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応用情報技術者試験

令和3年度 春期 科目A(午前)

令和3年度 春期に実施された応用情報技術者試験 午前(2026年度からの科目A)の全80問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:応用情報技術者試験について

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問1

任意のオペランドに対するブール演算 A の結果とブール演算 B の結果が互いに否定の関係にあるとき,A は B の(又は,B は A の)相補演算であるという。排他的論理和の相補演算はどれか。

選択肢ごとに,二つの円が重なるベン図で演算の結果が塗り分けられている。ア 等価演算は,二つの円の重なり部分と,二つの円の外側が塗られている。イ 否定論理和は,二つの円の外側だけが塗られている。ウ 論理積は,二つの円の重なり部分だけが塗られている。エ 論理和は,二つの円の全体が塗られている。

正解 ア

解説

排他的論理和は,二つの入力が異なるときに真になる演算。その否定は「二つの入力が同じときに真」となり,これが等価演算(一致演算,XNOR)である。図でも,等価演算は二つの円の重なり部分(両方が真)と円の外側(両方が偽)が塗られていて,排他的論理和が真になる範囲とちょうど裏返しの関係になっている。アが正しい。

イの否定論理和は二つの円の外側だけなので,両方が真の場合が抜けており,相補にはならない。ウの論理積は重なり部分だけ,エの論理和は二つの円の全体で,いずれも排他的論理和の否定とは一致しない。

排他的論理和と等価演算 排他的論理和は,A と B のどちらか一方だけが真のときに真で,ベン図では2つの円の重なっていない部分。その否定は,両方が真(重なり)か両方が偽(円の外)のときに真になる等価演算(一致)で,塗る部分がちょうど裏返しになる。 A B 排他的論理和 A B 等価演算(一致)
排他的論理和の相補演算は等価演算。塗る部分が裏返しになる

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問1(表記を一部改変)

問2

桁落ちによる誤差の説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

桁落ちは,値がほぼ等しい二つの数値の差を求めたときに,上位の桁が打ち消し合って有効数字の桁数が少なくなることで生じる誤差である。例えば有効数字4桁の 1.234 と 1.233 の差は 0.001 となり,有効数字が1桁に減ってしまう。アが適切である。

イは有効桁数に合わせて下位の桁を切り捨てたり丸めたりすることで生じる丸め誤差。ウは絶対値の大きな数と小さな数を加減算したときに小さな数が反映されない情報落ち。エは無限に続く計算を途中で打ち切ることで生じる打切り誤差の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問2(表記を一部改変)

問3

サンプリング周波数 40 kHz,量子化ビット数 16 ビットで A/D 変換したモノラル音声の1秒間のデータ量は,何 k バイトとなるか。ここで,1k バイトは 1,000 バイトとする。

正解 ウ

解説

サンプリング周波数 40 kHz は,1秒間に 40,000 回標本を取ることを表す。量子化ビット数 16 ビットは1標本が 16 ビット=2バイトなので,モノラル(1チャネル)の1秒間のデータ量は 40,000×2=80,000 バイト=80k バイトになる。ウが正しい。

アの 20 は1標本を 0.5 バイト(4ビット),イの 40 は1標本を 1 バイト(8ビット)としたときの値である。エの 640 は 40×16 で,単位がビット(k ビット)のままバイトに直していない値である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問3(表記を一部改変)

問4

体温を測定するのに適切なセンサはどれか。

正解 ア

解説

体温の測定には,温度によって電気抵抗が変化する素子を使う。サーミスタは温度の変化に応じて抵抗値が大きく変わる半導体素子で,体温計や温度制御に使われる温度センサである。アが適切である。

イの超音波センサは,超音波が物体に当たって返るまでの時間から距離を測る。ウのフォトトランジスタは光の強さを電気信号に変える光センサ。エのポテンショメータは,つまみの回転角や位置を抵抗値の変化として取り出す素子で,温度は測れない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問4(表記を一部改変)

問5

A,B,C の順序で入力されるデータがある。各データについてスタックへの挿入と取出しを1回ずつ行うことができる場合,データの出力順序は何通りあるか。

スタックの模式図。右上から A,B,C の順にデータが入り,同じ側から取り出されて左へ出ていく。

正解 ウ

解説

スタックは後入れ先出しなので,各データの push と pop を1回ずつ行うときに得られる出力順序は ABC,ACB,BAC,BCA,CBA の5通り。

CAB は作れない。C を最初に出すには A,B,C を全て積む必要があり,その時点で残りは B,A の順にしか取り出せないため。なお,この個数は n=3 のカタラン数に一致する。

スタックで作れる出力順と作れない出力順 A,B,C の順に入力し,それぞれ1回ずつ積んで取り出す。ABC,ACB,BAC,BCA,CBA の5通りは作れる。CAB は作れない。C を最初に出すには A,B,C を全部積む必要があり,そのときスタックの上には B があるので,次に出せるのは B だけ(CBA になる)。 C を最初に出すとき A B C A,B,C を積む A B → C C を出す A → B 次は B しか出せない 作れる:ABC・ACB・BAC・BCA・CBA の5通り 作れない:CAB(C の次に A は出せない)
後から積んだものが先に出る。C を先に出したら,残りは B,A の順に決まる

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問5(表記を一部改変)

問6

配列 A[1],A[2],…,A[n] で,A[1] を根とし,A[i] の左側の子を A[2i],右側の子を A[2i+1] とみなすことによって,2分木を表現する。このとき,配列を先頭から順に調べていくことは,2分木の探索のどれに当たるか。

正解 エ

解説

A[1] を根とし,A[i] の子を A[2i] と A[2i+1] とする配列表現では,添字は根(1)の次に深さ1の節点(2,3),その次に深さ2の節点(4〜7)というように,上の段から,同じ段は左から右へ並ぶ。配列を先頭から順に調べるとは,この順に節点を訪れることなので,浅い節点から段ごとに調べる幅優先探索に当たる。エが正しい。

ア,イ,ウは,いずれも根から枝を深く下って調べる深さ優先探索で,節点を訪れる順番だけが違う。行きがけ順は親→左→右,通りがけ順は左→親→右,帰りがけ順は左→右→親の順に節点を訪れ,どれも配列の添字の順にはならない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問6(表記を一部改変)

問7

アルゴリズム設計としての分割統治法に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

分割統治法は,解きにくい問題を同じ構造をもつ小さな問題に分割し,それぞれを独立に解いてから結果を組み合わせて元の問題の解を得る手法。マージソートやクイックソートが代表例で,再帰的に適用されることが多い。ウが正しい。

アは粗い解を求めてから繰り返し精度を上げる逐次近似法の説明。イは調べる必要のない組合せを枝刈りして探索範囲を狭める分枝限定法。エは各段階でその時点の最良を選ぶ貪欲法(欲張り法)の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問7(表記を一部改変)

問8

次の特徴をもつプログラム言語及び実行環境であって,オープンソースソフトウェアとして提供されているものはどれか。

〔特徴〕

正解 ウ

解説

R は,統計解析やデータ分析,グラフ描画のために作られたオープンソースのプログラム言語及び実行環境で,多数のパッケージが提供されている。変数に型の宣言がなく,代入されたオブジェクトの型が実行時に決まる動的型付けの言語である。ウが該当する。

アの Go,イの Kotlin,エの Scala はいずれもオープンソースだが,変数の型がコンパイル時に決まる静的型付けの言語で,統計解析向けの言語ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問8(表記を一部改変)

問9

表に示す命令ミックスによるコンピュータの処理性能は何 MIPS か。

命令ミックスの表。命令種別,実行速度(ナノ秒),出現頻度(%)の順に,整数演算命令は10ナノ秒で50%,移動命令は40ナノ秒で30%,分岐命令は40ナノ秒で20%。

正解 ウ

解説

命令ミックスは,各命令の実行速度とその出現頻度の加重平均で,1命令当たりの平均実行時間を求める。10×0.5+40×0.3+40×0.2=5+12+8=25 ナノ秒。1秒間に実行できる命令数は 1÷(25×10-9)=4,000万=40 MIPS になる。ウが正しい。

アの 11 は 1,000÷90 の値で,三つの実行速度を単に足した 90 ナノ秒から求めたもの。イの 25 は平均実行時間(ナノ秒)のままで,MIPS に直していない。エの 90 は 10+40+40 の合計で,頻度で重み付けしていない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問9(表記を一部改変)

問10

ディープラーニングの学習に GPU を用いる利点として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ディープラーニングの学習では,大量のデータに対して,ニューラルネットワークの重みを更新する行列演算(積和演算)を膨大な回数繰り返す。GPU は,数百から数千の演算コアで同じ種類の演算を一斉に並列実行するのが得意なので,この行列演算を高速に実行でき,学習時間を短縮できる。イが適切である。

アは,コアごとに別のプログラムとデータを処理する MIMD 型のマルチコア CPU の特徴で,GPU の利点ではない。ウは,浮動小数点演算ユニットをコプロセッサとして用いる構成の説明で,GPU が学習に向く理由を述べていない。エの分岐予測とパイプラインの効率化は,CPU が命令を高速に実行するための仕組みである。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問10(表記を一部改変)

問11

グリッドコンピューティングの説明はどれか。

正解 イ

解説

グリッドコンピューティングは,ネットワークでつながった PC やサーバ,大型コンピュータなど多数のコンピュータの処理能力を束ね,一つの大規模な処理を分担して実行させる方式である。遊休状態のコンピュータの能力も活用できる。イが該当する。

アは役割の決まった複数のプロセッサで処理を分担する非対称型マルチプロセッサ(AMP),ウは同等な役割のプロセッサに処理を分散する対称型マルチプロセッサ(SMP)の説明である。エは,一つのプロセッサで複数のスレッドを並行して実行するマルチスレッディング(同時マルチスレッディングなど)の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問11(表記を一部改変)

