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パスキーと FIDO2(パスワードレス認証)

シラバスに追加済み・出題あり最終更新日 予想問題へ ↓

パスキーは,パスワードを使わずにログインするための仕組みです。 利用者は端末の指紋認証・顔認証や PIN でロックを解除するだけで,裏では端末の中の秘密鍵でデジタル署名を作ってサーバに送ります。 土台になっているのは FIDO Alliance と W3C がまとめた FIDO2(WebAuthn と CTAP)という規格で, パスキーはその鍵を複数の端末で使いやすくしたものです。

シラバスでの扱い

2023年12月25日に公開された応用情報技術者試験シラバス Ver.7.0 で, 「大分類3:技術要素」の「中分類11:セキュリティ」にある「利用者認証」の用語例に, パスワードレス認証(FIDO UAF,FIDO U2F,FIDO2,WebAuthn)が加わりました。 ワンタイムパスワードや多要素認証と並んでいます(その前の Ver.6.3 にはありません)。 最新の Ver.7.2 にも同じ形で載っています。「パスキー」という語そのものは用語例にありません。

ただし,情報処理安全確保支援士の試験では,シラバスに加わる前から出題されています。 当サイトが収録している過去問(令和7年度秋期まで)では,午前Ⅱで3問,午後で1問です(下の「試験での問われ方」)。 この改訂は,ペーパー方式では令和6年度秋期試験から適用されています。

出典:応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.0, 同 Ver.7.2, 同 Ver.6.3(いずれも2026年10月4日に確認)

仕組み:登録とログイン

パスワードは,利用者とサーバが同じ秘密を持ち合う方式です。サーバから漏れたり,偽サイトで入力させられたりすると,そのまま使われてしまいます。 FIDO2 は公開鍵暗号を使い,サーバには公開鍵しか渡さないことでこれを避けます。

  1. 登録:認証器(スマートフォンや PC,USB の鍵など)が,サイトごとに鍵ペアを作ります。秘密鍵は認証器の中に残し,公開鍵だけをサーバに登録します
  2. ログイン:サーバが毎回違う値(チャレンジ)を送ります。利用者が指紋・顔・PIN で認証器のロックを解除すると, 認証器はチャレンジとアクセスしているサイトの情報(オリジン)に秘密鍵で署名して返します
  3. 検証:サーバは,登録済みの公開鍵で署名を確かめ,オリジンが自分のものであることを確かめます
パスキー(FIDO2)のログインの流れ サーバがチャレンジを送り,ブラウザはチャレンジとアクセス中のサイトのオリジンを認証器に渡す。利用者が指紋・顔・PIN で認証器のロックを解除すると,認証器は秘密鍵で署名して返し,ブラウザが署名をサーバに送る。サーバは登録済みの公開鍵で署名を検証し,オリジンが自分のものか確かめる。生体情報と秘密鍵は認証器から出ない。 認証器 ブラウザ サーバ ① チャレンジ チャレンジ+オリジン ② 指紋・顔・PIN で解除 秘密鍵で署名する 署名 署名 ③ 公開鍵で検証,オリジンを確認 生体情報も秘密鍵も認証器から出ない
サーバに届くのは署名だけ。登録のときにサーバへ渡すのは公開鍵だけ

生体認証は認証器の中だけで行います。指紋や顔のデータは,Web ブラウザにもサーバにも送られません。 サーバに届くのは署名だけで,生体認証は認証器が秘密鍵を使ってよいかを決めるために使われます。

比べて覚える:パスワード・ワンタイムパスワード・FIDO2

サーバが持つもの偽サイトに入力すると
パスワードパスワード(のハッシュ値)盗まれて,何度でも使われる
ワンタイムパスワード値を作るための共有の秘密有効な間に中継されると使われる
FIDO2(パスキー)公開鍵だけ署名に偽サイトのオリジンが入るので,本物のサイトでは通らない

このように,偽サイトに誘導されても認証を使い回されない性質をフィッシング耐性といいます。 ワンタイムパスワードは毎回値が変わるので使い回しには強いものの,偽サイトがその場で本物のサイトに中継する攻撃は防げません。

