AI エージェントは,目標を与えると,大規模言語モデル(LLM)が自分で手順を考え,道具(ツール)を使いながら作業を進める仕組みです。 道具には,Web の検索,ファイルの読み書き,メールの送信,プログラムの実行,ほかのシステムの API の呼出しなどがあります。 ソースコードを読んで修正し,テストを実行して結果を確かめる開発支援の AI も,その代表です。
シラバスでの扱い
「AI エージェント」という語は,最新の応用情報技術者試験シラバス Ver.7.2(2026年1月8日公開)の用語例にもまだありません。 近い語としては,2023年12月25日公開の Ver.7.0 で「大分類8:経営戦略」の「AI」の項目に「AIアシスタント」「AIによる自動化」が加わっています(その前の Ver.6.3 にはありません)。
用語例は出題の範囲を限るものではなく,ゼロトラストやパスキーのように,用語例に無いまま出題された語もあります。 当サイトが収録している過去問(令和7年度秋期まで)では,まだ出題されていません。
出典:応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.0, IPA「試験要綱・シラバスについて」(いずれも2026年10月3日に確認)
仕組み:考える・使う・確かめるの繰り返し
- 計画:目標(「この不具合を直す」など)を達成する手順を LLM が考える
- 行動:手順に沿って道具を呼び出す(ファイルを開く,コマンドを実行する など)
- 観察:道具の結果(テストの成否,エラーの内容など)を読み,次に何をするかを決める
これを目標を達成するまで繰り返します。決められた手順を記録どおりに繰り返す RPA と違い,途中の状況に応じて手順そのものを変えられるのが特徴です。 その反面,どんな操作をするかを前もって決めきれません。
| 対話型の生成AI | AI エージェント | |
|---|---|---|
| できること | 文章を答える | 道具を使って操作まで行う |
| 誤ったときの影響 | 誤った回答(人が読んで判断する) | 誤った操作(ファイルの削除,誤送信など)がそのまま実行される |
| 主な備え | 出力を人が確かめる | 権限を絞り,影響の大きい操作の前に人が承認する |
導入するときの備え
- 権限を必要最小限にする:その作業に要るファイル・システム・操作だけを許す。本番環境の管理者権限などは与えない
- 隔離した環境で動かす:開発支援なら,本番から切り離した作業用の環境で動かす
- 影響の大きい操作は人が承認する:外部への送信,削除,支払い,本番への反映などは実行前に人が確かめる。 ソースコードの変更はプルリクエストとして出させ,人がレビューしてから取り込む
- 操作の記録を残す:何を根拠に,どの操作をしたかをログに残し,後から追跡できるようにする
- 外部の情報を疑う:読み込んだ Web ページやメールに仕込まれた指示に従ってしまうプロンプトインジェクションに備える
国のガイドラインとしては,総務省と経済産業省が 2024年4月19日に「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を公表し,その後も改訂しています。 AI に関わる事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」に分け,それぞれが取り組むことを整理しています。
出典:経済産業省「「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を取りまとめました」(2026年10月3日に確認)
試験での問われ方(予想)
- 午前:AI エージェントの説明を,RPA・チャットボット・(ネットワーク監視の)エージェントと見分ける形
- 情報処理安全確保支援士:AI に与える権限,操作ログ,プロンプトインジェクションへの備え
- システムアーキテクト・プロジェクトマネージャ・ITサービスマネージャの午後:業務や開発に AI エージェントを取り入れる事例で, 人の承認をどこに入れるか,誤った操作の影響をどう抑えるか,責任の分担をどうするかを問う
近い論点で出題された過去問
AI を使うときの契約・責任の分担と,AI への攻撃の問題です。
- プロジェクトマネージャ 午前Ⅱ 令和6年度 秋期 問21経済産業省が公表した“AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版”における,AI 技術…
- 情報処理安全確保支援士 午前Ⅱ 令和7年度 秋期 問5AI に対するモデルインバージョン攻撃に該当するものはどれか。
予想問題(オリジナル)
当サイトが作ったオリジナルの問題です。IPA の過去問ではありません。
問1生成AI を用いた AI エージェントの説明として,最も適切なものはどれか。
- アあらかじめ登録した質問と回答の組から,利用者の質問に最も近いものを選んで回答を返す。
- イ管理対象の機器に常駐し,機器の稼働状況を収集して管理サーバに通知する。
- ウ人が行った画面の操作を記録し,記録したとおりの手順を繰り返し自動で実行する。
- エ与えられた目標に対して手順を自ら考え,検索やファイル操作などの道具を呼び出し,その結果を確かめながら作業を進める。
正解と解説
正解:エ
AI エージェントは,計画・行動・観察を繰り返して目標に向かいます。途中の結果に応じて手順を変えられる点が特徴です。
- ア:FAQ 型のチャットボットの説明です。
- イ:ネットワーク管理の SNMP などで使う,機器側のエージェント(管理エージェント)の説明です。同じ「エージェント」でも別物です。
- ウ:RPA の説明です。手順は記録したとおりで,状況に応じて変えることはできません。
問2ソースコードの修正からテストの実行までを行う AI エージェントを,システム開発に導入する。安全に利用するための運用として,最も適切なものはどれか。
- アAI エージェントが作成したソースコードは,AI エージェント自身がテストを実行して確かめているので,人によるレビューを省略して本番に反映する。
- イAI エージェントには本番環境の管理者権限を与え,障害が起きたときにも人の判断を待たずに修正を反映できるようにする。
- ウAI エージェントは本番から隔離した開発環境で動かし,ソースコードの変更はプルリクエストとして提出させ,人がレビューして承認してから取り込む。
- エAI エージェントの操作のログは,記録の容量を抑えるために残さず,作業の結果だけを保存する。
正解と解説
正解:ウ
AI エージェントの誤った操作や,読み込んだ情報に仕込まれた指示による不正な操作に備え,動かす環境と権限を絞り,取り込む前に人が確かめるのが基本です。
- ア:テストが通っても,要件の取り違えや脆弱性は残りえます。人のレビューは省略しません。
- イ:権限を広げるほど,誤った操作の影響が大きくなります。最小権限の考え方に反します。
- エ:操作のログは,問題が起きたときに原因を追跡するために必要です。
関連する用語
大規模言語モデル(LLM)と生成AI プロンプトインジェクション プルリクエスト(Git のブランチとレビュー) ハルシネーションと RAG