問12

キャッシュメモリへの書込み動作には,ライトスルー方式とライトバック方式がある。それぞれの特徴のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ライトスルー方式は,書込みのたびにキャッシュメモリと主記憶の両方へ書くので,主記憶の内容が常に最新に保たれる。イが正しい。キャッシュだけを見て主記憶が古いという状態にならないため,複数のプロセッサや DMA から主記憶を参照する構成でも整合性を取りやすい。

アはライトバック方式の特徴で,キャッシュだけに書くから速い。ウはライトスルー方式の説明を「ライトバック方式」として書いているので誤り。エはライトバック方式では主記憶が古いままなので,追い出されるときに書き戻しが必要になる。

ライトスルーとライトバック ライトスルー方式は,CPU が書き込むたびにキャッシュメモリと主記憶の両方に書くので,主記憶の内容は常に最新だが,書込みは主記憶の速さに引きずられる。ライトバック方式は,キャッシュメモリにだけ書いて済ませ,そのブロックがキャッシュから追い出されるときにまとめて主記憶に書き戻す。書込みは速いが,追い出されるまで主記憶は古いまま。 ライトスルー CPU キャッシュ 主記憶 書く 同時に書く 主記憶は常に最新,書込みは遅い ライトバック CPU キャッシュ 主記憶 書く 追い出すときに まとめて書き戻す 速いが,主記憶は古いことがある
ライトスルーは主記憶が常に最新,ライトバックは追い出すときに書き戻す

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問12(表記を一部改変)

問13

システムの信頼性設計に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

フォールトアボイダンス(故障回避)は,構成要素の品質や信頼性そのものを高めることで,故障の発生を未然に防ごうとする考え方。

アはフールプルーフ(利用者の誤操作を防ぐ)の説明。イは誤りで,フェールソフトは機能を縮退させてでも稼働を継続する考え方。エはフェールセーフ(故障時に安全側に倒す)の説明で,フォールトトレランスは故障が起きても冗長性によって機能を維持する考え方。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問13(表記を一部改変)

問14

稼働率が x である装置を四つ組み合わせて,図のようなシステムを作ったときの稼働率を f(x) とする。区間 0≦x≦1 における y=f(x) の傾向を表すグラフはどれか。ここで,破線は y=x のグラフである。

稼働率 x の装置を2台直列につないだ組を二つ作り,その二つを並列につないだシステムの構成図。

正解 エ

解説

直列につないだ2台は両方が動いていないと機能しないので,その組の稼働率は x2。これを2系統並列にしているので,両方の系統が止まる確率 (1−x2)2 を1から引いて f(x)=1−(1−x2)2=2x2−x4 となる。x=0.5 では f=0.4375 で y=x より下,x=0.9 では f=0.9639 で上になる。f(x)=x となるのは x=(√5−1)/2≒0.618 と x=1 なので,はじめは y=x の下を通り,途中で交差して上に出て(1,1)に達する。エがこの形になっている。

アは全区間で y=x より上,イは全区間で下にあり,途中で交差しない。ウは上下が逆で,x が小さいところで y=x より上になっている。稼働率の低い装置では直列部分が足を引っ張るので,原点付近でシステムの稼働率が装置単体より高くなることはない。

2台直列の組を2つ並列にしたときの稼働率 f(x) 2台直列の組の稼働率は x²。それを2つ並列にして f(x)=1−(1−x²)²=2x²−x⁴。x が小さいうちは直列が足を引っ張って y=x より下,x≒0.618 で交わり,それより大きいと y=x より上になって (1,1) に達する。x=0.5 で 0.4375,x=0.9 で 0.9639。 x x x x f(x)=2x²−x⁴ x≒0.618 で交わる y=x x 下 上 1
稼働率の低い装置では直列が足を引っ張り,高い装置では並列が効く

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問14(表記を一部改変)

問15

密結合マルチプロセッサの性能が,1台当たりのプロセッサの性能とプロセッサ数の積に等しくならない要因として,最も適切なものはどれか。

正解 ア

解説

密結合マルチプロセッサは,複数のプロセッサが一つの主記憶を共有して処理する方式である。プロセッサを増やしても,共有する主記憶へのアクセスが競合して待ちが生じるため,性能はプロセッサ数に比例して伸びない。アが最も適切である。

イの通信回線を介したプロセッサ間通信は,主記憶を共有せずにプロセッサ間で通信する疎結合マルチプロセッサで性能が伸びない要因である。ウのディスパッチ処理やエの割込み処理は,プロセッサが1台でも発生する処理で,台数を増やしたときに性能が比例しない主な要因ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問15(表記を一部改変)

問16

ジョブの多重度が1で,到着順にジョブが実行されるシステムにおいて,表に示す状態のジョブ A~C を処理するとき,ジョブ C が到着してから実行が終了するまでのターンアラウンドタイムは何秒か。ここで,OS のオーバヘッドは考慮しない。

ジョブの表(単位 秒)。ジョブ,到着時刻,処理時間(単独実行時)の順に,A は 0 と 5,B は 2 と 6,C は 3 と 3。

正解 ア

解説

多重度 1 で到着順に実行するので,ジョブ A が時刻 0 から 5 まで実行され,その間に到着したジョブ B が 5 から 11 まで,ジョブ C が 11 から 14 まで実行される。ジョブ C は時刻 3 に到着して時刻 14 に終了するので,ターンアラウンドタイムは 14−3=11 秒であり,アになる。

エの 14 は到着時刻を差し引かずに終了時刻をそのまま答えた値である。イの 12 やウの 13 は,実行の順序や待ち時間を取り違えた値である。

到着順に実行するジョブのターンアラウンドタイム 多重度1で到着順に実行するので,ジョブ A が 0〜5 秒,その間に到着した B が 5〜11 秒,C が 11〜14 秒に実行される。C は 3 秒に到着して 14 秒に終わるので,ターンアラウンドタイムは 14−3=11 秒。 CPU A B C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 A着 B着 C着 C のターンアラウンドタイム 14−3=11 秒 秒
ターンアラウンドタイムは「到着してから終わるまで」。待っている時間も含む

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問16(表記を一部改変)

問17

リアルタイム OS において,実行中のタスクがプリエンプションによって遷移する状態はどれか。

正解 イ

解説

プリエンプションは,実行中のタスクより優先度の高いタスクが実行可能になったときなどに,OS が実行権を取り上げて切り替えること。取り上げられたタスク自体は実行を続けられる状態のままなので,実行状態から実行可能状態に戻る。イが正しい。

アの休止状態はタスクがまだ起動されていないか終了した後の状態。ウの終了状態はタスクが処理を終えたときに移る状態。エの待ち状態は,入出力の完了やイベントの発生をタスク自身が待つときに移る状態で,横取りによる遷移先ではない。

タスクの3つの状態 実行可能状態のタスクは,CPU を割り当てられる(ディスパッチ)と実行状態になる。実行状態のタスクは,入出力の完了などを自分で待つと待ち状態に,優先度の高いタスクに CPU を取り上げられる(プリエンプション)と実行可能状態に移る。待ち状態のタスクは,待っていた事象が起きると実行可能状態に移り,直接は実行状態に移らない。 実行 CPU を使っている 実行可能 CPU の割当て待ち 待ち 入出力の完了待ち ディスパッチ プリエンプション 入出力など を待つ 待っていた事象が起きた 待ち → 実行 へ直接は移らない(一度,実行可能に並ぶ)
プリエンプションで移るのは実行可能状態。待ち状態から実行状態へは直接移らない

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問17(表記を一部改変)

問18

プログラム実行時の主記憶管理に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ガーベジコレクションは,プログラムが動的に確保したヒープ領域のうち,どこからも参照されなくなった領域を自動的に見つけて回収し,再び割当てに使えるようにする仕組み。イが正しい。

アの空き領域を結合して連続領域にすることはコンパクション(ガーベジコレクションの一部として行われることもある)。ウの実行中にモジュールの格納位置を移動させることは動的再配置。エの必要になった時点でモジュールをロードすることは動的リンキング(動的ロード)で,ウとエは用語が入れ替わっている。

ガーベジコレクション:どこからも参照されない領域を回収する プログラムが動的に確保したヒープ領域のうち,変数(ルート)からたどれる領域はまだ使われている。どこからもたどれなくなった領域は二度と使われないので,ガーベジコレクションが自動的に見つけて回収し,再び割り当てに使えるようにする。空き領域を寄せて連続にするのはコンパクション,細切れになる現象はフラグメンテーション。 変数 (ルート) ヒープ A B C D E どこからも参照されない 塗り(D・E):ルートからたどれない → 回収して再利用 D から E を指していても,D に誰も届かなければ E も回収
ルートからたどれない領域を見つけて回収する

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問18(表記を一部改変)

問19

ページング方式の仮想記憶において,ページアクセス時に発生する事象をその回数の多い順に並べたものはどれか。ここで,A≧B は,A の回数が B の回数以上,A=B は,A と B の回数が常に同じであることを表す。

正解 エ

解説

ページフォールトは,アクセスしたページが主記憶にないときに発生する。この処理では必ずそのページを主記憶へ読み込むので,ページフォールトの回数とページインの回数は常に等しい。一方ページアウトは,読み込む先の空きがなく既存のページを追い出すときにだけ起こるので,ページインの回数以下になる。エが正しい。

アとイはページアウトを最も多いものとしているが,追い出しはページインに伴ってしか起こらないのでページインを超えない。ウはページフォールトとページアウトが常に等しいとしているが,主記憶に空きがあれば追い出しは起こらないので誤り。

ページフォールト・ページイン・ページアウトの回数(例) 主記憶に3ページ分の枠があり,ページ1〜5を順に読む例。最初の3回は空きがあるので,ページフォールトのたびにページインだけが起きる。4回目からは空きがないので,1ページ追い出す(ページアウト)してから読み込む。ページフォールトのたびに必ずページインが起きるので両者は等しく,ページアウトは空きがないときだけなので,ページインの回数以下になる。 読むページ 1 2 3 4 5 フォールト ○ ○ ○ ○ ○ ページイン ○ ○ ○ ○ ○ ページアウト ○ ○ 主記憶の枠は 3 つ(4 ページ目から空きがない) フォールト 5 回 = ページイン 5 回 ≧ ページアウト 2 回(空きがないときだけ)
ページフォールト = ページイン ≧ ページアウト

