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ITサービスマネージャ 午後Ⅱの書き方

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱは,自分の経験をもとに2時間で答案を書く論述式です。 このページでは,当サイトが収録している16年度分・36問の出題テーマと採点講評を読み比べて, 出題の傾向,くり返し指摘されていること,設問ア〜ウの書き方をまとめます。 最後に,令和7年度の2問について骨子(答案の設計図)の例を載せます。

午後Ⅱの形

時間配分や練習の進め方など,区分によらない進め方は高度試験の勉強方法にまとめています。

出題テーマの傾向

平成21年度から令和7年度までの問題名を並べると,ITサービスマネジメントのプロセスごとに次のように分けられます。 令和6年度の講評が「ITサービスマネージャが経験を積んでいる変更管理と問題管理をテーマに出題した」と書いているように, 日々の運用で実際に回しているプロセスが題材になります。

場面問題名の例
変更・リリース・移行 変更管理プロセスの確実な実施(平成21年度),ITサービスの移行(平成26年度),リリース及び展開の計画(令和5年度),環境の変化に対応するための変更管理プロセスの改善(令和6年度)
インシデント・問題管理 事前予防的な問題管理(平成21年度),重大なインシデントに対するサービス回復時の対応(平成24年度),重大なインシデント発生時のコミュニケーション(令和元年度),サービス運用におけるヒューマンエラーに起因する障害の管理(令和6年度)
サービスレベル・可用性・継続性 キャパシティ管理(平成23年度),サービスレベルが未達となる兆候への対応(平成25年度),サービス可用性管理の活動(令和3年度),災害に備えたITサービス継続計画(令和4年度),サービスレベル管理におけるサービスレベルの合意(令和5年度)
顧客との関係 ITサービスに関する顧客への報告(平成23年度),ITサービスの提供における顧客満足の向上を図る活動(平成29年度),事業関係管理におけるコミュニケーション(令和3年度),顧客満足を向上させるための活動(令和7年度)
供給者・要員・改善 外部委託業務の品質の確保(平成25年度),外部サービス利用における供給者管理(平成27年度),ITサービスを提供する要員の育成(平成28年度),ITサービスの運用品質を改善する取組(令和4年度),クラウドサービスを活用したITサービスのサービスマネジメント活動(令和7年度)

変更管理・インシデント・顧客満足のように,同じテーマが数年おきに形を変えて出るのが SM の特徴です。 題材は,障害対応やプロセスの改善のような運用の経験と,顧客や供給者とやり取りした経験の両方を用意しておくと,どちらの問題にも対応しやすくなります。

採点講評でくり返し指摘されていること

IPA は毎年,採点講評で答案の傾向を公表しています。年度をまたいで読み比べると,同じ指摘が何度も出てきます。 裏を返せば,ここを避けるだけで答案の評価は上がりやすいということです。

1. マネジメントではなく,作業の報告になっている

SM の講評で特に多い指摘です。平成21・22年度,令和3〜5年度の全問に共通する講評で取り上げられています。 令和4年度の講評は「ITサービスマネージャとしてのマネジメント活動が伺える具体的な論述を求めたが,単なる作業報告に過ぎないものが散見された」, 令和3年度の講評は「担当者目線での作業内容になっていて,ITサービスマネージャとしての視点が足りない論述も散見された」としています。

「〇〇を実施した」で終わらせず,なぜそう判断したのか,関係者をどう動かしたのか,結果をどう確かめたのかを書きます。 自分が手を動かした作業より,目標を決めて,人とプロセスを回した話を中心にします。

2. 「ITサービスの概要」がシステムの説明になっている

SM の設問アは,収録している36問すべてで「ITサービスの概要」を問うています。 ところが,平成23年度から平成28年度まで6回続けて,この概要がシステムの機能や構成の説明にとどまっている答案が指摘されました。 平成23年度の講評は「ITサービスマネージャとして顧客や利用者などに提供するITサービスについて記述する必要があり,システムの機能や構成を記述するとしてもあくまでも補足的であるべき」, 平成26年度の講評は「JISではサービスを“顧客に価値を提供する手段”としている。」と書いています。

