を一部改変)
問67
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)において,投資用の資金源と位置付けられる事業はどれか。
ア 市場成長率が高く,相対的市場占有率が高い事業
イ 市場成長率が高く,相対的市場占有率が低い事業
ウ 市場成長率が低く,相対的市場占有率が高い事業 正解
エ 市場成長率が低く,相対的市場占有率が低い事業
正解 ウ
解説
PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)では,市場成長率と相対的市場占有率の2軸で事業を四つに分ける。市場成長率が低く相対的市場占有率が高い「金のなる木」は,追加投資が少なくて済むうえ大きな資金を生むので,他の事業への投資用の資金源として位置付けられる。ウが正しい。
アは「花形」で,資金は生むが成長に合わせた投資も必要になる。イは「問題児」で,資金を投入して花形に育てるか撤退するかを判断する対象。エは「負け犬」で,撤退を検討する対象である。
PPM の4つの区分
縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場シェア(左が高い)をとる。成長率もシェアも高い花形,成長率が高くシェアが低い問題児,成長率が低くシェアが高い金のなる木,どちらも低い負け犬に分ける。金のなる木が生んだ資金を,花形や問題児に回す。
花形
成長に合わせた投資も要る
問題児
シェアを取るには投資が要る
金のなる木
投資が少なく資金を生む
負け犬
撤退を考える
高
低
成長率
市場
高
低
相対的市場シェア
金のなる木の資金を,花形と問題児へ回す
金のなる木が生む資金を,花形と問題児に回す
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問67(表記を一部改変)
問68
リーダ企業が開拓した市場に,リーダの模倣によって参入し,ある一定のシェアを確保する戦略はどれか。
ア コストリーダシップ戦略
イ 多角化戦略
ウ ニッチ戦略
エ フォロワ戦略 正解
正解 エ
解説
市場での地位を,リーダ,チャレンジャ,フォロワ,ニッチャに分ける競争地位別の戦略(コトラー)のうち,リーダ企業が開拓した市場に,リーダを模倣して参入し,一定のシェアを確保する戦略がフォロワ戦略である。エが正しい。
アのコストリーダシップ戦略は,低コストで競争優位を築く戦略(ポーター)。イの多角化戦略は,新しい製品や市場に事業を広げる戦略(アンゾフ)。ウのニッチ戦略は,大企業が狙わない特定の小さな市場に経営資源を集中する戦略である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問68(表記を一部改変)
問69
バランススコアカードで使われる戦略マップの説明はどれか。
ア 切り口となる二つの要素を X 軸,Y 軸として,市場における自社又は自社製品のポジションを表現したもの
イ 財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点ごとの課題,施策,目標の間の因果関係を表現したもの 正解
ウ 市場の魅力度,自社の優位性の二つの軸から成る四つのセルに自社の製品や事業を分類して表現したもの
エ どのような顧客層に対して,どのような経営資源を使用し,どのような製品・サービスを提供するのかを表現したもの
正解 イ
解説
戦略マップは,バランススコアカードの四つの視点(財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長)に課題・施策・目標を配置し,それらの因果関係を矢印でつないで一枚に表したもの。下位の視点の取組みが上位の成果につながる筋道を可視化する。
アはポジショニングマップ,ウはビジネススクリーン,エはドメインの定義に関する説明。
バランススコアカードの4つの視点と戦略マップ
下から学習と成長,内部ビジネスプロセス,顧客,財務の4つの視点を積み上げる。専門人材を育てると出荷までの日数を縮められ,顧客満足度が上がり,売上高が伸びる,という因果関係を矢印でつないだものが戦略マップ。各視点に目標と指標(KPI)を置く。
財務
売上高を伸ばす
売上高・利益率
顧客
顧客満足度を上げる
顧客満足度・シェア
内部ビジネスプロセス
出荷を速くする
出荷までの日数
学習と成長
専門人材を育てる
育成人数・特許件数
下の視点の成果が上の視点の成果につながる(因果関係)
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問69(表記を一部改変)
問70
SFA を説明したものはどれか。
ア 営業活動に IT を活用して営業の効率と品質を高め,売上・利益の大幅な増加や,顧客満足度の向上を目指す手法・概念である。 正解
