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ITストラテジスト 午後Ⅱの書き方

ITストラテジスト試験の午後Ⅱは,自分の経験をもとに2時間で答案を書く論述式です。 このページでは,当サイトが収録している16年度分・46問の出題テーマと採点講評を読み比べて, 出題の傾向,くり返し指摘されていること,設問ア〜ウの書き方をまとめます。 最後に,令和7年度の2問について骨子(答案の設計図)の例を載せます。

午後Ⅱの形

時間配分や練習の進め方など,区分によらない進め方は高度試験の勉強方法にまとめています。

出題テーマの傾向

平成21年度から令和7年度までの問題名(組込みシステムの問3を除く)を並べると,問われる場面は次のように分けられます。 どの場面でも,経営や事業の課題から出発して,IT で何をどう変えるかを問う点は共通しています。

場面問題名の例
事業戦略・ビジネスモデル ITを活用した事業戦略の策定(平成24年度),事業目標の達成を目指すIT戦略の策定(平成30年度),ITを活用したビジネスモデル策定の支援(令和元年度),新しいビジネスモデルの策定(令和6年度)
DX・業務の改革 ITを活用した業務改革(平成26年度),デジタルトランスフォーメーションを実現するための新サービスの企画(令和3年度),DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた新たな情報技術の採用(令和6年度),DXの企画策定(令和7年度)
新サービス・データ活用 経営戦略実現に向けた戦略的なデータ活用(平成25年度),ビッグデータを活用した革新的な新サービスの提案(平成28年度),ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画(令和4年度)
システム化構想・計画 事業環境の変化を考慮した個別システム化構想の策定(平成22年度),個別システム化構想におけるステークホルダの意見調整(令和3年度),基幹システムの再構築における開発の優先順位付け(令和4年度),基幹システムの刷新方針の策定(令和7年度)
投資効果・評価・分析 IT導入の企画における業務分析(平成28年度),IT導入の企画における投資効果の検討(平成29年度),情報システムの目標達成の評価(平成29年度),ITシステムに関わる改修要望の分析と対応方針の立案(令和5年度)

令和3年度以降は,DX(令和3・6・7年度)や新しいビジネスモデル(令和6年度)を扱う問題が目立ちます。 一方で,基幹システムの再構築・刷新のようなシステム化構想・計画の問題もくり返し出ています。 題材は,新しい事業やサービスを企画した経験と,既存システムの構想・計画に関わった経験の両方を用意しておくと安心です。

令和5年度までの問3(組込みシステム)は,令和6年度から出題されていません。

採点講評でくり返し指摘されていること

IPA は毎年,採点講評で答案の傾向を公表しています。年度をまたいで読み比べると,同じ指摘が何度も出てきます。 裏を返せば,ここを避けるだけで答案の評価は上がりやすいということです。

1. 答案用紙の「概要」の欄が不十分,または本文と食い違う

平成24年度から令和7年度までの13回のうち12回,全問に共通する講評で指摘されています。 令和7年度の講評は「“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”が適切に記述されていないものやシステム規模,総額などの整合性がとれないものが散見された」としています。

概要の欄は評価の対象です。本文で書く金額・期間・人数・システムの規模と,欄に書いた数字が一致しているかを,見直しの時間に必ず確かめます。 題材を用意するときに,概要の欄に書く項目まで決めておくと食い違いが起きにくくなります。

2. 経営の話ではなく,システム導入の話になっている

ST の講評で特に多い指摘です。業務改善やシステム導入に終始している,使った技術を挙げるだけで経営課題とのつながりがない,といった答案が多くの年度で挙げられています。 令和元年度の講評は「ディジタル技術を活用したシステム導入に終始している論述も少なくなかった」, 令和6年度の講評は「デジタル技術の導入に終始している論述も散見された」と書いています。 令和4年度の講評は,クラウドやマイクロサービスの活用だけを書いた論述を挙げたうえで「ITストラテジストとして,それらがどのように経営課題を解決するかを具体的に論述してほしい。」としています。