ITサービスの概要は,誰に(顧客・利用者),何を(どんな価値を),どのような水準で(提供時間・サービスレベル)提供しているかを中心に書きます。 システムの構成は,設問イで必要になる範囲で補足する程度にします。

3. 根本原因まで掘り下げていない

障害や問題を扱う問題で,直接の原因で分析を止めてしまう答案がくり返し指摘されています。 令和6年度の講評は「ヒューマンエラーの根本原因を“不注意,知識不足,思い込み,慣れ,過労”としている論述が多く,分析が不足している論述が多かった」としています。 平成26年度も,手順書の不備や作業ミスを原因とした改善策にとどまる答案について,「そのような状況となっている根本原因を究明し対策を立てるということに踏み込んでほしかった」と書いています。

「なぜその不備が生まれたのか」「なぜ見逃されたのか」を,プロセスや仕組みの問題になるまで問い直して書きます。

4. 問題文の例をなぞっている

平成21年度から平成26年度にかけて,多くの問題で「問題文からの引用程度」「問題文中の例をなぞった程度」の答案が指摘されています。 平成25年度の講評は,問題文の例を引用しただけの論述について「実経験に基づいているのか疑わしいものも見受けられた」としています。 問題文の例は,自分の題材ではそれが具体的に何だったのかに置き換えて書きます。

5. 改善が一過性で,継続の仕組みや数字がない

平成27年度の全問に共通する講評は「“継続”して行っていくための考えや仕組みを述べたものはほとんどなかった」としています。 令和3・4年度は,測定項目や管理指標が明確でない答案が挙げられています。 目標値と測定のしかたを決め,結果を次の計画にどう生かしたか(PDCA)まで書くと,SM らしい答案になります。

6. システム開発の話になっている

令和7年度の全問に共通する講評は「サービスマネジメントの活動ではなく,システム開発の活動をベースとした論述も見受けられた」としています。 問2でも,クラウドサービスのアプリケーション機能の改修のように,サービスマネジメント上の問題の解決になっていない対応策が挙げられました。 対応策は,プロセスの見直し,供給者との協議,体制や手順の整備など,サービスマネジメントの手段で書きます。

設問ア〜ウの書き方

設問ア:ITサービスの概要と状況(400〜800字)

設問イ:分析と対応策(800〜1,600字)

答案の中心です。「状況 → 分析(根本原因・ギャップ) → 対応策 → 決めるときの工夫」の流れで書きます。

設問ウ:評価と今後の改善(600〜1,200字)

SM の設問ウは,評価や今後の課題・改善を問うことがほとんどです(36問のうち26問)。

骨子の例:令和7年度

骨子は,書き始める前に作る答案の設計図です。本番では構成に15分ほどかけ, 設問ごとに「何を,どの順で書くか」をメモしてから書き始めます。

ここに載せる骨子は,書き方を示すために運営者が作った架空の事例です。 IPA の解答例ではありません(IPA は午後Ⅱの解答例を公表していません)。 実際の答案は,自分が関わった ITサービスで組み立ててください。

