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耐量子暗号(PQC)と量子暗号

いま広く使われている公開鍵暗号(RSA や楕円曲線暗号)は,大規模な量子コンピュータが実用化されると解読されるおそれがあります。 そこで,量子コンピュータを使った攻撃にも耐えられる暗号として作られているのが耐量子暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)です。 情報処理安全確保支援士の午前Ⅱで,令和3年度秋期から3回出ています。

ひとことで

PQC は従来のコンピュータで動かす暗号です。量子コンピュータを使うのは攻撃する側で,暗号を使う側は今までどおりのコンピュータで使えます。 ここが,名前の似た「量子暗号」との大きな違いです。

耐量子暗号(PQC)量子暗号(量子鍵配送)
何か量子コンピュータでも解きにくい数学の問題を使う暗号方式光子などの量子の性質を使って,暗号鍵を安全に共有する仕組み
使うもの従来のコンピュータとネットワーク専用の量子通信路と装置
安全性の根拠計算量(今の知識では効率よく解けない)物理法則(盗み見ると量子の状態が変わり,気づける)

なぜ量子コンピュータが脅威になるか

RSA は大きな数の素因数分解が,楕円曲線暗号は離散対数問題が,従来のコンピュータでは現実的な時間で解けないことを安全性の根拠にしています。 量子コンピュータでは,ショアのアルゴリズムを使うと,これらを効率よく解けることが分かっています。 共通鍵暗号(AES など)やハッシュ関数への影響は比較的小さく,鍵や出力を長くすることで対応できるとされています。

量子コンピュータには,量子ビットの重ね合わせを使って汎用の計算を行う量子ゲート方式と, 組合せ最適化の問題に特化した量子アニーリング方式があります。暗号の解読で問題になるのは量子ゲート方式です。

標準化の状況

米国の NIST(国立標準技術研究所)は2016年から PQC の公募と評価を進め,2024年8月13日に最初の3つの規格を公表しました。

規格用途元になった方式
FIPS 203(ML-KEM)鍵の共有(鍵カプセル化)CRYSTALS-Kyber(格子暗号)
FIPS 204(ML-DSA)ディジタル署名CRYSTALS-Dilithium(格子暗号)
FIPS 205(SLH-DSA)ディジタル署名SPHINCS+(ハッシュ関数に基づく)

2025年3月11日には,ML-KEM と異なる数学に基づく予備の方式として HQC が選ばれました(規格の確定は2027年の見込み)。

出典:NIST「NIST Releases First 3 Finalized Post-Quantum Encryption Standards」(2024年8月13日), NIST「NIST Selects HQC as Fifth Algorithm for Post-Quantum Encryption」(2025年3月11日)(いずれも2026年10月4日に確認)

試験での問われ方

当サイトが収録している午前の問題のうち,PQC・量子暗号・量子コンピュータを問うのは7問です。 どれも令和3年度以降の新しい問題です。型ごとに数えると次のとおりです。

PQC の問題は,選択肢の「誰が量子コンピュータを使うのか」を見ると解けます。攻撃者が使っても安全,と読めるものが PQC です。

出題された過去問(7問)

リンク先の年度ページで,問題と解説を読めます。

午前Ⅰ(高度試験 共通)(1問)
  • 令和6年度 春期 問4量子ゲート方式の量子コンピュータの説明として,適切なものはどれか。
情報処理安全確保支援士 午前Ⅱ(5問)
ネットワークスペシャリスト 午前Ⅱ(1問)
  • 令和4年度 春期 問22量子アニーリング方式の量子コンピュータの説明として,適切なものはどれか。

関連する用語

共通鍵暗号と公開鍵暗号 ディジタル署名(デジタル署名) PKI(認証局・CRL・OCSP) TLS(SSL)