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問19(表記を一部改変)

問20

Hadoop の説明はどれか。

正解 エ

解説

Hadoop は,Apache Software Foundation が開発しているオープンソースの分散処理基盤で,大規模なデータセットを複数のコンピュータに分散して蓄積(HDFS)・処理(MapReduce)するためのソフトウェアライブラリである。エが正しい。

アは Java EE 仕様に準拠したアプリケーションサーバで,WildFly や GlassFish などが当たる。イは Apache HTTP Server や nginx などの Web サーバ。ウは機能が豊富な RDBMS の説明で,Hadoop は RDBMS ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問20(表記を一部改変)

問21

RFID の活用事例として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

RFID は,微小な IC チップとアンテナを組み合わせたタグに識別情報を記録し,電波で非接触に読み書きする技術。商品や部品,入退室者の識別と管理に使われ,箱の中のタグをまとめて読み取れる点がバーコードとの違いになる。エが正しい。

アはバーコードや二次元コードによる入力,イは Bluetooth による無線通信,ウは IrDA などの赤外線通信の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問21(表記を一部改変)

問22

SoC の説明として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

SoC(System on a Chip)は,複数のチップで構成していたコンピュータシステム(CPU,メモリ,周辺回路など)を,一つのチップに集積した LSI である。ウが適切である。

アはファームウェア,イは MCU を複数載せた基板で,いずれも SoC の説明ではない。エは複数のチップを一つのパッケージに封入する SiP(System in Package)の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問22(表記を一部改変)

問23

図は DC モータの正転逆転制御の動作原理を示す回路である。A1 から A4 の四つの制御信号の組合せの中で,モータが逆転するものはどれか。ここで,モータの+端子から-端子に電流が流れるときモータは正転し,S1 から S4 のそれぞれのスイッチ素子は,対応する A1 から A4 の制御信号がそれぞれ High のとき導通するものとする。

DC モータの駆動回路。電源 +V と接地の間に,左側に S1(上)と S2(下),右側に S3(上)と S4(下)のスイッチ素子が縦に並び,S1 と S2 の接続点がモータ M の+端子,S3 と S4 の接続点が-端子につながっている。各スイッチ素子は左の A1,A2,右の A3,A4 の制御信号で導通する。

正解 ウ

解説

制御信号が High のスイッチ素子が導通する。逆転は,モータの-端子から+端子へ電流が流れる場合である。S3 と S2 が導通すると,電源 +V から S3 を通ってモータの-端子に入り,モータを通って+端子から出て,S2 を通って接地へ流れる。A2 と A3 が High,A1 と A4 が Low の組合せで,ウが正しい。

アは全てのスイッチが切れていて電流が流れない。イは S2 と S4 が導通し,モータの両端が接地につながるだけで電流は流れない。エは S1 と S4 が導通し,+端子から-端子へ電流が流れるので,正転である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問23(表記を一部改変)

問24

コンデンサの機能として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

コンデンサは電荷を蓄える素子で,直流電流が流れ続けることはなく,電圧が変化する交流電流は通す。アが適切である。

イは交流を直流に変換する整流回路(ダイオードなどで構成)の機能。ウは直流は通すが交流は通しにくいコイル(インダクタ)の性質。エは直流を交流に変換するインバータの機能である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問24(表記を一部改変)

問25

図の論理回路において,S=1,R=1,X=0,Y=1 のとき,S を一旦 0 にした後,再び 1 に戻した。この操作を行った後の X,Y の値はどれか。

論理回路図。上段は S と下段の出力 Y を入力とする AND 回路の出力を NOT 回路に通して X を出力し,下段は R と上段の出力 X を入力とする AND 回路の出力を NOT 回路に通して Y を出力する。X と Y は互いに相手の AND 回路の入力に交差してつながっている。

正解 ウ

解説

X=NOT(S・Y),Y=NOT(R・X) で動くラッチ回路である。初めは S=1,R=1,X=0,Y=1 で,X=NOT(1・1)=0,Y=NOT(1・0)=1 と安定している。

S を 0 にすると X=NOT(0・Y)=1 になり,これを受けて Y=NOT(1・1)=0 に変わる。次に S を 1 に戻しても,Y=0 なので X=NOT(1・0)=1 のままで,Y=NOT(1・1)=0 も変わらない。操作後は X=1,Y=0 で,ウが正しい。S を一時的に 0 にすることで状態が反転し,戻した後もその状態が保持される(セット)。

ラッチ回路の値の移り変わり X=¬(S・Y),Y=¬(R・X) の回路。初めは S=1,R=1,X=0,Y=1 で安定している。S を0にすると X=¬(0・Y)=1 になり,続いて Y=¬(1・1)=0 になる。S を1に戻しても Y=0 なので X=¬(1・0)=1 のままで,X=1,Y=0 が保たれる。 S R X Y S R X Y 1 1 0 1 0 1 1 0 1 1 1 0 初め: S を0に: S を1に戻す: X=¬(1・1)=0,Y=¬(1・0)=1 で安定 X=¬(0・1)=1 → Y=¬(1・1)=0 X=¬(1・0)=1 のまま(保持)
S を一度0にすると状態が入れ替わり,1に戻してもそのまま保たれる

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問25(表記を一部改変)

問26

利用者が現在閲覧している Web ページに表示する,Web サイトのトップページからそのページまでの経路情報を何と呼ぶか。

正解 エ

解説

パンくずリストは,閲覧中のページが Web サイトの階層のどこにあるかを,トップページから現在のページまでの経路として「ホーム > 製品 > …」のように示すナビゲーションである。エが正しい。

アのサイトマップは,Web サイト全体の構成を一覧にしたページ。イのスクロールバーは,画面に収まらない内容を移動して見るための部品。ウのナビゲーションバーは,主要なページへのリンクを並べたメニューで,現在位置までの経路を示すものではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問26(表記を一部改変)

問27

W3C で仕様が定義され,矩形や円,直線,文字列などの図形オブジェクトを XML 形式で記述し,Web ページでの図形描画にも使うことができる画像フォーマットはどれか。

正解 ウ

解説

SVG(Scalable Vector Graphics)は W3C が仕様を定めたベクター画像フォーマットで,矩形・円・直線・文字列などの図形オブジェクトを XML 形式で記述する。拡大しても劣化せず,HTML に直接埋め込んで Web ページの図形描画に使える。

アの OpenGL は3次元グラフィックスの API であって画像フォーマットではない。イの PNG とエの TIFF はいずれもラスタ(ビットマップ)形式の画像フォーマット。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問27(表記を一部改変)

問28

NoSQL の一種である,グラフ指向 DB の特徴として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

グラフ指向 DB は,データをノード(点)とノード間を結ぶリレーション(関係)で表し,ノードとリレーションがそれぞれプロパティ(属性)をもつ NoSQL である。人のつながりや経路など,関係をたどる処理に向いている。イが適切である。

アは,階層構造のデータをドキュメントとして格納し,インデックスも作れるドキュメント指向 DB。ウは,一つのキーに対して一つの値を対応させるキーバリュー型。エは,一つのキーに対して複数の列をもつ列指向(ワイドカラム)型の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問28(表記を一部改変)

問29

商品の注文を記録するクラス(顧客,商品,注文,注文明細)の構造を概念データモデルで表現する。a~d に入れるべきクラス名の組合せはどれか。ここで,顧客は何度も注文を行い,一度に一つ以上の商品を注文でき,注文明細はそれぞれ1種類の商品に対応している。また,モデルの表記には UML を用いる。

UML のクラス図。四つのクラス a,b,c,d が左から順に線で結ばれている。a と b の間は a 側が 1,b 側が *,b と c の間は b 側が 1,c 側が *,c と d の間は c 側が *,d 側が 1。

正解 ア

解説

図の多重度は,a が1で b が複数,b が1で c が複数,c が複数で d が1である。顧客は何度も注文を行うので 顧客(1)―注文(*),注文は一度に一つ以上の商品を注文でき,注文明細は注文の中の1種類の商品に対応するので 注文(1)―注文明細(*),一つの商品は多くの注文明細に現れるので 注文明細(*)―商品(1) となる。a が顧客,b が注文,c が注文明細,d が商品で,アが正しい。

イは,a が商品で b が注文なので,一つの商品に複数の注文が対応する関係になり,注文明細が顧客に直接結び付く。ウは,注文明細(b)に複数の顧客(c)が対応する関係になってしまう。エは,注文明細(a)に複数の商品(b)が対応する関係で,注文明細が1種類の商品に対応するという条件と合わない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問29(表記を一部改変)

問30

コストベースのオプティマイザが SQL の実行計画を作成する際に必要なものはどれか。

正解 イ

解説

コストベースのオプティマイザは,複数ある実行計画の候補ごとにコスト(処理時間や入出力量)を見積もり,最も小さいものを選ぶ。見積もりには,表の行数,列の値の分布,索引の有無などの統計情報が必要である。イが正しい。

アのディメンジョンテーブルは,データウェアハウスの分析軸を表すテーブル。ウの待ちグラフは,ロックの待ち関係を表してデッドロックの検出に使う。エのログファイルは,障害からの回復に使う更新履歴で,実行計画の作成には使わない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問30(表記を一部改変)

問31

データレイクの特徴はどれか。

正解 エ

解説

データレイクは,構造化・非構造化を問わず,発生したままの生データをそのままの形で大量に蓄積しておく仕組み。使い道が決まる前に貯めておき,分析するときに必要な形へ加工する点が特徴で,あらかじめ整形して格納するデータウェアハウスと対比される。エが正しい。

アはデータマイニング,イはデータマート,ウは OLAP(多次元分析)の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問31(表記を一部改変)

