システムアーキテクト試験の午後Ⅱは,自分の経験をもとに2時間で答案を書く論述式です。 このページでは,当サイトが収録している16年度分・46問の出題テーマと採点講評を読み比べて, 出題の傾向,くり返し指摘されていること,設問ア〜ウの書き方をまとめます。 最後に,令和7年度の2問について骨子(答案の設計図)の例を載せます。
午後Ⅱの形
- 試験時間は120分。令和6年度からは2問出題・1問選択です(令和5年度までは組込みシステムの問3を含む3問から1問)
- 設問はア・イ・ウの3つ。字数はアが800字以内(令和7年度からは400字以上800字以内),イが800字以上1,600字以内,ウが600字以上1,200字以内です
- 答案用紙の冒頭には,設問とは別に,論述の対象とするシステムなどの概要を記入する欄があります。講評では,この欄が適切に記入されていないので評価を下げた例も挙げられています(平成22・23年度)
時間配分や練習の進め方など,区分によらない進め方は高度試験の勉強方法にまとめています。
出題テーマの傾向
平成21年度から令和7年度までの問題名を並べると,問われる場面は次のように分けられます。 どの場面でも,業務を理解したうえで,情報システムをどう設計したかを問う点は共通しています。
| 場面 | 問題名の例 |
|---|---|
| 要件定義・業務の分析 | 要件定義(平成21年度),業務要件の優先順位付け(平成28年度),非機能要件を定義するプロセス(平成29年度),アジャイル開発における要件定義の進め方(令和3年度) |
| 方式・構造の設計 | システム間連携方式(平成22年度),システム方式設計(平成27年度),柔軟性をもたせた機能の設計(平成29年度),バッチ処理の設計(令和6年度) |
| 画面の設計 | ユーザビリティを重視したユーザインタフェースの設計(令和元年度),利用者と直接の接点がない情報システムのユーザーインタフェースの検討(令和5年度) |
| 移行・テスト | システムの段階移行(平成21年度),システムテスト計画の策定(平成23年度),情報システムの移行方法(平成28年度),現行システムと新システム間の差異を踏まえたデータ移行(令和7年度) |
| データ活用・新技術 | データを活用した情報の提供(平成30年度),概念実証(PoC)を活用した情報システム開発(令和4年度),先進技術の適用(令和6年度),複数の情報システムのデータを収集する必要がある指標の提供(令和7年度) |
令和4年度からは,PoC・DX・先進技術・データ活用のように新しい技術や業務の変化を扱う問題が毎年1問は出ています。 一方で,移行や設計のような定番の場面もくり返し出ています。 題材を用意するときは,新しい技術を使った経験と,移行・設計のような定番の経験の両方を用意しておくと,どちらの問題にも対応しやすくなります。
令和5年度までの問3(組込みシステム)は,令和6年度から出題されていません。
採点講評でくり返し指摘されていること
IPA は毎年,採点講評で答案の傾向を公表しています。年度をまたいで読み比べると,同じ指摘が何度も出てきます。 裏を返せば,ここを避けるだけで答案の評価は上がりやすいということです。
1. やったことだけで,理由や経緯がない
令和3年度から令和7年度まで5回続けて,全問に共通する講評で指摘されています。 令和7年度の講評は「実施した事項を論述するだけにとどまり,実施した理由や検討の経緯が読み取れない論述も少なからず見受けられた」としています。
「〇〇を採用した」で終わらせず,ほかにどんな案があり,どういう理由で〇〇を選んだのかまで書きます。 案を2つ比べて,業務の制約から1つを選んだ,という流れにすると,検討の経緯が自然に入ります。
2. 問題文の観点を抜き出して,一般論と組み合わせただけ
平成23年度から平成28年度まで毎年,令和4年度から令和6年度まで毎年,全問に共通する講評で指摘されています。 令和4年度の講評の言葉では「問題文に記載してあるプロセスや観点などを抜き出し,一般論と組み合わせただけの表面的な論述」です。 平成27年度の講評は「問題文に記載した観点や事例は,例示である。」とはっきり書いています。