FIDO の規格とパスキー

名前中身
FIDO UAF端末の生体認証などでパスワードの代わりにする規格(パスワードレス)
FIDO U2Fパスワードに USB の鍵などを2つ目の要素として足す規格(2段階)
FIDO2Web ブラウザから使えるようにした規格。WebAuthn と CTAP の2つからなる
WebAuthnWeb サイトと Web ブラウザの間の手順(W3C の勧告)
CTAPWeb ブラウザ・OS と外付けの認証器(USB の鍵やスマートフォン)の間の手順(FIDO Alliance)
パスキーFIDO2 の鍵(認証情報)のこと。クラウドを通じて利用者の複数の端末で同期できるもの(同期パスキー)と,1台の認証器から出ないものがある

従来の FIDO の鍵は1台の認証器に閉じていたので,端末を買い替えたりなくしたりすると登録し直す必要がありました。 パスキーは鍵を暗号化したまま同期できるようにして,パスワードの代わりとして普段使いしやすくしたものです。

出典:FIDO Alliance「Passkeys」, W3C「Web Authentication: An API for accessing Public Key Credentials Level 2」(いずれも2026年10月4日に確認)

試験での問われ方

当サイトが収録している午前の問題のうち,これらの語が出てくるのは3問です。どれも情報処理安全確保支援士の午前Ⅱです。

午後では,情報処理安全確保支援士 午後 令和5年度秋期 問3 の設問2(5) で, 偽サイトでログインしても不正ログインされない WebAuthn の仕組みを40字以内で答える問題が出ました。 解答例は「認証に用いる情報に含まれるオリジン及び署名をサーバが確認する仕組み」です。 採点講評は「正答率が低かった」としたうえで,「WebAuthnをクライアント証明書認証やリスクベース認証などほかの認証方法と誤認した解答が多かった」と指摘し, 「Passkeyという新たな方式も登場し,普及し始めている。ほかの認証方法とどのように異なるのか,技術的な仕組みを含め,よく理解してほしい。」と結んでいます。

これから問われそうなところ(予想):

出題された過去問(3問)

リンク先の年度ページで,問題と解説を読めます。

情報処理安全確保支援士 午前Ⅱ(3問)

予想問題(オリジナル)

当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。ほかの用語の予想問題の一覧

問1FIDO2(WebAuthn)による認証が,フィッシングサイトに誘導された場合でも不正ログインを防げる理由として,適切なものはどれか。

  1. アログインのたびに異なるワンタイムパスワードを生成して送信するから
  2. イ認証器が署名する情報にアクセス中のサイトのオリジンが含まれ,サーバがそれと署名を検証するから
  3. ウ利用者の生体情報をサーバに登録しておき,ログインのたびにサーバで照合するから
  4. エWeb ブラウザとサーバの間の通信を TLS で暗号化するから
正解と解説

正解:イ

偽サイトでログインしようとすると,署名に含まれるオリジンは偽サイトのものになります。攻撃者がその応答を本物のサイトに中継しても, オリジンが一致しないので受け付けられません。そもそも認証器は,本物のサイト用の鍵を別のサイトには使いません。

  • ア:ワンタイムパスワードは,偽サイトが有効な間に本物のサイトへ中継すると使われてしまいます。
  • ウ:FIDO2 では生体情報は認証器の中だけで使い,サーバには送りません。
  • エ:TLS は通信路を守りますが,偽サイトとの間でも TLS は成り立つので,誘導そのものは防げません。

問2パスキー(Passkey)に関する記述として,適切なものはどれか。

  1. ア利用者が設定したパスワードを暗号化して,複数の端末の間で同期する仕組みである。
  2. イ利用者の指紋や顔の特徴量をクラウドに保存し,どの端末からでも照合できるようにする仕組みである。
  3. ウサーバが発行したクライアント証明書を端末に保存し,TLS の接続時に提示する仕組みである。
  4. エFIDO の認証で使う秘密鍵を含む認証情報であり,利用者の複数の端末で同期して使えるものがある。
正解と解説

正解:エ

パスキーは FIDO2 の認証情報(鍵ペア)です。サーバには公開鍵だけを登録し,秘密鍵は認証器に置きます。同期できるものは,秘密鍵を暗号化したまま利用者の端末の間で共有します。

  • ア:パスワードマネージャの説明です。パスキーではパスワードそのものを使いません。
  • イ:生体情報は端末の中だけで使い,外には出しません。
  • ウ:クライアント証明書による認証の説明です(令和5年度秋期の午後の採点講評でも,取り違えが多かったと指摘されています)。

関連する用語

ディジタル署名(デジタル署名) 共通鍵暗号と公開鍵暗号 シングルサインオン(SAML・OAuth) PKI(認証局・CRL・OCSP)