MLOps(Machine Learning Operations)は,機械学習のモデルを作る(学習させる)ところから,本番で使い,見張り,学習し直すまでを, 一つの流れとして継続的に回す考え方です。 開発と運用が連携して素早くリリースを繰り返す DevOps を,機械学習に当てはめたものです。 機械学習のモデルは,作った時点では精度が高くても,世の中のデータが変わると使っているうちに精度が落ちていくため,作って終わりにはできません。
シラバスでの扱い
IPA が 2023年12月25日に公開した応用情報技術者試験シラバス Ver.7.0 で, 「大分類4:開発技術」の「中分類13:ソフトウェア開発管理技術」にある「ソフトウェア開発モデル」の用語例に,DevOps と並んで加わりました (その前の Ver.6.3 には DevOps はありますが,MLOps はありません)。 この改訂は,ペーパー方式では令和6年度秋期試験から適用されています。
当サイトが収録している過去問(令和7年度秋期まで)では,MLOps はまだ出題されていません。 一方,機械学習そのもの(過学習,交差検証,ROC 曲線,エッジ AI の推論)は,高度の午前Ⅰで繰り返し出ています。
出典:IPA「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験における出題範囲・シラバスの一部改訂について」, 応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.0, 同 Ver.6.3(いずれも2026年10月4日に確認)
普通のソフトウェアとの違い
| 普通のソフトウェア(DevOps) | 機械学習のシステム(MLOps) | |
|---|---|---|
| 振る舞いを決めるもの | プログラム(コード) | コードに加えて,学習に使ったデータと,学習で得たモデル |
| 版を管理するもの | ソースコード | コード・データ・モデル・学習の設定(ハイパーパラメータ)をそろえて記録し,同じモデルを作り直せるようにする(再現性) |
| テスト | 決めた入力に決めた出力が返るか | 未知のデータでの精度(汎化性能)が基準を満たすか |
| リリース後 | コードを変えなければ振る舞いは変わらない | コードを変えなくても,入力データの変化で精度が落ちていく |
リリース後に精度が落ちる原因をドリフトと呼びます。 入ってくるデータの傾向そのものが学習時と変わる場合(例:新しい客層が増えた)と, 入力と正解の関係が変わる場合(例:景気が変わり,同じ年収でも返済できる割合が変わった)があります。
MLOps で回す流れ
- データの収集と前処理:学習に使うデータを集めて整え,その版を記録する
- 学習と評価:モデルを学習させ,学習に使っていないデータで精度を確かめる(過学習していないか)
- デプロイ:基準を満たしたモデルを登録して本番に出す。一部の利用者から段階的に切り替えることもある
- 監視:本番での精度と,入ってくるデータの傾向を見張る
- 再学習:精度の低下やデータの変化を見つけたら,新しいデータで学習し直して 2. に戻る
これを人手で行うと時間が掛かり,手順も人によってぶれます。そこで,DevOps の CI/CD と同じようにパイプラインとして自動化し, 再学習から評価・デプロイまでを繰り返し回せるようにするのが MLOps の中心です。 監視にはオブザーバビリティの考え方が,学習や推論を動かす基盤にはKubernetesのようなコンテナの仕組みがよく使われます。
試験での問われ方(予想)
- 午前:MLOps の説明を選ぶ形。DevOps・DevSecOps との見分けは,リリース後も精度を監視して再学習する点にあります
- 過学習とドリフトの区別:過学習は開発の時点で,訓練データには合うが未知のデータに弱いこと(高度 午前Ⅰ 令和4年度秋期 問2 で出題)。 ドリフトは,リリース後にデータが変わって精度が落ちること。どちらも「精度が落ちる」ので,起きる時点で見分けます
- システムアーキテクト・ITサービスマネージャの午後:AI を組み込んだシステムで,精度の監視項目,再学習のきっかけ(しきい値),モデルの版を戻す手順を決める事例
近い論点で出題された過去問
機械学習のモデルの評価(過学習・交差検証・ROC 曲線)と,学習と推論の分担(エッジ AI)の問題です。
- 午前Ⅰ(高度試験 共通) 令和4年度 秋期 問2AI における過学習の説明として,最も適切なものはどれか。
- 午前Ⅰ(高度試験 共通) 令和6年度 秋期 問1AI における教師あり学習での交差検証に関する記述はどれか。
- 午前Ⅰ(高度試験 共通) 令和7年度 秋期 問2AI における機械学習において,2クラス分類モデルの評価方法の一つである ROC 曲線で用いられ…
- 午前Ⅰ(高度試験 共通) 令和7年度 春期 問27クラウドで学習し,エッジデバイスで推論する機械学習ベースのエッジ AI において,エッジデバイス…
予想問題(オリジナル)
当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。ほかの用語の予想問題の一覧
問1MLOps の説明として,最も適切なものはどれか。
- ア開発と運用が連携し,セキュリティの検査を設計の段階から自動化して継続的に行う。
- イ機械学習のモデルの学習から本番での利用,精度の監視,再学習までを一連の流れとして捉え,継続的かつ自動的に回せるようにする。
- ウ大量のデータを入力し,多層のニューラルネットワークの各層で学習を繰り返して,推論や判断を実現する。
- エデータを複数のグループに分割し,一部を学習に,残りを評価に使い,順にグループを入れ替えてモデルの汎化性能を評価する。
正解と解説
正解:イ
MLOps は,DevOps の考え方を機械学習に当てはめ,モデルを本番で使い続けるための監視と再学習までを含めて自動化します。
- ア:DevSecOps の説明です。
- ウ:ディープラーニングの説明です。
- エ:交差検証の説明です(高度 午前Ⅰ 令和6年度秋期 問1 で出題)。
問2需要を予測する機械学習のモデルを本番で使っている。リリース時の評価では精度が基準を満たしていたが,消費者の購買行動が大きく変わった後,予測の誤差が徐々に大きくなった。MLOps の考え方に基づく対応として,最も適切なものはどれか。
- アリリース時に基準を満たしていたので,モデルはそのまま使い続け,誤差は担当者が手作業で補正する。
- イ過学習が原因なので,リリース時と同じ訓練データの件数を減らして学習し直す。
- ウ予測の誤差と入力データの傾向を継続的に監視し,しきい値を超えたら最近のデータで再学習し,評価してから入れ替える仕組みを整える。
- エモデルのプログラムに誤りがあるので,ソースコードを見直してテストをやり直す。
正解と解説
正解:ウ
リリース後にデータの傾向が変わって精度が落ちるのはドリフトです。監視・再学習・評価・入替えを継続的に回すのが MLOps の対応です。
- ア:精度の低下を放置することになり,手作業の補正も人によってぶれます。
- イ:リリース時には基準を満たしていたので,過学習ではありません。訓練データを減らすと,かえって過学習しやすくなります。
- エ:コードを変えていなくても,データが変われば精度は落ちます。プログラムの誤りとは限りません。
関連する用語
DevSecOps オブザーバビリティ(可観測性) Kubernetes(コンテナオーケストレーション) 大規模言語モデル(LLM)と生成AI