ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱは,自分の経験をもとに2時間で答案を書く論述式です。 このページでは,当サイトが収録している16年度分・36問の出題テーマと採点講評を読み比べて, 出題の傾向,くり返し指摘されていること,設問ア〜ウの書き方をまとめます。 最後に,令和7年度の2問について骨子(答案の設計図)の例を載せます。
午後Ⅱの形
- 試験時間は120分。平成25年度からは2問出題・1問選択です(平成24年度までは3問から1問)
- 設問はア・イ・ウの3つ。字数はアが800字以内(令和7年度からは400字以上800字以内),イが800字以上1,600字以内,ウが600字以上1,200字以内です
- 答案用紙の冒頭には,設問とは別に,論述の対象とする ITサービスマネジメントの概要を記入する欄があります。平成21・22年度の講評では,この欄の記入漏れが指摘されています
時間配分や練習の進め方など,区分によらない進め方は高度試験の勉強方法にまとめています。
出題テーマの傾向
平成21年度から令和7年度までの問題名を並べると,ITサービスマネジメントのプロセスごとに次のように分けられます。 令和6年度の講評が「ITサービスマネージャが経験を積んでいる変更管理と問題管理をテーマに出題した」と書いているように, 日々の運用で実際に回しているプロセスが題材になります。
| 場面 | 問題名の例 |
|---|---|
| 変更・リリース・移行 | 変更管理プロセスの確実な実施(平成21年度),ITサービスの移行(平成26年度),リリース及び展開の計画(令和5年度),環境の変化に対応するための変更管理プロセスの改善(令和6年度) |
| インシデント・問題管理 | 事前予防的な問題管理(平成21年度),重大なインシデントに対するサービス回復時の対応(平成24年度),重大なインシデント発生時のコミュニケーション(令和元年度),サービス運用におけるヒューマンエラーに起因する障害の管理(令和6年度) |
| サービスレベル・可用性・継続性 | キャパシティ管理(平成23年度),サービスレベルが未達となる兆候への対応(平成25年度),サービス可用性管理の活動(令和3年度),災害に備えたITサービス継続計画(令和4年度),サービスレベル管理におけるサービスレベルの合意(令和5年度) |
| 顧客との関係 | ITサービスに関する顧客への報告(平成23年度),ITサービスの提供における顧客満足の向上を図る活動(平成29年度),事業関係管理におけるコミュニケーション(令和3年度),顧客満足を向上させるための活動(令和7年度) |
| 供給者・要員・改善 | 外部委託業務の品質の確保(平成25年度),外部サービス利用における供給者管理(平成27年度),ITサービスを提供する要員の育成(平成28年度),ITサービスの運用品質を改善する取組(令和4年度),クラウドサービスを活用したITサービスのサービスマネジメント活動(令和7年度) |
変更管理・インシデント・顧客満足のように,同じテーマが数年おきに形を変えて出るのが SM の特徴です。 題材は,障害対応やプロセスの改善のような運用の経験と,顧客や供給者とやり取りした経験の両方を用意しておくと,どちらの問題にも対応しやすくなります。
採点講評でくり返し指摘されていること
IPA は毎年,採点講評で答案の傾向を公表しています。年度をまたいで読み比べると,同じ指摘が何度も出てきます。 裏を返せば,ここを避けるだけで答案の評価は上がりやすいということです。
1. マネジメントではなく,作業の報告になっている
SM の講評で特に多い指摘です。平成21・22年度,令和3〜5年度の全問に共通する講評で取り上げられています。 令和4年度の講評は「ITサービスマネージャとしてのマネジメント活動が伺える具体的な論述を求めたが,単なる作業報告に過ぎないものが散見された」, 令和3年度の講評は「担当者目線での作業内容になっていて,ITサービスマネージャとしての視点が足りない論述も散見された」としています。
「〇〇を実施した」で終わらせず,なぜそう判断したのか,関係者をどう動かしたのか,結果をどう確かめたのかを書きます。 自分が手を動かした作業より,目標を決めて,人とプロセスを回した話を中心にします。
2. 「ITサービスの概要」がシステムの説明になっている
