ソーシャルエンジニアリングと標的型攻撃
ソーシャルエンジニアリングは,技術ではなく人の弱みにつけ込んで情報を盗む手口です。 特定の組織を狙う標的型攻撃でも,最初の入口として使われます。 科目A-1(午前Ⅰ)と情報処理安全確保支援士の科目A-2(午前Ⅱ)で,手口の説明から名前を選ぶ問題と, 標的型攻撃の段階を表すサイバーキルチェーンの問題が出ています。
ソーシャルエンジニアリングの手口
| なりすまし | 上司・取引先・システム管理者などを名乗って電話をかけ,緊急事態を装ってパスワードなどを聞き出す |
|---|---|
| スキャベンジング(トラッシング) | ごみ箱をあさり,不用意に捨てられた書類やメモから秘密の情報を探し出す |
| ショルダーハッキング | パスワードを入力している人の肩越しに,画面やキーボードを盗み見る |
| 共連れ(ピギーバック) | 入館の認証をした人の後ろについて,認証をせずに入室する |
どれも,情報システムの側をいくら固めても防げません。 電話でパスワードを教えない決まりと折り返しでの本人確認,書類のシュレッダー処理,入退室の管理,そして従業員への教育で備えます。
標的型攻撃
標的型攻撃は,特定の組織や人を狙って,時間をかけて仕掛ける攻撃です。 不特定多数に同じ文面を送りつける迷惑メールやばらまき型のフィッシングとは違い, 相手を下調べして,受信者の業務に関係がありそうな件名や本文のメールを送り,添付ファイルや URL を開かせます。 取引先を装ったり,何度か事務的なやり取りをして信用させてから送ったりする手口もあります。
水飲み場型攻撃は,標的の組織の人がよく見る Web サイトに攻撃コードを仕込んで待ち伏せる手口です。 その組織からアクセスしたときだけ攻撃が行われるようにして,ほかの訪問者には気づかれにくくします。 動物が集まる水飲み場で獲物を待つ様子にたとえた名前です。
サイバーキルチェーン
サイバーキルチェーンは,標的型攻撃などで攻撃者がとる行動を,攻撃者の視点から7つの段階に分けたモデルです。 どの段階で食い止めるかを考えるのに使います。
| 1. 偵察 | 公開されている情報や SNS から,標的の組織・人間関係・メールアドレスなどを調べる |
|---|---|
| 2. 武器化 | マルウェアを添付したファイルなど,攻撃に使うものを作る |
| 3. 配送 | 作ったものを電子メールに添付して送るなど,標的に届ける |
| 4. エクスプロイト | 標的の PC で脆弱性を悪用し,攻撃のコードを実行させる |
| 5. インストール | マルウェアを PC に住み着かせる |
| 6. 遠隔操作(C&C) | 外部の指令サーバ(C&C サーバ)から PC を操る |
| 7. 目的の実行 | 情報を盗み出して外部へ送るなど,最終の目的を果たす |
偵察は,攻撃者が外から手に入れられる情報を集める段階です。社内にしかない情報を手に入れるのは,侵入した後の段階になります。 似た名前の MITRE ATT&CK は,実際に観測された攻撃の手口を分類して集めた知識ベースで,段階の流れを示すサイバーキルチェーンとは別のものです。
試験での問われ方
当サイトが収録している科目A(午前)の問題のうち,ソーシャルエンジニアリング・標的型攻撃・水飲み場型攻撃・サイバーキルチェーンの語が出てくるのは12問です。 型ごとに数えると次のとおりです。
- サイバーキルチェーン(4問)。偵察の段階に当たる行動(「攻撃者が,会社の役員が登録している SNS サイトから,攻撃対象の人間関係,趣味などを推定する」), エクスプロイトに当たる行為(「標的とする組織の PC で OS の脆弱性を悪用し,攻撃ツールを実行させる」), サイバーキルチェーンの説明(「攻撃者の視点から,攻撃の手口を偵察から目的の実行までの段階に分けたもの」)と, サイバー攻撃の手法を分類したナレッジベース(正解は MITRE ATT&CK)の選択肢です。
- ソーシャルエンジニアリングの分類(2問)。「緊急事態を装って組織内部の人間からパスワードや機密情報を入手する不正な行為」がどれに分類されるかを選びます。
- 標的型攻撃の手口(2問)。標的型攻撃メールの特徴(「件名や本文に,受信者の業務に関係がありそうな内容が記述されている」)と, 水飲み場型攻撃の手口(「標的組織の従業員が頻繁にアクセスする Web サイトに攻撃コードを埋め込み,標的組織の従業員がアクセスしたときだけ攻撃が行われるようにする」)です。
- このほか,サイドチャネル攻撃の説明を選ぶ問題(4問)で,紙ごみから機密情報の印刷物を探し出す「ソーシャルエンジニアリングの手法の一つ」が誤りの選択肢に出てきます。
出題された過去問(12問)
リンク先の年度ページで,問題と解説を読めます。
科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)(3問)
- 令和7年度 秋期 問12サイバー攻撃の攻撃段階をモデル化したサイバーキルチェーンにおいて,“エクスプロイト”に該当する行…
- 平成25年度 春期 問14ソーシャルエンジニアリング手法を利用した標的型攻撃メールの特徴はどれか。
- 平成23年度 特別試験 問13緊急事態を装って組織内部の人間からパスワードや機密情報を入手する不正な行為は,どれに分類されるか…
情報処理安全確保支援士 科目A-2(午前Ⅱ)(8問)
- 令和6年度 秋期 問3様々なサイバー攻撃手法を分類したナレッジベースはどれか。
- 令和4年度 春期 問5標的型攻撃における攻撃者の行動をモデル化したものの一つにサイバーキルチェーンがあり,攻撃者の行動…
- 令和3年度 秋期 問5サイバーキルチェーンに関する説明として,適切なものはどれか。
- 令和2年度 10月 問4サイドチャネル攻撃に該当するものはどれか。
- 平成29年度 春期 問3サイドチャネル攻撃の説明はどれか。
- 平成27年度 秋期 問8水飲み場型攻撃(Watering Hole Attack)の手口はどれか。
- 平成27年度 春期 問5サイドチャネル攻撃の説明はどれか。
- 平成25年度 春期 問5サイドチャネル攻撃の説明はどれか。
ITサービスマネージャ 科目A-2(午前Ⅱ)(1問)
- 平成21年度 秋期 問24緊急事態を装って組織内部の人間からパスワードや機密情報を入手する不正な行為は,どれに分類されるか…