イ 卸売業・メーカが小売店の経営活動を支援することによって,自社との取引量の拡大につなげる手法・概念である。
ウ 企業全体の経営資源を有効かつ総合的に計画して管理し,経営の効率向上を図るための手法・概念である。
エ 消費者向けや企業間の商取引を,インターネットなどの電子的なネットワークを活用して行う手法・概念である。
正解 ア
解説
SFA(Sales Force Automation)は,商談の進捗,顧客との接触履歴,案件ごとの受注見込みなどを情報システムで記録・共有し,営業活動を支援する手法・概念である。担当者個人に抱え込まれていた情報を組織で使えるようにすることで,営業の効率と品質を高め,売上・利益の増加や顧客満足度の向上を目指す。アが正しい。
イは,卸売業やメーカが小売店の経営を支援して自社との取引を広げるリテールサポートの説明である。ウは,企業全体の経営資源を統合的に計画・管理する ERP の説明である。エは,ネットワークを使って商取引を行う電子商取引(EC)の説明である。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問70(表記を一部改変)
問71
MRP の特徴はどれか。
ア 顧客の注文を受けてから製品の生産を行う。
イ 作業指示票を利用して作業指示,運搬指示をする。
ウ 製品の開発,設計,生産準備を同時並行で行う。
エ 製品の基準生産計画を基に,部品の手配数量を算出する。 正解
正解 エ
解説
MRP(資材所要量計画)は,製品の基準生産計画(いつ何をいくつ作るか)と部品構成表を基に,必要な部品や資材の総所要量を求め,在庫量などを差し引いて手配数量と時期を算出する手法である。エが正しい。
アの顧客の注文を受けてから生産するのは受注生産方式。イの作業指示票(かんばん)を使って作業指示や運搬指示をするのはかんばん方式。ウの開発,設計,生産準備を同時並行で行うのはコンカレントエンジニアリングである。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問71(表記を一部改変)
問72
ある会社の生産計画部では,毎月 25 日に次の手続で翌月分の計画生産量を決定している。8月分の計画生産量を求める式はどれか。
〔手続〕
(1) 当月末の予想在庫量を,前月末の実在庫量と当月分の計画生産量と予想販売量から求める。 (2) 当月末の予想在庫量と,翌月分の予想販売量から,翌月末の予想在庫量が翌々月から3か月間の予想販売量と等しくなるように翌月分の計画生産量を決定する。
ア I6+P7−S7+S8
イ S8+S9+S10+S11−I7 正解
ウ S8+S9+S10+S11−I8
エ S9+S10+S11−I7
正解 イ
解説
手続(1)により,7月末の予想在庫量 I7 は 6月末の実在庫量に7月分の計画生産量を足し,7月分の予想販売量を引いた I6+P7−S7 で求まる。手続(2)により,8月末の予想在庫量 I8=I7+P8−S8 が,翌々月の9月から3か月間の予想販売量 S9+S10+S11 と等しくなるように P8 を決める。
I7+P8−S8=S9+S10+S11 を P8 について解くと,P8=S8+S9+S10+S11−I7 となり,イが正しい。ウは I8 を使っているが,I8 は P8 が決まってから求まる値なので式に使えない。エは8月分の予想販売量 S8 を加え忘れている。
8月分の計画生産量の求め方
7月末の予想在庫 I7=I6+P7−S7。8月末の予想在庫 I8=I7+P8−S8 が,9月から3か月間の予想販売量 S9+S10+S11 に等しくなるように P8 を決める。I7+P8−S8=S9+S10+S11 を P8 について解くと,P8=S8+S9+S10+S11−I7。
6月
7月
8月
9月
10月
11月
月末在庫
I6
I7
I8
生産
P7
P8
販売
S7
S8
S9
S10
S11
P8
= I8
I7 + P8 − S8 = S9 + S10 + S11
P8 = S8 + S9 + S10 + S11 − I7
8月末の在庫が,9〜11月の販売量の合計になるように作る
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問72(表記を一部改変)
問73
e-ビジネス分野で提唱されているロングテールの考え方を説明したものはどれか。
ア 売れ筋商品に絞り込んで販売するのではなく,多品種少量販売によって大きな売上や利益を得ることができる。 正解
イ 業界標準を確立した製品・サービスは生産規模が 2 倍になると生産性が更に向上し,収益が 2 倍以上になる。
ウ 全体の 2 割の優良顧客が全体の売上の 8 割を占め,全商品の上位 2 割が 8 割の売上を占める。