SM の設問アは,収録している36問すべてで「ITサービスの概要」を問うています。 ところが,平成23年度から平成28年度まで6回続けて,この概要がシステムの機能や構成の説明にとどまっている答案が指摘されました。 平成23年度の講評は「ITサービスマネージャとして顧客や利用者などに提供するITサービスについて記述する必要があり,システムの機能や構成を記述するとしてもあくまでも補足的であるべき」, 平成26年度の講評は「JISではサービスを“顧客に価値を提供する手段”としている。」と書いています。
ITサービスの概要は,誰に(顧客・利用者),何を(どんな価値を),どのような水準で(提供時間・サービスレベル)提供しているかを中心に書きます。 システムの構成は,設問イで必要になる範囲で補足する程度にします。
3. 根本原因まで掘り下げていない
障害や問題を扱う問題で,直接の原因で分析を止めてしまう答案がくり返し指摘されています。 令和6年度の講評は「ヒューマンエラーの根本原因を“不注意,知識不足,思い込み,慣れ,過労”としている論述が多く,分析が不足している論述が多かった」としています。 平成26年度も,手順書の不備や作業ミスを原因とした改善策にとどまる答案について,「そのような状況となっている根本原因を究明し対策を立てるということに踏み込んでほしかった」と書いています。
「なぜその不備が生まれたのか」「なぜ見逃されたのか」を,プロセスや仕組みの問題になるまで問い直して書きます。
4. 問題文の例をなぞっている
平成21年度から平成26年度にかけて,多くの問題で「問題文からの引用程度」「問題文中の例をなぞった程度」の答案が指摘されています。 平成25年度の講評は,問題文の例を引用しただけの論述について「実経験に基づいているのか疑わしいものも見受けられた」としています。 問題文の例は,自分の題材ではそれが具体的に何だったのかに置き換えて書きます。
5. 改善が一過性で,継続の仕組みや数字がない
平成27年度の全問に共通する講評は「“継続”して行っていくための考えや仕組みを述べたものはほとんどなかった」としています。 令和3・4年度は,測定項目や管理指標が明確でない答案が挙げられています。 目標値と測定のしかたを決め,結果を次の計画にどう生かしたか(PDCA)まで書くと,SM らしい答案になります。
6. システム開発の話になっている
令和7年度の全問に共通する講評は「サービスマネジメントの活動ではなく,システム開発の活動をベースとした論述も見受けられた」としています。 問2でも,クラウドサービスのアプリケーション機能の改修のように,サービスマネジメント上の問題の解決になっていない対応策が挙げられました。 対応策は,プロセスの見直し,供給者との協議,体制や手順の整備など,サービスマネジメントの手段で書きます。
設問ア〜ウの書き方
設問ア:ITサービスの概要と状況(400〜800字)
- ITサービスの概要は「顧客・利用者」「提供している価値」「提供時間とサービスレベル」を中心に書く
- 自分の立場(サービス提供者側か,委託元か)をはっきりさせる
- 設問アの後半で問われる状況(活動,問題,目標など)は,設問イで使うものに絞る
設問イ:分析と対応策(800〜1,600字)
答案の中心です。「状況 → 分析(根本原因・ギャップ) → 対応策 → 決めるときの工夫」の流れで書きます。
- 分析の結果から対応策を導く。分析を飛ばして対策を並べると,講評で指摘される答案になる
- 目標やKPIを設定する問題では,目標値と測定のしかたを数字で書く
- 関係者(顧客・開発部門・供給者)と協議した内容を入れると,マネジメントの視点が見える
設問ウ:評価と今後の改善(600〜1,200字)
SM の設問ウは,評価や今後の課題・改善を問うことがほとんどです(36問のうち26問)。
- 評価は,設問ア・イで示した目標や KPI に照らして書く。「うまくいった」だけで終わらせない
- 未達の部分があれば,その原因と次の手を書く。すべて達成した話より説得力が出る
- 今後の改善は,一度きりの対策ではなく,継続して回す仕組みとして書く
骨子の例:令和7年度
骨子は,書き始める前に作る答案の設計図です。本番では構成に15分ほどかけ, 設問ごとに「何を,どの順で書くか」をメモしてから書き始めます。