問32

IoT で用いられる無線通信技術であり,近距離の IT 機器同士が通信する無線 PAN(Personal Area Network)と呼ばれるネットワークに利用されるものはどれか。

正解 ア

解説

無線 PAN は,数メートル程度の近距離で IT 機器同士が通信する無線ネットワークで,BLE(Bluetooth Low Energy)はその代表的な規格である。Bluetooth のうち消費電力を抑えた方式で,IoT 機器の接続に使われる。アが正しい。

イの LTE は携帯電話網で使う広域の移動通信規格。ウの PLC は電力線を通信回線に使う有線の通信技術。エの PPP は,2点間を接続するデータリンク層のプロトコルで,無線 PAN の技術ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問32(表記を一部改変)

問33

日本国内において,無線 LAN の規格 IEEE 802.11ac に関する説明のうち,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

IEEE 802.11ac は 5 GHz 帯だけを使う無線 LAN の規格である。エが適切である。

アの IEEE 802.11g は 2.4 GHz 帯の規格なので,5 GHz 帯だけを使う 802.11ac のアクセスポイントとは通信できない。イの最大通信速度 600M ビット/秒は IEEE 802.11n の値で,802.11ac は 1G ビット/秒を超える。ウの CSMA/CD はイーサネット(有線 LAN)のアクセス制御方式で,無線 LAN は CSMA/CA を使う。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問33(表記を一部改変)

問34

IPv4 ネットワークで使用される IP アドレス a とサブネットマスク m からホストアドレスを求める式はどれか。ここで,“〜”はビット反転の演算子,“|”はビットごとの論理和の演算子,“&”はビットごとの論理積の演算子を表し,ビット反転の演算子の優先順位は論理和,論理積の演算子よりも高いものとする。

正解 ウ

解説

サブネットマスク m はネットワーク部のビットが1,ホスト部のビットが0になっている。ホストアドレスはアドレス a のうちホスト部だけを残したものなので,m を反転してホスト部を1にした 〜m と a のビットごとの論理積をとればよい。ウの a & 〜m が正しい。

アの 〜a & m はアドレスを反転してからネットワーク部を取り出すもので意味をなさない。イとエは論理和なので,不要なビットを消すのではなく立てる操作になる。特にエの a | 〜m はホスト部が全て1になり,ブロードキャストアドレスを求める式である。

IP アドレスとサブネットマスクのビット演算 212.62.31.90/27(マスク 255.255.255.224)の第4オクテットで考える。90 は 01011010,マスクは 11100000,マスクを反転すると 00011111。a&m(論理積)はネットワーク部だけが残り 64,a&〜m はホスト部だけが残り 26(ホストアドレス),a|〜m はホスト部が全部1になり 95(ブロードキャストアドレス)。 a(90) 0 1 0 1 1 0 1 0 m(224) 1 1 1 0 0 0 0 0 〜m(31) 0 0 0 1 1 1 1 1 ネットワーク部 ホスト部 a & m 0 1 0 0 0 0 0 0 64 ネットワークアドレス a & 〜m 0 0 0 1 1 0 1 0 26 ホストアドレス a | 〜m 0 1 0 1 1 1 1 1 95 ブロードキャスト
& m でネットワーク部,& 〜m でホスト部,| 〜m でブロードキャスト

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問34(表記を一部改変)

問35

ONF(Open Networking Foundation)が標準化を進めている OpenFlow プロトコルを用いた SDN(Software-Defined Networking)の説明として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

SDN は,パケットを転送する機能(データプレーン)と,どう転送するかを決める機能(コントロールプレーン)を論理的に分離し,後者をコントローラに集約してネットワーク全体をソフトウェアから集中制御できるようにするアーキテクチャ。OpenFlow は,そのコントローラとスイッチの間でフローテーブルをやり取りするプロトコルである。エが正しい。

アは SNMP を使ったネットワーク管理手法。イはルーティングプロトコルによる自律分散型の経路制御で,SDN の集中制御とは逆の考え方。ウはネットワーク機能を仮想環境で動かす NFV の説明である。

SDN:制御と転送を分ける SDN では,経路を決める制御(コントロールプレーン)をコントローラに集め,各スイッチはコントローラから OpenFlow などで受け取った規則(フローテーブル)に従ってパケットを転送するだけ(データプレーン)になる。ネットワーク全体をソフトウェアで一元的に設定・変更できる。 SDN コントローラ コントロールプレーン スイッチ スイッチ スイッチ OpenFlow データプレーン:規則に従って転送するだけ
頭脳(コントローラ)と手足(スイッチ)を分ける

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問35(表記を一部改変)

問36

2.4 GHz 帯の無線 LAN のアクセスポイントを,広いオフィスや店舗などをカバーできるように分散して複数設置したい。2.4 GHz 帯の無線 LAN の特性を考慮した運用をするために,各アクセスポイントが使用する周波数チャネル番号の割当て方として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

2.4 GHz 帯の無線 LAN(IEEE 802.11b/g)は,隣り合うチャネルの周波数が重なるので,近くのアクセスポイントに近いチャネルを割り当てると電波が干渉して通信が遅くなる。重ならないチャネルは 1,6,11 のように 5 チャネル離れたもので,隣り合うアクセスポイントにはこれらを順に割り当てる。イが適切である。

アは,全てのアクセスポイントが同じチャネルだと互いに干渉し合うので不適切。PC の設定を変えずに近くのアクセスポイントに接続できるようにするには,SSID を同じにする。ウは,SSID が違っても同じ周波数帯でチャネルが重なれば干渉するので誤り。エは,1,2,3 と隣り合うチャネルを並べると周波数が重なって干渉する。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問36(表記を一部改変)

問37

Web サイトにおいて,クリックジャッキング攻撃の対策に該当するものはどれか。

正解 イ

解説

クリックジャッキングは,攻撃者が用意したページに対象サイトのページを透明な iframe で重ねて表示し,利用者に気付かれないままクリックさせる攻撃である。HTTP レスポンスヘッダに X-Frame-Options を設定すると,ほかのサイトのフレーム内に表示されるのを禁止でき,対策になる。イが該当する。

アの X-Content-Type-Options は,ブラウザが内容から MIME タイプを推測して解釈するのを防ぐヘッダ。ウの HTML タグの置換(エスケープ)は,クロスサイトスクリプティングの対策。エの入力文字数の制限は,バッファオーバフローなどへの対策で,クリックジャッキングは防げない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問37(表記を一部改変)

問38

攻撃者が行うフットプリンティングに該当するものはどれか。

正解 イ

解説

フットプリンティングは,攻撃の準備段階で,対象の PC,サーバ,ネットワークの構成や公開されている情報を調べて,攻撃に使える手掛かりを集める事前調査である。イが該当する。

アは Web サイトの改ざんで,主張の発信が目的なので,攻撃前の調査ではない。ウは攻撃に使う PC の性能向上で,攻撃対象の調査ではない。エは,ログに偽の痕跡を加えて追跡を逃れる,攻撃後の痕跡の隠蔽である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問38(表記を一部改変)

問39

リスクベース認証の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

リスクベース認証は,ログインの際に,利用者の IP アドレス,端末,時間帯などを普段の利用状況と比べてリスクを判定し,普段と異なると判断したときだけ追加の本人認証を求める方式である。安全性と使いやすさを両立できる。ウが正しい。

アは,利用条件に関係なく常に二つの認証方式を併用する多要素認証。イは,どの利用条件でも認証方法を変えないので,リスクに応じて認証を変えるという特徴がない。エは,緊急と判断すると認証情報の入力を省くという内容で,認証を弱めてしまい,リスクベース認証の考え方と逆である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問39(表記を一部改変)

問40

暗号学的ハッシュ関数における原像計算困難性,つまり一方向性の性質はどれか。

正解 ア

解説

原像計算困難性(一方向性)は,ハッシュ値からその元になったメッセージを求めることが計算量的に困難であるという性質。パスワードをハッシュ値で保存しても元のパスワードを復元されないのは,この性質による。アが正しい。

イは可変長の入力から固定長の値を作るというハッシュ関数一般の性質で,安全性の要件ではない。ウは同じハッシュ値をもつ二つのメッセージを見つけにくいという衝突発見困難性。エはハッシュを計算する機器の耐タンパ性に関する説明である。

暗号学的ハッシュ関数の3つの性質 原像計算困難性は,ハッシュ値が与えられたときに,そのハッシュ値になるメッセージを見つけることが難しい。第2原像計算困難性は,あるメッセージが与えられたときに,同じハッシュ値になる別のメッセージを見つけることが難しい。衝突発見困難性は,同じハッシュ値になる2つのメッセージを,どれでもよいので見つけることが難しい。違いは何が先に決まっているか。 原像計算困難性(一方向性) メッセージ ハッシュ値 ← これになる m を探す 第2原像計算困難性 m1 メッセージ2 同じハッシュ値 m1 は決まっている 衝突発見困難性 メッセージ1 メッセージ2 同じハッシュ値 どれでもよい
塗った枠が先に決まっているもの,破線の枠が探すもの

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問40(表記を一部改変)

問41

経済産業省と IPA が策定した“サイバーセキュリティ経営ガイドライン(Ver2.0)”の説明はどれか。

正解 ア

解説

サイバーセキュリティ経営ガイドラインは,経済産業省と IPA が策定した経営者向けの手引で,サイバー攻撃から企業を守る観点で経営者が認識すべき3原則と,情報セキュリティ対策を実施する上での責任者となる担当幹部(CISO など)に経営者が指示すべき重要10項目をまとめている。アが正しい。

イは ISMS(JIS Q 27001)の説明。ウは IT ガバナンスとマネジメントに分けて40のプロセスを定義した COBIT の説明。エはサイバーセキュリティ基本法が定める国の責務に関する記述である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問41(表記を一部改変)

問42

JPCERT コーディネーションセンターの説明はどれか。

正解 ウ

解説

JPCERT コーディネーションセンター(JPCERT/CC)は,特定の政府機関や企業から独立した一般社団法人で,国内のセキュリティインシデントの報告受付,対応の支援,手口の分析,再発防止策の助言などを行う。ウが正しい。

