SRE(Site Reliability Engineering,サイト信頼性エンジニアリング)は,サービスの信頼性を保つ運用の仕事を, ソフトウェア開発の手法(自動化や計測)で行うという考え方です。 大規模な Web サービスを運営する企業が始めた取組みで,今では運用チームの役割や働き方の名前としても広く使われています。 開発チームと運用チームが連携する DevOps を,運用の側から具体的な仕組みにしたもの,と捉えると分かりやすいです。
シラバスでの扱い
IPA が 2023年12月25日に公開した応用情報技術者試験シラバス Ver.7.0 で, 「大分類4:開発技術」の「中分類13:ソフトウェア開発管理技術」にある「DevOps」の用語例に, CALMS フレームワーク・カオスエンジニアリング・Four Keys・オブザーバビリティなどと並んで加わりました(その前の Ver.6.3 にはありません)。 この改訂は,ペーパー方式では令和6年度秋期試験から適用されています。
当サイトが収録している過去問(令和7年度秋期まで)では,SRE・SLO・エラーバジェットはまだ出題されていません。 同じ用語例に並ぶカオスエンジニアリングは,情報処理安全確保支援士の令和5年度秋期に正解として出ています。
出典:応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.0, 同 Ver.7.2, 同 Ver.6.3(いずれも2026年10月4日に確認)
SLI・SLO・SLA
SRE は,信頼性を「なんとなく安定している」ではなく数値で決めるところから始めます。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| SLI(サービスレベル指標) | 信頼性を測る指標 | 正常に応答したリクエストの割合,応答時間 |
| SLO(サービスレベル目標) | SLI について,提供者が自ら決める目標値 | 30日間で 99.9% のリクエストに正常に応答する |
| SLA(サービスレベル合意書) | 顧客と合意した約束。守れないと返金などの取決めがある | 月間の稼働率 99.5% を下回ったら料金を一部返す |
SLO は顧客との約束(SLA)より厳しめに決めておくのが普通です。 SLO を割り込みそうな段階で手を打てば,SLA を破る前に立て直せるからです。
エラーバジェット
SLO が 99.9% なら,残りの 0.1% は失敗してもよい量です。これをエラーバジェット(失敗の予算)と呼びます。 30日間(43,200分)で考えると,0.1% は 43.2分です。この範囲なら,新しい機能を出して一時的に不安定になっても目標は守れます。
- 予算が残っているとき:新しい機能のリリースを進める
- 予算を使い切りそうなとき:リリースを止め,信頼性を高める作業(障害の原因の除去,テストや監視の強化)を優先する
「速くリリースしたい開発」と「止めたくない運用」は対立しがちですが,エラーバジェットという共通の数字を使うことで, どちらを優先するかを話し合いではなくデータで決められるようにします。100% の信頼性を目標にしないのが SRE の特徴です。
そのほかの考え方
- トイルの削減:手作業で,繰り返し発生し,自動化できるのに人が行っている運用の作業をトイル(苦役)と呼び,自動化して減らす
- 非難しないポストモーテム:障害のあとに振り返りの報告書を書く。個人の責任を問うのではなく,仕組みの問題として再発防止策を考える
- 計測:オブザーバビリティで状態を把握し,Four Keys(デプロイの頻度,変更のリードタイム,変更障害率,平均修復時間(MTTR))で開発と運用の成果を測る
- カオスエンジニアリング:本番に近い環境で意図的に障害を起こし,壊れ方を確かめて備える
試験での問われ方(予想)
- 午前:SRE やエラーバジェットの説明を選ぶ形。DevOps,カオスエンジニアリング,オブザーバビリティとの見分け
- 計算:SLO からエラーバジェット(許される停止時間)を求める形。ITサービスマネージャの午前Ⅱで出てきた MTBF・MTRS の計算と同じ考え方です
- ITサービスマネージャの午後:SLA と SLO の関係,エラーバジェットを使い切ったときのリリースの判断,障害の振り返りの進め方を問う事例
近い論点で出題された過去問
カオスエンジニアリングと,可用性の指標の問題です。
- 情報処理安全確保支援士 午前Ⅱ 令和5年度 秋期 問22目的別のサービスが多数連携して動作する大規模な分散型のシステムでは,障害時の挙動を予知することが…
- ITサービスマネージャ 午前Ⅱ 令和4年度 春期 問3ITIL 2011 edition では,可用性管理における KPI の例として,平均サービス・…
- 午前Ⅰ(高度試験 共通) 平成29年度 春期 問20ITIL 2011 edition の可用性管理プロセスにおいて,IT サービスの可用性と信頼性…
予想問題(オリジナル)
当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。ほかの用語の予想問題の一覧
問1SRE(Site Reliability Engineering)におけるエラーバジェットの説明として,適切なものはどれか。
- ア障害が発生したときに,原因となった担当者を特定し,再発防止の責任を負わせるための記録である。
- イ本番環境で意図的に障害を発生させ,システムの耐障害性を確かめる手法である。
- ウサービスレベル目標(SLO)を下回らない範囲で許容される失敗の量であり,使い切りそうになったら新機能のリリースより信頼性の改善を優先する判断に使う。
- エ顧客と合意したサービスレベルを達成できなかった場合に,提供者が顧客に支払う返金の上限額である。
正解と解説
正解:ウ
エラーバジェットは 100% から SLO を引いた分で,リリースの速さと信頼性の釣り合いを取るための共通の数字です。
- ア:SRE のポストモーテムは,個人を非難せず仕組みの問題として扱います。
- イ:カオスエンジニアリングの説明です(情報処理安全確保支援士 令和5年度秋期 問22 で出題)。
- エ:SLA の違反時の取決めの話で,エラーバジェットではありません。
問2あるサービスの SLO を「30日間で,リクエストの 99.95% に正常に応答する」と定めた。リクエストが30日間に一定の割合で届くとき,全てのリクエストに応答できない停止が何分を超えると,その30日間のエラーバジェットを使い切るか。
- ア2.16
- イ21.6
- ウ43.2
- エ216
正解と解説
正解:イ
30日間は 30 × 24 × 60 = 43,200分です。エラーバジェットは 100% − 99.95% = 0.05% なので,43,200 × 0.0005 = 21.6分です。
- ア:0.005% として計算した値です。
- ウ:SLO が 99.9%(エラーバジェット 0.1%)のときの値です。
- エ:0.5% として計算した値です。
関連する用語
DevSecOps オブザーバビリティ(可観測性) SLA(サービスレベル合意書) 稼働率(MTBF・MTTR) Kubernetes(コンテナオーケストレーション)