GX(Green Transformation,グリーントランスフォーメーション)は,化石燃料を中心とした経済・社会の仕組みを, 温室効果ガスを出さないクリーンエネルギー中心の仕組みへ転換する取組みです。 単に排出を減らすだけでなく,その転換を新しい投資や産業の成長につなげ,脱炭素と経済成長を両立させることを目指す点が特徴です。 デジタルで事業を変える DX と並ぶ,企業の経営課題として扱われています。
シラバスでの扱い
IPA が 2023年12月25日に公開した応用情報技術者試験シラバス Ver.7.0 で, 「大分類9:企業と法務」の「中分類22:企業活動」にある「社会における IT」の用語例に, 「グリーントランスフォーメーション(GX)」「GX リーグ基本構想」「カーボンニュートラル」「カーボントレーシング」が加わりました。 その前の Ver.6.3 には,IT 機器の省エネを指すグリーン IT だけがありました。この改訂は,ペーパー方式では令和6年度秋期試験から適用されています。
当サイトが収録している過去問(令和7年度秋期まで)では,GX・カーボンニュートラルはまだ出題されていません。 環境に関わる問題としては,SDGs,スマートグリッド,データセンターの電力効率(PUE)などが出ています(ISO 14001 と環境の規制のページも参照)。
出典:応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.0, 同 Ver.6.3(いずれも2026年10月4日に確認)
日本の GX の枠組み
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2020年10月 | 政府が「2050年カーボンニュートラル」(温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにする)を宣言 |
| 2023年5月12日 | GX 推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)が成立 |
| 2025年5月28日 | 改正 GX 推進法が成立。CO2 の直接排出量が10万トン以上の事業者に,排出量取引制度への参加を義務付ける |
| 2026年4月1日 | 改正 GX 推進法の大半の規定が施行 |
排出量取引は,事業者ごとに排出してよい量(排出枠)を割り当て,枠より多く出す事業者は,枠が余った事業者から枠を買う仕組みです。 排出を減らした事業者が得をするので,社会全体で安く排出を減らせると考えられています。 企業が自ら参加して排出削減と取引を試す場として,経済産業省は「GX リーグ」を設けています。
出典:TMI総合法律事務所「GX推進法の改正~排出量取引制度の義務化~」(2026年10月4日に確認)
IT と GX の関わり
| 考え方 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| IT 自体の省エネ(Green of IT) | IT 機器やデータセンターが使う電力を減らす | PUE の改善,サーバの集約・仮想化,再生可能エネルギーの電力の利用 |
| IT による省エネ(Green by IT) | IT を使って社会や業務の排出を減らす | スマートグリッド,テレワーク,物流の最適化,生産設備の稼働の見える化 |
| 排出量の算定と開示 | 自社とサプライチェーンの排出量をデータで集めて算定し,開示する | 取引先から排出量のデータを受け取る仕組み,算定のシステム |
企業の排出量は,自社で直接出したもの(Scope1),購入した電力などの使用に伴うもの(Scope2), それ以外のサプライチェーン全体のもの(Scope3:原材料の調達,輸送,製品の使用・廃棄など)に分けて算定するのが国際的な考え方です。 Scope3 を算定するには取引先のデータが要るので,企業をまたいでデータをやり取りする仕組み(データスペースなど)が必要になります。
試験での問われ方(予想)
- 午前:GX やカーボンニュートラルの説明を選ぶ形。DX(デジタル技術による変革),CX(企業の変革),SDGs,グリーン IT との見分け
- 排出量取引の仕組み:排出枠を割り当て,過不足を取引する,という説明を選ぶ形
- ITストラテジストの午後:脱炭素を経営課題とする企業で,排出量の見える化やサプライチェーンでのデータ共有を IT 戦略に組み込む事例
近い論点で出題された過去問
環境と持続可能性に関わる問題です。
- プロジェクトマネージャ 午前Ⅱ 令和4年度 秋期 問22SDGs の説明として,適切なものはどれか。
- 午前Ⅰ(高度試験 共通) 平成25年度 春期 問24スマートグリッドの説明はどれか。
- ITサービスマネージャ 午前Ⅱ 令和6年度 春期 問12データセンターの施設効率を測る定量指標である,PUE(Power Usage Effective…
予想問題(オリジナル)
当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。ほかの用語の予想問題の一覧
問1GX(グリーントランスフォーメーション)の説明として,適切なものはどれか。
- ア化石燃料中心の産業・社会構造を,クリーンエネルギー中心へ転換し,温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立を目指す取組み
- イデジタル技術を活用して,製品やサービス,ビジネスモデルを変革し,競争上の優位性を確立する取組み
- ウ地球環境などの課題において2030年を年限とする持続可能でより良い世界を目指す国際目標
- エ電気・電子機器に,基準値を超える鉛や水銀などの有害物質を使用することを制限する規制
正解と解説
正解:ア
GX は脱炭素への転換を,新しい投資や成長の機会としても捉える点が特徴です。
- イ:DX(デジタルトランスフォーメーション)の説明です。
- ウ:SDGs の説明です(プロジェクトマネージャ 令和4年度秋期 問22 の正解の文言)。
- エ:EU の RoHS 指令の説明です。
問2企業の温室効果ガスの排出量を Scope1〜3 に分けて算定するとき,Scope3 に該当するものはどれか。
- ア自社の工場のボイラーで燃料を燃やしたことによる排出
- イ自社の事務所で使用した,電力会社から購入した電力の発電に伴う排出
- ウ自社が販売した製品を,顧客が使用・廃棄することに伴う排出
- エ自社が保有する営業車で燃料を使用したことによる排出
正解と解説
正解:ウ
Scope3 は,自社の直接の排出(Scope1)と購入した電力などに伴う排出(Scope2)以外の,サプライチェーン全体での排出です。製品の使用・廃棄も含みます。
- ア・エ:自社で燃料を燃やしたことによる直接の排出で,Scope1 です。
- イ:購入した電力の使用に伴う間接の排出で,Scope2 です。
関連する用語
ISO 14001(環境マネジメントシステム)と環境の規制 データスペース バランススコアカードと KPI・KGI・CSF