問題文の例をそのまま使うのではなく,自分の題材ではそれが具体的に何だったのか(どの業務の,どのデータの,どんな制約か)に置き換えて書きます。
3. 業務の視点が抜けている
SA の講評で特に多い指摘です。業務要件を書かずにシステムの話だけをしている, 業務の特性ではなくプロジェクトの制約を書いている,といった答案が多くの年度で挙げられています。 平成28年度の講評は「情報システムの設計,開発に当たっては常に業務を意識してほしい」, 令和3年度の講評は「システムアーキテクトは,業務と情報システムを橋渡しする役割を担う」と書いています。
設計の理由を書くときは,「性能がよいから」のようなシステムの理由だけでなく, その業務では何が困るのか,何を守らなければならないのかから説明します。
4. 問われたことと違うことを書いている
計画を問われているのに実施の話を書く(平成23年度), 業務の概要を問われているのにプロジェクトの概要を書く(平成24年度), 複数の項目を問われているのに一部にしか答えていない(平成25年度)などが挙げられています。
書き始める前に,設問文を問われている項目ごとに区切り,答案の段落と1対1で対応させます。 このサイトの演習画面では,設問ごとに問われている項目を整理して表示しています。
設問ア〜ウの書き方
設問ア:業務とシステムの概要(400〜800字)
設問アは,設問イ・ウの土台です。問われる項目は年度によって違いますが, ほとんどの年度で対象とした業務と情報システムの概要が入っています。 SA では「業務の特徴」を書けるかが特に大事で,ここで書いた業務の特徴や制約が,イの設計の理由になります。
- 業種・業務・利用者を1〜2文で書き,そのうえで設問イにつながる業務の特徴(繁忙期がある,止められない時間帯がある,など)を書く
- 自分の立場(システムアーキテクトとして何を担当したか)を入れる
- 答案用紙冒頭の「システムの概要」の記入と食い違わないようにする(規模・期間など)
設問イ:何をどう検討・設計したか(800〜1,600字)
答案の中心で,字数も最も多い部分です。 「状況 → 検討した案 → 選んだ案と理由 → 工夫」の流れで,検討の経緯が見えるように書きます。
- 問われている項目ごとに段落を分け,段落の頭に短い見出し(「(1)データ定義の差の吸収」など)を付けると,採点者が読みやすくなる
- 理由は,設問アで書いた業務の特徴や制約から説明する
- 1,600字に近づけようとして項目を増やすより,1つの項目を深く書くほうが評価されやすい
設問ウ:問われ方は年度によって違う(600〜1,200字)
ほかの区分では設問ウで評価と今後の改善を問うことが多いのですが, SA の令和以降の問題では,設問イの続き(直面した問題と対応,移行のタイミングと実施方法,など)を問うことが少なくありません。 「ウは評価を書くもの」と決めつけず,設問文が求めていることに答えます。
- 評価を問われたら,「うまくいった」だけでなく,目標や判断の基準に対してどうだったかを書く
- 続きを問われたら,設問イと同じく「状況 → 案 → 理由」の流れで書く
骨子の例:令和7年度
骨子は,書き始める前に作る答案の設計図です。本番では構成に15分ほどかけ, 設問ごとに「何を,どの順で書くか」をメモしてから書き始めます。
ここに載せる骨子は,書き方を示すために運営者が作った架空の事例です。 IPA の解答例ではありません(IPA は午後Ⅱの解答例を公表していません)。 実際の答案は,自分が関わった業務とシステムで組み立ててください。
問1 複数の情報システムのデータを収集する必要がある指標の提供について
題材の例:食品スーパーのチェーン(40店舗)で,廃棄ロスを減らすために, 店舗別・商品分類別の廃棄率を指標として商品部と各店長に提供した。
| 設問 | 書くこと(字数の目安) |
|---|---|
| ア |
|
| イ |
|
| ウ |
|
ポイント:講評が挙げた「業務目標と指標の関係が不明確な論述」を避けるため,アで目標と指標の関係(誰が,何の判断に使うか)をはっきり書いています。 ウは,イの設計の話(コードの違いなど)と混ぜず,データそのものの欠落・不在に絞っています。
問2 現行システムと新システム間の差異を踏まえたデータ移行について