ここに載せる骨子は,書き方を示すために運営者が作った架空の事例です。 IPA の解答例ではありません(IPA は午後Ⅱの解答例を公表していません)。 実際の答案は,自分が関わった ITサービスで組み立ててください。
問1 顧客満足を向上させるための活動について
題材の例:運送会社向けに,配車管理システムの運用サービスを提供している(自分はサービス提供者側の ITサービスマネージャ)。
| 設問 | 書くこと(字数の目安) |
|---|---|
| ア |
|
| イ |
|
| ウ |
|
ポイント:講評が挙げた「十分な分析を行うことなく,その対策を羅列して改善計画としている論述」を避けるため, イで「把握した内容 → 時間帯別の分析 → 改善計画」の順に書き,計画が分析から導かれたことが分かるようにしています。 ウの改善点は,設問どおり改善計画ではなく「把握するための活動」(アの活動)を対象にしています。
問2 クラウドサービスを活用したITサービスのサービスマネジメント活動について
題材の例:グループ会社を含む従業員約3,000人に,経費精算の ITサービスを提供している。精算の機能には海外の CSP の SaaS を使っている。
| 設問 | 書くこと(字数の目安) |
|---|---|
| ア |
|
| イ |
|
| ウ |
|
ポイント:講評が挙げた「クラウドサービスのアプリケーション機能の改修など,サービスマネジメント上の問題の解決に向けての対応策ではない論述」を避けるため, 対応策を手順の見直し・CSP との協議・顧客との合意というサービスマネジメントの手段で書いています。 ウの評価は,アで示した目標(2時間以内)に照らしています。
過去の出題テーマ
当サイトに収録している SM の午後Ⅱの問題名です。年度を選ぶと,問題文・出題趣旨・採点講評を読めます。
- 令和7年度 春期
問1 顧客満足を向上させるための活動について
問2 クラウドサービスを活用したITサービスのサービスマネジメント活動について - 令和6年度 春期
問1 環境の変化に対応するための変更管理プロセスの改善について
問2 サービス運用におけるヒューマンエラーに起因する障害の管理について - 令和5年度 春期
問1 サービスレベル管理におけるサービスレベルの合意について
問2 リリース及び展開の計画について - 令和4年度 春期
問1 災害に備えたITサービス継続計画について
問2 ITサービスの運用品質を改善する取組について - 令和3年度 春期
問1 事業関係管理におけるコミュニケーションについて
問2 サービス可用性管理の活動について - 令和元年度 秋期
問1 環境変化に応じた変更プロセスの改善について
問2 重大なインシデント発生時のコミュニケーションについて - 平成30年度 秋期
問1 ITサービスマネジメントにおけるプロセスの自動化について
問2 ITサービスの運用チームにおける改善の取組みについて - 平成29年度 秋期
問1 ITサービスの提供における顧客満足の向上を図る活動について
問2 継続的改善によるITサービスの品質向上について - 平成28年度 秋期
問1 ITサービスを提供する要員の育成について
問2 プロセスの不備への対応について - 平成27年度 秋期
問1 ITサービスに係る費用の最適化を目的とした改善について
問2 外部サービス利用における供給者管理について - 平成26年度 秋期
問1 ITサービスの移行について
問2 ITサービスの障害による業務への影響拡大の再発防止について - 平成25年度 秋期
問1 サービスレベルが未達となる兆候への対応について
問2 外部委託業務の品質の確保について - 平成24年度 秋期
問1 重大なインシデントに対するサービス回復時の対応について
問2 ITサービスの継続性管理について
問3 ユーザとの接点からの気付きを改善につなげる活動について - 平成23年度 秋期
問1 ITサービスに関する顧客への報告について
問2 キャパシティ管理について
問3 ITサービスの改善活動について - 平成22年度 秋期
問1 ITサービスの構成品目に関する情報の管理について
問2 リリース管理におけるリリースの検証及び受入れについて
問3 インシデント発生時に想定される問題への対策について - 平成21年度 秋期
問1 変更管理プロセスの確実な実施について
問2 ITサービスの改善計画の立案におけるサービスデスクの活用について
問3 事前予防的な問題管理について