アは日本産業標準調査会(JISC),イは CRYPTREC(暗号技術評価プロジェクト),エは内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問42(表記を一部改変)

問43

クレジットカードの対面決済時の不正利用に対して,カード加盟店が実施する対策のうち,最も有効なものはどれか。

正解 ア

解説

クレジットカードの対面決済では,磁気ストライプのカードを複製した偽造カードによる不正利用が問題になる。IC チップ搭載カードは偽造が難しく,さらに本人確認にサインではなくオフライン PIN(IC チップが暗証番号を照合する)を使えば,カードを盗まれても暗証番号を知らない者は使えないので,加盟店が実施する対策として最も有効である。アが適切である。

イのカード番号を加盟店で保持するのは,漏えいしたときに不正利用の原因になるので,保持しないほうが望ましい。ウの磁気ストライプの利用を促すのは,偽造されやすい方式を使わせることになる。エのオーソリモニタリングは,取引履歴から不正を検知する仕組みで,主にカード会社が行うもので,加盟店が実施する対面決済の対策としては,アより効果が限られる。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問43(表記を一部改変)

問44

Web システムにおいて,セッションの乗っ取りの機会を減らすために,利用者のログアウト時に Web サーバ又は Web ブラウザにおいて行うべき処理はどれか。ここで,利用者は自分専用の PC において,Web ブラウザを利用しているものとする。

正解 イ

解説

セッションの乗っ取りは,攻撃者が有効なセッション ID を手に入れて成りすますことで起こる。ログアウト時にサーバ側でそのセッション ID を無効にしておけば,後からその ID を入手されても使えないので,乗っ取られる機会を減らせる。イが正しい。

アとエはセッション ID をストレージに保存する処理で,残しておくことはむしろ危険を増やす。ウのキャッシュのクリアは画面に表示した内容が後から見られるのを防ぐ効果はあるが,セッション ID 自体は有効なままなので乗っ取りは防げない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問44(表記を一部改変)

問45

TLS のクライアント認証における次の処理 a~c について,適切な順序はどれか。

処理の表。a はクライアントが,サーバにクライアント証明書を送付する。b はサーバが,クライアントにサーバ証明書を送付する。c はサーバが,クライアントを認証する。

正解 ウ

解説

TLS のクライアント認証では,まずサーバがサーバ証明書をクライアントに送付し(b),サーバがクライアント証明書を要求すると,クライアントがクライアント証明書を送付し(a),サーバがそれを検証してクライアントを認証する(c)。b→a→c の順で,ウが正しい。

アとイは,サーバ証明書の送付(b)より前にクライアントが証明書を送っている。エは,クライアント証明書を受け取る(a)前にサーバがクライアントを認証(c)していて,順序が成り立たない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問45(表記を一部改変)

問46

IC カードの耐タンパ性を高める対策はどれか。

正解 ウ

解説

耐タンパ性は,IC チップの内部を不正に解析されたり,記録された情報を読み出されたりしにくい性質である。信号を読み出すためのプローブ(探針)が取り付けられたことを検出したら,チップ内の情報を消去する回路を設けておけば,物理的に解析しようとしても中身を得られない。ウが該当する。

アの非接触での認証は利用者の利便性を高めるもの,イの予備カードの保管は故障時にも使い続けられるようにする可用性の対策,エの退職者のカードの利用停止は運用上のアクセス管理であり,いずれもチップ内部の情報を解析から守る耐タンパ性の対策ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問46(表記を一部改変)

問47

状態遷移表のとおりに動作し,運転状況に応じて装置の温度が上下するシステムがある。システムの状態が“レディ”のとき,①~⑥ の順にイベントが発生すると,最後の状態はどれになるか。ここで,状態遷移表の空欄は状態が変化しないことを表す。

〔状態遷移表〕

状態遷移表。状態は 1 初期・終了(レディ),2 高速運転,3 低速運転,4 一時停止。条件ごとの動作と遷移先は次のとおり。メッセージ1を受信する:状態1は運転開始で2へ,状態2は空欄,状態3は加速で2へ,状態4は運転再開で2へ。メッセージ2を受信する:状態1は空欄,状態2は減速で3へ,状態3は一時停止で4へ,状態4は初期化で1へ。装置の温度が50℃未満から50℃以上になる:状態1は空欄,状態2は減速で3へ,状態3は一時停止で4へ,状態4は空欄。装置の温度が40℃以上から40℃未満になる:状態1と状態2は空欄,状態3は加速で2へ,状態4は運転再開で3へ。

〔発生するイベント〕

正解 エ

解説

レディ(状態1)から順に追う。①メッセージ1:運転開始で高速運転(2)。②メッセージ1:状態2は空欄なので高速運転のまま。③温度が 50℃以上:減速で低速運転(3)。④メッセージ2:状態3は一時停止で一時停止(4)。⑤温度が 40℃未満:状態4は運転再開で低速運転(3)。⑥メッセージ2:状態3は一時停止で一時停止(4)。最後の状態は一時停止で,エが正しい。

アのレディに戻るのは,状態4でメッセージ2を受信して初期化したときで,この順序では状態4でメッセージ2を受信しない。イの高速運転は,③の前の状態。ウの低速運転は,⑤の直後の状態で,⑥のメッセージ2でさらに遷移する。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問47(表記を一部改変)

問48

あるプログラムについて,流れ図で示される部分に関するテストを,命令網羅で実施する場合,最小のテストケース数は幾つか。ここで,各判定条件は流れ図に示された部分の先行する命令の結果から影響を受けないものとする。

流れ図。判定が3段に並ぶ。1段目の判定は3方向に分かれ,それぞれに処理が一つずつ置かれて合流する。2段目の判定は2方向に分かれ,それぞれに処理が一つずつ置かれて合流する。3段目の判定は3方向に分かれ,それぞれに処理が一つずつ置かれて合流する。

正解 ア

解説

命令網羅は,全ての命令(処理)を少なくとも1回は実行できればよいという基準。この流れ図には判定が3段あり,分岐先の処理はそれぞれ3個,2個,3個ある。1件のテストケースは各段から1個ずつ処理を通るので,処理が3個ある段を覆うには3件必要で,逆に3件あれば処理が2個の段も同時に覆える。よって最小のテストケース数は3で,アが正しい。

各判定条件は互いに影響しないという前提なので,段ごとに好きな分岐を選んで組み合わせられる。エの18は3×2×3で全ての経路を数えた値,イの6やウの8も経路の組合せに関する数で,命令網羅に必要な件数ではない。

命令網羅・分岐網羅・条件網羅 「A かつ B」なら処理 X を行う流れ図。命令網羅は全ての命令を一度は通すので,A も B も真の1件で足りる。分岐網羅は判定の真と偽を両方通すので,(真,真)と(偽,真)の2件が要る。条件網羅は A と B のそれぞれが真と偽を取ればよいので(真,偽)と(偽,真)でも満たせるが,このとき判定は2回とも偽で,処理 X を一度も通らない。 A かつ B 真 処理 X 偽 命令網羅 (A,B)=(真,真)の1件 分岐網羅 (真,真)(偽,真)の2件 条件網羅 (真,偽)(偽,真)でもよい 条件網羅の例では判定が2回とも偽になり,処理 X を通らない 判定条件/条件網羅は,判定と各条件の真偽を両方そろえる
条件網羅を満たしても,分岐網羅や命令網羅を満たすとは限らない

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問48(表記を一部改変)

問49

スクラムチームにおけるプロダクトオーナの役割はどれか。

正解 ア

解説

スクラムのプロダクトオーナは,プロダクトの価値を最大化する責任を負い,プロダクトバックログの内容と並び順(優先順位)を決める。何を作るかを決める役割であって,どう作るかには踏み込まない。アが正しい。

イはスクラムマスタの役割で,スクラムが正しく機能するように支援する。ウとエは開発者(開発チーム)の役割で,作り方を自分たちで決め,スプリントごとにリリース判断可能なインクリメントを完成させる。

スクラムの1スプリントの流れ プロダクトオーナーが優先順位を付けたプロダクトバックログから,スプリントプランニングで今回やることを選んでスプリントバックログにする。1か月以内のスプリントの間,毎日デイリースクラムで進み具合を確かめ,動くインクリメントを作る。最後にスプリントレビューで利害関係者に成果を見せ,スプリントレトロスペクティブでふりかえってから次のスプリントへ進む。 プロダクト バックログ スプリント バックログ プランニング スプリント 1か月以内 毎日 デイリースクラム インクリメント スプリントレビュー 利害関係者に成果を見せる レトロスペクティブ ふりかえり(KPT など) 次のスプリントへ プロダクトオーナー:バックログの優先順位を決める スクラムマスター:進め方を支える 開発者:スプリントバックログを自分たちで変えられる
役割3つ・イベント4つ(プランニング・デイリー・レビュー・レトロスペクティブ)・作成物3つ

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問49(表記を一部改変)

問50

アジャイル開発などで導入されている“ペアプログラミング”の説明はどれか。

正解 エ

解説

ペアプログラミングは,2人のプログラマが1台のコンピュータに向かい,一人がコードを書き,もう一人がその場でレビューや助言をしながら一つのプログラムを開発する手法で,役割は適宜交代する。誤りを早く見つけて品質を高めるとともに,知識や技術をメンバー間で共有できる。エが適切である。

アはプログラマと利用者が試作品を見ながら要件を固めるプロトタイピング。イはメインプログラムとサブプログラムを分担する作業分割で,一つのプログラムを2人で作るものではない。ウは交代で休憩しながら長時間作業を続けるもので,ペアプログラミングの目的とは異なる。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問50(表記を一部改変)

問51

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロジェクトマネジメントのプロセスのうち,計画のプロセス群に属するプロセスはどれか。