問1 顧客満足を向上させるための活動について

題材の例:運送会社向けに,配車管理システムの運用サービスを提供している(自分はサービス提供者側の ITサービスマネージャ)。

設問書くこと(字数の目安)
ア
  • ITサービス:配車担当者約200人とドライバー約800人が使う配車管理を,24時間提供。サービスレベルは稼働率99.9%,問い合わせの一次回答30分以内
  • 期待を把握する活動:顧客の物流企画部との四半期ごとの事業関係ミーティング
  • 評価を把握する活動:月次のサービス報告会と,年1回の満足度調査(約700字)
イ
  • 把握した内容:サービスレベルは12か月続けて達成していたのに,満足度は5段階で2.8(前年3.5)に下がった。理由の欄には「夕方に問い合わせの回答が遅い」が多かった。ミーティングでは,顧客が翌年度から当日配送を始めると分かった
  • 分析:問い合わせを時間帯別に集計すると16〜19時に集中し,その4割が配車変更の操作方法だった。一次回答は SLA の月平均では満たしていたが,夕方だけを見ると平均45分かかっていた。当日配送が始まれば,夕方の配車変更はさらに増える
  • 改善計画:①16〜19時のサービスデスクの増員と,配車変更の FAQ の整備 ②時間帯別の一次回答時間をサービスレベル項目に加える提案 ③当日配送の開始前に,配車担当者向けの操作説明会を開く。顧客と討議して合意した
  • KPI:夕方の一次回答時間15分以内,配車変更の問い合わせ件数を半減,満足度3.5以上(約1,300字)
ウ
  • 実施状況と評価:夕方の一次回答時間は3か月で12分になり達成した。問い合わせ件数は35%減で未達。FAQ が探しにくいことが原因だったので,画面から直接 FAQ を開けるようにした。満足度は3.4まで回復した
  • 把握する活動の改善点:満足度調査が年1回で,評価の低下に気づくのが遅れた。四半期ごとの簡単な調査に変え,月次の報告会には配車担当の現場の代表にも出てもらうようにした(約800字)

ポイント:講評が挙げた「十分な分析を行うことなく,その対策を羅列して改善計画としている論述」を避けるため, イで「把握した内容 → 時間帯別の分析 → 改善計画」の順に書き,計画が分析から導かれたことが分かるようにしています。 ウの改善点は,設問どおり改善計画ではなく「把握するための活動」(アの活動)を対象にしています。

問2 クラウドサービスを活用したITサービスのサービスマネジメント活動について

題材の例:グループ会社を含む従業員約3,000人に,経費精算の ITサービスを提供している。精算の機能には海外の CSP の SaaS を使っている。

設問書くこと(字数の目安)
ア
  • ITサービス:従業員の経費申請と,経理部の承認・支払処理。月末月初の締めに利用が集中する
  • ITサービスの目標:締め日に精算を止めない。障害時は2時間以内に回復の見通しを利用者に知らせる
  • クラウドサービス:精算の機能は SaaS,社内の認証基盤とは ID 連携。目標に照らし,可用性と障害時の連絡体制を重視して選んだ(約700字)
イ
  • 直面した問題:①締め日に SaaS の障害が起きたが,CSP の障害情報の更新が遅く,利用者への回復見通しの連絡が3時間後になった ②利用者からの画面改善の要望は CSP の判断になり,回答に数か月かかって不満が出た
  • 対応策:①インシデント管理の手順に「CSP 起因の障害」を加えた。CSP の障害情報を監視ツールで自動で取り込み,検知から15分で第一報を出す。CSP と協議して,上位のサポート契約と専用の連絡経路を結んだ ②要望は四半期ごとにまとめて CSP の説明会で提出する。CSP が対応しないものは社内の手順や FAQ で補うことを,顧客である経理部と合意した
  • 工夫した点:対応策を決める前に,締め日の業務への影響を経理部と一緒に洗い出し,影響の大きい順に優先度を付けた。上位のサポート契約の費用は,締め日に止まった場合の影響と比べて経理部の合意を得た(約1,300字)
ウ
  • 評価:次の障害では第一報が20分,回復見通しの連絡が1時間で,アの目標(2時間以内)を達成した。要望への回答は平均3か月から1か月になった
  • 今後取り組むべきこと:CSP の機能の変更を事前に把握できず,画面が変わった直後に問い合わせが急増した。変更管理に CSP のリリース情報の確認を組み込み,契約の更新時にはサービスレベルの見直しを CSP と協議する(約800字)

ポイント:講評が挙げた「クラウドサービスのアプリケーション機能の改修など,サービスマネジメント上の問題の解決に向けての対応策ではない論述」を避けるため, 対応策を手順の見直し・CSP との協議・顧客との合意というサービスマネジメントの手段で書いています。 ウの評価は,アで示した目標(2時間以内)に照らしています。

過去の出題テーマ

当サイトに収録している SM の午後Ⅱの問題名です。年度を選ぶと,問題文・出題趣旨・採点講評を読めます。

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