技術や仕組みを書いたら,必ず「それで経営・事業の何が変わるのか」を続けて書きます。 「クラウドに移した」ではなく,「保守費を〇割減らし,その分を新サービスの投資に回せるようにした」の形です。

3. 投資効果や AI の中身が具体的でない

平成30年度の講評は「投資効果について,前提条件,算出根拠や実現可能性などを具体的かつ定量的に記述できていない論述も少なくなかった」としています。 最近では AI についての指摘が増え,令和6年度は全問に共通して「活用したAIについて具体性に乏しい論述が散見された」, 令和7年度は「AIは万能という論調で論述して,AIの中身に具体性のない論述などが散見された」とされています。

投資効果は,金額と,その金額を出した前提(件数・単価・削減時間など)をセットで書きます。 AI を使うなら,何のデータで何を予測・判定し,その結果を業務の誰がどう使うのかまで書きます。

4. 経営層や事業部門とのやり取りが書かれていない

ST の設問ウは,経営層や事業部門への提案・説明と,その評価を問うことがほとんどです(組込みの問3を除く32問のうち24問)。 令和7年度の講評は,対応策について「ITストラテジストの考えだけを論述し,経営層や事業部門との協議内容が論述されていないものが見受けられた」としています。

「誰に,何を説明し,どんな指摘を受け,それを受けて何を直したか」を,相手の立場が分かるように書きます。 指摘を受けて直したことは,評価のどの点を受けて,計画のどこを変えたのかが対応して見えるようにします。

5. 字数が足りない

平成27・28年度は「解答字数の不足した答案」,令和4・5年度は「字数が少なくて経験や考えを十分に表現できていない論述も目立った」と,全問に共通する講評で指摘されています。 設問イ・ウは字数の下限(800字・600字)があるので,時間配分を決めて書き切る練習をしておきます。

設問ア〜ウの書き方

設問ア:事業の概要・特性と課題(400〜800字)

ST の設問アは,事業の概要と事業特性を問うことが多いのが特徴です(組込みの問3を除く32問のうち25問)。 システムの説明から入らず,まず「どんな事業で,何が強みで,どんな経営課題を抱えているか」を書きます。

設問イ:何を企画・策定したか(800〜1,600字)

答案の中心です。「経営課題 → 検討した案 → 選んだ案と理由 → 経営上の効果」の流れで書きます。

設問ウ:経営層・事業部門への説明と評価(600〜1,200字)

骨子の例:令和7年度

骨子は,書き始める前に作る答案の設計図です。本番では構成に15分ほどかけ, 設問ごとに「何を,どの順で書くか」をメモしてから書き始めます。

ここに載せる骨子は,書き方を示すために運営者が作った架空の事例です。 IPA の解答例ではありません(IPA は午後Ⅱの解答例を公表していません)。 実際の答案は,自分が関わった事業とシステムで組み立ててください。