エ 利用者が増えるほど,個々の利用者の便益が増加し,その結果,ますます利用者が増えることで寡占化が進む。
正解 ア
解説
ロングテールは,商品を売上の多い順に並べたグラフにできる,1 品目当たりの販売数が少ない商品が長く尾を引くように連なる部分を指す。在庫や陳列の制約が小さいインターネット上の販売では,この少しずつしか売れない多数の商品の売上を積み上げることができ,売れ筋に絞り込まなくても大きな売上や利益を得られる。アが正しい。
イは,生産規模が大きくなるほど収益性が高まる収穫逓増(規模の経済)の考え方である。ウはパレートの法則(2:8 の法則)で,ロングテールはこれが当てはまらない市場があることを示したものである。エは,利用者が増えるほど 1 人当たりの便益が増して更に利用者を呼ぶネットワーク外部性の説明である。
ロングテール
商品を売上の多い順に左から並べると,少数の売れ筋(ヘッド)と,1つ1つは少ししか売れない多数の商品(テール)に分かれる。ネット販売では在庫や陳列のコストが小さいので,テールの商品の売上を合計すると,売れ筋に匹敵する大きさになる。
商品(売上の多い順)
売上
ヘッド
テール(長い尾)
売れない商品も数が多ければ,合計で大きな売上になる
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問73(表記を一部改変)
問74
バスタブ曲線を説明したものはどれか。
ア 抜取り検査において,横軸にロットの不良率,縦軸にロットの合格率をとると,ある不良率のロットが合格する確率を知ることができる。不良率が高くなると合格率は下がる。
イ プログラムのテストにおいて,横軸にテスト時間,縦軸に障害累積数をとると,その形状は時間の経過に伴って増加率が次第に高くなり,ある時点以降は増加率が次第に鈍化し,一定の値に漸近していく。
ウ 横軸に時間,縦軸に故障率をとって経過を記録すると,使用初期は故障が多く,徐々に減少して一定の故障率に落ち着く。更に時間が経過すると再び故障率は増加する。 正解
エ 横軸に累積生産量,縦軸に生産量 1 単位当たりのコストをとると,同一製品の累積生産量が増加するにつれて生産量 1 単位当たりのコストが逓減していくという経験則を表す。
正解 ウ
解説
バスタブ曲線は,横軸に時間,縦軸に故障率をとったときの曲線で,使用初期は設計や製造の不具合による故障が多く(初期故障期),次第に減少して一定の故障率に落ち着き(偶発故障期),更に時間が経過すると摩耗や劣化によって再び故障率が増加する(摩耗故障期)。浴槽の断面に似た形になる。ウが正しい。
アは抜取り検査で用いる OC 曲線(検査特性曲線)の説明。イはソフトウェアの信頼度成長曲線の説明。エは累積生産量が増えるほどコストが逓減する経験曲線(習熟曲線)の説明である。
故障率曲線(バスタブ曲線)
使い始めは製造上の欠陥などで故障率が高く,次第に下がる(初期故障期)。その後は故障率が低く一定の時期が続く(偶発故障期)。長く使うと部品の劣化で故障率が再び上がる(摩耗故障期)。
初期故障
偶発故障
摩耗故障
低く一定
時間
故障率
初期故障 → 偶発故障(一定)→ 摩耗故障。浴槽の断面の形
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問74(表記を一部改変)
問75
経営会議で来期の景気動向を議論したところ,景気は悪化する,横ばいである,好転するという三つの意見に完全に分かれてしまった。来期の投資計画について,積極的投資,継続的投資,消極的投資のいずれかに決定しなければならない。表の予想利益については意見が一致した。意思決定に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 混合戦略に基づく最適意思決定は,積極的投資と消極的投資である。
イ 純粋戦略に基づく最適意思決定は,積極的投資である。
ウ マクシマックス原理に基づく最適意思決定は,継続的投資である。
エ マクシミン原理に基づく最適意思決定は,消極的投資である。 正解
正解 エ
解説
マクシミン原理は,各案について最悪の場合の利益を求め,その中で最も大きいものを選ぶ考え方。景気が悪化したときの利益は積極的投資50万円,継続的投資100万円,消極的投資400万円で,最も大きいのは消極的投資の400万円。したがってマクシミン原理での最適意思決定は消極的投資になり,エが正しい。
ウのマクシマックス原理は各案の最良の場合を比べる考え方で,最大値は積極的投資の500万円なので,継続的投資とするのは誤り。ア・イの混合戦略や純粋戦略は,相手の出方によって利得が決まるゲーム理論の用語で,景気動向のように意思をもたない自然を相手にする不確実性下の意思決定には当てはまらない。
マクシミン原理(投資計画)
