データスペースは,企業や業界,国境をまたいでデータを共有・連携するための仕組みです。 データを1か所のデータベースに集めるのではなく,各組織が自分のデータを自分で管理したまま, 共通のルールと信頼の仕組みのもとで,合意した相手に,合意した条件でだけ使わせます。
シラバスでの扱い
IPA が 2023年12月25日に公開した応用情報技術者試験シラバス Ver.7.0 で, 「大分類9:企業と法務」の「社会におけるIT利活用の動向」の用語例に加わりました(その前の Ver.6.3 にはありません)。 同じ並びには,DFFT(信頼性のある自由なデータ流通),データ駆動型社会,スーパーシティ構想なども加わっています。 この改訂は,ペーパー方式では令和6年度秋期試験から適用されています。
当サイトが収録している過去問(令和7年度秋期まで)では,データスペースはまだ出題されていません。 一方,同じ並びの DFFT は,ITストラテジストの午前Ⅱ 令和6年度春期 問1 で出題されました。 シラバスでの適用(令和6年度秋期)より前に出題されていたことになり,政策で打ち出された語は早く出ることがうかがえます。
出典:IPA「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験における出題範囲・シラバスの一部改訂について」, 応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.0(いずれも2026年10月3日に確認)
なぜ要るのか
製品1つの CO2 排出量や,部品がどこで作られたかの追跡(トレーサビリティ)は, 原材料から部品,完成品まで何社にもまたがるデータをつながないと計算できません。 しかし各社にとってデータは競争力の源でもあり,取引先とはいえ全部を渡すことはできません。 データスペースは,「必要なデータだけを,決めた相手に,決めた条件で」渡せるようにすることで,この板挟みを解こうとするものです。
仕組みの要素
| 要素 | 役割 |
|---|---|
| 分散した管理 | データは各組織が持ったまま。中央のデータベースに集めない |
| データ主権 | データの提供者が,誰に・何の目的で・どんな条件で使わせるかを自分で決められる |
| 信頼の仕組み | 参加者が本当にその組織かを確かめる認証や,参加の審査 |
| 共通のルールと形式 | データの形式・利用条件の書き方・契約の取り決めをそろえ,相手ごとに個別の仕組みを作らなくて済むようにする |
| カタログ | どんなデータが,どんな条件で提供されているかを探せる |
欧州では Gaia-X や,自動車業界の Catena-X といった取組が進んでいます。 日本では,経済産業省が 2023年4月に,企業や業界を横断してデータを連携・活用する取組を「ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)」と命名しました。
出典:経済産業省「我が国のデータ連携に関する取組をOuranos Ecosystem(ウラノス エコシステム)と命名しました」(2026年10月3日に確認)
試験での問われ方(予想)
- 午前:データスペースの説明を,DFFT・オープンデータ・データレイク・情報銀行などと見分ける形
- ITストラテジスト:業界をまたいだデータ連携の戦略,データを提供する側の利点と懸念(競争力の流出),利用条件の取り決め
- システムアーキテクト:取引先とのデータ連携の方式として,集約型と分散型のどちらを選ぶか
近い論点で出題された過去問
データの流通と公開に関する問題です。
- ITストラテジスト 午前Ⅱ 令和6年度 春期 問1プライバシーやセキュリティ,知的財産権に関する信頼を確保しながら,ビジネスや社会課題の解決に有益…
- ITストラテジスト 午前Ⅱ 令和4年度 春期 問1官民データ活用推進基本法などに基づいて進められているオープンデータバイデザインに関して,行政機関…
予想問題(オリジナル)
当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。
問1データスペースの説明として,最も適切なものはどれか。
- ア国境を越えて,プライバシーやセキュリティなどに関する信頼を確保しながら,自由なデータ流通の促進を目指すという国際的なコンセプト
- イ参加する組織がそれぞれのデータを自ら管理したまま,共通のルールと信頼の仕組みのもとで,合意した相手と条件に従ってデータを共有・連携する仕組み
- ウ参加する全ての組織のデータを1か所のデータベースに集約し,参加者の誰もが全てのデータを自由に検索できるようにする仕組み
- エ行政機関が保有するデータを,二次利用や機械判読に適した形で,誰でも無償で利用できるように公開する取組
正解と解説
正解:イ
データスペースは,データを集約せずに各組織が管理したまま,条件を決めて共有する仕組みです。
- ア:DFFT(Data Free Flow with Trust)の説明です(ST 午前Ⅱ 令和6年度春期 問1 で出題)。
- ウ:集約型のデータ基盤の説明です。提供する側がデータの使われ方を制御できません。
- エ:オープンデータの説明です(ST 午前Ⅱ 令和4年度春期 問1 は,オープンデータバイデザインを問いました)。
問2データスペースで重視される「データ主権」の考え方として,適切なものはどれか。
- ア個人が,あるサービスに提供した自分のデータを受け取り,別のサービスに移せるようにする。
- イデータは,それが保存されている国の法令に従って扱わなければならず,国外のサーバに保存してはならない。
- ウデータを提供する組織が,誰に,どの目的で,どのような条件でデータを使わせるかを,自ら決めて管理できるようにする。
- エデータを最初に集めた組織だけが,そのデータを分析して利用する権利をもち,他の組織への提供は認めない。
正解と解説
正解:ウ
データスペースでのデータ主権は,提供する側が自分のデータの使われ方を決め,管理し続けられることを指します。これがあるので,各社が安心してデータを出せます。
- ア:データポータビリティの説明です。
- イ:国内での保存を求める「データローカライゼーション」の考え方です。「データ主権」という語が国の権限の意味で使われることもありますが,データスペースでの意味とは違います。
- エ:データを囲い込む考え方で,共有を目指すデータスペースと逆です。