問1 基幹システムの刷新方針の策定について

題材の例:住宅設備機器のメーカ(売上約300億円)で,20年以上改修を重ねてきた販売・生産の基幹システムの刷新方針を策定した。

設問書くこと(字数の目安)
ア
  • 事業:工務店経由で受注生産。短納期が競争力で,リフォーム市場の拡大が成長の鍵
  • 基幹システム:自社開発の販売・生産管理システム。改修のたびに影響調査に時間がかかる
  • 課題(経営上の課題として書く):①保守の担当者4名のうち3名が5年以内に定年を迎え,スキルを継げない ②保守費が IT 予算の約8割を占め,ネット受注などの新サービスに投資できない(約700字)
イ
  • 刷新方針:販売・在庫は業界向けのパッケージを使い,業務をパッケージの標準に合わせる。差別化の源泉である生産計画だけは新たに作り直し,パッケージとは API でつなぐ
  • 必要性:現行の改修を続ける案・全面を作り直す案と比べた。改修では構造の複雑さと要員の問題が残り,全面の作り直しは費用と期間が大きすぎる
  • 経営上の有効性:保守費を約3割減らし,その分をリフォーム向けのネット受注に回せる。受注から出荷までの日数も短くなる
  • 工夫:販売を1年目,生産を2年目に移す段階的な移行にした。標準から外れる業務は,経営への影響で例外を認める基準を決めた(約1,300字)
ウ
  • 事業部門との交渉・調整:営業部門は独自の値引き処理を残したいと主張した。値引き理由の入力だけを追加し,処理はパッケージの標準に合わせることで合意した。工場には,生産を2年目に回して繁忙期を避けることを示し,協力を得た
  • 経営層への説明:現行を維持した場合の要員リスクと保守費の5年間の推移を,刷新した場合と並べて示した
  • 評価と改善:「効果が保守費の削減に偏り,売上への寄与が見えない」と指摘を受け,ネット受注の開始を半年早め,受注から出荷までの日数を方針の目標(KPI)に加えた(約800字)

ポイント:講評が挙げた「基幹システムの技術的な課題の解決だけを目指して,古いIT基盤をクラウド基盤に更改するなどの論述」を避けるため, アの課題を経営上の課題(人材・投資余力)として書き,イの有効性をその課題の解決として書いています。

問2 DXの企画策定について

題材の例:首都圏の中小スーパー約300店に日配品を卸す食品卸で,配送の仕組みを変える DX の企画を策定した。

設問書くこと(字数の目安)
ア
  • 事業特性:低単価・多頻度・小口の配送で,利益率は1%台。店舗からの発注は電話と FAX が中心
  • 経営課題:ドライバー不足と配送コストの上昇で,いまの配送回数を維持できない
  • 必要となった変革:店舗の注文を待って運ぶ取引から,店舗の販売データをもとに卸が補充量を決めて計画的に運ぶ取引へ変える。営業の役割も,注文を受けることから売場を提案することへ変える(約700字)
イ
  • デジタル技術とデータの貢献:店舗の POS データを受け取る連携基盤を作り,商品ごとの需要予測から補充量と配送計画を自動で作る。配送便を約2割減らせる見込み
  • 役割分担:営業部門が店舗との合意,物流部門が配送計画のルール,情報システム部門が基盤,管理部門が取引条件の契約を担う
  • 投資金額:初期投資約1.8億円,年間の運用費約3,000万円。配送費の削減で4年での回収を見込む
  • 工夫:全店一斉ではなく,データの提供に同意した30店で先に始め,効果を数字で示してから広げる計画にした。予測は最初は「発注数の提案」として人が確認し,誤差が基準以下になった商品から自動の補充に切り替える(約1,300字)
ウ
  • 想定した阻害要因:①店舗が POS データの提供に消極的(外部組織との連携) ②受注件数で評価されてきた営業部門が,役割の変化を受け入れにくい(組織と人)
  • 対応策と取り入れた意思:①経営層の「既存の取引先との関係を損なわない」という意思を受け,データを提供する店舗には欠品率の報告と配送料の割引を示すことにした ②営業部門の「売上の責任は持ち続けたい」という意思を受け,評価指標を受注件数から担当店舗の欠品率と粗利に変える案を人事部と協議し,企画に盛り込んだ(約800字)

ポイント:講評が挙げた「デジタル技術の導入,データ活用について終始し,変革については曖昧な論述」を避けるため, アで「何を,どう変えるか」(取引の仕組みと営業の役割)をはっきり書いています。 ウは,講評の指摘を受けて,経営層・営業部門それぞれの意思を対応策のどこに取り入れたかを書いています。

過去の出題テーマ

当サイトに収録している ST の午後Ⅱの問題名です。年度を選ぶと,問題文・出題趣旨・採点講評を読めます。

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