マクシミン原理では,各案の最悪の場合(ここではどれも景気悪化のとき)の利益を比べ,その中で最も大きい案を選ぶ。積極的投資 50,継続的投資 100,消極的投資 400 なので,消極的投資。最良の場合を比べるマクシマックス原理なら,500 の積極的投資になる。
悪化
横ばい
好転
最悪
積極的投資
50
150
500
50
継続的投資
100
200
300
100
消極的投資
400
250
200
400
最悪のうち最大は 400 → 消極的投資
単位 万円。最良の最大(マクシマックス)なら積極的投資
各案の最悪の値を比べ,いちばん大きい案を選ぶ
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問75(表記を一部改変)
問76
今年度の事業損益実績は表のとおりである。来年度の営業利益目標を 240 百万円としたとき,来年度の目標売上高は何百万円か。ここで,来年度の変動費率は今年度と同じであり,製造固定費と販売固定費は今年度に比べそれぞれ 80 百万円,20 百万円の増加を見込む。
ア 1,750
イ 1,780
ウ 1,800
エ 2,050 正解
正解 エ
解説
変動費率は,今年度の変動費(材料費 720+外注費 240=960 百万円)÷売上高 1,600 百万円=0.6 で,限界利益率は 1-0.6=0.4 である。来年度の固定費は,製造固定費 380+80=460,販売固定費 100+20=120 で,合計 580 百万円である。目標売上高を x 百万円とすると,営業利益 = 0.4x-580 = 240 なので,x=820÷0.4=2,050 百万円である。エが正しい。
ほかの選択肢では営業利益が目標に届かない。アの 1,750 では 1,750×0.4-580=120,イの 1,780 では 132,ウの 1,800 では 140 百万円にしかならない。
損益分岐点図表
横軸に売上高,縦軸に金額をとる。固定費は売上高に関係なく一定で,総費用は固定費に変動費を足したもの。売上高の線と総費用の線が交わる点が損益分岐点で,それより右は利益,左は損失になる。損益分岐点売上高は 固定費 ÷(1 − 変動費率)で求める。
売上高
金額
固定費
総費用
売上高
損益分岐点
損益分岐点売上高
利益
損失
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
売上高の線が総費用の線を越えたところから利益が出る
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問76(表記を一部改変)
問77
取得原価 30 万円の PC を2年間使用した後,廃棄処分し,廃棄費用2万円を現金で支払った。このときの固定資産の除却損は廃棄費用も含めて何万円か。ここで,耐用年数は4年,減価償却は定額法,定額法の償却率は 0.250,残存価額は0円とする。
正解 エ
解説
定額法の減価償却費は,取得原価×償却率=30万円×0.250=7.5万円/年である。2年間使用したので減価償却累計額は 15万円となり,廃棄時点の帳簿価額は 30−15=15万円になる。
廃棄すると帳簿価額の 15万円が除却損となり,廃棄費用の 2万円も含めると 17.0万円である。エが正しい。廃棄費用を含めないと 15.0万円(ウ)になる。
除却損と廃棄費用
取得原価 30 万円,償却率 0.250 の定額法なので,1年の減価償却費は 7.5 万円。2年使うと 15 万円償却し,帳簿価額は 15 万円残る。廃棄するとこの 15 万円が除却損になり,廃棄費用 2 万円を加えて 17 万円。
1年目 7.5
2年目 7.5
帳簿価額 15
費用2
取得原価 30 万円
除却損
15 + 2 = 17 万円
償却済みの 15 は損にならない
残った帳簿価額+廃棄費用
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問77(表記を一部改変)
問78
A 社は顧客管理システムの開発を,情報システム子会社である B 社に委託し,B 社は要件定義を行った上で,設計・プログラミング・テストまでを協力会社である C 社に委託した。C 社では D 社員にその作業を担当させた。このとき,開発したプログラムの著作権はどこに帰属するか。ここで,関係者の間には,著作権の帰属に関する特段の取決めはないものとする。
正解 ウ
解説
著作権法第15条第2項は,法人等の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は,契約や勤務規則などに別段の定めがない限り,その法人等とすると定めている(職務著作)。D 社員が C 社の業務として作成したプログラムの著作者は C 社になり,著作権も C 社に帰属する。ウが正しい。