正解 ア

解説

JIS Q 21500:2018 は,プロジェクトマネジメントのプロセスを,立ち上げ・計画・実行・管理・終結の五つのプロセス群と,統合・ステークホルダ・スコープ・資源などの対象群の組合せで整理している。「スコープの定義」はスコープの対象群にあり,計画のプロセス群に置かれている。アが正しい。

イの品質保証の遂行は実行のプロセス群。ウのプロジェクト憲章の作成とエのプロジェクトチームの編成は,どちらも立ち上げのプロセス群に属する。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問51(表記を一部改変)

問52

表は,RACI チャートを用いた,ある組織の責任分担マトリックスである。条件を満たすように責任分担を見直すとき,適切なものはどれか。

〔条件〕

RACI チャートの表。要員は菊池,佐藤,鈴木,田中,山下の順。アクティビティ ① は R,C,A,C,C。② は R,R,I,A,C。③ は R,I,A,I,I。④ は R,A,C,A,I。

正解 エ

解説

RACI チャートの R は実行責任者,A は説明責任者,C は協議先,I は報告先である。条件は,各アクティビティで R が1人以上,A がちょうど1人。表では,①〜③は R が1人以上,A が1人ずつで条件を満たすが,④は佐藤と田中の二人が A になっていて,説明責任者が1人でない。田中を R に変更すると,④は R が菊池と田中,A が佐藤となって条件を満たす。エが正しい。

アは,①の R が菊池だけなので,I に変えると実行責任者がいなくなる。イは,②の A が田中なので,佐藤を A にすると A が2人になる。ウは,③の A が鈴木だけなので,C に変えると説明責任者がいなくなる。いずれも条件を破る。

責任分担マトリックス(RACI) 作業と人の表に,R(実行責任:作業をする),A(説明責任:最終的に責任を負う,1つの作業に1人),C(協議先:相談を受ける),I(報告先:結果を知らされる)を書き込む。 作業 PM 設計者 開発者 顧客 要件定義 A R I C 設計 A R C I 製造 A C R I R:実行責任 A:説明責任 C:協議先 I:報告先 役割と責任を作業ごとに明らかにする
A は1つの作業に1人だけ

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問52(表記を一部改変)

問53

プロジェクトのスケジュールを短縮したい。当初の計画は図1のとおりである。作業 E を作業 E1,E2,E3 に分けて,図2のとおりに計画を変更すると,スケジュールは全体で何日短縮できるか。

図1 当初の計画。アローダイアグラムで,作業と所要日数は A5,B8,C7,D7,E9,F5,G7,H4,I2。A のあと B と C に分かれ,B のあと D と E に分かれる。D のあとが G。C のあとが F。E と F が合流したあとに H,続いて I。G と I が同じ終点に入る。
図2 変更後の計画。図1の作業 E9 が E1(3日),E2(4日),E3(2日)に分かれている。B の終点から E1 と E2 が出て,E2 の終点から E1 の終点へダミー作業が引かれ,そこから E3 が F の終点へ入る。ほかの作業と所要日数は図1と同じ。

正解 ア

解説

図1のクリティカルパスは A→B→E→H→I で,5+8+9+4+2=28日。

図2では E が E1(3),E2(4),E3(2) に分割され,E3 の直前の結合点には E1 とダミー作業(E2 の後)が入る。B の完了時点(13日)から見ると,E1 経由は 3 日,E2 経由は 4 日で,遅いほうの 4 日で結合点に到達し,そこから E3 が 2 日かかる。よって B→H は 4+2=6日となり,A→B→E2→E3→H→I は 5+8+4+2+4+2=25日。もう一方の A→B→D→G は 5+8+7+7=27日なので,図2 全体は 27日。

28−27=1日短縮できる。

作業 E を分けて並行させると 当初は A→B→E→H→I が 28 日でクリティカルパス。E(9日)を E1(3日),E2(4日),E3(2日)に分け,E1 と E2 を並行させると,B の後から H の手前までが 4+2=6 日に縮まり,その経路は 25 日。代わって A→B→D→G の 27 日がクリティカルパスになり,全体は 1 日だけ縮む。 A 5 B 8 C 7 D 7 E1 3 E2 4 E3 2 F 5 G 7 H 4 I 2 0 / 0 5 / 5 13 / 13 12 / 16 20 / 20 16 / 19 17 / 27 18 / 21 22 / 25 27 / 27 変更前 28 日 → 変更後 27 日(1日短縮)
縮めた結果,別の経路(27 日)が新しいクリティカルパスになる

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問53(表記を一部改変)

問54

PMBOK ガイド 第6版によれば,リスクにはマイナスの影響を及ぼすリスク(脅威)とプラスの影響を及ぼすリスク(好機)がある。プラスの影響を及ぼすリスクに対する“強化”の戦略はどれか。

正解 エ

解説

PMBOK ガイド 第6版では,プラスの影響を及ぼすリスク(好機)への対応戦略として,エスカレーション,活用,共有,強化,受容が挙げられている。強化は,好機の発生確率や影響度,又はその両者を増大させて,好機から得られるベネフィットを大きくする戦略である。エが正しい。

アは,積極的な行動は取らずに好機が実現したときにベネフィットを享受する受容。イは,好機が確実に起こるようにする活用。ウは,好機のオーナーシップを第三者に移して,ベネフィットを分け合う共有の戦略である。

リスクへの対応の戦略 マイナスのリスク(脅威)には,回避(原因を取り除く・計画を変える),転嫁(保険や契約で第三者に移す),軽減(確率や影響を下げる),受容(何もしないか予備を持つ)。プラスのリスク(好機)には,活用(確実に起こす),共有(能力のある第三者と組む),強化(確率や影響を上げる),受容。 脅威(マイナス) 好機(プラス) なくす/確実に 回避 活用 他者へ 転嫁(保険など) 共有(組む) 小さく/大きく 軽減 強化 何もしない 受容 受容 保険を掛けるのは転嫁,計画を変えて避けるのは回避
脅威は回避・転嫁・軽減・受容,好機は活用・共有・強化・受容

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問54(表記を一部改変)

問55

プロジェクトメンバが16人のとき,1対1の総当たりでプロジェクトメンバ相互の顔合わせ会を行うためには,延べ何時間の顔合わせ会が必要か。ここで,顔合わせ会1回の所要時間は0.5時間とする。

正解 エ

解説

顔合わせ会の回数は,16人から2人を選ぶ組合せの数なので 16×15/2=120回。1回0.5時間なので延べ時間は 120×0.5=60時間になる。エが正しい。

延べ時間を問うているので,複数の組が同時に会えるかどうかは考えない。アの8は人数の半分,イの16は人数そのもので,どちらも組合せの数を求めていない。ウの30は,0.5時間を二重に掛けてしまったときに出る値である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問55(表記を一部改変)

問56

ITIL 2011 edition によれば,サービス・ポートフォリオの説明のうち,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

ITIL 2011 edition では,サービス・ポートフォリオは,サービス・プロバイダが管理する全てのサービスを表し,サービス・プロバイダの約束事項と投資を示すもので,検討中か開発中のサービス(サービス・パイプライン),稼働中か展開可能なサービス(サービス・カタログ),廃止済みサービスの全てを含む。アが適切である。

イはサービス・カタログの説明で,顧客に公開され,稼働中か展開可能なサービスだけを含む。ウは廃止済みを含まない,エは検討中か開発中を含まないとしており,どちらもサービス・ポートフォリオが三つの全てを含むことと合わない。

サービスポートフォリオの3つの部分 サービスポートフォリオは,提供者が管理する全てのサービスの一覧で,将来提供する予定の検討中・開発中のサービス(サービスパイプライン),稼働中で顧客が見られるサービス(サービスカタログ),提供を終えたサービス(廃止済みサービス)からなる。 サービスポートフォリオ(全てのサービス) サービスパイプライン 検討中・開発中 サービスカタログ 稼働中・顧客が見る 廃止済みサービス 提供を終えた 「将来提供する予定の開発中のサービス」はパイプライン
サービスカタログは,ポートフォリオのうち稼働中のサービスだけを載せたもの

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問56(表記を一部改変)

問57

フルバックアップ方式と差分バックアップ方式を用いた運用に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

差分バックアップは,直前のフルバックアップ以降に変更されたデータをバックアップする方式である。復旧時は,まずフルバックアップのデータで復元し,その後に最新の差分バックアップのデータを反映させる。イが適切である。

アは誤り。差分バックアップだけではフルバックアップ時点のデータがないので復元できず,フルバックアップだけで復旧するより手順が増える。ウは誤り。差分バックアップはフルバックアップと組み合わせて運用することが前提である。エは誤り。差分バックアップは変更分だけを取るので,毎回全データを取るフルバックアップより時間が短い。

フル・差分・増分バックアップ 日曜にフルバックアップを取る。差分バックアップは毎日,日曜のフル以降に変わった全てを取るので,日がたつほど量が増え,復旧はフルと最新の差分の2つで済む。増分バックアップは毎日,前日のバックアップ以降に変わった分だけを取るので量は少ないが,復旧にはフルとそれ以降の全ての増分が要る。 日 月 火 水 木 差分 フル 月 月〜火 月〜水 月〜木 増分 フル 月 火 水 木 木曜に復旧するとき 差分:フル+木の差分 増分:フル+月火水木の増分
差分は「フルから」,増分は「前回から」。復旧に使う数が違う

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問57(表記を一部改変)

問58

情報セキュリティ管理基準(平成28年)を基に,情報システム環境におけるマルウェア対策の実施状況について監査を実施した。判明したシステム運用担当者の対応状況のうち,監査人が,指摘事項として監査報告書に記載すべきものはどれか。

正解 ウ

解説

マルウェアから保護するための管理策としては,検出,予防,回復の対策に加えて,認可されていないソフトウェアの使用を禁止する方針を定めることが求められる(情報セキュリティ管理基準が拠り所とする JIS Q 27002:2014 の 12.2.1)。ウは,スキャンを実施しながら,組織として認可していないソフトウェアを使用しているので,基準に沿っておらず,指摘事項として記載すべきである。

