オブザーバビリティ(Observability:可観測性)は,システムが外に出す情報から,内部で何が起きているかを推し量れる性質のことです。 多数のサービスが連携して動く今のシステムでは,障害の原因がどこにあるかを決めた項目の監視だけでは突き止めにくくなりました。 そこで,メトリクス・ログ・トレースを集めて結び付け,想定していなかった問題まで調べられるようにします。
シラバスでの扱い
IPA が 2023年12月25日に公開した応用情報技術者試験シラバス Ver.7.0 で, 「大分類4:開発技術」の「ソフトウェア開発手法」の DevOps の用語例に,「オブザーバビリティ(可観測性)」と, その情報を集めるための標準の OpenTelemetry が加わりました(その前の Ver.6.3 にはありません)。 同じ並びに DevSecOps・Four Keys・カオスエンジニアリングも加わっています。 この改訂は,ペーパー方式では令和6年度秋期試験から適用されています。
当サイトが収録している過去問(令和7年度秋期まで)では,まだ出題されていません。 監視そのものは,ITサービスマネージャの午前Ⅱで容量・能力管理や SLA の監視として繰り返し出ています。
出典:IPA「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験における出題範囲・シラバスの一部改訂について」, 応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.0(いずれも2026年10月3日に確認)
監視との違い
| 監視(モニタリング) | オブザーバビリティ | |
|---|---|---|
| 答えられる問い | 「異常が起きているか」(決めておいた項目について) | 「なぜ起きているのか」(想定していなかったことも含めて) |
| やり方 | 項目としきい値を前もって決め,超えたら通知する | 細かい情報を集めておき,後からさまざまな切り口で調べる |
| 向いている対象 | 構成が単純で,壊れ方が予想できるシステム | 多数のサービスが連携し,壊れ方を予想しきれないシステム |
オブザーバビリティは監視を置き換えるものではありません。異常に気づくのは監視の役目で,その原因を素早く突き止められるようにするのがオブザーバビリティです。
3つの情報(テレメトリ)
- メトリクス:CPU 使用率,応答時間,エラーの件数などの数値を,一定の間隔で集計したもの。傾向やしきい値の監視に向く
- ログ:個々の出来事を,時刻とともに記録したもの。何が起きたかを詳しく読める
- トレース:1つの要求が複数のサービスを通る経路と,それぞれの処理時間を,共通の識別子で結び付けて記録したもの(分散トレーシング)。どのサービスで遅れているかが分かる
これらの情報を,製品に依存しない共通の形式で集めるための標準として OpenTelemetry が広く使われています。 集めた情報は,サービスの目標(SLO)を守れているかの判断や,障害からの回復までの時間(MTTR)を縮めることに使います。
試験での問われ方(予想)
- 午前:オブザーバビリティと監視の違い,メトリクス・ログ・トレースの説明を見分ける形
- ITサービスマネージャ:障害の原因究明(問題管理)や,サービスレベルの監視の高度化として
- システムアーキテクト・ネットワークスペシャリストの午後:マイクロサービスやクラウドのシステムで,どの情報を集めて障害の切り分けをするか
近い論点で出題された過去問
監視の項目の決め方と,同じ改訂で用語例に加わったカオスエンジニアリングの問題です。
- ITサービスマネージャ 午前Ⅱ 令和4年度 春期 問11サービスマネジメントの容量・能力管理における,オンラインシステムの容量・能力の利用の監視について…
- 情報処理安全確保支援士 午前Ⅱ 令和5年度 秋期 問22目的別のサービスが多数連携して動作する大規模な分散型のシステムでは,障害時の挙動を予知することが…
予想問題(オリジナル)
当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。
問1オブザーバビリティを高めるために収集する情報のうち,トレース(分散トレーシング)の説明として,適切なものはどれか。
- アCPU 使用率や応答時間などの数値を,一定の間隔で集計して時系列に記録したもの
- イ個々のサーバで発生した出来事を,発生した時刻とともに文字列として記録したもの
- ウ一定の間隔で各サーバに応答を要求し,応答の有無によって稼働しているかどうかを記録したもの
- エ1つの要求が複数のサービスを通る経路と,それぞれでの処理時間を,共通の識別子で結び付けて記録したもの
正解と解説
正解:エ
トレースは,要求ごとに付けた識別子で各サービスの記録を結び付けるので,どのサービスで遅れや失敗が起きたかをたどれます。
- ア:メトリクスの説明です。
- イ:ログの説明です。
- ウ:死活監視の説明です。
問2システムの監視とオブザーバビリティの関係についての記述として,最も適切なものはどれか。
- アオブザーバビリティを高めれば,項目としきい値を決めた監視は不要になる。
- イオブザーバビリティは,ログの保存期間を延ばすことによって高められ,メトリクスやトレースの収集は必要ない。
- ウ監視は前もって決めた項目について異常の有無を知らせ,オブザーバビリティは集めた情報から,想定していなかった問題も含めて原因を調べられるようにする。
- エ監視は社内に設置したシステムだけを対象とし,オブザーバビリティはクラウドサービスだけを対象とする。
正解と解説
正解:ウ
異常に気づくのが監視,その原因を突き止められるようにするのがオブザーバビリティで,両者は補い合います。
- ア:オブザーバビリティは監視を置き換えません。異常に気づくきっかけには監視が要ります。
- イ:メトリクス・ログ・トレースを結び付けて調べられることが大切で,ログだけでは足りません。
- エ:どちらも,システムの置き場所によって対象が決まるものではありません。