ア,イは誤り。開発を委託した A 社や B 社は,契約で著作権の譲渡を定めない限り,委託しただけでは著作権を取得しない。エは誤り。実際に作成した D 社員は,職務著作の要件を満たすので著作者とならない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問78(表記を一部改変)
問79
製造業者の責任に関して,製造物責任法(PL 法)に定められているものはどれか。
ア 顧客の財産に関する損害については,製造業者は製造物を顧客に引き渡した時から永久に損害賠償責任を負う。
イ 製造物の欠陥原因が部品メーカの製造した部品であった場合,完成品メーカの設計どおりに製造し納品した部品であっても,部品メーカに損害賠償責任がある。
ウ 製造物を顧客に引き渡した時における科学又は技術水準では発見できない内容の欠陥であれば,その製造業者の損害賠償責任は問われない。 正解
エ 製造物を輸入して販売している販売業者は,製造業者ではないので,その製造物によって顧客が財産上の損害を被っても,損害賠償責任は問われない。
正解 ウ
解説
製造物責任法第 4 条第 1 号は,製造物を引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては欠陥があることを認識できなかったことを製造業者等が証明したときは,損害賠償の責任を負わないと定めている(開発危険の抗弁)。ウが該当する。
アは誤りで,同法第 5 条により,損害賠償の請求権は製造業者等が製造物を引き渡した時から 10 年を経過したときなどに時効によって消滅する。イも誤りで,同法第 4 条第 2 号により,部品の欠陥が専ら完成品メーカの設計に関する指示に従ったことにより生じ,過失がない場合は,部品メーカは責任を負わない。エも誤りで,同法第 2 条第 3 項により,製造物を業として輸入した者も製造業者に含まれ,責任を負う。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問79(表記を一部改変)
問80
発注者と受注者の間でソフトウェア開発における請負契約を締結した。ただし,発注者の事業所で作業を実施することになっている。この場合,指揮命令権と雇用契約に関して,適切なものはどれか。
ア 指揮命令権は発注者にあり,更に,発注者の事業所での作業を実施可能にするために,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶ。
イ 指揮命令権は発注者にあり,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶことなく,発注者の事業所で作業を実施する。
ウ 指揮命令権は発注者にないが,発注者の事業所で作業を実施可能にするために,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶ。
エ 指揮命令権は発注者になく,受注者に所属する作業者は,新たな雇用契約を発注者と結ぶことなく,発注者の事業所で作業を実施する。 正解
正解 エ
解説
請負契約では,受注者が仕事の完成を請け負い,作業者の指揮命令は受注者が行う。作業場所が発注者の事業所であっても,発注者が受注者の作業者に直接指揮命令をすると,実態が労働者派遣となる偽装請負になる。また,作業者は受注者との雇用関係のまま作業を行い,発注者と新たな雇用契約を結ぶ必要はない。エが適切である。
アとイは発注者に指揮命令権があるとしている点が誤りである。アとウは作業者が発注者と新たな雇用契約を結ぶとしている点も誤りで,作業場所が発注者の事業所であることは雇用契約を結ぶ理由にならない。
出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問80(表記を一部改変)
応用情報技術者試験のほかの年度
科目A(午前)
令和7年度 秋期
令和7年度 春期
令和6年度 秋期
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令和5年度 秋期
令和5年度 春期
令和4年度 秋期
令和4年度 春期
令和3年度 秋期
令和3年度 春期
令和2年度 10月
令和元年度 秋期
平成31年度 春期
平成30年度 秋期
平成30年度 春期
平成29年度 秋期
平成29年度 春期
平成28年度 秋期
平成28年度 春期
平成27年度 秋期
平成27年度 春期
平成26年度 秋期
平成26年度 春期
平成25年度 秋期
平成25年度 春期
平成24年度 秋期
平成24年度 春期
平成23年度 秋期
平成23年度 特別試験
平成22年度 秋期
平成22年度 春期
平成21年度 秋期
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