アは Web ページのスキャンによるマルウェア検出,イは被害を想定した事業継続計画の策定,エは脆弱性の情報収集と修正コードの適用による低減で,いずれもマルウェア対策として適切に行われており,指摘事項にならない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問58(表記を一部改変)

問59

マスタファイル管理に関するシステム監査項目のうち,可用性に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

可用性は,必要なときにシステムやデータを使える度合いのこと。マスタファイルが置かれたサーバを二重化しておけば,片方が故障してももう一方で処理を続けられるので,これは可用性に関する監査項目に当たる。アが正しい。

イの検索・加工の機能は業務の効率性に関わる項目。ウの特権アカウントによるメンテナンスの制限は,権限のない者に触らせないという機密性の項目。エの入力チェック機能は,正しいデータだけを登録させるという完全性(正確性)の項目である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問59(表記を一部改変)

問60

システム監査人が行う改善提案のフォローアップとして,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

システム監査人は監査対象から独立した立場で監査を行うので,改善そのものを実施したり指示したりしてはならない。フォローアップでは,改善の実施は監査対象部門の責任に委ね,監査人はその進捗や結果を確かめる立場にとどまる。改善状況をモニタリングするというウが正しい。

アの改善の実施を指示すること,イの改善実施プロジェクトを管理すること,エの改善実施計画を策定することは,いずれも監査人が改善活動そのものに関与することになり,監査の独立性・客観性を損なう。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問60(表記を一部改変)

問61

エンタープライズアーキテクチャの“四つの分類体系”に含まれるアーキテクチャは,ビジネスアーキテクチャ,テクノロジアーキテクチャ,アプリケーションアーキテクチャともう一つはどれか。

正解 ウ

解説

エンタープライズアーキテクチャは,組織の全体像を四つの体系で捉える。業務のあり方を表すビジネスアーキテクチャ(政策・業務体系),扱う情報の構造を表すデータアーキテクチャ(データ体系),業務を支える情報システムの構成を表すアプリケーションアーキテクチャ(適用処理体系),それらを動かす基盤を表すテクノロジアーキテクチャ(技術体系)である。残る一つはウのデータアーキテクチャ。

アのシステムアーキテクチャ,イのソフトウェアアーキテクチャ,エのバスアーキテクチャは,いずれもこの四つの分類体系には含まれない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問61(表記を一部改変)

問62

業務システムの構築に際し,オープン API を活用する構築手法の説明はどれか。

正解 ウ

解説

オープン API は,接続仕様や仕組みを外部企業などに公開した API で,これを呼び出して他社のアプリケーションソフトウェアの機能やデータを適宜利用し,データ連携を行いながらシステムを構築する手法がある。ウが正しい。

アは,システムの概要や予算を告知してアウトソース先を公募する調達の方法。イは,構築テーマを公開して不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング。エは,標準的なハードウェアに仮想化を適用してソフトウェアで構成する,ソフトウェア定義型インフラなどの構築手法である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問62(表記を一部改変)

問63

レコメンデーション(お勧め商品の提案)の例のうち,協調フィルタリングを用いたものはどれか。

正解 ア

解説

協調フィルタリングは,利用者どうしの購買や評価の傾向が似ていることを手掛かりに,似た利用者が買っている商品を勧める方式である。商品そのものの属性ではなく,利用者の行動の類似性を使う点が特徴で,アが該当する。

イは売れ筋のランキングを出しているだけで,利用者ごとに変わらない。ウは年齢や性別といった属性で区切るデモグラフィックによる推薦。エは一緒に買われやすい商品の組合せを使うアソシエーション分析(バスケット分析)による推薦である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問63(表記を一部改変)

問64

情報システムの調達の際に作成される RFI の説明はどれか。

正解 ア

解説

RFI(Request For Information,情報提供依頼書)は,調達の検討段階で,実現手段や技術動向などの情報提供をベンダに依頼する文書。提案を求める前の情報収集が目的。

イは RFP(提案依頼書)の説明。ウとエは契約変更や契約締結に関するもので,いずれも RFI ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問64(表記を一部改変)

問65

国や地方公共団体が,環境への配慮を積極的に行っていると評価されている製品・サービスを選んでいる。この取組を何というか。

正解 エ

解説

グリーン購入は,国や地方公共団体,企業などが,製品やサービスを購入するときに,価格や品質だけでなく環境への負荷が小さいものを優先して選ぶ取組である。日本ではグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)が,国などの機関にこれを求めている。エが正しい。

アの CSR は,企業が社会的責任を果たす経営の考え方。イのエコマーク認定は,環境への負荷が少ない商品に付けられるマークの認定で,選ぶ側の取組ではない。ウの環境アセスメントは,開発事業が環境に与える影響を事前に調査・予測・評価することである。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問65(表記を一部改変)

問66

システム開発委託契約の委託報酬におけるレベニューシェア契約の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

レベニューシェア契約は,システム開発の委託報酬を,そのシステムが生む収益をあらかじめ決めた配分率で分け合う形で支払う契約。受託側は収益が上がらなければ報酬も少ないというリスクを負う代わりに,成功すれば通常の委託報酬を上回る収入が得られる。ウが正しい。

アとイは収益と無関係に費用を負担する形で,従来型の請負契約や準委任契約に当たる。エの受託側が継続的に固定額の収益を得るという形も,収益に応じて取り分が変わるレベニューシェアの特徴ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問66(表記を一部改変)

問67

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)マトリックスの a,b に入れる語句の適切な組合せはどれか。

PPM マトリックス。縦軸が a で上が高,下が低。横軸が b で左が高,右が低。左上が花形,右上が問題児,左下が金のなる木,右下が負け犬。

正解 ウ

解説

PPM は,縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場占有率をとって事業を四つに分ける。図では縦軸の上が高,横軸の左が高になっており,左上が花形(成長率も占有率も高い),右上が問題児(成長率は高いが占有率が低い),左下が金のなる木(成長率は低いが占有率が高い),右下が負け犬に当たる。この配置に合うのは a が市場成長率,b が市場占有率のウ。

エのように a と b を入れ替えると,成長率が高く占有率の低い区画が「金のなる木」になってしまい,四つの区画の意味と合わなくなる。アとイの売上高利益率は PPM の軸には使わない。

PPM の4つの区分 縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場シェア(左が高い)をとる。成長率もシェアも高い花形,成長率が高くシェアが低い問題児,成長率が低くシェアが高い金のなる木,どちらも低い負け犬に分ける。金のなる木が生んだ資金を,花形や問題児に回す。 花形 成長に合わせた投資も要る 問題児 シェアを取るには投資が要る 金のなる木 投資が少なく資金を生む 負け犬 撤退を考える 高 低 成長率 市場 高 低 相対的市場シェア 金のなる木の資金を,花形と問題児へ回す
金のなる木が生む資金を,花形と問題児に回す

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問67(表記を一部改変)

問68

企業の競争戦略におけるフォロワ戦略はどれか。

正解 ウ

解説

フォロワは,市場で上位企業に追随する立場の企業である。目標とする企業の戦略を観察して迅速に模倣することで,開発や広告に掛かるコストを抑え,市場での存続を図る。ウが該当する。

アの上位企業のシェアを奪うことを目標にあらゆる面で差別化を図るのはチャレンジャの戦略。イの大手が参入しない専門特化した市場に経営資源を集中するのはニッチャの戦略。エの利潤や名声の維持と最適シェアの確保を目標に全ての顧客を狙う全方位戦略はリーダの戦略である。

競争地位別の戦略(コトラー) 経営資源の量と質で4つに分ける。リーダは市場全体を広げ,全方位でシェアを守る。チャレンジャはリーダのシェアを奪うため,あらゆる面で差別化する。フォロワは上位企業をすばやく模倣してコストを抑える。ニッチャは大手が狙わない特定の顧客・製品に資源を集中して専門化する。 リーダ 市場拡大・全方位 チャレンジャ 差別化でシェアを奪う ニッチャ 特定の顧客・製品に集中 フォロワ 模倣してコストを抑える 質 高 質 低 量 大 量 小 経営資源の量(大・小)と質(高・低)
ニッチャは特定のセグメントに集中,フォロワは模倣

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問68(表記を一部改変)

問69

ジェフリー・A・ムーアはキャズム理論において,利用者の行動様式に大きな変化をもたらすハイテク製品では,イノベータ理論の五つの区分の間に断絶があると主張し,その中でも特に乗り越えるのが困難な深く大きな溝を“キャズム”と呼んでいる。“キャズム”が存在する場所はどれか。

正解 イ

解説

イノベータ理論では,新製品の採用者をイノベータ,アーリーアダプタ,アーリーマジョリティ,レイトマジョリティ,ラガードの五つに区分する。ムーアは,新しさ自体に価値を見いだす初期市場と,実用性や周囲での実績を重んじるメインストリーム市場とでは購買の動機が大きく異なるため,その境目に深く大きな溝があるとした。境目はアーリーアダプタとアーリーマジョリティの間なので,イが正しい。

他の三つの区分の間にも断絶(クラック)はあるとされるが,ムーアがキャズムと呼んだのは初期市場とメインストリーム市場との境目だけである。ア,ウ,エはいずれも初期市場の内部,又はメインストリーム市場の内部の区切りであり,該当しない。

イノベータ理論とキャズム 新しい製品を採用する人を,早い順にイノベータ(2.5%),アーリーアダプタ(13.5%),アーリーマジョリティ(34%),レイトマジョリティ(34%),ラガード(16%)に分ける。アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間には大きな溝(キャズム)があり,これを越えないと市場に広がらない。 キャズム イノベータ アーリー アダプタ アーリー マジョリティ レイト マジョリティ ラガード
アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間の溝がキャズム

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問69(表記を一部改変)