題材の例:機械部品の卸売会社2社の合併に伴い,2社の販売管理システムを1つの新システムに統合した。
| 設問 | 書くこと(字数の目安) |
|---|---|
| ア |
|
| イ |
|
| ウ |
|
ポイント:講評が挙げた「現行システムと新システム間の差異を明確にせず,実施した事項の記述にとどまっている論述」を避けるため, イは差異を先に書き,移行方法がどの差異に対応するかが分かる順にしています。 ウは「観点を踏まえて」と問われているので,観点を先に示し,そこからタイミングと実施方法の理由を説明しています。
過去の出題テーマ
当サイトに収録している SA の午後Ⅱの問題名です。年度を選ぶと,問題文・出題趣旨・採点講評を読めます。
- 令和7年度 春期
問1 複数の情報システムのデータを収集する必要がある指標の提供について
問2 現行システムと新システム間の差異を踏まえたデータ移行について - 令和6年度 春期
問1 人手によってしか実現できないと考えていた業務への先進技術の適用について
問2 バッチ処理の設計について - 令和5年度 春期
問1 デジタルトランスフォーメーションを推進するための情報システムの改善について
問2 利用者と直接の接点がない情報システムのユーザーインタフェースの検討について
問3 再利用の容易化を考慮した組込みシステムのアーキテクチャについて - 令和4年度 春期
問1 概念実証(PoC)を活用した情報システム開発について
問2 業務のデジタル化について
問3 IoT,AIなどの技術進展に伴う組込みシステムの自動化について - 令和3年度 春期
問1 アジャイル開発における要件定義の進め方について
問2 情報システムの機能追加における業務要件の分析と設計について
問3 IoTの普及に伴う組込みシステムのネットワーク化について - 令和元年度 秋期
問1 ユーザビリティを重視したユーザインタフェースの設計について
問2 システム適格性確認テストの計画について
問3 組込みシステムのデバッグモニタ機能について - 平成30年度 秋期
問1 業務からのニーズに応えるためのデータを活用した情報の提供について
問2 業務ソフトウェアパッケージの導入について
問3 組込みシステムのAI利用,IoT化などに伴うデータ量増加への対応について - 平成29年度 秋期
問1 非機能要件を定義するプロセスについて
問2 柔軟性をもたせた機能の設計について
問3 IoTの進展と組込みシステムのセキュリティ対応について - 平成28年度 秋期
問1 業務要件の優先順位付けについて
問2 情報システムの移行方法について
問3 組込みシステムにおけるオープンソースソフトウェアの導入について - 平成27年度 秋期
問1 システム方式設計について
問2 業務の課題に対応するための業務機能の変更又は追加について
問3 組込みシステム製品を構築する際のモジュール間インタフェースの仕様決定について - 平成26年度 秋期
問1 業務プロセスの見直しにおける情報システムの活用について
問2 データ交換を利用する情報システムの設計について
問3 組込みシステムの開発における機能分割について - 平成25年度 秋期
問1 要求を実現する上での問題を解消するための業務部門への提案について
問2 設計内容の説明責任について
問3 組込みシステムの開発における信頼性設計について - 平成24年度 秋期
問1 業務の変化を見込んだソフトウェア構造の設計について
問2 障害時にもサービスを継続させる業務ソフトウェアの設計について
問3 組込みシステムの開発プロセスモデルについて - 平成23年度 秋期
問1 複数のシステムにまたがったシステム構造の見直しについて
問2 システムテスト計画の策定について
問3 組込みシステムの開発におけるプラットフォームの導入について - 平成22年度 秋期
問1 複数の業務にまたがった統一コードの整備方針の策定について
問2 システム間連携方式について
問3 組込みシステム開発におけるハードウェアとソフトウェアとの機能分担について - 平成21年度 秋期
問1 要件定義について
問2 システムの段階移行について
問3 組込みシステムにおける適切な外部調達について