問70

バランススコアカードの四つの視点とは,財務,学習と成長,内部ビジネスプロセスと,もう一つはどれか。

正解 イ

解説

バランススコアカードは,企業の業績を財務の数字だけで測らず,財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点から評価する仕組み。残る一つはイの顧客の視点で,顧客満足度やシェアなど,顧客からどう見られているかを測る。

四つの視点は,学習と成長が内部ビジネスプロセスを支え,それが顧客の評価につながり,最終的に財務の成果に結び付くという因果関係で結ばれている。アのガバナンス,ウの自社の強み,エの遵法は,いずれもこの四つには含まれない。

バランススコアカードの4つの視点と戦略マップ 下から学習と成長,内部ビジネスプロセス,顧客,財務の4つの視点を積み上げる。専門人材を育てると出荷までの日数を縮められ,顧客満足度が上がり,売上高が伸びる,という因果関係を矢印でつないだものが戦略マップ。各視点に目標と指標(KPI)を置く。 財務 売上高を伸ばす 売上高・利益率 顧客 顧客満足度を上げる 顧客満足度・シェア 内部ビジネスプロセス 出荷を速くする 出荷までの日数 学習と成長 専門人材を育てる 育成人数・特許件数
下の視点の成果が上の視点の成果につながる(因果関係)

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問70(表記を一部改変)

問71

“技術の S カーブ”の説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

技術の S カーブは,技術の進歩の過程を表す曲線で,初めは研究開発に努力を注いでも性能の向上は緩やかだが,ある時点から急速に進歩し,成熟期に入ると限界に近づいて進歩が停滞する。進歩を時間に対して描くと S 字形になることからこう呼ばれる。イが適切である。

アは技術に対する期待の変化を表すハイプサイクル,ウは累積生産量が増えるほど単位当たりのコストが下がり生産性が向上する経験曲線(学習曲線),エは故障率の時間的変化を表すバスタブ曲線の説明である。

技術の S カーブ 技術の性能は,導入の初めは努力の割に伸びが小さく,ある時点から急に伸び,やがて限界に近づいて伸びが鈍る(S 字)。成熟した技術に努力を続けても伸びは小さいので,新しい技術の S カーブに乗り換える時期を見極める。 研究開発の努力(時間) 性能 導入期 成長期 成熟期 新しい技術 乗り換え
導入期は緩やか,成長期に急伸,成熟期に頭打ち。次の技術へ乗り換える

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問71(表記を一部改変)

問72

政府は,IoT を始めとする様々な ICT が最大限に活用され,サイバー空間とフィジカル空間とが融合された“超スマート社会”の実現を推進してきた。必要なものやサービスが人々に過不足なく提供され,年齢や性別などの違いにかかわらず,誰もが快適に生活することができるとされる“超スマート社会”実現への取組は何と呼ばれているか。

正解 イ

解説

Society 5.0 は,第5期科学技術基本計画(平成28年)で政府が提唱した,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた“超スマート社会”の実現に向けた取組の名称。狩猟社会,農耕社会,工業社会,情報社会に続く5番目の社会という意味でこう呼ぶ。イが正しい。

アの e-Gov は行政情報の総合窓口となるポータルサイト。ウの Web 2.0 は利用者が情報を発信し合う形へと変わった Web の潮流を指す言葉。エのダイバーシティ社会は多様な人材が活躍できる社会を指す言葉で,いずれも政府の“超スマート社会”実現への取組の名称ではない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問72(表記を一部改変)

問73

SNS や Web 検索などに関して,イーライ・パリサーが提唱したフィルタバブルの記述として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

フィルタバブルは,イーライ・パリサーが提唱した概念である。SNS や検索エンジンが利用者の属性や過去の閲覧・検索の履歴などを基に,その利用者が好むと考えられる情報を優先して表示するので,利用者は自分の関心や考えに合う情報に囲まれ,泡(バブル)に包まれたように実社会の多様な情報から隔てられてしまう。エが該当する。

アは機器やソフトウェアの違いによって情報の入手に格差が生じるデジタルデバイドに近い内容,イは情報が多すぎて必要な情報を選べなくなる情報過多,ウは事実と異なるフェイクニュースの説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問73(表記を一部改変)

問74

アグリゲーションサービスに関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

アグリゲーションサービスは,別々の事業者に分散しているサービスや情報への窓口を一つにまとめ,比較したり,まとめて表示したり,最適な組合せを提示したりして,ワンストップで利用できるようにするサービス。複数の金融機関の口座残高をまとめて表示する家計簿サービスなどが例になる。ウが正しい。

アは店舗と EC など全ての顧客接点を統合するオムニチャネル,イは第三者が代金決済を仲介するエスクローサービス,エは本部と加盟店の関係を示すフランチャイズの説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問74(表記を一部改変)

問75

ハーシィ及びブランチャードが提唱した SL 理論の説明はどれか。

正解 イ

解説

ハーシィ及びブランチャードが提唱した SL 理論(Situational Leadership theory)は,唯一最適なリーダシップは存在せず,有効なスタイルは部下の成熟度によって変わるとする理論である。成熟度が低い順に,細かく指示する教示的,説明して納得させる説得的,意思決定に加わってもらう参加的,任せる委任的の四つにスタイルを分ける。イが正しい。

アは,自分が知っているか,他人が知っているかの組合せで四つの窓に分けて自己理解と対人関係を説明するジョハリの窓である。ウは,共同化,表出化,連結化,内面化のプロセスで知識が創造されるとする SECI モデルである。エは,マズローの欲求段階説である。

SL 理論(状況対応リーダーシップ) ハーシィとブランチャードの SL 理論は,最適なリーダーシップは部下の成熟度によって変わるとする。成熟度が低いと細かく指示する教示的,少し上がると説明して納得させる説得的,さらに上がると意思決定に加える参加的,十分に高いと任せる委任的なスタイルが有効。 教示的 細かく指示 説得的 説明し納得 参加的 決定に加える 委任的 任せる 部下の成熟度 低 → 高 ジョハリの窓・SECI・欲求5段階とは別のもの
部下の成熟度が上がるにつれ,教示的 → 説得的 → 参加的 → 委任的

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問75(表記を一部改変)

問76

系統図法の活用例はどれか。

正解 エ

解説

系統図法は,目的を達成するための手段を導き出し,更にその手段を実施するための手段を考える,ということを繰り返して,目的から手段へと樹形図状に展開・細分化していく手法で,新 QC 七つ道具の一つである。エが適切である。

アは,要因の因果関係を矢印でつないで原因を探る連関図法。イは,結果と要因の関連を魚の骨の形に整理する特性要因図。ウは,事実や意見をカードに書いて親和性でグループ化し,問題を明確にする親和図法(KJ 法)の説明である。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問76(表記を一部改変)

問77

キャッシュフロー計算書において,営業活動によるキャッシュフローに該当するものはどれか。

正解 イ

解説

営業活動によるキャッシュフローは,商品の販売による収入や,商品の仕入,人件費などの支出といった,本業の営業活動に伴う資金の出入りである。イの商品の仕入による支出が該当する。

アの株式の発行による収入と,ウの短期借入金の返済による支出は,資金の調達や返済に伴うもので財務活動によるキャッシュフロー。エの有形固定資産の売却による収入は,設備などの取得や売却に伴うもので投資活動によるキャッシュフローに該当する。

キャッシュフロー計算書の3つの区分 営業活動は本業の資金の出入り(商品の販売による収入,商品の仕入や人件費の支出)。投資活動は設備や有価証券など将来のための資金の出入り(有形固定資産の取得・売却)。財務活動は資金の調達と返済(借入れとその返済,株式の発行,配当の支払)。 区分 主な例 営業活動 商品の販売の収入・仕入や人件費の支出 投資活動 有形固定資産・有価証券の取得と売却 財務活動 借入れと返済・株式の発行・配当 株式の発行は財務,固定資産の売却は投資
本業か,設備・証券か,借入れ・株式か

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問77(表記を一部改変)

問78

不正競争防止法で禁止されている行為はどれか。

正解 エ

解説

不正競争防止法は,広く知られた他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用して,他人の商品と混同させる行為(周知表示混同惹起行為,第2条第1項第1号)を不正競争として禁止している。エが禁止されている行為である。

アの小売価格を安価に設定する行為は,原価を著しく下回るなどの不当廉売でない限り自由である。イの小売価格を指定して販売させる行為は,独占禁止法が問題とする再販売価格の拘束に当たる。ウの商品名や形状の異なる同等機能の商品を販売する行為は,他人の商品の形態を模倣したものではないので,不正競争防止法では禁止されない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問78(表記を一部改変)

問79

特定電子メール法における規制の対象に関する説明のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

特定電子メール法は,広告又は宣伝を行うための手段として送信される電子メールを特定電子メールとして規制する。規制の対象となる電子メールには,電子メールアドレスを宛先とするものに加えて,携帯電話の電話番号を宛先とするショートメッセージサービス(SMS)も含まれるので,SMS で広告又は宣伝を送る場合は規制の対象である。イが適切である。

アの海外の電気通信設備から国内に送信される電子メールも,広告又は宣伝が含まれていれば規制の対象である。ウの政治団体が政策の普及や啓発のために送信するメールは,営業の広告又は宣伝ではないので,対象にならない。エの取引関係に係る通知は,広告又は宣伝が含まれていない限り,特定電子メールに当たらない。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問79(表記を一部改変)

問80

電子署名法に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

電子署名法第3条は,本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより,本人だけが行うことができるものに限る)が行われた電磁的記録は,真正に成立したものと推定すると定めている。これは民事訴訟法第228条第4項が,本人の署名又は押印のある私文書について定める推定と同じ働きをするので,イが正しい。

アは,同法第2条が電子署名を電磁的記録に記録できる情報について行う措置と定めているので誤り。ウは,認証業務を政府の認証局に限る規定はなく,民間の事業者も行える(一定の基準を満たすものを国が認定する特定認証業務の制度がある)。エは,法律は特定の暗号技術を要求しておらず,実際に広く使われているのは公開鍵暗号によるものである。

出典:令和3年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問80(表記を一部改変)